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2022年12月25日
【「食べる」と「健康」その本質に迫る】その3~生物はいつから「食べる」ことを始めたのか?
前回の記事では、土壌微生物に注目しながら、「食べる」という行為について考察しました。
土壌生物や動物の「食べる」という行為は、自分たちが成長したり繁殖するだけでなく、周囲の生物との共存のための環境を作る意味を持っているようです。
今回の記事では、もう少し時代をさかのぼり、「食べる」という行為がいつ、どこから始まったのかを見ていきたいと思います。
そこから、食べることの意味を深堀りします。
■肛門のない原生生物~消化器官の歴史
人類の腸の起源をたどってみたいとおもいますが、ミミズは単純に形が腸に似ているというところからまずミミズとの共通祖先を探りました。
ミミズのような「環形動物」と呼ばれる動物は、人類へ続く進化系統樹とは別系統で進化してはいるのですが、その共通祖先は、口と肛門を持ち、管状の消化器官を生み出したと考えられています。その理由は、昆虫にしろ、哺乳類にしろ、環形動物にしろ、その後に枝分かれした動物がすべて口と肛門を持つこと(体腔動物という)。さらにそれより前に進化系統樹をさかのぼると、イソギンチャクやサンゴやくらげなどの刺胞動物門、海綿に代表される海綿動物門、クシクラゲなどの有櫛動物門などがみられるが、これらには、肛門がない(無体腔動物という)。というところからです。(ただし現在の分子系統学による進化系統樹では、腔体動物か、無腔体動物化は、進化系統に関係がないとされ、ミミズとの枝分かれ種に無腔体動物がいます。それは進化過程で退化したということらしいです。ただ、人類に続く系統樹とミミズの共有祖先は腔体動物であったことは共通見解です。)動物は、進化系統樹のかなり早い段階で、肛門を作り、口と肛門を繋ぐ管状の消化器官を作ったようです。
参考:僕たちの祖先をめぐる15億年の旅|科学バー (kagakubar.com))
僕たちの祖先をめぐる15億年の旅|科学バー (kagakubar.com)
ミミズと人類の共通祖先は、米粒ほどの体で泥の上をはい回っており、その化石は、およそ5億5千年前の地層で見つかったそう。この動物は、海底のヘドロの上に住んでいたようです。参考:人類の最古の祖先は「ミミズの親玉」:進化の源流にあったもの! (BBC-Science & Environment, March 24, 2020) – ヒロシのWorld NEWS (hatenablog.com))
■「他の生物から栄養をもらう」という行為の起源
無腔体動物がどのように消化し、吸収し、排泄しているかは気になるところですが、一旦、さらに進化系統樹をさかのぼってみたいと思います。
遡っていくと、植物と動物が枝別れしたところに行きつきます。
ここで注目されるのは、生きていくための養分を自分で作り出すか、他の生き物から得るかの違いです。植物のようにほかの生き物から養分を得て生きるものを「独立栄養」、動物のように他から得るものを「従属栄養」という風に言い、進化系統樹上では、ここが大きな分かれ目となっています。
ここでちょっと注目したいのは、「菌類」は、従属栄養生物ということです。菌類には、キノコや、地衣類が含まれるが、彼らは木などから栄養をもらって生きているんですね。植物とは全く違うそうです。
ちなみに、セルロースやリグニンなど、陸上植物の細胞を構成する成分を分解できる菌類が発達したのは、植物が進化してからしばらくたった後で、分解されずにたまった植物が石炭になったとされています。菌類学者の小川真さんによると、この頃から現在の森林で見られるような、倒木の腐った材の上に次世代の稚苗が育つ倒木更新が可能になったそう。菌類の主要な進化は、シルル紀からデボン紀にかけて植物が陸上に進出したあとのことだと考えられるとのことです。
参考:僕たちの祖先をめぐる15億年の旅|科学バー (kagakubar.com)
(僕たちの祖先をめぐる15億年の旅|科学バー (kagakubar.com))
アメーバやゾウリムシのような単細胞生物の中にも従属栄養生物がいます。これらの原生生物が、系統樹の最初のほうに現れたと思われ、単細胞生物が集まって、カイメンなどのような多細胞生物が生まれていきます。単細胞生物がどのように栄養を吸収するのか、その後多細胞生物に進化したときにどう変化したのも興味深いところです。
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さて、今回は、「食べる」の起源を探るために、生物の進化系統樹に沿って、進化史を見てきました。
まだまだ分からないことだらけですが、「食べる」という行為の起源はおぼろげに見えてきたように思います。
菌類や単細胞生物の栄養吸収を「食べる」と捉えるかどうかは、微妙なところですが、少なくとも、食べるの起源は、他の生物から栄養をもらうというところにあるようです。
で、より「食べる」のイメージに近いところでは、「消化」という機能の発達があり、腔体動物が肛門を形成して以降に発達したことがわかりました。無腔体動物と腔体動物の代謝の違いを見ていくことで、「消化」とは何なのかがより鮮明に見えてくるような気がしています。
次回は、海綿やクラゲのような無腔体動物は、どのようにして「食べて」「消化して」いるのかを見てみたいとおもいます。
≪次回以降の追求の視点≫
1)単細胞生物や無腔体動物は、どのように栄養吸収している?→肛門ができたこと(消化器官を持つこと)による効果は?
2)植物と動物(菌類含む)の共生関係に、細菌(腸内細菌)はどのような働きをしているのか?
植物(独立栄養生物)は、土中の菌類(従属栄養生物)との共生関係を作っている。肛門を持つ動物は、前回の記事でも見たように、その消化器官の中に大量の細菌類を共生することによって、食物を分解して、吸収したり排泄したりしている。その排泄物はまた、周辺の動植物が生育するための環境を作っている。細菌との共生によって、植物・菌類・動物の共生関係はどのように変化したのか?無腔体動物も細菌と共生していた?
投稿者 o-yasu : 2022年12月25日 TweetList
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