2019年10月17日

土の探求6~第五の革命は、志ある農民たちの追求から始まる

土壌の健康を中心に据えた、新たな農業革命。

それは支配層(国家・学識者)発ではなく、志ある農民たち自身の、日々の追求から始まる。

現場から発せられる可能性・熱量が、革命を推進する原動力になる。

 

以下、転載(土・牛・微生物 著:デイビット・モントゴメリー)

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2019年10月10日

土の探求5~期待される、第五の革命

歴史を遡れば、私たちは農業において、四度の大革命を経験してきている。

それらはいずれも、市場社会の拡大を促進するものだった。

では、第五の革命は、どのようなものになるか?

期待されるのは、「土壌の健康をその農法の中心に据える」という思考。

 

以下、転載(土・牛・微生物 著:デイビット・モントゴメリー)

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2019年10月04日

土の探求4~超好熱細菌が起こす土の革命

今日も、植物が生きていく上で、非常に重要な土のお話です。土の状態が良ければ、作物は健全に育ちます。

「有機農業の推進に関する法律」(平成 18 年法律第 112 号)の第二条において、有機農業は

「化学的に合成された肥料及び農薬を使用しないこと並びに遺伝子組み換え技術を利用しないことを基本として、農業生産に由来する環境への負荷をできる限り低減した農業生産の方法を用いて行われる農業」と定義されています。

では、本来 土は、どのような状態が自然なのか?また栄養を持続して蓄えることが可能なのか?

今日は、「超好熱細菌が起こす土の革命」について紹介します。

転載開始 【リンク】 

こんにちは、暮らしの畑屋そーやんです。「野菜づくりを始めるときにオススメの培養土や肥料は何ですか?」とよく聞かれます。そのときに僕がオススメしているのが金澤バイオ研究所が作っている九州大学ブランドグッズ有機肥料「土の薬膳®」です。僕の畑でも利用していますが、ここの土だと、とても丈夫で健康的な野菜が育つのです。この土の秘密は何やら「超好熱細菌」という微生物にあるようです。今回はその超好熱細菌について、開発者の金澤晋二郎先生に詳しくお聞きしてきました。

金澤晋二郎:株式会社 金澤バイオ研究所 所長。元九州大学農学部教授。専門は土壌微生物、土壌生化学、環境微生物学、未利用有機物の資源化など。2001年の九州大学で行われた「学内ゼロエミッションプロジェクト」で提供した超好熱細菌をもちいた「超高温・好気発酵法」による有機質肥料「土の薬膳」が好評だったことをきっかけに、退官2年前に株式会社 金澤バイオ研究所を設立し、土づくりに取り組む。常時80度以上の高温で好気発酵を行う超好熱細菌を利用した「超好熱・好気発酵法」を開発し大腸菌、害虫病原菌、寄生虫、雑草種子などを死滅させたクリーンで高品質な肥料「土の薬膳®」を開発する。その他、様々な企業や機関との共同研究やプロジェクトも手がける。  

◆超好熱細菌とは

――ここで作られている培養土の一番の特徴は、超好熱細菌による有機肥料「土の薬膳®」を肥料として製造されているところだと思います。この超好熱細菌の特徴について教えていただけますか。

微生物はね、種類によって増殖する最適な温度が違うんだよ。普通そこらへんにいる中温(常温)菌は20度〜40度くらいを好むんだけど、だいたい50度以上になると活動を休止してしまう。それ以上の温度を好んで生育する菌を好熱菌、さらにその中でも80度以上のかなり高い温度帯でよく生育する菌を超好熱菌と言うんだ。

――そんなに高い温度のところでも生育できる菌もいるんですね。それはどうやって発見したんでしょうか。

九州大学に転勤する前は鹿児島大学にいてね。鹿児島県は活火山地帯で、温泉もたくさんあるでしょ。そういう常に高温にさらされているところに超好熱菌はいるわけ。微生物学者は、狩人だからね、いろんなところの微生物を捕まえにいくわけよ。微生物は人間と違って単純な構造だから、どんな環境下でもすぐに対応できるように遺伝子を組み換えて適応していっちゃう。このような機能を有する微生物がいたらいいなとか、このような物質を分解できる微生物が欲しいなと思ったら、だいたい見つかるんだよね。それに加え、微生物が地球上に現れて40憶年を経過しているため、あらゆる環境に対応できる微生物種がすでに地球上に存在しているとも言える。例えば、放射能耐性、超低圧耐性(成層圏)、超高圧(地殻深層)耐性微生物も存在する。

◆超好熱細菌での堆肥づくりのメリット

――その超好熱細菌で堆肥をつくると何が起きるんですか?

