2022年04月07日
『稼ぐ農』シリーズ4~北海道の農業事情(稼ぐ力の背景)
農家の平均年収(H26農業経営統計調査)
1位:北海道:787万円
2位:東北:448万円
3位:北陸:477万円
収入面で他の地域を大きく引き離す北海道の農家。
北海道の農業といえば広々とした土地で大規模経営というイメージが強いですが、今回は様々なデータから、その内実を明らかにしていきたいと思います。
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2022年03月31日
『稼ぐ農』シリーズ3~「1本5000円のレンコンがバカ売れする理由」から観る稼ぐ力
このシーリーズは稼ぐ農を追求するという事で前回はサラダボウルを紹介しました。
サラダボウルの特徴は徹底した生産過程の追求、それが初めて農業をする人でも一定の成果が出せるマニュアルの開発、さらに日々の生産活動を直視し日々変えていくトヨタの「カイゼン」の取り組み。農業をビジネスとして成立させる為に既成概念を超えたあらゆる取り組みを喜々として社員達が取り組んでいること。その成功を証明するのは売上と年々増加する社員数です。2004年からわずか15年で500人11億の売上を実現してきました。
サラダボウルは農業の就労者を増やし、売上を上げていく稼ぐ農の一つの実現体だと思います。
『稼ぐ農』シリーズ1~稼ぐ力の基盤は何か?
一方で全く反対の成功例があります。野口農園のレンコンです。
すでに農業書としては売れまくった著書「1本5000円のレンコンがバカ売れする理由」の著者、野口憲一さん。大衆食品であったレンコンを一代で高級路線に乗せてパッケージ販売した野口氏の手法は稼ぐ農を追求する上で押さえておく必要がありそうです。
いちごやメロン、トマトなど、すでに高級路線=ブランド化を実現して成功している農家はたくさん居ます。野口氏の成功も同じ過程を辿ったのかもしれませんが、農業のブランド化はどうやって作られていくのか、その一つのモデルとしてもこの野口氏の事例を紹介してみたいと思います。
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野口憲一氏は「ブランド力最低」の茨城県の農家出身。現在40歳で野口農園取締役兼日本大学社会学、民俗学の准教授。両親は2代目の農家で水田ができない土壌の為、レンコン栽培を始めていた。父親は野口さんには「絶対に農業はするな」と教育し、大学、大学院まで進め、民俗学、社会学の博士号を取得する。
しかしある事情で大学准教授を退き再び農業をやることになる。民俗学の学会の中でレンコンを中国で1万円で売ってこいと言われてさすがに無理だと思い、まず国内で5000円で売ろうとして販売を始める。結果数年間は全く売れず、その間に様々な人脈や企画を打ち立て、ようやく数年後に売れ始め、現在は1本5000円どころか50000円の根を付けるくらいの人気商品へバカ売れするようになる。
レンコンは手間暇かければかけただけ品質が上がる。野口氏の父親は息子に農業をやるなと言いながら、高品質なレンコンを作ることにエネルギーを費やしてきた。ただ、レンコンの価格は上がらず、手間ひまかけて普通の価格でおいしいレンコンを売るという事に終始。野口氏はそれを見ており、農業は儲からないと半ば諦めていた。
農業において稼ぐとは何か?野口氏からヒントを集めてみたい。
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>②マーケットに惑わされない
農業関係のビジネス書でよく言われていることに「プロダクトアウトからマーケットイン」へいうのがあります。簡単に言えば、生産者は売りたいものから作るのではなく売れるものを作ろう、生産者目線ではなく、消費者目線に切り替えよう、ということです。
しかし、僕の発想は逆で徹底的にプロダクトアウトに拘ったほうがよいと考えています。
友人で専修大学准教授の三宅秀道さんは「新しい商品のつくりかた」という本の中で「新企画の商品によって、つくられる最終商品は、新しい社会のありようそのもの」であり「社会が需要が潜在している商品をつくろうというのではなく、新企画商品を受容する社会そのものもセットで形つくろう」といっています。僕もこのことに賛成です。
