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2013年05月25日

【シリーズ】生態系の循環を活かした持続可能な農業の実現に向けて(3)不耕起栽培の可能性 耕運の長短を知る

前回の、なぜ土作りが重要か?では、土がどのように作られて来たかの歴史を見てきました。
私たちは、この何億年もかかって、風雨や、微生物や、小動物が作ってきた団粒構造の豊かな土の恩恵をうけて農業生産を発展させてきましたが、近年この土の豊かさが失われてきています。
なぜ失われてきたかというと、農業では必ず耕運という作業を繰り返し行います。昔は、人力や、牛や馬に鋤などの道具を付けて耕す事しかできず、土を大きくひっくり返す程度で土の団粒構造を大きく破壊することはありませんでした。 しかし、近年になって農業機械が発達しトラクターが登場してからは、土を細かく粉砕できるようになり、耕運を繰り返し行うことで農作業の効率が格段に上昇し、その利便性から耕運の主役になっていきましたが、同時に団粒構造を徐々につぶしていきます。
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確かに楽ちんに農作業が進みそうです。ではどのような利便性があったのでしょうか。

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①種まきや定植の作業を容易にする。
②肥料を均質にまぜ込むことが出来る。
③一時的に通気性と透水性を改善し根が伸びやすくなる。
④気温の低い地域でも土中の有機物分解を促進させ肥効を高める。
⑤雑草を土に混ぜ込んで除草する。

利便性には上記のようなことが考えられます。これらの利便性が機械化された近代的な農業を発展させてきた要因の一つですが、同時に、土の必須条件とも言える団粒構造や土壌生物の生態系を破壊し、土の豊かさを徐々に劣化させてきました。
では、繰り返し耕運することで、土、土壌生物はどのように変化していくのでしょうか。
① トラクターの踏圧で耕盤を形成し透水性と通気性を損ない根の伸長を損ない、水が溜まり畑作物では根を腐らすこともある。
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② 耕運は除草と団粒破壊が進み土が乾燥し土壌浸食(風食、水食)を発生させ、砂漠化の一因でもある。
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③ 多用な土中生物の生息を劇的に変化させ、土壌表層の小動物と棲息を損う
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④ 病害虫の発生を促す。
⑤ 土の乾燥を速め有機物分解が進みすぎて地力の消耗を早める、結果的に肥料等を大量に投入する必要がある。

このような事象から見えてくる事は、目先の利便性を優先し耕運を長期間繰り返すことで土が本来持っていた豊かな団粒構造の土は徐々に破壊されていき、農地の地力が衰えていきます。その結果化学肥料や農薬を大量に投入する悪循環に陥っているのが現代の農業の姿で、継続的な農業生産の維持が難しくなっていくという将来の姿が見えてきます。
これが、近年機械化された農業が抱えだした大きな問題点です。
では、この豊かな土を維持しながら、農業の生産性を維持していくことが必要ですが、耕起を行わないか最小限に止めて、農業が成立する農法があるのでしょうか。
j実は、不耕起栽培という農法があります。
不耕起栽培とは、「作物を栽培する際に通常行われる耕耘や整地の行程を省略し、作物の刈り株、わらなどの作物残渣を田畑の表面に残した状態で次の作物を栽培する方法」と定義されています。
しかし現在の衰えた農地ですぐに不耕起農法を採用しても成功しないでしょう。
まずは、壊した土を元の形に戻していく事が先決です。それは団粒構造が作られてきた過程を人工的に遡ることが必要です。

(微生物が食べ残した一部は、低分子の有機物(たとえばリグニン)を経て重合し、粘土と結合して複雑な高分子の有機物へと変化します。これが「腐植」です。粘土と重合した腐植は、お互いに強く結びついて、粘土を貼り合せる糊のような役目をします。こうして、粘土・腐植の集合体が発達して、「団粒」が形成されていきます。)

