2022年08月10日

【ロシア発で世界の食糧が変わる】7~ロシア。中国をはじめとして新興勢力は世界の支配構造、脆弱なシステムを解体し、新たなシステムを構築しようとしている~

ロシアによるウクライナ侵攻を契機とした食糧危機により、食糧政策に力を入れてきた「新興勢力(ロシア、中国、をはじめとしたBRICs)」が世界の主導権を握っていこうとしています。

※画像はこちらからお借りしました

これまではロシアの農業政策について触れてきましたが、今回は新興勢力である中国やインドがどのような食糧政策を行ってきたのか、そして新興勢力がどのような世界を描こうとしているのかを見ていきたいと思います。

・参考:世界の勢力図の転換。ロシア・中国・BRICSが新たな経済圏を作り出しつつある

 

◯新興勢力が世界に食糧を供給している

世界の穀物生産量を見ると、ロシア、中国、インドが上位5位に入っています。

※グラフはこちらからお借りしました。

 

ウクライナ侵攻に伴って価格が高騰した小麦だけに限って見た場合、総務省が発表している「世界の統計(2022)」によると中国・インド・ロシアが上位3位を占めています。

※グラフはこちらからお借りしました。

今回の世界的な食糧危機により、食糧生産力が世界の主導権を握る上で重要だということが世界に示されました。
そして、強い影響力を持っている国のほとんどが新興勢力なのです。

 

◯世界最大の穀物輸出国である中国とロシアの繋がり

ロシアが2010年代に大きく農業政策を行い、農業輸出国にまで上り詰めてきました。

・参考:ロシアにおける国防政策は農業政策と一体だった

中国もまた2008年の食糧危機以降に、国家食糧備蓄政策として「3つの保護農家利益の保護、食糧市場安定の保護、国家食糧安全の保護)」を打ち出し、穀物生産量を10年の間に1.5倍にまで伸ばしてきています。

※グラフはこちらからお借りしました。

中国が食糧政策に力を入れた時期はプーチンが食糧政策に力を入れ始めた時期と重なっており、習近平は今年からロシアからの小麦輸入を拡大することを表明していることからも、両国の繋がりが強いことが想定されます。

中国はロシアだけでなくウクライナともつながっています。
ウクライナと中国は2012年より中国と農業開発プロジェクトを結んでおり、食糧分野において協力関係にあります。

今回の侵攻を食糧という軸で見るとは、背後に新興勢力の繋がりが見え隠れしています。

・参考:価格高騰だけではすまない、ロシアと中国が世界を食料危機に突き落とす

 

◯インドがITを基盤とした農業により新興勢力の覇権はより強まる

インドは1960年の食糧危機をきっかけに、農業の近代化(緑の改革)に舵を切りました。
1970年に食糧自給を実現しますが、種・農薬・肥料を買い続けなければならない苦行と、近代化による田んぼの荒廃に悩まされ続けました。

しかし、2014年に発足したモディ政権が緑の改革に続く新たな農業政策を推し進め、2016年に「電子国営農業市場(eNAM)」を設立したことにより、農業の様相が変化し始めています。

その他にも、2015年に土壌健康カード(SHC)を開始し、近代農業によって劣化した土壌の対策も行うなど、ITを通じた農業改革を進めていっています。

世界の名だたるIT企業が開発拠点に置くほどIT先進国であるインドにおいて、ITと農業がつながることによって、今後同国の農業は大きく転換していくことが予想され、新興勢力の食糧を基盤とした影響力はさらに強まっていくことになります。

※画像はこちらからお借りしました。

 

◯新興勢力はどのような世界を描こうとしているのか

※画像はこちらからお借りしました

今回の食糧危機は、欧州系の金融勢力や米国系の軍事・石油勢力によってつくられてきた「グローバリズム」と呼ばれる世界システムは脆弱であることが強く示されました。

ロシアや中国をはじめとした新興勢力は、    それらの世界の脆弱なシステムを解体し、新たなシステム(経済、農業、流通、貨幣システム)を構築しようとしているのかもしれません。

そのためにも、支配する勢力を解体するためにウクライナ侵攻により世界的な食糧危機を起こし、西欧諸国で首相などのトップ層が相次いで辞任している状況を生み出しています。

・参考:西欧諸国でトップ層が続々と退陣 世界の向かう先は? 

新興勢力はこれまでの支配構造、勢力の解体を行おうとしています。
次回は新興勢力が描こうとしている世界をもう少し具体的に見ていきます。

【参考】
世界食糧危機の中、なぜ中国には潤沢な食糧があるのか?
中国のしたたかな戦略 危機感薄い日本
農民の困窮とモディ政権の農業政策

インドの食料問題と食料政策
インドの農業・貿易政策の概要
小麦生産量世界有数のインド、輸出を一時停止「食糧安全保障に対処」

 

 

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2022年08月05日

【ロシア発で世界の食糧が変わる】7~世界の勢力図の転換。ロシア・中国・BRICSが新たな経済圏を作り出しつつある~

前回までの投稿では、ロシアは、もともと食糧輸入国で脆弱でしたが、2000年代のプーチン勢力になって以降、国内農業の保護と、企業に大規模投資によって、わずか20年間で、世界を代表する農業大国へと成長を遂げました。この並大抵では実現できないような大改革を遂げたロシアですが、その背後には、世界的な勢力争いの中で、制覇国としての実現するための大きな布石だったと思われます。

そこで今回の投稿では、世界の勢力図はどのようになっているのか?、そして、ロシアは現在、どのようなポジショニングを取っているのか?について見ていきたいと思います。

画像は、こちらからお借りしました。

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2022年08月03日

『食農ブームはどこに向かう』シリーズ6 改めて”農業に必要な能力”とは

「食農ブームはどこに向かう?」シリーズでは、

  1. 食農ブームって何?
  2. 家庭菜園や貸し農園の実態
  3. 食農ブームはいつから、なぜ起きた?
  4. 昔の農家と今の農ブーム何が違う?
  5. 若者の農業・仕事に対する意識の変化
  6. 「おてつだび」は、なぜ成功したのか?