消費者に求められているものを作りましょうだなんて、当たり前すぎることは誰にでも言えることです。僕たちが本当に作らなければならないのは売りやすい商品ではなく農家が心を込めて大切に育てた作物を、本当に大切に扱ってもらえるような社会なのではないでしょうか」
もちろん全く販売できないものを売り続けることには高いリスクが伴います。しかし僕は農家は何よりも生産者としての矜持(きんじ)を見失ってはいけないと思っています。
この方向性を貫いた結果、今では「我々が扱いたいのは『本物』なんです。真空パックみたいな、半分加工みたいなことはやりたくないんです」という取引先とさえ出会うことができるようになっているのです。
>③商品力にまさる営業はない
僕はお願い営業をしたことがありません。「お願いします、買って下さい」と頭を下げたことがないのです。農業以外の企業での営業経験が全くなかったことも影響していますが、僕が力を尽くしてきたのは「野口さんのレンコンを買いたい」と言われる商品づくりでした。結果的に、それこそが僕の「営業」手法となりました。(中略)
買い手やバイヤーや料理人が惚れ込んで取り扱った商品や食材は、彼らが熱意と責任をもって販売しようと努力するはずです。頭を下げられて契約した商品の場合、売れなくても取引先に責任転嫁することができますし、やりがいもそれほど感じないでしょう。
しかし、自分の目で確かめ「これぞ!」と惚れ込んだ商品や食材が売れれば、やり甲斐を感じるでしょうし、売れなければ自分自身に責任が発生します。そのような熱意や責任は必ずお店でのディスプレイや従業員への指導などに影響します。時にはこちらからお願いしなくても試食を作ってくれたりもするのです。
そのような熱意は、最終的な消費者にも伝わるものなのです。結果的にそのような商品や食材が売れることになる。「どうやったら売れるか」は確かに大事ですが、「商品力を高めること」は、それよりももっと大事なのです。
ヒント
① 農家は何よりも生産者としての矜持(きんじ)を見失ってはいけない
② 僕が力を尽くしてきたのは「野口さんのレンコンを買いたい」と言われる商品づくり
③ そのような熱意は、最終的な消費者にも伝わる。結果的にそのような商品や食材が売れることになる。「どうやったら売れるか」は確かに大事だが、「商品力を高めること」は、それよりももっと大事。
④ 徹底的にプロダクトアウトに拘る。生産者目線が重要。生産者は売りたいものから作るのではなく売れるものを作ろう、生産者目線ではなく、消費者目線に切り替えようというのは全く逆。
⇒儲けるには企画力も必要だし、マーケッティングも必要、生産効率も必要、人材育成も必要、経費削減も、会計的な経営力も必要・・・となるが、その根本に、いやそれらも必要だが何よりも必要なのが生産者としてきちんとよい商品を作ることなのです。
それが自信をもって消費者に○○さんの○○を買いたいと思わせる、言わせるしくみです。
野口さんはアイデアマンで企画も素晴らしいけどそれらは全てその良いものをどう売るかというトライ&エラーでした。
これは農業に限ったことではなく我々ものを作る仕事をしている誰しもが持っておく矜持(きんじ)なのではないでしょうか。
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2022年03月31日
シリーズ『種』3:品種改良技術の歴史① 伝統的手法~F1種子開発まで
シリーズ『種』、前回の記事では、人為的に作られた種であるF1種が作られ、世界的に広がった歴史と社会の外圧状況をさかのぼりました。F1種は、戦後の物的需要に応える釈迦潮流の中で普及し、その歴史はまだ数十年であることがわかりました。
今回から2回にわたり、品種改良技術の歴史を見ていきます。
本記事では、F1種以前の品種改良手法までさかのぼり、F1種とは何なのか?をもう少し深堀していきます。
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2022年03月25日
『稼ぐ農』シリーズ2~現場の緻密な追求と評価こそ「稼ぐ農」の基盤になる~
『稼ぐ農シリーズ』第2回目は、初回でも紹介した「サラダボウル」についてより具体的に見ていこうと思います。
サラダボウルの創立者である田中氏はもともと金融業のサラリーマンだったそうです。いろんな企業を見てきた方だからこそ農業をビジネスとして成り立たせる様々な追求をされてきました。