普通、堆肥を作るときは発酵熱で65度くらいまで上がるんだけど、そこにこの超好熱細菌の培養液を水で薄めて散布すると、温度が80〜90度くらいまで上がるんだ。そうするとね、雑草の種とか病原菌とか寄生虫の卵とかも全部綺麗に死滅・分解されちゃうんだよ。

――病原菌とか寄生虫の卵が残っていると怖いですね。普通の堆肥ではそういうのも残っちゃうものなんでしょうか?

60度くらいでも、じっくり時間をかければちゃんとそういう菌や卵も死滅されるんだけどね。乾燥させて水分を30%以下にすれば、悪臭を発生する腐敗菌が活動しないから、堆肥として早く売ることはできる。しかし、この状態だとちゃんと未熟な有機物が発酵分解されているとは言えない。十分に大腸菌、病原菌、寄生虫の卵などが死滅していない堆肥を使うとどうなると思う? 今度は畑の中で害虫・病原菌か増えて農作物などが病虫害に侵されることになるんだよ。そうすると農薬が必要になってくるんだよね。

――なるほど、堆肥が原因で病気になってしまうこともあるんですね。超好熱細菌ではなくとも時間をかけて堆肥化すれば、病原菌や寄生虫の卵は少なくなるんでしょうか。

うん、特に病原菌なんかは栄養豊富で未熟な有機物があるところじゃないと生きられないから。ちゃんと分解された堆肥だったら、これらの病原菌の増殖はなく、生残していて機能性の高い貧栄養細菌である土壌生息微生物に食べられちゃうんだ。ただし超好熱細菌じゃないと分解しきれないものもある。それが農薬とか家畜糞尿に含まれている化学物質。それも超好熱細菌だと分解しちゃうんだよ。すごいだろ?

――え〜! それはすごいですね。化学物質まで分解しちゃうんですか。

そう。爆発的に微生物が増殖して高温状態となると、通常分解できないものも分解しちゃうんだよ。例えば、ダイオキシンなんかも分解しちゃう。普通、分解酵素というのはタンパク質だから高温だと変性し失活してしまうんだけどね、超好熱細菌の酵素は高熱耐性酵素(100℃以上でも高活性を維持)なのでそれに耐えるんだよね。

◆超好熱細菌を使うと堆肥化のスピードが早くなる

――普通は堆肥ができるまで半年はかかりますが、堆肥化されるスピードも普通の堆肥より早いんでしょうか?

高温だから分解スピードも早いんだよ。温度が10度上がるとね、1.7倍〜1.9倍くらいは分解スピードが上がるんだよ。ここでは常時80度以上をキープしてるから25日もあれば堆肥ができちゃう。でも念のため1カ月半はかけてから出荷するけどね。だから品質のことで一回もクレームが出たことはないよ。

――それは革命的な早さですね。

◆さまざまな原料を堆肥化できる超好熱細菌

――ちなみにここではどんなものを原料に堆肥化してるんですか?

米ぬか・大豆おから・アガリスク菌床・竹パウダー・ビール麦芽かす・かき殻とか、食品産業がら出される良質の有機資源を再利用してるんだ。特に米ぬかとかおから・ビールかすは、ものすごく栄養豊富なんだよ。竹もね、処分に困ってるところが多いけど、良質の炭水化物や必須多量元素のケイ素が豊富なため、ケイ素が作物を頑強にしてくれるんだ。

――確かに! うちでも金澤バイオさんの土で野菜を作っているんですが、ものすごく茎が丈夫で葉も肉厚なものができました。竹の中のケイ素がポイントだったんですね。逆に超好熱細菌での堆肥化に向いてない原料とかってありますか?