を扱ってきましたが、今回は生産者側の視点から”農業に必要な能力”とは何か?を考えてみます。

誰にでもできるのが農業

農業をやるにあたって、なにか特殊能力が必要なわけではなく、誰にでもできるのが農業です。実際、江戸時代には人口の約85%が百姓でしたし、現代でもロシアでは国民の大半が週末に農業を営んでおり農産物流通量の8割がそうした兼業農家によって担われています。

 

特殊な能力は必要ありませんが、多種多様な生物の中で人類だけがいろんな作物を栽培していることからわかるように、人類が普遍的に持っている農業をするのに必要な能力があります。

 

農業に必要な能力

農業は、植物を観察しその生態を把握することなしにはできませんし、天候や病害虫に対しても、深い洞察力によって因果関係や構造を理解し先手を打って対策する能力が必要です。

このような「対象に対する同化力」「構造認識力」は、すっかり衰弱している現代人からみると特殊な能力のように感じてしまうかもしれませんが人類誰もが持っている能力であり、体格的にも身体能力的にも劣る人類が生き延び繁栄できたのもその能力のお陰です。

 

それでも、自然を対象にしている農業は、干ばつなどの異常気象や害虫の大量発生など、個々人の力だけではどうにもならないことが多々発生します。農業は村落共同体の相互扶助が不可欠で、平時であっても水の管理や獣害対策など集団の力なしには成立しません。さまざまな外圧を集団の課題として共認し、役割を決めて集団で課題を突破する「集団統合力」これも人類が普遍的にもっている能力で、農業に不可欠なものです。

 

農業には絶対的な正解など存在せず、失敗が付きものです。それでもあきらめずに、状況の変化に応じて常に追求し続けることが求められます。逆に、失敗してもあきらめずに追求すれば必ず成果は出ます。「あきらめない、負けない心」強いて言えば、これが必要な能力の一番根底かもしれません。

 

 

農業は能力育成に最適な職業

「同化力」「構造認識力」「集団統合力」は、本来人類誰もが持っている能力なのですが、現代人は都会で生活することで自然外圧と対峙する機会が減り、村落共同体を失い、人類本来の能力を失ってきました。

 

長年農業をやっている人は、天気予報以上に正確に天候予測ができますし、「植物に異変がある時は、植物の声が聞こえる」と言う程、自然に対する同化力が磨かれています。

現在でも地域の共同作業が多くあり、日常的にも地域で助け合いが残っている農業は、集団統合力を育成する場としても適しています。

 

農業で身につく力はそれだけではありません。現代、農業で稼ぐには良い作物を作るだけでは不十分で、その価値を広めるためのブランディング力=共認形成力を身につけることで市場経済の中で勝っていくことができます。どうしたらその能力が身につくのか、それは失敗してもあきらめず、成果が出るまで仲間と追求し続けることです。

 

農業に必要な特別な能力はありませんが、人類が本来持っている人類の人類たる能力を再生し、さらにはどんな仕事にも通用する共認形成力を身につけるのに、農業は最適な職業だと言えます。

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2022年08月01日

『有機農業をまるっと見る!!』シリーズ5:持続可能な農業とは?~植物の共生ネットワークを破壊する近代農法と有機農業の可能性

前回の記事では、無機物だらけであった地上に、バクテリアと植物が有機物を作り出し、すなわち「土(鉱物の粒である砂に、有機物が混ざったもの)」を作り出していった過程を見てきました。植物は、バクテリアたちがわずかに作り上げた有機物の循環ネットワークを家族度的に拡大し、自らの生きる場を自分たちで拡大していったのでした。

一方で、近代農法が普及して以降、もともと肥沃な土壌で覆われていた広大な大地がどんどん砂漠化していっています(豪州やアメリカなど各地で報告されています)。

元々、植物は自ら肥沃な土を増やしていく循環を作るわけですが、なぜ、砂漠化が進んでいるのでしょうか?

そして、持続可能な農業というのは可能なのでしょうか?

今回の記事は、そのメカニズムを掘り下げます。

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(画像はこちらからおかりしました。)

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2022年07月29日

【ロシア発で世界の食糧が変わる】6~ロシアにおける国防政策は農業政策と一体だった~

前回の記事でも紹介したように、1992年のソビエト連邦解体以降にロシアにおける農業は大きく転換してきました。

今回は、2000年にプーチンが大統領に赴任して以降、ロシアはどのような政策を展開して農業や畜産業は転換させ、世界でも有数農食糧輸出国にまで上り詰めてきたのかを見ていきたいと思います。

◯ソビエト連邦解体直後のロシア

画像はこちらからお借りしました。

 

ロシアは1990年のソ連時代には約25%を軍事費に掛けるほど国防に対して予算を割いており、世界でも有数の軍事力を持った国でした。
そして、「鉱石(=石油やガス)」の輸出など世界に対してエネルギーを供給する国でもあります。