サラダボウルは「農業の新しいカタチを創る」ことを目指して2004年に創業された企業です。農産物の生産から販売、加工や開発、ブランディングまで幅広く農業に携わり、従業員はグループ全体で約500名、年間売上高は11億強(2020年時点)という、優れた成績を誇る企業の1つです。どんな工夫をされているのか、見ていきたいと思います。
画像はこちらからお借りしました。
・徹底した生産管理
創業当時は、道具管理も個人で行っており、ハサミを1つ借りるにもあちこちに電話し聞きまわって半日近く費やすという状況が頻繁にあったそうです。生産から販売まで、農業には膨大な情報が付きもの。生産量を増やすためには、生産現場の状況把握やデータの管理が肝となります。
まず生産部門では、生産農作物ごとに1人のフィールドマネージャーがスタッフやパートをまとめます。マネージャーはスタッフに対して目標設定を行い、1か月半ごとに達成状況の確認を行います。この確認の場が人材育成の場としても機能し、スタッフは各々の課題や成長期待を受けます。
また、現場作業を7000項目以上の工程に分け、マニュアル化。経験の浅いスタッフでもスムーズに作業に入れるよう、作業の「見える化」を徹底しました。更に、スタッフはデバイスを使用し、作業進捗を入力するシステムが構築されています。
こまめな状況共認と作業の見える化が省力化を実現し、過酷とされる農業現場において「週休1日、月一回の連休」の業務体系を実現しています。これによって若い人材も集まる企業として成長を続けています。
販売部門では、大手仲卸業者と連携した各スーパーへの店舗別配送、地元大手スーパーと連携した会員制宅配サービスを主体とし、安定した出荷先を確保している。
最近ではNTTグループと協働した収穫予測システムの構築、自動車部品メーカー協働したとトマトの自動収穫・搬入ロボットの開発など、他企業との連携から更なる生産・流通の省力化に取り組んでいます。
・現場主体の取り組み「カイゼン活動」
サラダボウルの取り組みで目を引くのが「カイゼン」という活動です。
これは、生産効率を上げるため、各スタッフが主体で現場での作業や体制の改善ポイントを追求するという取り組み。
>例えば、重い資材を置く棚の高さは軽トラックの荷台とほぼ同じ高さに揃え、さらに棚の表面をスチールもしくは化粧板にすることで、重い資材を持ち上げずとも滑らせることでトラックの荷台に積めるようにした。
からも分かるように、かなり細部にまでこだわり、創意工夫されていることが伺えます。
これを上層部ではなく、現場のスタッフが主体となって考える。マネージャーはその提案の課題を挙げ、またスタッフはブラッシュアップする。
「現場における細やかな追求と評価が組織を高める」という強い意志を感じます。
画像はこちらからお借りしました。
以上、サラダボウルの、「こまめな状況共認」「作業の見える化」「現場での緻密な追求と評価」から『稼ぐ農』のヒントを得られたような気がします♪
次回からも、様々な実現体の真似ポイントを探っていきたいと思います。
【参考記事】
・リンク(サラダボウル公式HP)
・リンク
・リンク
・リンク
・リンク
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2022年03月22日
シリーズ『種』2~タネを人為的に交配するようになった外圧をつかむ。~
前回のシリーズ『種』プロローグでは、自給自足型の農業を実現していくためには、種が重要なのではないか?という仮説のもとに、農薬を使わずに、タネ本来が持つ成長の力で育つ「固定種」の可能性について見てきました。
古来より、野菜から採取したタネを代々同じ土地で育てていくことが常でした。このようにして継承されてきた在来種・固定種という呼ばれ方をします。
一般的なタネのイメージは在来種・固定種ですが、現実はほとんが人為的に交配されたもの(F1種)ばかりです。今回の投稿では、いつから、どのように、人為的な交配によって作られるようになってきたのか?を見ていきたいと思います。
画像はこちらからお借りしました。
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2022年03月17日
『稼ぐ農』シリーズ1~稼ぐ力の基盤は何か?
