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自然を通じた成長シリーズ⑦~万物に溶け込み、そして継承する~

現代社会に生きる我々は生活自体どんどん便利になってきている。

その一方で少なくないものを失ってしまった。それは悠然な自然美であったり、それを感じ取る感性、また地域で生きる共同体的風土。

様々なものが高度経済成長以降、人間本来の能力を封鎖してしまったといっても過言ではないのではないでしょうか。

 

そんな中で現代に生きる職人たちは、モノを慈しみ、自然を愛し、人に向き合う人間本来の『姿勢』がそこにはまだ根付いているのではないでしょうか?

 

そこで今回、

宮大工の棟梁であった西岡常一さん

日本刀を作る刀工・藤安将平さん

のお二人から自然観・世界観・人生観をを学んでいきたいと思います。

 

引用元はこちらになります

「 日本最古の木造建築を守ってきた想い 」

https://www.btwwaterandtree.com/%E6%9C%A8%E3%81%AB%E3%81%A4%E3%81%84%E3%81%A6%E8%A5%BF%E5%B2%A1%E5%B8%B8%E4%B8%80%E6%A3%9F%E6%A2%81%E3%81%8B%E3%82%89%E5%AD%A6%E3%81%B6 [1]

「 刀鍛冶 藤安将平さんにインタビュー 」

https://suigenkyo.com/articles-masahira-fujiyasu-interview/ [2]

 

【 モノづくりにおける視点 】

・西岡さん

>「木」を建築に使うなら、「木」だけを見ていてもダメで、「山」から見極める。

木が育った場所や環境を見て癖を見抜き、その生育環境のままに堂塔建立に使え、そのために山で木を見よ。

>千年以上も耐える建造物を造っている

>人間はすぐに利益をあげようとする。今の人は自分で生きていると思うていますが、自分が生きているんやなしに天地の間に命をもらっている木や草やほかの動物と同じように生かされているということ、それを深く理解せなあきません。

 

・藤安さん

>「人によって作られた痕跡を残さないこと」かな。自然に近い存在にしたいと思っています。山、海、空、そういったものを見て人間は美しいと感じると思います。いかにそれらに近づけるかをこだわっています。花が咲いて枯れるように、自然の中に刀が存在するようにしたいんです。古い刀を見ると、人が作っていることは間違いないんですけど、不思議と自然にできたもののような美しさがあるんですよね。

 

>現代社会ではすべての品物が非常に高度なテクニックで作り上げられていて、作り手の作ろうという意識が強すぎて見ていて疲れてしまいます。正直に言うとつまらないと感じてしまいます。季節によって気温、湿度、炭の質、火の表情すべての条件が異なる中で日本刀を作ります。

 

【 自然への同化~そのままを活かす 】

どの職人の方も100年なんなら1000年後世に残すという気持ちで取り組まれています。

特に西岡さん曰く

 

>木は大自然が生み育てた命ですがな。木は物ではありません。生きものです。人間もまた生きものですな。木も人も自然の分身ですがな。この物言わぬ木とよう話し合って、命ある建物に変えてやるのが大工の仕事ですわ。』

 

というように自然への同化。

山の斜面南向きなら大きく太い枝が伸び、節が多い。北なら節が少ない。

風が強ければ、風下側に流されて育ち、ねじれている。

だからこそ、これらを見極めて育てるからこそ、何百年と耐えうる建物を育てることができる。植生を見る、風を読む、風土に根付く。それが古来からの伝わる教えであり、知識なのだ。

 

それは藤安さんの言葉にも表れている。人によって作られた痕跡を残さない自然への感謝や畏怖、いろいろな感情が見て取れます。そこにこそ、我々の忘れてしまった自然への向き合い方があるのではないだろうか。

 

【 職人における仕事の姿勢~学び続ける心 】

それぞれの職人としてモノづくりの視点は違うにしても、共通する思いは、生涯学び続ける姿勢があること、そしてモノへの同化度合いが現代に生きる我々とは全く深度が違うということではないでしょうか。

大量生産の時代で便利でよければいい、汚れたら捨てたらいいではなく、人間も自然の一部であるからこそ、いかに自然と溶け込むかこのあたりに我々現代に生きる私たちが学ぶべき部分があるのでしょう。

 

【人材育成~見て真似る】

古来より師匠に弟子入りとなれば、ともに寝食を共にし、普段から生活を送っています。

しかしその中には指導というものはなく、本当に見て学ぶことなんです。

同じ空気、同じ目的、同じ視線を共有することが本当の意味での人材育成なのではないでしょうか。

 

【 現代に継承する 】

田舎暮らし、自然回帰、アウトドアブーム、農学校といった原点回帰の動き。

さらには新卒一括採用からジョブ型雇用など働き方における新たな動き。

それに伴う教育指導要領の変更など。国際競争力もこの30年で1位から31位へ転落といった経済状況の変化。

今までの常識が通用しない。

そんな移り行く世の中だからこそ

「状況に合わせて変えていく」

「ゼロからイチを生み出していく」

「相手の役に立ちたいいう想い」

 

今まさに我々に必要なものは机の上で学ぶことだけではなく、実際に体感・体験する=実学がカギになってくるだろう。

生きる力を育てること。

今だからこそ、今回紹介した職人を通して、我々は学ぶべき部分が大いにあるに違いない。

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