2022年03月03日

『農業と政治』シリーズ12:柳田國男の志をこれからの農政に活かす

『農業と政治』シリーズ8:柳田國男が見た日本の農業
『農業と政治』シリーズ10:柳田國男が指摘する農業の問題構造

 

明治時代、彼が志した農政改革の中心にあり続けた思考は、「真に支援すべき対象は誰か」ということ。

それは、現在深刻な後継者不足に陥っている日本農業の再生を考える上で大変示唆に富んだものです。

彼の志を汲み取った、これから求められる農政とは。

今回のブログは、次代の農業政策にも踏み込んだ内容でお届けしたいと思います。

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2022年02月25日

【世界の食と農】第10回 中国~市場原理に飲まれる農業、その矛先は「日本」。~

前回の投稿では、中国の農業の実態について押さえていきました。

【世界の食と農】第9回 中国~「量から質へ」舵を切った、農業大国~

国民の20%以上(3億)もの農家が占めているにもかかわらず、その多くが零細な産業に陥ってしまっている中国。そして、これを何とか解決しようと、農家を組織化して、規模拡大によって「量から質へ」の転換を図っていこうとしている試行錯誤について見てきました。

画像は、こちらからお借りしました。

しかし現実的には、改善の見通しが立たない中国が、次の策として進めているのが『企業の農業参入』です。
今回は、この可能性について見ていきたいと思います。

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2022年02月25日

食糧問題シリーズ10(最終回):「自分たちの生きる場は、自分たちで作る」からこそ農業に活力が生まれる

食糧問題シリーズも今回で最終回です。今回はこれまでの復習と、そこから見えてくるこれからの農業の姿を見ていきたいと思います。

まずこの食糧問題シリーズ第1回目(リンク)では、世界の飢餓マップをおさえ、世界全体でみれば、けして食料が足りていないわけではないという事実と、局地的に飢餓が起こる原因は「生産と流通に問題があるのではないか?」という仮説を出しました。

そして第2回目(リンク)食料で国を支配するという、衝撃的な「白人発の市場経済を使った支配構造」を捉えました!

では、この支配構造をけん引しているのはいったい誰なのでしょうか?

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2022年02月22日

『農業と政治』シリーズ11 日本農業の真価は「森林」と「水田」にある

山下一仁氏の「日本農業は世界に勝てる」の著書からの紹介です。既にるいネットに2投稿入れていますので3作目です。

参考に下記も読んでみて下さい。

日本の農業の特徴(1)日本の農業は水田、それを支える水資源、さらに支える高い農業技術。ベースには世界に稀に見る肥沃度の高い土

日本の農業の特徴(2) 水資源が豊富というのは農業に最適であるという証

**********************

東アジアの「水田」は「土壌流出」「地下水枯渇」「塩害」「連鎖障害」などの問題をきわめて上手に解決してきた。
水田は水の働きによって森林からの養分を導入するとともに、病原菌や塩分を洗い流すことによって、窒素などの地下水への流亡、連鎖障害、塩害を防ぐ。つまり、「水に流し」てきたのである。中国の長江流域では7000年もの間、米作農業が連鎖障害もなく毎年継続てきたのもこのためである。連鎖障害がないことは、畑地とは異なる水田の大きな特徴である。水田では、繰り返し米を作れるのである。また、水田は雨水を溜め表土を水で覆うことによって、雨や風による土壌流出を防ぐ。日本の米作農業は、水資源を増加させる農業である。アメリカ農業と異なり、日本農業の地下水利用は1%にすぎない。

これとは逆のことが行われたのがエジプトのアスワンダムである。アスワンダムは貯水によって工業化を進めると共に、広大な砂漠を灌漑することを目的とした。しかし、ダムの完成により、洪水が防止された一方で、ナイルの賜物と言われた腐植土は下流に流れること無くダムに沈殿し、洪水によって流されていた塩分も表土に留まることになってしまった。同じく洪水が押し流してくれていた、カタツムリが灌漑水路で繁殖し、それを宿主とする寄生虫病の一種である住血吸虫病が人々の間に蔓延することになった。これはいわば「水に流す」ことを忘れた失敗だ。中国でも三峡ダムの開発によって、充血吸病が拡大している。

こうしてみれば、水田による米作こそ、世界最高の「持続的農業」であることが理解されよう。その水田が日本の農地の半分以上を占めることは、日本の農業が他の国の農業と比べ、はるかに持続性が高いことを示している。