ロシアは軍事力、エネルギーにおいて世界に対して優位に立っている国だといえます。
当時のロシアにとっての最大の弱点だったのは「食糧の自給率の低さ」です。

事実、当時のロシアは国防費と同等の予算を農業対策費に費やすほど、食糧の輸入に頼っている状態でした。
世界から食糧の輸出を絶たれてしまえば、ロシアは手も足も出ない状況にありました。

それは世界に対して軍事、エネルギーで優位に立っていても、国家の基盤である食糧は他国に握られており、支配されている状況とも言えます。
しかし、ソビエト連邦解体直後、国営化されていた農業が一気に衰退し、ロシア国内の食料事情はさらに悪化します。

 

◯プーチンは国防政策のひとつとして食糧政策に取り組んできた

現在でも、ロシアは国防費を主要国のなかで5番目に掛けている国であり、昨年度の軍事費は659億ドル(約9兆円)を突破し、それはロシアの国内総生産の4.1%に当たります。

そのことから、ロシアは「国防意識がとても高い国」だということが伺えます。

そのロシアはプーチンが初めて大統領に就任した2000年以降、20年という短い期間で一気に「世界有数の農業輸出国」に上り詰めます。

国防意識の高いロシアにとって、食糧自給率の改善、国内の農業・畜産業の再生は国防政策と一体だったのかもしれません。

 

◯国内生産者の保護、輸入大国から輸出大国への転換

プーチンは国内の農業・畜産業の保護、国内生産者の保護、輸出拡大の戦略を展開していきます。

プーチンは国内の畜産業を保護するために、「関税割当制度(国内の産業を保護するための制度)」の導入」のためにWTO加盟に動き出します。
(2012年にロシアはWTOの加盟を実現します。)

画像はこちらからお借りしました。

 

ロシアは加盟交渉中の2009年頃から「輸入関税の緩和を後退」させ、食肉輸入の抑制の動きを強めることで国内の畜産業の保護を強化していきました。
結果、1992年のソ連解体時には衰退傾向にあったロシア国内の畜産物の生産量は、2000年以降に生産量が回復し、2009年以降は急激に回復していっています。

グラフはこちらからお借りしました。

 

◯国内の供給量の安定させるための輸出制限

プーチンは国内の小麦の供給量を確保するために、何度も国外への輸出制限を行っています。

直近では2020年にコロナ禍による影響を理由に国内の小麦価格が高騰したため、輸出制限を行いました。
プーチンは国内の農業や畜産業を保護しながら、国内の食料価格の安定にも注意を払っています。
(2020年以前にもプーチンは国内の安定供給を理由に小麦の輸出制限を行っています。)

これまで上述してきたように、農業生産の安定、食料価格の安定を国防対策の一環として行っているプーチンの強い姿勢を感じます。

画像はこちらからお借りしました。

 

◯ウクライナ侵攻は食糧が制覇力の一つであることを世界に示した

先にも書いたように、ロシアにおける農業政策=食糧政策は国防と一体であると想定されます。

今回のロシアによるウクライナ侵攻は、世界における制覇力は「軍事力」、「エネルギー(石油・ガス)」、そして「食糧」であることを示しました。
プーチンが2000年以降に進めてきた農業政策、そしてウクライナ侵攻に伴う世界における食糧危機までの動きは、全てつながっているのかもしれません。

画像はこちらからお借りしました

 

ウクライナ侵攻は、一般的にNATOにウクライナが加盟を強く進めたことをきっかけとされていますが、プーチンの農業政策への力の入れようから鑑みると、ロシアにおける国防政策と一体となった食糧政策において、ウクライナは欠かせないものになっている可能性も想定されます。

では、世界有数の農業輸出国となり、制覇力を獲得したロシアはどのような支配権力と戦おうとしているのか、そして支配構造から脱却しようとしているのでしょうか。

次回は世界の支配構造に触れながら、ロシアの思惑に迫っていきたいと思います。

_______________________________________
【参考サイト】
プーチン時代以降のロシア市場の特徴
ロシアのウクライナ侵攻の背景を読み解く
プーチン新政権の経済政策
二兎を追うロシア農業 ~穀物輸出と畜産物生産・輸出の拡大~
WTOは食料危機を解決できるのか
「世界の軍事費、昨年初めて2兆ドル突破 ロシアと欧州も拡大」

 

 

 

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2022年07月28日

『食農ブームはどこに向かう』シリーズ6 「おてつたび」は、なぜ成功したか?

前回の記事で今の若い人の新しい就労意識として、仕事を「楽しく働きたい」と求めている人が増えているというくだりがありました。仕事は辛いもの、苦役、だから頑張る、だから報酬が得られるというのがこれまでの常識でしたが、それを根底から変える流れです。コロナ禍後の一過性の意識でしょうか?

あるいはこんな意識も見えてきています。
「自分のやりたいことができる会社」を選びたいというのは10年前をピークにどんどん減り続け、今ややりたい事が見つからない時代になってきています。一方で楽しく、一方で自分のやりたい事はない。彼らが向かった先はそれを見つける事だったのかもしれません。やりたい事の中身とは新しい人間関係の中の充足感や、都市から地方への自然志向へ向かっていっているようにも思います。

今回の記事は、以前るいネットでも少し紹介された「おてつたび」についてです。わずか4年で2万人という登録者数、かつてのボランティアに変わって、お金をいただきながら旅をして(役に立ち)楽しさを得ながら経験を積んでいく。彼らの求めているものはなんでしょうか?