一番にすることは、天地返しを行い機械で転圧されて作られた耕盤を砕き、表層に溜まった肥料分を均質に混ぜ込みます。その後に堆肥(植物性の物)をすきこみ、団粒構造を作りながら耕運回数をじょじょに少なくしていくことが必要です。
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耕運が少なくなっていけば、残根の空隙なども残やすくなり、小動物、特にミミズが増えてきます。ミミズは1反当たり年間38~55トンもの土を耕し、徐々に耕運しなくても作物が元気に育つ団粒構造の土が再生されていきます。
この環境は雑草の生育にとっても良い環境でよほどの知恵がないと目的となる作物が収穫できません。これが日本で不耕起栽培が広がっていかない最大の理由と考えられます。
しかし、アメリカやブラジルなどでは過度な耕運で土壌の流失が止まらず砂漠化が進んできました。解決策として不耕起栽培が採用され、穀物栽培の生産を維持していく上で有力な農法になってきましたが、大量の除草剤を使うことが前提です。不耕起栽培の可能性を考えていく上でこの除草をどうするかが最大の課題になります。
日本のような豊かな環境では危機的な状況ではないように思われますが、現実には土の豊かさが年々失われて行き、堆肥の投入や、色々な微生物資材を投入しながら、化学肥料や農薬を多く使わないと、生産が維持できないところまで来ています。
次回は、不耕起栽培栽培の事例を紹介しながら可能性を探っていきます。

投稿者 hakosuka : 2013年05月25日 List   

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コメント

 農業は奥が深いです。有機・自然農法をベースに約2年間日本のいろんな地域で研修をしてきましたnaoです。でも、やればやるほど奥が深く、シンプルなのに深い。考えることが多い。作業は淡々としてるのに百姓は百姓と言われるだけあって他の業態のどんな経営者よりも仕事が多いような気がします。
 不耕起栽培・・・僕には理想のような響きです。しかし、これをすることでどれほど圃場内での作地面積が減るか・・・そして、不耕起だけが決して課題ではなく、生態系制御、育種、育苗、追肥のタイミング、地力窒素の変化を捉えその地での巻き時を定める。

 我々の脳は小中高で習った数学レベルで止まってる。何か1つの物が解決すればそれでいいみたいな思いが誰にでもあるし、早くほっとしたいみたいな・・・。しかし農業はそんなに単純な物では無く、例え1つの作物を作ってる百姓もその作方を徹底的に研究し、もっといい野菜や穀物、果樹を世に出そうと日々戦ってます。それは1つの事を考えながら同時に複合的な事もクリアーにして行き、トータルバランスを考えたものつくりです。これはいいか、悪いかだけの判断ではなく、時には肉を切らして骨を断つような流れを持ってきたりもします。完璧は無く、不完全なまま日常が進み、しかし、今ある環境を恵みと思い、この中で少しでも生態系を守り、低コスト、高収量、安全でおいしく、品質が高い食材を世に送りだす。これが我々の仕事です。あーーーごんたくん、のっぽさん・・・不耕起できるかなーーー?

 除草はQホーかカルチしかないだろう・・・?もっといい除草のしかたあれば・・・誰かおしえて・・・・・。部分的に・・・ぼうそうシートありかもしれないが・・・表層の生態系に影響が少しはありそう・・・。管理機での耕運除草は確実に砂漠化を促進してしまう。多くの自然農法農家はトラクターで年間4回は耕運してるので表層は硬い・・・。しかし、植物を連続して作り続けてるだけあり、土の内部はやわらかいが・・・生態系はそれほど豊かではなく・・・虫害に弱い。無肥料でこれなので、多くの有機質肥料を使う有機農家はなんだかの防除をしないともっとひどい事になる。だらだら書きすぎましたが・・・・。他にも誰か書いてくれないかなーーー。自然農法・有機農家・微生物資材研究者・・・おーーーい。誰もいないの?

投稿者 nao : 2014年5月12日 18:48

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