日本やモンスーン・アジアで稲作が栄えたのも「水」と関係がある。モンスーンアジアでは、稲作が行われる夏季に降水量が集中する。ヨーロッパでは夏の降水量は稲作を行うには足りないが、年間平均して雨が降るので雨水を利用した畑作などが中心となった。しかも連作障害があるため、作目と耕作地をローテーションする「三輔式農業」が行われた。

しかし、ヨーロッパの人もできれば稲作を行いたかったはずである。日本では1粒の小麦は45倍にしかならないのに1粒の米は125倍になる。1粒からの生産力という点では小麦をはるかにしのぐ。しかも、連作障害がないので毎年米を作ることができる。モンスーン・アジア地域が世界の14%の面積にもかかわらず、世界人口の約6割を養っているのは米の力である。

アメリカやヨーロッパでは窒素肥料投入による地下水汚染が大きな問題となっている。人間を含む動物が土壌中の硝酸菌によって変換された硝酸態窒素を大量に摂取すると、血液中のヘモグロビンを酸化して酸素欠乏症、チアノーゼを引き起こす可能性がある。EUではヘモグロビンの酸化により、血液が酸素を運べなくなって生後6ヶ月位の乳児が死亡するというブルーベビー現象が生じている。しかし、同じように農業を行っても、地下水中の硝酸態窒素の濃度の上昇の度合いは水田では小さい。水田が窒素肥料中のアンモニアを分解して、窒素ガスとして大気中に放出するからである。

日本の年間降水量は1700ミリで世界平均の2倍、世界第3位の多さである。しかし、このままでは雨水は流れてしまうだけで利用できない。特に日本の地形は急峻である。水を蓄えて供給してくれるのが「森林」と「水田」なのである。雨は山の木と土に蓄えられてゆっくりと川へ流れ、また雨水や川水が水田に溜まった水もゆっくりと下流へ流れる。この作用によって水は蒸発すること無く利用できることになり、平均流出量は1070ミリで世界平均の4倍、世界第2位、取水量は300ミリで世界平均の6倍、世界第一位となっている。

日本の農業は、アメリカなどの新大陸の農業と異なるだけではない。ヨーロッパの畑作農業は地域社会の維持、景観の形成に貢献していると言われるが、アジアの水田農業はそれに加え、湛水機能によって自然災害の防止、水資源の涵養などの一段と高い公益性を有している。また土壌流出や塩類集積もなく、環境にもやさしい農業である。

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2022年02月17日

食料問題シリーズ9:人と人の繋がりのなかで充たしあう農産物流通~広域エリアで独自物流網を形成する直売所形態

前回の記事では、これからの日本に求められる農業・流通のかたちとして、地産地消に焦点をあて、豊かさが実現した日本において求められるのは、「大量生産、大量消費の食生活」から「人と人の繋がりのなかで充たし合う食生活」であることを提起しました。

今回の記事では、その地産地消のあり方をもう少し掘り下げます。

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2022年02月17日

『農業と政治』シリーズ10:柳田國男が指摘する農業の問題構造

柳田國男が農政を志す起点となったのは、当時の農家が置かれた厳しい生活環境の直視。

『農業と政治』シリーズ8:柳田國男が見た日本の農業

「何故に農民は貧なりや」
(なぜ農民はこんなにも貧しくなってしまったのか)

という問いかけから始まった彼の追求は、厳しい現実を生み出した二つの要因をあぶり出していきます。

…そして問題の本質は、100年経った今も何ら変わっていないのではないか?

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2022年02月17日

【世界の食と農】第9回 中国~「量から質へ」舵を切った、農業大国~

中国は、農業生産量世界第一位という、言わずもがな知られた農業大国です。
しかし、様々な数値を追っていくことで見えてくる、中国農業特有の問題があります。

まず、中国の農村人口は、約9億人。中国全人口の7割以上となっています。その中で農業従事者は約3億3千人。これは日本農業人口の200倍以上、アメリカ農業人口の50倍以上という凄まじい数値です。

しかし、中国で最も多い穀物生産量はアメリカと同等。これは、中国の労働力に対する生産性の低さを物語っています。実際、中国では農家当たりの耕地面積が非常に小さく(日本では120アール/1人に対し中国30アール/人)、機械化が進まないことから生産効率が非常に低いことが指摘されています。

また、生産量の多い穀物ですが、実は低品質・高価格により、国際市場ではなかなか勝ててこなかったのが実情。
そのため年間7,500~9,000万トンが妥当とされる在庫は、一説では25,000万トンまで膨れ上がっていると言います。買付先の無い在庫は、政府によって買い上げる政策等がとられていますが、この莫大な在庫による国の経済圧迫は深刻です。

