2022年02月04日
食料問題シリーズ7:食料不安を煽って、無理やり増産してきた農業生産は持続可能か?
本シリーズではここまで、食糧問題として、「食糧飢餓」「食糧危機」「食糧自給率」について扱ってきましたが、一度ここで中間総括を行いたいと思います。
そして、シリーズ終盤に向けての追求ポイントを整理してみたいと思います。
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2022年02月03日
【世界の食と農】第7回 ロシア~農業にも貫く民族自決の精神~
前回に引き続き、今回もロシアの農業についてみていこうと思います。
前回の記事で紹介した「ダーチャ」という制度に代表されるように、農業においても民族自決の精神が息づくロシア。
この精神がロシア農業の政策や体制にも反映されています。
●国民8割の農業従事者に支えられた三位一体の農業体制
ロシアの農業生産主体は大きく『農業組織』『住民経営』『農民経営』の3種類に分けられます。簡単に紹介します⇓
『農業組織』…ソ連時代のコルホーズ(国営農場)やソフホーズ(集団農場)が民営化されたもの。この歴史はやや複雑ですが、ソ連時代、地主による独占的農場を解体し、国有化・集団化したものがコルホーズやソフホーズ。しかし農業従事者の意欲低下や生産の非効率さが裏目に出て、ソ連解体後民営化されたという経緯がある。
近年ではアグロホールディングと呼ばれる大規模企業グループが形成されるなど農業組織間の淘汰圧力は高い。『住民経営』…自給自足を目的に、農村住民が自宅周辺地で行ったり、ダーチャのように都市住民が農村に土地を持って行う副業的農業
『農民経営』…コルホーズなどの民営化過程で独立した個人が経営する農業。
農業組織は主に穀物や乳製品のシェアが高く、しかも生産量を大幅に上昇させています。ソ連時代には穀物の約5割を輸入に頼り、更にソ連解体後はウクライナなどの農地を大幅に失ったにも関わらず、2000年以降、急激な成長によって今やロシアは穀物の『純輸出国』となっています。その背景には農業以外の企業参入による技術向上や国による淘汰戦略があるとされています。
住民経営は野菜や牛肉のシェアが高く、全体の7~8割を占めます。
農民経営は他2つに比べると限定的な存在に留まりますが、穀物生産においてシェアを伸ばしつつあります。
このように、ロシア農業体制の特徴は、それぞれ3つの生産主体がバランスよく農業生産物のシェアを分かちつつ、国全体の生産量を支えている点です。
国民8割がいずれかの農業生産組織に属しており、国の支援はありつつも、「国民全員が農業の主体であること=農業が国民の生活と切り離されていないこと」が、この体制を支える基盤となっています。
画像はこちらからお借りしました。
●『クリーンな農業』を目指す、ロシアの農業政策
ロシア農業は『非効率で遅れた技術』と批判されことがあるようです。これは、欧米に比べ、単位面積当たりの収穫量が少ないことが関係しています。ロシアもそれを部分的に認めていますが、この批判を逆手に取った政策にも注目が集まります。
例えば、ロシアは世界に先駆け、真っ先に遺伝子組み換え作物を研究⇒否定した国でもあります。2012年にはGM食品の輸入を禁止、2016年には栽培と生産を禁止しています。ロシアは自国の農業を『クリーンな農業』として世界に打出し、一方でコンピューターや農薬、遺伝子組み換え技術などのテクノロジー開発に邁進する欧米の大規模農業を痛烈に批判しています。
プーチンは2016年1月9日「GM食品および西側の医薬品産業からロシア人民を守ることを命じる大統領令」でこう述べています。
「我々は生物種として、肉体や脳を上昇軌道に乗せて健康的に発展させ続けるか、あるいは、西側諸国の模範に倣い、本来ならば危険で中毒性のあるドラッグとして分類されるべき遺伝子組み換え食品、医薬品、ワクチン、ファストフード等を意図的に摂取することで我が人民を毒殺するかの選択を迫られている。我々はこれと戦わなければならない。肉体的・精神的に病んだ人民を生み出すことを我々は望んではいない」
この声明に世界の多くの人々が賛同し、有機栽培やオーガニック食品の需要は今でもどんどん高まっています。
「自分たちの食と健康は自分たちで守る」その意志の強さが、世界の大潮流を動かしてきたのですね。
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2022年02月02日
『農業と政治』シリーズ8:柳田國男が見た日本の農業
【『農業と政治』シリーズ7:農協は必要か否か?】を経て、同シリーズは今回より新たなテーマに入ります。
主人公は、柳田國男。