記事から抜粋して紹介してみます。
東洋経済さんの記事の抜粋紹介です。

■「おてつたび」って何?
>コロナ禍の行動規制がゆるやかになり、旅行の機会が高まっている。そんな旅の新たな形として注目されているのが「おてつたび」だ。

旅行者は、旅先で助けを求める農家や漁業者、観光事業者などを手伝いながら、日本各地を回る。しかも手伝いをすることで、報酬を受け取れるというのだ。“自分で旅先を選ぶ”のではなく、“助けて欲しい人がいる土地を訪ね、お手伝いをする”という斬新さに、おてつたびの参加者(おてつびと)からは「日本の知らない土地を知ることができて楽しい」「第二の故郷ができた」との声が寄せられている。2018年7月にサービスを設立後、徐々にユーザー数は増え、現在は2万人。旅と手伝いを楽しんでいる。このおてつたび事業を立ち上げたのは、株式会社おてつたび代表取締役CEOの永岡里菜さん(31)だ。三重県の南東部にある、人口1万6000人ほどの尾鷲市(おわせし)で生まれた。

代表取締役CEOの永岡里菜さん

都市集中型の暮らしが進むなか、故郷である尾鷲市をはじめ地方地域では人口減少や産業衰退の課題が深刻化している。特に一次産業を営む事業者は、跡を継ぐ人や事業を手伝う人が途絶え、廃業するケースもある。
こうした“地域での人不足×地域の魅力を知って欲しい”を掛け合わせたのが、おてつたびだ。
全国の農家や漁業者など一次産業の従事者や、旅館やホテルなどのサービス業者に、おてつたびマッチングサイトに利用登録してもらい、人手が必要になったらサイト内で募集をかける。おてつだい募集日数は日帰りから1カ月程度まで設定でき、参加者の宿泊場所や報酬は、手伝いの募集者側が負担する。一方、参加者はおてつたびマッチングサイトで募集される手伝い情報から、自分が行きたい場所や手伝い内容などを見て、応募する

■なぜ「おてつたび」が拡がったか
>転機となったのはコロナ禍だった。海外への渡航が制限された2020年。それまで目的の旅先を「海外」としていた人が「国内」に目を向けるようになり、おてつたび参加者も一気に増えたという。「“灯台下暗し“といいますけれど。コロナ禍は日本の良さを気づかせてくれるきっかけになりました」

おてつたびの参加者と手伝い受け入れ事業者は、サービスを利用してどのように感じているのだろうか。
大学2年生の北見紗葵さん(20)は、過去4回おてつたびに参加したリピートユーザーだ。2021年11月に初めて参加してから、大学の長期休暇期間を活用して各地を楽しんでいる。これまでに旅館での配膳、接客、清掃などを経験し、このゴールデンウィーク中には愛媛県愛南町のみかん農家で、河内晩柑の収穫や選果、出荷作業を手伝った。

高校生のときから地域活動やボランティアなどに積極的に参加し、大学でも地域に関して学んでいる北見さん。おてつたびに魅了される理由をこう話す。

「観光も楽しいのですが、私はそれだけじゃ物足りなくて。おてつたびに参加すれば、地域の方と仲良くなれて、旅行では経験できないおもしろさを感じられる。大学生でお金がない自分にとって報酬をもらえることもありがたい。得た報酬で、訪れた地域で新たに体験したり、飲食したり。そうやってお金が使えるのはうれしいです」

当然、手伝いをする旅なので、楽しいことばかりではないのだろう。それでも北見さんは、「“お客さん”ではなく“仲間“として迎えてくれたからこそ頑張れたし、仲良くなれました。帰る故郷が増えたなと思っています」と話す。北見さんは今、自分の将来を見つめ直しているそうだ。「おてつたびに参加するまでは、大人になることに不安を感じていました。けれど、大人になっても新しいことができるんだって感じたし、魅力的な行動をしている人たちに出会えて衝撃を受けました。就職する前に、こういう世界や想いを知ることができたのは良かったなと思っています」

■これらの読んでみて改めてなぜ「おてつたび」が受け入れられたのかを考えてみます。

そこには前回の記事の最後のくだりがヒントになります。
>農業コンサルをやりたいという学生も、よくよく話を聞いてみると、地域づくりがやりたい、人を繋ぐ仕事がしたい、が本音のよう。農業にのめり込む学生たちも、農業を通した人とのつながりや、みんなで成果を出す達成感を求めているのかもしれません。

自然収束、人収束、地域収束と課題(仕事)収束が重なって、なおかつ受け入れ側の人不足や人を育てたいや、地域の閉塞感を打破したい等お互いの求めるものが重なってこういった新しい事業が生まれたのではないかと思うのです。
起業者の永岡さんはそこに目を付けたのだろうが、31歳の彼女自身がかつての起業家やベンチャーとも一味違い、単純に必要なもの通しを繋げたという「楽しい」をベースにして起業を始めたところも注目すべき点だろう。

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2022年07月26日

コラム 良い土ってどんな土? ~植物と微生物との共生関係~

土壌は作物の根が生活する場ですから、空気も水も必要で、土である個体と、空気である気体と、水である液体から出来ています。これを「個相」「気相」「液相」と呼びますが、個相50%、気相と液相が25%という割合の土壌が理想だと言われています。
このバランスを保つためには、土壌の「団粒化」が必要です。

団粒化というのは、粘土の粒子が集まってミミズの糞のように大きな粒子(0.5~5mm)になることです。団粒化土壌は雨が降ると水はすぐに地下に抜け、水が抜けた後に空気が動いていくので、水はけ、空気の流通がとてもよくなります。逆に、干ばつになると、団粒化された土壌では地下水や下層の水分が毛細管現象でどんどん蒸散しながら上昇してきます。さらに、団粒化された粒子の中にも薄い粘膜によって保たれていた水分が大量に含まれていますので、日ごろは水はけがよく、しかも保水力がよいから、少々の干ばつではこたえません。