過剰な農業労働力、狭小な耕地面積、莫大な在庫数…
この背景には自然環境や中国共産主義による制度的な要因がありました。

広大な土地を有している中国ですが、実はそのほとんどで自然環境が厳しく、優良な耕地が少ないのです。それら耕地は全て国家が有し、その「使用権」が農家へほぼ均等に分配されています。国は、希少な耕地の荒廃を防ぐため、あらゆる制度で農家を農村に縛り付けました。今でも都市への移住制限や教育の制限を受ける農家は少なくありません。その結果、少ない耕地と多くの貧しい小農が生まれ、機械化や技術高度化の遅れ、都市と農村との経済格差が大きくなりました。

『農業従事者は多いが、生産効率は低い。生産量は多いが、品質が低い。』つまり、量>>質が、中国農業が抱える大きな問題なのです。

それら課題を解決すべく、中国政府は様々な制度改革に乗り出しています。

まず1998年、生産農産物の品質を高めるための「構造調整対策」を打ち出しました。
その中身は「優良品種への切り替え」「農産物加工の推進による付加価値の向上」「企業による農業の産業化」「農産物のブランディング」など。「特色があり、高品質な農作物」への切り替えがテーマとなっています。

また、2001年、多すぎる農業従事者の離農を目的とした制度改革を実施し、小規模都市に限って農家が移住できる仕組みをつくりました。そして意欲ある農家が集積、大規模化できるような制度改革も促進しています。

政府の力が非常に強い中国。しかし様々な課題から、企業や農家主体の技術向上【量から質へ】舵を切りつつあることが伺えます。
ちなみに中国の農産物対日輸出は全体の1/4を占めるそう。これからどんどん高品質になっていくと予想される大陸の農産物は、日本の経済、私たちの生活にも影響を与えます。

今後も変わりつつある中国の農業に注目していきたいですね。

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2022年02月11日

【世界の食と農】第8回 ロシア~新市場をこじあけたプーチンの農業革命~

前の2投稿では、ロシアにおける国内の自給戦略について見てきました。

①国民自ら農業を担い、自給率8割を実現する『ダーチャ』政策
②海外の安かろう・悪かろうの野菜を排除する『脱GMO』政策

いずれも、とても大胆な施策ですが、実現に導いた凄まじい力を感じます。

画像は、こちらからお借りしました。

 

今回は、このような政策を、どうやって実現してきたのか、そのプロセスに着目して見ていきたいと思います。

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2022年02月11日

『農業と政治』シリーズ9 農業が衰退するのになぜ農協は発展するのか

山下一仁氏が2015年に著した「日本農業は世界に勝てる」という本があるが、その中に農協の事を厳しく指摘した章があります。このシリーズで書いてきた農協の問題を重ねて指摘していますので今回はそこを紹介していきます。

「農業が衰退するのになぜ農協は発展するのか?」

農政共同体の中心にいるのは、農林水産省ではなく農協である。農業、特に米農業が衰退する一方で、米農業に基礎を置く農協は大きく発展し、その貯金業務を担うJAバンクはわが国2位を争うメガバンクとなっている。いくら高米価から得られる販売手数料で潤っていたとしても、米農業が衰退してしまえば、販売手数料も減少する。しかも、農協は農家を組合員とする協同組合である。農業が衰退するのに農協が発展するということは奇妙ではないだろうか?実はここに日本の農業の発展を阻んできた最大の原因があるのだ。

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2022年02月10日

食料問題シリーズ8:「大量生産、大量消費の食生活」から「人と人の繋がりのなかで充たし合う食生活」へ

さて食料問題シリーズもなかなか大詰め。前回はこの食糧問題そのものを、国連が不安をあおりながらプロパガンダしている事実をおさえました。

そもそも世界全体でみると食料は十分足りているにも関わらず、飢餓の地域が出来てしまう事実。そして世界全体をどんどん食糧増産の方向にもっていこうとする流れ。これらの背景には、食料という生物の最基底部の課題が、市場拡大という大きなグローバライゼーションの波に飲み込まれていることを意味します。

 

富める先進諸国が、モノカルチャー化した後進国を支配しながらその労働力を搾取し、緩やかな支配構造を作り出している現実を私たちは受け止める必要があります。

 

そしてその支配の構造を生み出している組織こそ国連なのです。

 

しかしこの国連が推し進めるグローバル化の流れは今後も続くのでしょうか?この50年間で2.7倍になった単位面積当たりの食料生産量を今後さらに拡大し続ける必要はあるのでしょうか?

 

そして日本はその戦略に乗る必要はあるのでしょうか?

 

この辺りを追求したいと思います。

 

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