30年後には就業者が現在の1/3、1/4まで落ち込むとも言われる国内農業。
担い手不足の問題は深刻です。
本来、次代の農業者を育てる期待が掛かっていたはずの農政・農協も、
”小農、零細農を保護したため、農協は太り、金融機関に変化、一方で本気で農業をやろうとする人材のやる気を削ぎ、高齢化農に進んでいった。”
にある通り、いまだ根本的な解決策を打ち出せずにいます。
そこで今回、新たにスタートする『稼ぐ農』シリーズ。
「農業で稼ぐ力の基盤は何か?」
「次代の農業家を育てるために何が必要か?」
ここに焦点をあてて追求していきます。
シリーズ初回となる今回は、厳しい就農環境にあって国内だけでなく海外でも雇用を生み出している農業法人の事例を紹介しながら、今後の追求ポイントを発掘してきます。
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2022年03月15日
シリーズ『種』1プロローグ~持続可能な農業の要は「種」!
今回から新しいシーリーズ「種」をはじめます!!
近年、肥料・農薬などの農業資材の高騰がニュースでも取り沙汰されており、実際に私が仕事で関わっている生産者さんからも、資材費が高騰し経営を圧迫しているという話を聞くようになりました。農業資材は、ほとんどを海外からの輸入に頼っているのが現状で、したがって、農家の経営は世界情勢の影響を直接に受けることになり、結果的に非常に不安定になっているのです。
画像は、農水省資料(リンク)よりお借りしました
この状況もあって、昨今では自足的な農業、資源循環型農業も注目されています。
そんな中で、無農薬・無肥料栽培を実践している農家さんがいます。
もし本当に可能であれば、海外の資材に頼らず、安定的な生産が可能になりますよね。
肥料や農薬に頼らず、農産物を育てる秘訣は何なのでしょうか?
書籍「固定種野菜の種と育て方」から、無肥料・無農薬で実際に農業を営んでいる生産者さんの事例を紹介します。
■自然に生えている植物は無肥料で育つのに、何故野菜には肥料が必要なのか?
この本で紹介されている関野さんは、両親から畑を引継ぎ農業を始めた当初、何故、肥料をやる必要があるのか、疑問に思ったそうです。
なぜなら、森に生えている草木や、庭に成る柿の木は、特に肥料を与えなくても毎年元気に育ち、実をつけるからです。「本来の植物は肥料が無くてもきちんと育つはず」という発想で、無肥料・無農薬栽培に挑戦したのです。
■「無肥料」・「無化学肥料」と、「固定種の種の自家採取」はセット!
そんな関野さんが、何年か試行錯誤を繰り返しながら確立した、無農薬・無肥料栽培のポイントを引用します。
ポイントは、作物の生命力を取り戻すこと。そのために、「固定種の種」であることが必須条件とのことです。
*「固定種の種」とは、昔から人々が繰り返し種取りを続け、品種改良してきた種のことです。現在、日本で売られているほとんどの野菜は、「F1種」という種を使っており、F1種は、種取をしても親の形質が引き継がれない仕組みになっています。F1種と固定種についても、本シリーズで詳しく掘り下げていきたいと思います。
≪以下引用≫
作物は毎年、病害虫や猛暑などの好ましくない環境と闘い、なんとか対抗する術をみにつけようとして種に残すのです。その中でも、とくによく頑張ったものを母本として選び、次の年にはより作物が育っていくことになるわけです。
無肥料栽培は固定種でなければなりません。固定種の種は母本の性質を安定して引き継ぎますが、F1種のタネはせっかくの母本の記憶がしっかりと受け継がれていかないのです。
≪以下引用≫
私が無肥料自然栽培を始めた最初の1年は、固定種がもともと肥料の依存度が低い上に、畑に残肥があるので、収量はF1種の慣行栽培の2割減程度に収まり、すごくきれいな作物が収穫できました。施肥をやめることで肥料の危機がいくらか和らいでいるので、病虫害も結構抑えられました。