いやぁ、あんまりないよ。ほとんどの有機性廃棄物ですでに研究し尽くしたんだけどね、例えば、下水・食品汚泥、家畜糞尿、生ゴミ、剪定枝、魚カス等々の原料で発酵実験は終了しているんだ。

――それはすごい。超好熱菌はいろんな可能性を秘めていそうですね。 

超好熱細菌の特徴まとめ

① 常時80度以上の高温で発酵する

②雑草の種・病原菌・化学物質・寄生虫などを全て死滅・分解できる

③堆肥化のスピードが格段に早い

④さまざまな原料を堆肥化できる

⑤機能性の高い有機肥料となる 

以上転載終了

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では、微生物は土に対して何をしているのか?続けて調査してみますと

「安全性と生産性を高める有機農業を実現する。」から【リンク

日本の化学肥料や化学農薬の使用量は世界で1、2位を争うという衝撃的なデータがある。規制の厳しい欧州諸国などと比べるとその量は数倍から10倍にもなるともいわれている。「問題は化学肥料や農薬の使用量だけではありません。それらが長く使われた農地で育つ野菜は栄養素も著しく低いことです」と久保幹は語る。化学肥料と化学農薬を使った農業が慣行化したこの50年の間にニンジンのビタミンA含有量はおよそ3分の1、ホウレンソウのビタミンC含有量は4分の1以下に減っているという。

化学肥料の使用が慢性化した土壌と自然の土壌との大きな違いは「微生物」だ。かつての農地では落ち葉や動物の糞尿なとの有機物を土中の微生物が無機物に分解し、それを肥料に作物が育った。しかし化学肥料は分解されることなく植物に吸収されるため、エサとなる有機物を失った微生物は死滅してしまう。久保の調査によると、日本には微生物が計測できないほど「ゼロ」に近い農地が少なくないという。微生物のいない土壌では植物病原菌や病害虫が繁殖しやすくなり、それがまた農薬の使用を招くという悪循環に陥っている。

食の安全のためにも化学肥料や農薬を含まない「健康な野菜」を作ることが望まれるが、長年化学肥料や農薬が使われた農地でやみくもに有機農業を実践しても急に作物は育たない。

「まずは土中の物質循環を取り戻すため、そのエンジンとなる微生物を増やす必要がある」

~後略~

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◆まとめ

野菜や植物を健康に育てるためには、微生物の力が欠かせないということが分かりましたが、それ以上に日本の農耕地が今や危機的な状況にあることは衝撃的でした。

このような状況下にあって、超高熱細菌の適応力が、土の潜在的な力を引き出し、更に土中の物質循環を取り戻して、自然本来の姿に戻す核となるのです。小さな存在ですが、生きていく上で欠かせない微生物。彼らを存続させていくことが、人類も含めた地球上のすべての動植物が元気に生きていられること。に繋がっていくのです。では、次回もお楽しみに!

 

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2019年10月03日

土の探求3~肥沃な土壌のカギを握る「表土」

肥沃な土壌のカギを握る、「表土」。

自然が数センチの肥沃な表土を作るのにかかる時間は数百年。

人類はそれを全て数十年で壊す方向に進んでいる。

肥沃な表土を再生させる突破口は、「有機物」の追求と、「自然と”共に”働く」心のありよう。

 

以下、転載(土・牛・微生物 著:デイビット・モントゴメリー)

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2019年09月26日

土の探求2~人類最悪の発明、「犂」

畑を耕す。

この、ごく基本的な農作業の効率化追求が、今に続く土壌劣化の始まり。

 

以下、転載(土・牛・微生物 著:デイビット・モントゴメリー)

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2019年09月19日

土の探求1~土を顧みない社会

目先の利益に傾倒するあまり、自然の摂理に反する生産行為が続けられてきた近代農業。

その代償として失われてきたものの一つに、「肥沃な土壌」があります。

 

近代農業がもたらした数々の弊害が明るみになってきている今、

次世代につながる農業生産、その基盤となる、豊かな土壌の再生に求められるものはなにか。

”足下に広がる小宇宙”とも言われる、未だ謎多き「土」の探求。

 

以下、転載(土・牛・微生物 著:デイビット・モントゴメリー)

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2019年09月12日

農をめぐる、世界の闘い13~先端を行くラテンアメリカⅢ.給食改革の根底に流れる志

戦後導入された「学校給食制度」が象徴するように、離乳食の段階から支配され続けてきた日本の「食」。
(参考:【奇妙な学校給食のルーツは戦勝国/米国の対日戦略に始まる】