 

植物と微生物との共生関係

土壌を作っている主な成分は、珪酸(約60~70%)、アルミナ(約10~20%)、鉄(約5~10%)、石灰(約2~20%)、苦土(約2%)、カリ(約1%)、腐植(約3~5%)で、それ以外にも1%以下の微量な元素(ミネラル)も含んでいます。そして、土壌の中には、バクテリア、菌類、藻類、原生動物、その他数多くの生物が棲んでおり、小さじ一杯の健康な土壌の中には、地球上の人間よりも多い数の微生物が棲んでいます。

団粒は「粘着性があるひも状態」を作る菌糸菌によって成長が促され、植物の根から出る液体炭素の滲出液や菌類が出す粘着物質によって団粒の壁が作られます。その壁の内側では再び炭素滲出液によって数多くの微生物が活動しており、ほとんどの団粒は植物の根と繋がっています。つまり、健康な土壌は、微生物の働きがあってはじめて出来上がるのです。

植物は光合成によって、葉緑体の中に糖質を生成し、それら化合物を細胞や構造のために使ったり、生命エネルギーの為に使いますが、それだけでなく大量の化合物を「液体炭素」として土壌に放出しています。その量は、光合成によって固定させた炭素の20~40%にも及びます。

バクテリアや菌類は、炭素を含むおいしい根滲出液を食べるために現れますが、もっとたくさんの量を得るために、今度は植物が必要とする窒素やリン、ミネラル栄養素、植物ホルモンなどを植物に供給することで、植物と微生物が共生関係を作っています。

両者の関係は、お互いに必要なものを供給しあうことで成立しており、唯一必要な追加エネルギーは太陽光のみなのです。

 

有機農業の本質は、生物の多様性を壊さないこと

農薬や化学肥料を使う近代農法の問題性は、土壌生物を死滅させ、植物と微生物の共生関係を破壊してしまうことにありますが、有機農法なら問題がない、というわけではありません。
日本の「有機認証制度」は、禁止農薬や化学肥料を使わないこと、遺伝子組換え技術を使用しないこと、などを認証の条件にしていますが、禁止事項や罰則ばかりで、持続可能な農業はどうやったら実現するのか、どうしたら植物が健康になるのか、といった本質を捉えてはいません。

例えば、有機農法では除草剤を使用できないため、土を耕すことによって雑草の繁殖を防いでいますが、耕作によって土壌をかき回し空気にさらすことによって土壌に含まれる炭素が酸化します。さらに、植物の生長に重要な微生物や菌根菌を破壊してしまいます。

有機農業の本質は、土壌そしてさらには生物の多様性を維持することにあり、微生物や生物が多様であればあるほど、植物は健康に育ち、気候変動や病気に対する抵抗力と回復力が高くなります。有機認証制度が使用してはいけない農薬や化学肥料を規制しているのもそのためのひとつにすぎません。

生物の多様性を作るためには、耕作を最小限にとどめ、土壌中の微生物やミミズ、ヤスデ、クモなどが生育しやすい環境を作ってあげる必要があります。

単一作物ばかりを栽培していると環境が均一化してしまい、害虫や病気を招くことになりますので、輪作をすることで生物の多様性を助け、土壌酵素の活動を高めることが重要です。特に、マメ科植物がを輪作に含めるとより有効です。
また、動物の肥しは土壌に生物多様性をもたらす炭素と生きた微生物の両方を豊富に含みますので、家畜を一緒に飼育することも、土壌有機物レベルを改良するのに効果的です。

重要なことは、虫類や菌類は植物の病気の真の原因ではなく、それらは不適切に栽培された作物を侵食するだけだということです。不適切に育てられている作物を指摘してくれる病害虫は、農業を営むうえでの「自然」の先生であり、多種多様な虫類や菌類は農業生産にとって不可欠なものなのです。

 

 

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2022年07月21日

【ロシア発で世界の食糧が変わる】5~世界最大の小麦輸出国にのし上がったロシアの農業戦略~

これまでの投稿では、今回のロシア・ウクライナ侵攻による食糧危機・国家破産の実態について詳しく見てきました。これからの投稿では、このような世界の食糧事情に多大な影響を与えている当事者であるロシアに焦点を絞り、農業政策の変遷・考え方を読み解くとともに、彼らは今後どのような構想を描いているのかを予測していきたいと思います。

画像は、こちらからお借りしました。

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2022年07月21日

『食農ブームはどこに向かう』シリーズ5 若者の農業・仕事に対する意識の変化

前回は、昔の農業と今の食農ブームの違いを見てきました。農業に興味を持つ若者が増えたり、家庭菜園の契約数が伸びていますが、この潮流はどこに向かっていくのでしょうか。

本当の意味での「農の再生」には何が必要なのか。シリーズ5では、就農の実態・若者の仕事に対する意識から、これからの農業のあり方を深めてみたいと思います。

新規就農者は増えているけど、実態は?