日本の畑はひっそ肥料をたくさん与えているので、土壌中に窒素を消費する微生物がたくさん棲んでいます。ですから窒素肥料を施さなくなると、土中の窒素分は2年目の途中くらいでほとんど抜けてしまいます。実際に私の畑で土壌診断をしたデータによると、二年目を過ぎたことには、土壌の小三体窒素量は一般の畑の10分の1程度しかありませんでした。ある調査結果によると、一度、底をうった土壌窒素が長い年月をかけ、ゆっくりと上がってくることがわかっています。それは土壌中の空中窒素をこていする微生物の働きです。
種取をしていれば作物がその変化に適応してくれるのですが、種取をしていないと、いくら肥料の依存度が低い固定種といえども、そのレベルの窒素量では全く育ってくれないのです。
そうして無肥料栽培になじんだ作物は、自らの生命力で育つようになり、ある意味で手間がかからなくなってくれるようになるのです
また、肥料と農薬の関係については、
≪以下引用≫
肥料を与えれば与えるほど植物は軟弱に成長してしまい、細胞同士の結びつきがユルユルになってしまいます。そうなると、どうしても病虫害に対する抵抗力が弱くなるので、農薬を使わざるを得なくなるのです。
とも言っています。
■逆に言うと、「F1種」「肥料」「農薬」はセット!
以上を見ていくと、こういうことも言えます。
F1種は、窒素肥料施用を前提として設計されていますが、土中環境がいちど窒素過剰状態になると、微生物の働きによって、更に窒素使用が必要になるというサイクルに陥り、結果的に農薬施用もさらに必要になっていくことになるのです。
■種とはなんなのか!?どんな仕組みになっているのか?
ここまで見てきたように、これから、資源を循環させて、持続可能な農業を考えた時、「種」が非常に重要なファクターになっていることがわかります。
では、この「種」とは一体何なのでしょうか?
本シリーズでは、種を理解することで、本当に求められる農業のあり方を探りたいと思います。
・F1種とは何なのか?どうやって作られているのか?
・固定種はどんな仕組みで、母本情報を伝達しているのか?
・なぜF1種が流布し、固定種が市場から姿を消したのか?
など、追求ポイントはたくさん出てきますが、ひとつひとつひも解いてみたいと思います!
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2022年03月11日
【世界の食と農】まとめ~世界の農を巡る覇権争いは、これからどうなる?~
これまで11回にわたり、さまざまな国家の農と食を取り巻く可能性や課題を見てきました。今回の投稿では、ここから見えてきた世界の農を取りまく覇権争いについて考え、これからの時代にどうなっていくのか?を見ていきたいと思います。
【これまでの投稿】
・アメリカ編: 大規模農業と、市民発の新しい萌芽(第1回)(第2回)(第3回)
・オランダ編: 世界トップレベルの生産力を実現(第4回)(第5回)
・ロシア編 : 自給自足の実現/脱GMOから新市場へ(第6回)(第7回)(第8回)
・中国編 : 量から質への転換/農業の機会か(第9回)(第10回)
・ブラジル編: 南米最大の農業大国が強い種子づくり(第11回)
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2022年03月10日
『農業と政治』シリーズ 最終回:日本人のお上意識が農業を農協の意のままにしてきた
農業と政治シリーズは副軸として「農協って何」というテーマで追求していきました。農協から農業に関わる政治を見るという試みでしたが、農協とは共同組合というのは名ばかりで政治と極めて近い位置にあり、時には政治そのものにもなっていきます。つまり、農協の追求では政治(国家の意図)は見えないということで、最終回まで来ました。
最後は農協と対局の柳田國男の思想を参考にさせていただきました。結論は脱農協であり、必要なのは農業の繁栄、さらには後継者の育成にいかに繋がっているかです。最終回はシリーズをダイジェストしてみます。
『農業と政治』シリーズ、はじめます~農協は、農業・農家・消費者に何をもたらしてきたのか
「農協」の祖:大原幽学(1797~1858年)
・その代表的なものが【先祖株(せんぞかぶ)組合】の結成。お互いに助け合い、生活を改善していくための村ぐるみの組織で、世界最初の協同組合となった。