将来世代のために、私たちが守り育てていくべき「食」とは何なのか。

ブラジルは、給食制度の改革を通じて、次代を生きる国民の健康、郷土食の文化、その基盤となる”農”を守り育てようとしています。

 

以下、転載(タネと内臓 著:吉田太郎)

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2019年09月10日

廃棄していた「摘果みかん」を「宝」に変える

今日のお話は、これまで、食されることなく破棄されていた みかん と安価な茶を融合させてできた「みかん発酵茶」の開発のお話です。

市場経済の元では、規格外のもの、形の悪いもの、虫のついたもの等商品としてマーケットに乗らない野菜や果物は、いくら食することが可能であっても全て破棄します。2008年市場に出回らない規格外野菜は400万トン(流通野菜1000万トン)【リンク

これまで廃棄されていた「摘果みかん」をどうにか食するようにはできないものか?長崎で開発された全く新しい取り組みリポートです。

では転載開始【リンク

長崎県立大など「みかん発酵茶」開発、機能性表示目指す  2018.09.28   文=佐々木 節

長崎県立大学シーボルト校や長崎県農林技術開発センターなどを中心とする研究グループは、「みかん発酵茶」と呼ばれるまったく新しいタイプの飲み物の開発を数年前から本格化させている。これは従来廃棄されていた「摘果みかん」と、「一番茶」に比べ香味が劣る安価な「三番茶葉」を利用して作る発酵茶の一種で、「血流改善」など健康の維持や増進に貢献する多くの機能性が期待されている。「食と健康」に対する人々の関心が高まるなか、健康食品としての新たな需要の掘り起こしが見込まれ、地域創生の起爆剤としても期待されるみかん発酵茶について、研究開発の中心的役割を果たしてきた長崎県立大学教授 田中一成さんと、長崎県農林技術開発センター主任研究員 宮田裕次さんの2人に話を聞いた。

長崎県中央部の大村湾南岸を町域とする長与町は高度成長期以降、隣接する長崎市のベッドタウンとして都市化が進んだが、もともとは自然豊かな農業地域。丘陵地で育てられているみかんが名産品として有名だ。このため、町のほぼ中心部に位置するJR長与駅の外観も地元の特産の「みかん」をイメージして作られており、駅前東口には長与町のイメージキャラクター「ミックン」の像がこの町を訪れた人々を迎えている。

今回、みかん発酵茶の開発物語を聞くために、長与駅から徒歩15分ほどの場所にある「みかん発酵茶」の研究拠点の一つ、長崎県立大学シーボルト校に同大学教授の田中一成さんと長崎県農林技術開発センター主任研究員の宮田裕次さんを訪ねた。

◆捨てられていた「摘果みかん」と価格の安い「三番茶葉」を活かす

長崎県立大学や長崎県農林技術開発センターなどのグループは、数年前から地元の農家がみかん育成の過程で間引きしている摘果みかんを使った発酵茶の研究を進めてきた。地元農家への技術普及を図るために実証研究も進めている。地元のJA全農ながさきも協力機関として支援した。

「多すぎる実を取り除く摘果は、良質なみかんを栽培するには欠かせない作業の一つ。しかし、これまで摘果みかんは利用されずに廃棄されていました。ところが、この摘果みかんにはヘスペリジンという有効成分が非常に高い濃度で含まれているのです。これを『何とか活用できないだろうか』と考えたのが開発のそもそものきっかけでした」

研究開発の契機について、まず宮田さんはこのように話してくれた。

ただしポリフェノールの一種であるヘスペリジンは水に大変溶けにくく、そのまま飲料にすると沈殿してしまうため見栄えも良くなかった。一方、酵素処理によりブドウ糖を付加して水に溶けやすい「糖転移ヘスペリジン」を作ることは可能であり、実際に食品原料メーカーが製造している。だが、その製造には非常に多くの手間と多額のコストがかかってしまう。こうした問題を解決するために考案されたのが、摘果みかんと茶生葉を揉捻(じゅうねん)機(=本来は一般の製茶工程で茶葉を揉み込むための機械)で強く揉み込む独自の製法である。