厚生労働省の調査によると、2010年の「農業就業人口」は約260万人。その後は、毎年10~50万人ほど減り続け、2019年には約168万人にまで減少しています。

しかし、49歳以下の新規就農者数の内訳を見てみると、新たな可能性が見えてきます。
実家を継いで農業をやる「新規自営農業就農者」は減少傾向にありますが、農業法人に就職する「新規雇用就農者」と新たに農業経営を開始する「新規参入者」が増加傾向に。
農業法人数の増加と、新規参入者への支援が後押しとなり、今後就農者が増えていくことも予想されます。

※画像はこちらからお借りしました。

 

国が新規就農に対する支援を強化し始めたのは、2012年から。
次世代を担う農業者を志す人に対し、就農前の研修を後押しする資金(2年以内)及び就農直後の経営確立を支援する資金(3年以内)を交付します。原則49歳以下が対象です。

・就農準備資金
都道府県が認める道府県の農業大学校等の研修機関等で研修を受ける就農希望者に、最長2年間、月12.5万円(年間最大150万円)を交付。

・経営開始金
農業経営を始めてから経営が安定するまでの最大3年間、月12.5万円(年間150万円)を定額交付。

 

この制度を利用して農業を始める人もいますが、実は、新規就農者の35%が離農しているという現実も
最初の2・3年は補助金や研修でやってこれたが、それがなくなると厳しいという声も。離農する理由として、思ったより稼げない、業務内容が思っていたのと違うなどが多く挙げられています。
ということは、「農業をしたい」の奥には、ただ農作業が好き・自然と触れ合いたいという気持ち以上に、もっと深い欠乏があるようにも考えられます。

 

学生たちの仕事に対する意識

そもそも、今の若い世代は「仕事」や「働くこと」に対して、何を求めているのでしょうか?

「マイナビ 2023年卒大学生就職意識調査」によると、2023年卒の大学生・大学院生に自身の就職観を聞いたところ、「楽しく働きたい」が37.6%(前年比2.8pt増)と最多で3年ぶりに増加

※画像はこちらからお借りしました。

さらに、就職活動において企業を選択する場合のポイントは「安定している」が43.9%(前年比1.1pt増)で最多。

「企業に安定性を感じるポイント」の上位3位は、①福利厚生が充実している②安心して働ける環境である③売上高。

制度や業績など、 “働く環境として安心できること”が、企業を選ぶ上でも重視されています。コロナ禍を経て、安定志向がますます強くなっているように感じます。

※画像はこちらからお借りしました。

さらに、大手企業志向は48.5%(前年比2.6pt減)となり、21年卒調査で過去最高値となってから2年連続で減少。対する「中堅・中小志向」は前年比2.9pt増の47.8%。やりがいのある仕事がしたい、実現できるなら大手企業にこだわらない、という傾向が読み取れます。

中小企業を選ぶ学生が増加している実態は、一見安定志向と矛盾するようにも見えます。
しかし、この結果から見えてくるのは、大手企業で言われたことをただこなすのではなく、自らが当事者として実現していきたいという意識の芽生えとも言えるのではないでしょうか。
そうなると、楽しく働きたいの中身も、「自分のやりたいことをやる」から、「仲間と一緒に働きたい・仕事そのもの(お客様に応えること)が楽しい」になってきているようにも考えられますね。

 

■農業の再生⇒集団の再生

先日、農業系の学生団体に所属する学生さんと話す機会がありました。長期休みには全国を飛び回りいろんな農家で手伝いをして、日々農業を追求している子たち。
彼らに「この先も農業を仕事にしたいと思うか?」と聞いたところ、やりたいと答えた子は1割程度。食や農に関わることは興味があるけど、農業を仕事としてやっていくかはまた別だと言います。

農業コンサルをやりたいという学生も、よくよく話を聞いてみると、地域づくりがやりたい、人を繋ぐ仕事がしたい、が本音のよう。農業にのめり込む学生たちも、農業を通した人とのつながりや、みんなで成果を出す達成感を求めているのかもしれません。

今後の「農の再生」は、こういった課題を通じた仲間との繋がり⇒集団の再生にかかっているのではないでしょうか。そういう意味で、近年、一般法人の農業参入が急増していることは大きな可能性になりそうです。

※画像はこちらからお借りしました。

食農ブームと新たな農業法人の登場で、新規就農者が増加・定着していくのか?今後も注目していきたいと思います!

 

<参考>

令和元年新規就農者調査結果
https://www.maff.go.jp/j/tokei/kekka_gaiyou/sinki/r1/index.html#:~:text=%E4%BB%A4%E5%92%8C%E5%85%83%E5%B9%B4%E3%81%AE,%E4%BA%BA%E3%81%A8%E3%81%AA%E3%81%A3%E3%81%A6%E3%81%84%E3%82%8B%E3%80%82

日本の農業人口はどう推移している? 農業現場へ与える影響とは
https://minorasu.basf.co.jp/80076#:~:text=%E8%BE%B2%E6%9E%97%E6%B0%B4%E7%94%A3%E8%80%85%E3%81%AE%E7%99%BA%E8%A1%A8,%E3%81%AB%E3%81%BE%E3%81%A7%E6%B8%9B%E5%B0%91%E3%81%97%E3%81%BE%E3%81%97%E3%81%9F%E3%80%82&text=%E8%BE%B2%E6%A5%AD%E5%B0%B1%E6%A5%AD%E4%BA%BA%E5%8F%A3%E3%81%AE%E3%81%86%E3%81%A1,140%E4%B8%87%E4%BA%BA%E3%81%A7%E3%81%97%E3%81%9F%E3%80%82

日本の農業人口の現状
https://agrijob.jp/contents/myagri/agriculture-population

就農準備資金・経営開始資金(農業次世代人材投資資金)
https://www.maff.go.jp/j/new_farmer/n_syunou/roudou.html