組合員に農地の一部を提供してもらい組合の共有財産とし、組合員となった貧農にはその土地を耕作してもらい、そこから上がる利益を積み立て、そのお金を潰れ百姓の復興、組合の運営費、子孫のための積立などに充てていった。
また農業だけではなく日常生活の細部に至るまで規律をつくり、心を指導し村の復興に貢献した。
『農業と政治』シリーズ 第1回 江戸の小農制が良くも悪くも、その後の日本の農業を作った
農業には農家という言葉があるように農業を支えるのは各家族である。
この傾向が始まったのは江戸時代の小農政策にある。江戸時代の大量開墾の大号令で農業人口の拡大の必要性⇒勤勉性を高めるために小農制度の徹底⇒農業は家族単位に解体。⇒度重なる自然災害⇒貧困農家の多発⇒江戸時代に救済の為の組合が発足。
『農業と政治』シリーズ 第2回~急激な近代化圧力を前に捻じれていく農協の原型
一般に農協の前身と言われる「産業組合」が設立された明治時代。当初の設立目的から大きな捻じれを生み出しながら規模を拡大させ、後の農協の原型を作っていくことになります。
しかしこの組織、実態としては地主や富裕階層農家を中心として発足しており、零細な農家は加入していない。農民を救おう、というお題目の下で、その実態は自らの資産を守ろうとする既得権益者たちのための組合だったのではないか、という疑問が残る。
「農業と政治」シリーズ 第3回 戦後の農協を作ったのはGHQではない 日本の政治家だった。
戦後はGHQによる農地改革がGHQの日本支配の3大骨格として教科書などでは記述されるが、他の2つはともかくとして農地改革はどうも事実としてGHQの明確な方針はなく実行部隊は日本人の中に居た。
戦後の農協を考える上でこの時に建てた「経済ベース」と「小作農保護」が基本となっていったのではないか。いずれにせよGHQの政策によって農協が誕生したという事実はなかったという事を固定しておきたい。
『農業と政治』シリーズ4:食文化支配という占領政策の下で衰退していく国内農業
戦後の農政改革は、本来であれば、江戸時代から引きずる日本農業の弱点(小農零細経営)を直視し、突破していく機会となり得たのではないか。しかし歴史的事実は、旧体制と、中身なき民主化を押しつけようとするGHQの圧力に屈し、志ある政策の実現は果たされなかった。
こうして、次代を担う、求心力ある農業集団は不在のまま、日本の農業はアメリカ占領政策の下で自ら望んで衰退の道を辿っていく(、そう仕向けられる)ことになります。
そして、このころから、我が国ではコメ消費量の減少が始まり、コメの生産過剰から水田の生産調整へとつながっていくことになる。これはまた、我が国の農業、農政が凋落する始まりでもあった。また食料自給率の低迷が始まるのも、この時期と一致している。
『農業と政治』シリーズ5:1955年から1970年までの農協の変遷
農協はこの時代に合併を繰り返し組織の大型化を成し、その力の基盤として政治力や経済力をつけ、圧力団体としての骨格を形成していく。同時に高度経済成長と足並みを揃え農民は地方から都市へと移動していき農業も地方も空洞化していく。1950年代には人口の3割居た農民はどんどん減少していく。しかし同時に、この時代農協はあらゆる力を備えていく。
最大の基盤は政治の票田である。また国土開発と歩を合わせ農地が宅地に道路に変わっていき、農協も農民も望外の金を得て裕福になっていく。金と権力を備えていった農協の基盤がこの時代に出来上がっていった。
この期間に、時代の空気以上に農業も農協も金に塗れていったように思う。
『農業と政治』シリーズ6:農協の「脱農業」化が、本気の農民たちを苦しめる
農協の「脱農業」化が本気の農民たちを苦しめる
大森農協は東京の農協の縮図である。他の地域ではもう少し農業が生き残ってはいる。しかし、いずれもその向かいつつあるところは大森農協型の「脱農業」農協である。すなわち、ごく一部の真面目に農業を継続している農民を除いては、大部分が事実上、農業を捨てて、地主業ないし不動産賃貸業に転じ、あるいは形ばかりの農業を続けながら、偽装農地のさらなる値上がりを待っているだけの偽装農民という構成になりつつある。そして、農協自体は金融機関に化していき、少数の正組合員とそれに数倍する準組合員という構成になっていく。
『農業と政治シリーズ』7回 農協は必要か否か?