日本民俗学の創始者と呼ばれる彼が、明治時代、農政改革を志し活動していたという事実を皆さんはご存知でしょうか。
農商務省(現在の農林水産省と経済産業省の前身)の在籍期間はわずか2年(1900-1902)ながら、その後も全国各地を回って農政についての講演や視察を行い、1910年には講演録をまとめた「時代ト農政」を刊行。
百年前に書かれたその内容は、現在進行形の課題として未だ抜本的な解決策を見出せていない、国内農業衰退の本質にも迫るものです。
初回となる今回は、彼が農政改革を志す起点となった「(明治時代)当時の日本農業・農家の現実」をご紹介していきます。
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2022年01月28日
『農業と政治シリーズ』7回 農協は必要か否か?
これまでシリーズで農協について扱ってきました。農協は高度経済成長が始まる1960年代から変質し始め、政治権力を得て、資金をかき集め1980年代にはその本業は農業から金融・不動産へと大きく変質。2000年前後には農協はその内実が国民に見通され、社会的バッシングを受けていきます。その後変革、変化を唱えてきましたが、未だにその組織の体力、巨大さは維持されています。
このシリーズでは農協って何、農協は是か否かを中心に追求してきました。江戸時代の先祖株組合から明治の農業会を経由して、戦後のGHQ下で誕生した現在の農協に至るまで、その本質は何か、組織の基盤となる善意は何かを探ってきました。
しかし、時代を経て組織が大型化していくに連れ、農協は大企業にもまさる日本最大の巨大組織、巨額の利益を上げる収益機関に成っていきます。農協の中枢機関である全農は8000人の職員で年間4兆3千億円の取り扱いをしており、全農の下には下部組織としてJA(農協)を従えており、都道府県、市町村に支部があり、全国で1000万人以上の組合員を抱える巨大組織がネットワークとして広がっています。
農協は農協内部や農協関係者、個人農業者にとってはなくてはならないものになってきましたが、農業それ自体にとっては決して良い方向に動いてきたとは言えません。このシリーズの目的である農協って何、農協は是か否かについてシリーズ中間で一旦まとめて、以後の展開に入りたいと思います。
「農協は利益・権力団体である。農業の発展、国民の安全にとって必要か否かについて・・・必要ないのではないか」という立場で一旦検証してみます。
■本来の農協に求められている役割はなにか?改めて全農のHPを見ると下記のように書かれています。
「全農の役割は、生産者の営農とくらしを支援し、農業と地域の活性化を図るとともに、安全・安心な農畜産物を消費者に安定的に供給すること」
求められる役割とはまさにそうだと思いますが、実態は先の記事に書いたように農業人口の低下、米の生産制限、減反、外国輸入圧力への迎合、日本の食の変化の追従、先導といった、農業の発展に棹さすことができず、農業のジリ貧状態を容認、或いは作り出してきました。
農協の役割は本音では以下のようなことかもしれません。
「全農の役割は組織の維持、拡大、利益の追求にあり、会員数を維持、拡大するために専業農家だけでなく兼業農家含めて保護する役割を果たし、農業という道具を通じて国(=国民)から補助金という収入を得る主体になる」
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一方でここ数年、企業が農業を始める事象が多数出てきており、農業そのものとってようやくオランダやドイツといった企業農業が我が国でも始まり、大きな可能性となっています。しかし、それら企業農業は農協とはまったく無関係の位置にあり、また農協側も企業を活用したり育成したりする立場をとっていません。これは農協が農業全体より弱者=個人農家の為にあることを証しており、さらに個人農家自身にとってみてもやる気のある農業家もない農家も同等に扱われ、農業の質、量を上げることに対して支援しているとは言えません。
巨大企業で権力体質と書くと悪いところばかりが目立ってきますが、別の視点で書くならば農協がなくても農業はやっていけるのか、日本の農業は発展していけるのかという部分で改めて考えてみてはどうかと思います。
農協の役割とは
- 農業技術の指導、拡大
- 農業生産物の仲買、販売、流通
- 土地の買収、斡旋
- 地域共同体の発展、活性化
- 農業事業者への融資
- 農業機械の貸し出し、維持保全
- 国内農業の保護、自給率の上昇
- 肥料、農薬の輸入買付、販売、種の輸入買付、販売
- 加工食品の工場の一元化、販売
- 農生産品の直接販売
- ブランド商品の開発、販促
等、思いつくだけでもたくさん出てきます。
これら、今この時代に農協がなければ成立しないのか?