「製茶農家が茶葉を揉み込むために所有している揉捻機を使い、お茶と摘果みかんを3:1の割合で20分間強く揉み込むと、自然発酵が起こり、ヘスペリジンがお茶の成分であるカテキンなどと結合して水に溶けやすくなるのです。そして、水溶性が高くなると、生体内への吸収も良くなり、飲料としてより多くの機能性が期待できます。健康志向の消費者にアピールできるとともに、長崎県内の農家の支援にもなる」と、この製法を開発した宮田さんは語る。

ちなみに揉捻機は、製茶農家や茶を出荷する農協が必ず持っている機械なので、みかん発酵茶を生産するために新たな設備投資をする必要はまったくない。そのうえ従来は廃棄していた摘果みかんと、一番茶に比べ香味が劣ることから価格の安い三番茶葉が原料として有効活用できるのだから、農家には非常に大きなメリットとなる。開発グループは、農家がみかん発酵茶を製造するための「マニュアル」を作成した。

◆ヘスペリジンだけでなく、カテキンや紅茶ポリフェノールも豊富

みかん発酵茶がもつ機能性のうち、最も注目されるのは摘果みかんのヘスペリジンによる血流改善作用である。「人は血管とともに老いる」と言われるように、血管の硬化は心筋梗塞や脳卒中、高血圧や腎機能低下といったさまざまな疾病をもたらす。一方、血流が良くなればこうした疾病を予防できるだけでなく、日常の冷え性や肩こりの解消などにもつながる。このほかみかん発酵茶の機能性という点では、もうひとつの原料、茶葉に由来する効果も見逃せないと田中さんは言う。

「みかん発酵茶の製造に用いる三番茶は、新茶(一番茶)や二番茶に比べると値段が安いこともあり、長崎県内では出荷されることがほとんどありませんでした。ところが、その成分を調べてみると、暑さの厳しい7月から8月にかけて収穫される三番茶には、苦み成分でもあるカテキンが非常に多く含まれています。そのカテキンは揉捻機にかけると発酵作用でもう一つの有効成分である紅茶ポリフェノールへと変化していきますが、揉み込み時間を20分程度に限定すれば、もともとあったカテキンも十分に残りますので、これらが血圧を下げたり、中性脂肪を減らしたりというさまざまな効果をもたらしてくれるのです」

◆「機能性表示食品」の届出によって商品の魅力を広くアピール

こうしたみかん発酵茶の機能性を広くアピールするため、研究開発と並行して目指しているのが「機能性表示食品」の届出である。

ご存じの方も多いだろうが、機能性表示食品はアベノミクスの規制緩和政策の一環として2015年4月に導入された制度で、それ以前は食品の機能をアピールできるのは「特定保健用食品(トクホ)」や「栄養機能食品(主にサプリメント)」に限られていた。このうち1991年に定められたトクホ制度では、最終製品を用いた臨床試験で、有効性や安全性を国の審査において立証しなければないため、その取得には多大な時間や費用が必要だった。一方、新たにスタートした機能性表示食品制度では、原則的に消費者庁への届出だけですむようになっているため、健康食品を手がける企業とっては、科学的根拠に基づいた食品の機能や効能を比較的手軽にアピールできるメリットが生まれた。

この制度を所管する消費者庁食品表示企画課の久保陽子さんによると、2018年9月現在、機能性表示食品の届出を受理したのは1374件にのぼり、そのうち最も多いのは加工食品、次いでサプリメント、生鮮食品の順になっているという。また、商品パッケージに具体的な健康効果を表示することによって、その販売実績を大幅に向上させた企業も決して少なくない。たとえば、カゴメ経営企画室広報グループの北川和正さんによると、「消費者庁への届出により2017年10月から“血圧が高めの方に”との機能性表示を行った『カゴメ野菜ジュース』の2018年1~6月の販売金額は、前年同期(2017年1~6月)と比べて約70%増となった」という。機能性表示食品の2018年の市場規模は、前年比15.1%増の1975億円になるとマーケット調査会社の富士経済は予測している。

◆農家の所得を向上させ、地域創生につなげる

2014年から本格化したみかん発酵茶の共同研究は、すでに商品化に向けた最終段階に入りつつあると宮田さんは語ってくれた。

「みかん発酵茶の商品化については、平成29年度(2017年度)から31年度(2019年度)の3年間、農研機構(国立研究開発法人 農業・食品産業技術総合研究機構)の経営体強化プロジェクトに認定されています。このプロジェクト中では、地元の農家の所得を2割向上させるほか、試験終了後1年以内に機能性表示食品の届出をすることになっています。つまりは研究開発で終わることなく、事業化することを見据えているのです」

