【進化していく農法について考える】シリーズ4~ぼかし肥料の基盤は自然への同化追求~ |
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2023年04月25日
【「食べる」と「健康」その本質に迫る】その7 植物は微生物との共生によって成長する
(画像はコチラからお借りしました)
これまで見てきたように、有機肥料を使った栽培と、化学肥料を使った栽培では、植物を栽培する環境の作り方が全く逆だということがわかってきました。
有機肥料は「自然状態の生育環境を”促進”させる」ことが目的で、化学肥料はスピード重視で人工物を利用して「”人工的”な生育環境をつくる」ことが大きな違い。
【「食べる」と「健康」その本質に迫る】その5 ~有機野菜はなぜ体に良いと言われるのか?より引用
これまで、植物の育成には、無機態窒素が有効であるため、化学肥料は窒素を投入することを目的に作られてきました。しかし、植物の育成を見てみると、アミノ酸のように植物の吸収量は少ないが、成長に大きく関係する成分が沢山あるのです。
植物の成長には、アミノ酸だけでなく、窒素、リン、ミネラルなど、様々な要素が必要不可欠となります。植物の成長の仕組みは、まだ研究途上で分かっていないことばかりなのです。最新の研究成果を紹介しながら考察していきたいと思います。
■2018年に発表された植物と微生物の共生関係「ライゾファジー(rhizophagy)」
まず最初に、最近の研究で明らかになった、植物と微生物の共生関係「ライゾファジー(Rhizophagy)」について、紹介します。
インドのバナーラス・ヒンドゥー大学とアメリカ地質調査所の科学者が含まれる、ラトガース大学が率いるチームの最近の調査によると、植物は栄養を吸収するため、盛んに細菌や真菌を取り込んでいることが分かりました。科学者はこの共生的な循環を「ライゾファジー(rhizophagy)」または「ルート・イーティング」と名付け、その結果を2018年9月に出版された「マイクロオーガニズム (Microorganisms)」で言及しています。
■植物は土壌の微生物と共生している
植物と微生物はどのように共生しているのかイラスト付きで解説している方のサイトから紹介します。
「植物の根は、実のところ、非常に不可思議な、一見すると無駄なことをしています。根から炭水化物やアミノ酸、有機酸、ビタミンなど貴重な栄養素を土壌に「浸出液」として出しているのです。しかし、これは根の周りに微生物をおびき寄せて、彼らを養い増やすためにしていることなのです。分かりやすく言うと、根のまわりでは微生物を栽培(培養)する畑(ファーム)を営なまれており、「浸出液」は畑に播く肥料のようなものです。これは、微生物を育て微生物の力によって根から吸収できる栄養物を増やし、根に運んできてもらうためだったのです。」
「微生物を食べて、あるいは栄養の一部を搾しぼり取って、微生物の中に保存されている栄養素を利用します。この時、取り込んだすべての微生物を食べてしまうのではなくて、一部だけです。根の体内で活きている微生物たちの一部は根からも栄養素をもらうようです。そして、面白いことに、根の根毛からこれらの微生物が排出され、排出された微生物は土壌で栄養を取り込んで太り、その後また、根に食べられます。ですから微生物は根の体内で生活する期間と、土壌に出て自由に動き回り(自由遊泳型の)栄養素を貯える期間を交互に経ていることになります。」
「人間が肥料を与えないでも維持されている自然界の植物の成長は、「根食サイクル」を含めた土壌微生物との相利共生の上に成り立っているとも言えます。最少のエネルギーで持続可能な植物の生育を効率よく行っていくためには、微生物の数や種類を増やして「根食サイクル」を活かしきる土壌微生物の喜ぶ環境(条件)を作り出してやる必要があります。」
(こちらのサイトより引用)
■微生物と共生することで、必要なときに必要な要素を吸収できる
ライゾファジー(根食サイクル)では、植物と微生物が共生することで、単一の栄養素だけでなく、様々な種類の栄養素をお互いに補いあっているということが発表されました。植物と微生物の共生は、有機栽培をしている人の間では昔から言われていたことが漸く科学的に示されました。
化学肥料はある特定の要素だけを植物に与えるという考えですが、実際は作物の種類や土地の微生物の種類、その年の気候、ウィルスなどによって、必要な要素は変化します。その絶妙なバランスは、様々な要因が複雑に絡み合っているため、解明できていません。つまり、現在の人間の力で管理することはできないのです。
自然の摂理について人類が解明できている領域は狭く、特に微生物の世界は、未知領域ばかりです。だからこそ、ある特定の要素だけにとらわれてしまうと、自然の摂理から逸脱したものを生み出してしまう危険性があります。
植物は単に土壌から栄養を一方的に吸収して成長するのではなく、周囲の微生物とお互いに与えたり、もらったりしながら成長するのが本来の関係性なのだと考えられます。
近年、人間の腸内環境も消化酵素で消化するだけでなく、微生物や菌類と共生することで、消化することが分かってきています。植物も人類も微生物や菌類との共生が生きていく上で不可欠な要素だといえるのではないでしょうか。
投稿者 suzu-kun : 2023年04月25日 TweetList
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