農協の役割は本音では以下のようなことかもしれません。
「全農の役割は組織の維持、拡大、利益の追求にあり、会員数を維持、拡大するために専業農家だけでなく兼業農家含めて保護する役割を果たし、農業という道具を通じて国(=国民)から補助金という収入を得る主体になる」
『農業と政治』シリーズ8:柳田國男が見た日本の農業
柳田國男が志した農政改革は、現実の直視から始まっています。
「何故に農民は貧なりや」
(なぜ農民はこんなにも貧しくなってしまったのか)
彼は、自ら立てたこの問いに対する追求をもって、現在も続く国内農業衰退の本質にもつながる問題点をあぶりだし、時の権力者たちと論戦を繰り広げていきます。
『農業と政治』シリーズ9 農業が衰退するのになぜ農協は発展するのか
つまり、わが国の農協は欧米にも日本にも他に例をみない稀有な組織なのである。それだけではない。問題は、この組織が政治活動まで行っていることだ。欧米にも、農業の利益を代弁する政治団体はある。しかし、これらの団体自体が経済活動を行っているのではない。日本の農協は、政治団体であり、かつ経済活動を行っている。このような組織に政治活動を行わせれば、農業の利益というより、自らの経営活動の利益を実現しようとすることは容易に想像がつく。その手段として使われたのが高米価政策だった。
『農業と政治』シリーズ12:柳田國男の志をこれからの農政に活かす
・次代の農家を育てるための政策とは
1.価格・関税政策は廃止する。減反を廃止して、米価を下げれば、兼業農家は農地を貸し出す。主業農家に限定して直接支払いを行えば、地代負担能力が上がって、農地は主業農家に集積する。
2.今のJA農協から、農業部門を切り離し、地域協同組合とする。必要があれば、自主的に主業農家が農協を作ればよい。
3.フランスやドイツ並みのゾーニング制度を確立し、農地法は廃止する。ゾーニングの中では、農業以外の土地利用は禁止される。
★零細農家、兼業農家を排し、専任が農業を担う中農体制を作る。農協はJAから切り離し、必要に応じて地域共同体として自ら作れば良い。柳田がやりたかった農政はこれではないか?
====================================
これらのシリーズを通じて日本は農業においてはほぼ政治という効力をつかっていない。
ある意味、縄文体質の日本らしいとも言えますが、かといって自らの生きる場を自ら作ろうという方向性に農業自体向かえていない。農協という組織があることでそれを奪っているとも言えますし、そもそも日本人にその大志を産み出す意識がないとも言えます。それが日本人特有の政治と自分たちの生きる場を切り離す悪しき「お上意識」です。
現在、他のシリーズで「世界の農」を見ていっていますが、既にロシアなど自国の食料は自ら守るという体制を構築している国があり、市場経済だけで農をしていない体制は多くあります。一方でオランダ始めとするヨーロッパ圏はスマート農法を推し進め、より市場にマッチした形で農業を勝てる産業として育てていっています。日本では農業=高齢化ですが、世界の農業の体制はむしろ若者が活躍している面が一般的です。
江戸時代の小農育成が日本の農の進む先を決めてしまったのですが、問題はむしろその後の国家(農協)と農業の関係にあります。小農、零細農を保護したため、農協は太り、金融機関に変化、一方で本気で農業をやろうとする人材のやる気を削ぎ、高齢化農に進んでいった。今必要なのは脱農協ですが、単に脱では先がない。つまりいかに農業を稼げる魅力ある仕事にしていけるか、そういう現実的な課題に正面から向き合う必要がでてきています。
次回のシリーズはそこを受け継いで「稼ぐ農」を具体的に追求していきたいと思います。
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2022年03月04日