事業化に向けて、長崎県農林技術開発センターなどの指導によって農家には一次加工品であるみかん発酵茶の製法を習得してもらっている。並行して「みかん発酵茶」の効果を長崎県立大学教授の田中さんらが実証して論文にする。一方、この経営体強化プロジェクトには一次加工品の流通を担当する企業と製品の生産・販売を担う健康食品メーカーも参画しており、新商品の開発も具体的なものとなっている。そして、こうした商品化へ向けた一連のプロセスの中で重要な役割を果たすのが、商品の魅力を消費者へとアピールする機能性の表示なのである。

「現在、われわれが行っているのは血流改善をテーマにしたヒトでの実証実験です。これにより実際の商品化に際しては、冷え症の改善、肩こり改善、疲労回復といった消費者にもわかりやすい機能を表示できるようにしたいと思っています」と田中さんは語る。

宮田さんによると、製品化への具体的な流れとしては、2019年に機能性表示食品の届出をすませ、翌2020年には新商品の発売にまで漕ぎ着ける予定だという。

気になるのはみかん発酵茶の味だが、さわやかな紅茶の香りがすばらしく、人間の感覚を用いて製品の品質を判定する「官能試験」においても高い評価を得ている。これまでに「五島つばき茶(椿の葉+茶葉による発酵茶)」、「ワンダーリーフ(ビワの葉+茶葉による発酵茶)」という長崎県の特産品を用いた発酵茶で人気商品を生み出してきた田中さんと宮田さんの2人も、口を揃えて「苦みの強い三番茶から飲みやすく、ものすごくおいしい発酵茶を生み出すことができた」と太鼓判を押す。

そして、機能性表示食品の届出が受理されれば消費者へのアピール度もさらに高くなるだけに、新商品の登場には大きな期待と注目が寄せられている。長崎県の農業の活性化にもつながる新たな発酵茶の発売が待ち遠しい。

以上転載終了

◆まとめ

手塩にかけて育てた野菜や果物が、流通せずに捨てられているという現実。いくら「農業は素晴らしい」と声を大きくしても、「収穫」と「破棄」が瞬時に表裏一体となる矛盾。そういう意味では、今回紹介した試みは知恵と発想力から可能になった産物だと思います。

市場経済が続く限りは、根本的な解決には至りませんが、こうした知恵と発想力によって農家は救われ、本当の意味で新たな農業の活性化・地域創生に繋がっていくのではないかと思います。

日本には、「もったいない」「始末の料理」等、素材を最後までいただくという素晴らしい文化があります。農家が育てた野菜や果物を使い切るという知恵や方法が、今後もいたるところで芽生え、登場してくれば、本当の意味で「新しい農」としての未来が見えてくるのではないでしょうか?それでは、次回もお楽しみに!

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2019年09月05日

農をめぐる、世界の闘い12~先端を行くラテンアメリカⅡ.世界で最も進んだ食のガイドライン

ブラジルが世界に誇る「食のガイドライン」。

それは、「一日当たりの脂肪や繊維の推奨摂取値は…」等という医療・栄養学的な処方箋としてではなく、

滋味豊かな料理を家族や友人たちと分かち合うことの喜びを重視し、それら食べ物と環境とのつながりを直視する。

その価値の塗り重ねが、将来世代の食・農・健康を守っていく。

 

以下、転載(タネと内臓 著:吉田太郎)

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2019年08月29日

農をめぐる、世界の闘い11~先端を行くラテンアメリカⅠ.破壊される郷土食の伝統

前回、【砂漠化する先進国の食事】で触れた、”遺伝子組み換えまみれで栄養スカスカのクズ”と化した、トウモロコシ。

これがまた大量に、日本に輸入されることになってしまった。

 

…かつて、米国・多国籍企業の「お得意先」であった、ラテンアメリカ。

しかし現在、彼らは敵の戦略を見抜き、将来世代のために、失われつつあった郷土食の伝統を取り戻そうとしている。

 

以下、転載(タネと内臓 著:吉田太郎)

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