それを一つずつ見ていき、必要か否かを検証していく事であぶり出していきます。 続きは1週間後に・・
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2022年01月27日
食料問題シリーズ6:日本の食料自給率を改善する為には、日本の食文化を見直す必要がある
前々回で食料自給率のデータの中身に少し触れました。その中で分かってきたことは、食料自給率は「カロリーベース」でみると日本は「38%」と非常に低く見えるが、「生産額ベース」でみると「69%」とけして低くないということ。
また生産額でみると世界10位に入っており、1位の中国と面積や人工比でみればほぼ世界トップレベルの農業大国であることが見えてきました。
では日本はなぜ世界トップレベルの農業大国なのに食料自給率が低いのでしょうか?
そもそも食料自給問題というのはどのような問題なのでしょうか?
今回はその辺りを突っ込んで考えてみたいと思います。
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2022年01月21日
【世界の食と農】第6回 ロシア~逆境に絶え抜き、自給自足を成し遂げた大国。~
前回までで、アメリカ(近代農業の台頭者)と、オランダ(最先端の農技術)について見てきました。今回の投稿では、大陸を変えてロシアについて見ていきたいと思います。
ロシアは、北国であまり栽培に適した環境ではないのですが、その中でも、自国の生産力を上げ、国民が生き抜くための食糧を確保しています。さらには、アメリカ発(金貸し発)の遺伝子組み換え種支配にもはっきりとNoを突き付け、国家として禁止している非常に稀な国です。
このように、農と食を国力の重要な基盤に位置づけたロシア。彼らの変遷と戦略について、複数回に分けて見ていきたいと思います。
画像は、こちらからお借りしました。
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2022年01月21日
『食糧問題』シリーズ6:FAO(国連食糧農業機関)のプロパガンダによって隠蔽される国連の世界支配
前々回の記事では、国連が食料危機を煽りつつ、世界中に先進諸国の穀物や種苗・資材を売りまくり、世界各国の食料自給基盤を破壊していることがわかってきました。
今回、さらに調べてみると、国連は、食糧危機以外にも、様々な統計データの収集・情報発信を行い、各国のマスコミなどの情報機関を扇動していることがわかりました。国連の関連機関の中でも、特に国連食糧農業機関(FAO)は、重要な煽動機関となっており、我々が日々接している情報のソースの多くは、FAOによって取りまとめられているのです。
その情報をまとめてみます。
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2022年01月20日
『農業と政治』シリーズ6:農協の「脱農業」化が、本気の農民たちを苦しめる
80年代に入ると、農協はその組織規模を急速に拡大させていきます。
…? 不思議です。
農業自体は衰退を辿る一方であったはずなのに、拡大基盤は何だったのか?
80年代の農協と農民たちの生業を生々しく記録した著書「農協(1984年初版)」から、その実態を明らかにしていきます。
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2022年01月14日
食料問題シリーズ5:データを見ていくと「日本は超優秀な農業大国」だった!