【世界の食と農】第11回 ブラジル~サバンナ大開拓と強い種子に生き残りを掛けた南米最大の農業国~
今回は、南米の農業大国ブラジルについてみていきたいと思います。
日本から反対側にある南米の国。しかし1908年の笠戸丸移住にはじまる日本人労働者の大移住が有名なように、日本人にとって親しみのある国ですね。
■ブラジル農業の概観
コーヒー豆やタバコなど、嗜好品生産のイメージが強いブラジルですが、実は穀物自給率122%と、穀物生産も非常に盛んな国です。特に大豆の生産量は世界1位、トウモロコシも世界3位となっており、アメリカに並ぶ世界の穀物倉庫となっています。
また、広大な面積を誇り、多様な環境に合わせた農業を行っているのもブラジルの特徴。南米に多い1種生産(モノカルチャー)ではなく、穀物から果物、野菜まで幅広く生産しています。
世界有数の農作物の純輸出国であるブラジルですが、1970年代まで「農業には不向きな国」とされていました。純粋な輸入国であり、大豆の輸出量すら、”0”
そんなブラジルがなぜ、このような大発展を遂げたのでしょうか。
画像はこちらからお借りしました。
■「セラード」大開拓
ブラジルの農業発展に欠かせないのが1970年代にはじまった「セラード」の大開拓です。
セラードとは、ブラジルのサバンナ地帯を指す言葉です。(その広さはなんと日本国土の5.5倍!)セラードの赤い土壌は、強酸性で養分を溶脱し、植物にとって有害なアルミニウムの含有率が高いのが特徴です。そのため、『不毛な地』とされ、『農業はできない』と考えられてきました。
しかし、セラードは今やブラジルの穀物生産を支える大規模農業地帯へと変貌しています。
その皮切りになったのがセラードでも育つ、強い大豆種の開発です。
大豆は大気中の窒素を固定する根粒菌と共生するマメ科作物とされており、大豆を育てることで土壌も改良されていくというメリットがありました。
そのため大豆⇔トウモロコシといったように、他の穀物と輪作することで、一気に生産作物の種類も増えました。
古くから生産してきたゴムや、ポルトガル植民地時代から続くコーヒー豆など、単種生産であったブラジルが多種多様な農作物生産に成功した理由もここにあります。
画像はこちらからお借りしました。
■これからのブラジル農業
ここまでブラジルにおける農業の輝かしい大進化をみてきましたが、反面、いくつかの課題もあります。
まず先述した、セラードに適用するための「強い大豆」。これは所謂、遺伝子組換大豆です。
もともとブラジルは遺伝子組換技術に対し、環境面や健康面、小規模農家への影響から否定的な見解を示していました。
しかしモンサント社の生産コストが安い種子がアルゼンチンから密輸され、最大の対輸出国である中国の大豆需要の高まりも相まって、ついに2005年ブラジル政府は遺伝子組換作物の生産を全面的に合法化しました。
更に、中国の穀物需要に応えるセラードの大開拓と拡張は周囲の森林にまで及び、大豆生産による森林破壊、生態系破壊が指摘されています。
大国の需要や金貸しの思惑によって自国の法や環境を変えざるを得ないという状況は、かつての西洋による植民地化から、形を変えた緩やかな支配が続く状況と言えるかもしれません。
今、ブラジル企業の一部が立ち上がり、これ以上森林破壊をさせない、放牧地活用による新の仕組みづくりや生態系と調和した大豆育成法の研究など、持続的な農業のかたちを追求する例が増えています。(リンク リンク リンク)
ブラジルが、自国独自の農のかたちを確立していくのは、これからなのかもしれません。
続きを読む "【世界の食と農】第11回 ブラジル~サバンナ大開拓と強い種子に生き残りを掛けた南米最大の農業国~"
posted by ideta at : 2022年03月04日 | コメント (0件) | トラックバック (0) TweetList