新規就農者の35%が離農する現実──未来の農業の担い手を定着させる方法とは?
https://smartagri-jp.com/farmer/470

「マイナビ 2023年卒大学生就職意識調査」を発表
https://www.mynavi.jp/news/2022/04/post_33952.html

法人経営体は前年比3.1%増-31年農業構造動態調査
https://www.jacom.or.jp/nousei/news/2019/07/190702-38435.php

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posted by k-haruka at : 2022年07月21日 | コメント (0件) | トラックバック (0) List   

2022年07月16日

『有機農業をまるっと見る!!』シリーズ4:持続可能な農業とは?~植物の誕生からその生命原理を探る

1840年代、初めてヨーロッパ人がオーストラリアに入植した際。そこは、どこもかしこも草花に覆われていた。37度を超え、全く雨の降らない夏に、一面に植物が繁殖していた。しかし近代農業が普及して以降、土は枯れ、今その場所は砂漠になっている。

 

アメリカやヨーロッパでは、干ばつの被害が多発している。しかし、同じ干ばつの時期に、生育不良をおこしている小麦畑のすぐ隣で、有機栽培している小麦畑が青々とし、いつも通りの収獲が出来ているという報告もある。

 

世界人口が増え続け、それを理由に人間は食糧増産を続けていたが、ここにきて持続可能性が叫ばれるようになった。しかし、本当に持続可能な農業とはどういうものなのか?有機農業は持続可能なのか?

今回の記事からは、持続可能な農業を掘り下げたいと思います。

初回の本記事では、植物の生態について追求してみます。

 

■ 土とはなにか?

土とは、「砂や泥に有機物が混じってできたもの」です。

土と似たものに「砂」がありますが、砂は、岩石が小さく砕かれたもので、すなわち有機物を含まない、無機物の粒ということになります。

 

有機物とは、植物・動物・微生物の排泄物や死骸からなるもので、化学的に言うと炭素と酸素の結合物を中心に構成される物質(糖とかアミノ酸)です。例えば植物の細胞は、細胞壁でおおわれていますが、この細胞壁は、炭素・水素・酸素からできており、有機物です。

 

また、土壌学的には、「植物が生育している、もしくは生育可能である」ことが土の定義だそうです。

≪参考≫

「土」と「砂」の違いとは?分かりやすく解釈 | 言葉の違いが分かる読み物 (meaning-difference.com)

土のスペシャリストに聞く!そもそも土って何ですか? – 静岡時代 (shizuokajidai.or.jp)

 

 

■ 土はどうやってできたのか?

約46億年前,誕生して間もない地球の表面は,岩石が溶けたマグマの海でわれていました。それから数億年後,地球の温度が下がると,マグマは冷え固まり,大気中の水蒸気が雨となって降り注いで海をつくったのです。

 

最初の生命が誕生したのは、38億年前の海の中とされています。最初は単細胞生物から始まり、徐々に多細胞の動物が生まれました。5.5億年前の「カンブリア紀」には爆発的に生命が進化したと言われています。しかし、それも全て海の中で起こったことで、地上に生物が進出したのはずっと後になってからだったのです。

4.3憶~3.5憶年前にかけて、植物が地上に進出したと言われています。ここまでの流れを分かりやすくまとめてくれている記事「地球環境の主役~植物の世界を理解する~④植物の地球開拓史その1 酸素に覆われた地球づくり – 地球と気象・地震を考える (sizen-kankyo.com)」より引用します。

 

・光合成細菌の出現が約35億年前です。
(光合成細菌は、光を利用して有機物を合成しますが、酸素は放出しません。)

ラン藻(シアノバクテリア)の出現が27億年前です。
(ラン藻類は、光合成で有機物を合成する際、酸素を放出します。)

・25億年前から、酸素の大気への放出が始まる。
(ラン藻類が発生させる酸素は、最初は岩石成分に取り込まれ、鉄などと化合しますが、25億年前位になると、取り込む岩石が無くなり、海中の酸素濃度が上昇し、大気中へ放出され出します。)

海中の酸素濃度が上昇し、酸素優位の海中環境に適応した真核生物の出現15億年前。
・植物真核生物が、真核藻類です。真核藻類は、現在の海草・のり・コンブをイメージしたら良いです。(この海中植物・真核藻類を餌として、海で動物が繁茂し、進化する。)
・真核藻類が繁殖することで、光合成・酸素放出が一層高まり、大気中の酸素濃度はズンズン高まって行きます。

・大気中の酸素濃度が高まる事で、地球大気の最上層にオゾン層が形成され、地表にまで達する紫外線が大幅に減少する。
(紫外線殺菌装置があるように、紫外線は生命にとって猛毒です。オゾン層で紫外線がカットされる段階で、初めて、地表が生命の環境として開かれました。)

4億年前に、光合成生物・植物が地上進出します。
(最初に、地上進出した植物はコケ類といわれています。)
・地上進出植物は、コケ類、シダ類(石炭紀の巨大なリンボク)、裸子植物、被子植物と主流が入れ替わって行きます。
・この植物側の主役交代を前提として、地上動物の主役交代が行われます。

 

35億年前のシノアバクテリア誕生以前、地球上には、無機物しか存在しなかったと考えられます。それ以前の大気中には水蒸気(H2O)、二酸化炭素(CO2)と窒素(N2)があり、地表面にはマグマが固まってできた岩石、そしてそれが砕かれてできた「砂」。海が出来てからもしばらくは、水中も無機物しかなかったのでした。

 

最初の生物は、細菌(バクテリア)で、まだ核(DNAなどを含む)を持たない原核生物でした。その中から、光合成をするシノアバクテリアが誕生。シノアバクテリアは、水中のCO2から、有機物(糖やアミノ酸など、CHOを中心とする合成物)を生み出します