さて前回は国連が世界中を「食糧危機」で煽っているという構造に踏み込みました。
そしてその食糧危機を煽るわかりやすい数字としてあるのが「食糧自給率」です。そして日本人なら誰でも聞いたことがある決まり文句、「日本の食料自給率は低い」ということ。
はなしてこれは事実なのでしょうか?
今回はその辺りに突っ込んでいきたいと思います。
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2022年01月14日
【世界の食と農】第5回 オランダ~官・民・大衆が垣根を超え、新しい農の形を追求する潮流が世界に広がりつつある~
前回の記事ではオランダ農業の強さを紹介しました。
なぜ、オランダはスマート農業に舵を切ったのでしょうか。今回はオランダが置かれている外圧や、スマート農業が可能な実現基盤を見ていきます。
◆オランダの置かれる外圧
農作物輸出量世界2位のオランダは、実はもともと農業に適した国ではありません。
***
本来、オランダは、農業に適した条件をまるで持ち合わせていない国である。
国土面積は九州程度しかなく、日本以上に農地面積が狭い。岩塩混じりの土壌ばかりである。1年中曇天が続いて日照時間が極端に短く、北海からの強風が常に吹き寄せるため気温も低い。さらに、人件費も高いのだ。(引用)
***
また、周辺にはフランスやドイツ、スペインなど穀物生産の盛んな競合国も多く、1980年代、当時の欧州諸共同体(EC)が進める貿易の自由化を契機にして周辺国により安価な農作物が大量に輸入されます。これにより国産作物は市場に敗れ、それまでの小農家はことごとく解体されていきました。
◆瀕死の農業、どうする?
そんな外圧に置かれたオランダは、大胆に農業の在り方を変えていきました。
オランダがとった農業政策が大きく以下の4点です。
①利益が出る作物への集中
②技術開発重視の農業政策
③市場原理に則った支援体制
④ICTを駆使して生育環境を整える技術力
※こちらの記事に詳しく紹介してあります。
まとめると、①の特定作物の集中生産によって農家の生産技術やリスク管理に対する欠乏・能力が向上し、②や④といった技術開発需要が高まりました。
それに加え、③の支援体制も企業が中心となり整備されていきます。(日本では農協等が一手に担う指導・金融・流通等の各機能を、農業技術コンサルタントや独立系パッキング企業等が個別に収益事業として展開)
オランダはこのような仕組みを、約40年国を挙げてつくりあげていきました。現在では先進国におけるロールモデルとして世界から注目されています。
△トマトはオランダの集中生産作物の1つ(画像はこちらからお借りしました。)
◆日本はどうする?
外圧直視→官民が一体となって技術開発と体制構築に乗り込み、“市場で勝つ”新しい農業の形を1からつくりあげたのがオランダ農業の強さの理由です。
「市場で勝てる作物の集中生産」や「都市でも農業ができる技術開発」など、周辺の農業強国、国土の狭さといった弱点をバネにして柔軟に仕組みづくりをしていきました。
日本でもオランダ農業に対する注目度は高く、農林水産省もスマート農業に関する研究を推し進めており、それに伴いトヨタやパナソニックといった大手企業も農業事業に参画する動きが出てきています。
オランダと日本では環境も体制も、外圧が全く異なるため、そっくりそのまま真似するのは難しいと言われますが、今ある外圧を直視し、官・民・大衆がそれぞれの垣根を超え柔軟に新しい農業の在り方を追求する動きは世界共通の大潮流になりはじめているのではないでしょうか。(前回記事)
△農家と企業が現地で打合せ(画像はこちらからお借りしました。)
今後も、そんな世界の最先端潮流に注目していこうと思います^^
次回は、アメリカやヨーロッパで今盛んなアクアポニックについて紹介します。日本の水田にも起源があるとされる最先端の循環型農業システムは農業や都市をどのように変えていくのでしょうか?
お楽しみに♪
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posted by ideta at : 2022年01月14日 | コメント (0件) | トラックバック (0) TweetList