 

原子植物はまだ自ら光合成することができず、シノアバクテリアと共生関係をつくることで水中のCO2・H2O・N2から有機物を合成したりエネルギーにしてきました。後にシノアバクテリアを細胞内にとりこんで葉緑体となったという説が有力です。

≪参考≫

原始真核細胞にシアノバクテリアが共生したものが葉緑体ですか? | みんなのひろば | 日本植物生理学会 (jspp.org)

植物とバクテリア:野生の共生関係を探る | 沖縄科学技術大学院大学 OIST

 

そう考えると、「砂」しかなかった、太古の地上に、有機物のまざった「土」を作ったのは、シノアバクテリアとそれに続く植物自身であったことが分かります。光合成によってつくった有機物を砂と混ぜ、土を作ったのです。

上記の土の定義で説明した通り、植物は「土」が無いと育ちませんが、その「土」自体を、自ら作り出しているという事になります。つまり、自らの生きる場を自ら作っているのです。

 

■根っこと土と微生物の関係

ここまでは、光合成を中心に見てきましたが、土と植物の関係をもう少し詳しく見ていきます。

 

「土が変わるとお腹も変わる:吉田太郎」より引用

46億年の地球史のうち、4億年前までは陸上は赤茶けた荒涼とした大地で、文字どおり草一本もなかった。カンブリア紀の三葉虫やアノマロカリス、御ルドビス期の頭足類といった、進化史の話題をさらう役者たちはいずれも海中が舞台で陸上には岩しかなかった。

そんな波打ち際に波にさらわれて打ち上げられた藻類が何とか生き延びようとしたところから生命の陸上への進出は始まる。草は無くても、陸上のシルトや粘土の中では、バクテリア、シノアバクテリア、そして両者の特徴を併せもつ真菌がすでに棲息していた。生命の遺体を分解することでエネルギーを確保する菌類もいた。岩石を分解してミネラルを獲得し、栄養素を循環させる。相互利益の関係性を微生物たちはすでに築いていた。「土壌の食物網」は、陸上植物が進化した時には既に機能していた。

そして、植物と微生物とのパートナーシップは、その後の菌根菌の進化によってさらに複雑化して見返りのあるものとなってゆく

根は土壌から触接水を吸い上げているが、土壌中の真菌、菌根菌からも水を受け取っている。健全な土壌、1立方メートル内に棲息する菌類の菌糸は2.5万キロメートルもあり、その延べ表面積は、根毛を含めら植物の根系の1000倍に及ぶ。

 

さらに、植物は光合成から得られた有機物(糖類)の20~50%を根から土中に放出している。これを「滲出液(液体カーボン)」という。

 

再び引用です。

光合成で得られた液体カーボン(滲出液)は、根からまず菌根菌に移動する。菌根菌自身も生きる上で液体カーボンを利用するが、禁止は微生物群にも液体カーボンを提供する。菌糸の先端には、活発な最近のコロニーが合って、それらが酵素を生産して、植物が必要なミネラルを土中鉱物から可溶化している。その可溶化したミネラルを植物が吸収し、更に光合成を活性化→滲出液を放出という循環が生まれている

 

植物はただ受動的に待っているだけではなく、自分が必要とするミネラルを提供してもらうために必要なバクテリアや真菌を引き寄せよせるため、特別にデザインされた滲出液を分泌したりその生産量を増減させる。亜鉛が必要であれば、それを得る上で必要な微生物種だけを活性化している。

 

 

 

この様に、無機物だらけの荒涼とした地表に、原初の微生物たちは、鉱物を分解して有機物を循環させるシステムを作っており、植物は、そのネットワークに入り込むことで繁殖した。植物の光合成と、そこで作った有機物を土中に放出する「滲出液」によって、さらに微生物たちも活性化し、「土」が増える。そうして地上の有機物循環ネットワークが拡大していったのである。(そう考えると、植物の生育の鍵は、肥料(窒素:N2)よりも炭素にあると考える方が良いだろう)。

 

そして、この滲出液として放出される炭素は、土中の炭素量全体の実に1/3を占めるというデータもあり、まさに土中の有機物の主役と言ってよいのです。さらに、この滲出液が土の団粒構造を作る際の接着剤にもなっていて、微生物が住みやすい環境や、干ばつ時にも保水する機能も果たしています。

 

≪参考≫「土が変わるとお腹も変わる:吉田太郎」

■植物の生存原理に即せば、植物は自ら土壌環境を整えていくはず

 

上記のように、植物は、無機物だらけの世界に、微生物との共生関係を構築しながら、植物自らが育つための環境「土」を作り出し、反映していったことがわかりました

そう考えると、本来植物は、肥料をやったり、耕したりしなくても、自らどんどん繁殖していけるシステムを持っているのです。

 

私たちは農業をする際、「畑から持ち出した収穫物分は、畑に補わなければならない」というような発想で、肥料やら堆肥やらを投入しますが、それが本当に必要なのか疑問が湧いてきます。

実際、近代以降は、土中に肥料と農薬を大量に投入してきましたが、それによって、元々肥沃で合った大地が、砂漠(=砂)になってしまっていることからも、逆に土のなかの有機物は減り続けているということになります

 

 

次回以降の記事で、このあたりの関係を整理して「持続可能な農業とは?」というところを掘り下げていきたいとおもいます。

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posted by o-yasu at : 2022年07月16日 | コメント (3件) | トラックバック (0) List