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2021年12月24日

【世界の食と農】第2回 アメリカ~世界の民衆立ち上がる。脱・アメリカの大潮流へ。~

前回の投稿では、世界最大の農作物輸出国のアメリカの現状と、そして、遺伝子組み換え作物や種苗・農薬などを大量に世界に輸出している現状について整理してきました。
今回の投稿では、なぜアメリカは、激しく環境破壊されるほどの大量生産⇒海外輸出をあり続けているのでしょうか?最新の動きについて見てみたいと思います。

写真は、こちらからお借りしました。

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■アメリカは、なぜ大量に農作物を生産しているのか?
大規模農業で知られるアメリカ。では、なぜ彼らは必要以上に農作物を生産して、海外に輸出しているのでしょうか?それは、「金貸し+国家+穀物メジャー+種苗会社が結託」し、世界の食糧支配=国家支配しようとしているからです。

 

支配の構造は、次のようになっています。

  1. アメリカの圧倒的な生産力で、販売価格を安くできる。例えばフィリピンでは、自国で生産するコメよりも、アメリカから輸入するコメの方が安くなった。そうすると、自国のコメを誰も買わなくなる→生産力が急落する。
  2. アメリカは、ますますフィリピンのコメ市場を独占できる。
  3. さらに、国内の生産者に対しても、「生産力を上げられる(儲かる)農法がある」と売り込んで、種苗・肥料・農薬を売り込んでいく。
    このようにして、各国のコメ・小麦・トウモロコシ・大豆など、主要な農作物市場をことごとく独占。

各国の農作物を支配するためには、他国を上回る圧倒的な生産力=価格競争力が必要となる。市場を独占し続けていくためには、とにかく農作物を大量につくり続けていかなければならない。これがアメリカ農業の実態です。

 

■さらに進む種苗支配。骨の髄まで市場を独占する
彼らの食糧支配は終わりではありません。さらに、各国の農作物の根底にまで踏み込んでいこうとしています。それが「種苗」です。
これまで、各国には「種子(保護)法」と呼ばれる、自国の種苗を保護し、継承していくための法律が定められていました。日本も同様に、種子法により元来から続く農作物の種苗が連綿と継承されてきました。しかし種苗メーカーは、この法制度が障壁となり、完全には生産者を支配しきれないジレンマがあったのです。

写真は、こちらからお借りしました。

そして2016年頃には、モンサントなどの種苗メーカーを筆頭に、「種子法廃止」に動きました。さらには、「自分たちで種を取ることを禁止」する、恐ろしい法案改正を実現させたのです。日本の種子は、90%以上が外国産となり、もはや自国で育てた野菜と呼べるような種子すらなくなっています。

 

■脱・アメリカに立ち向かう世界の民衆の力
世界の民衆が、これまでと同じように屈しているのかとなると、全くそんなことはない。この巨大勢力に対して、世界の民衆(農業生産者)は団結して戦っている。そして、支配一辺倒の世界を転換させようとしている。確実に、世界は脱・アメリカ(金貸し)へと動いています。

写真は、こちらからお借りしました。

★種苗会社モンサントに10万件の裁判・1兆円超の賠償金
モンサントが生産する除草剤ラウンドアップが、発ガン性があるのではないかという裁判があり、訴え側が300億円もの額で勝訴。これを皮切りに、世界中で10万件以上の裁判が勃発する事態になりました。
そして、この世界的な混乱を抑えるために、バイエル社(モンサントを買収)は1兆円超の和解金を支払い、事態の収拾に追われています。バイエル社本体への経営にも、非常に大きな打撃を与えるような事態になっています。
自分たちが好き勝手な商品を売りつけて、知らぬ存ぜぬでは、大衆が許さない大きな潮流を生み出すきっかけとなりました。

「バイエル(モンサント)が10万件の訴訟に1兆円で和解 ラウンドアップに発がん性」

 

★種子法の撤廃を断固反対し、法案を覆した生産者の力
上記に書いたように、自分たちの種苗を売りつけようと法案改正にまで手をつけてきたアメリカと大企業ですが、この動きに対しても、明確にNOを突き付けました。
メキシコ、コロンビア、チリ、グアテマラ、アフリカ17ヵ国連合機関は、農民や労働者の強い反発を受けて、改正を断念しました。このように、生産者自ら立ち上がり、国・世界を動かす大きな力になっています。

「作物の種子を多国籍企業が支配 あまりにも知らされていない「種苗法改正案」の危険性」

 

■世界は、大きな転換点の中にある
このように、戦後以降のし上がってきた巨大国家・企業の支配力が、大衆たちの力によって押し返られようとしている。そして、大衆の力は、自分たちの生きる場を守るために団結し、そして、新しい力を獲得しようとしている。今、世界の農の構造は、大きな転換点にあるという状況認識が非常に重要に思います。
これまで世界の食糧支配の先頭を走ってきたアメリカも、この潮流を受け、これから数十年をかけて(もっと早いかもしれない)、大量生産から大衆発の農業へと転換していくことは間違いないでしょう。

投稿者 hasi-hir : 2021年12月24日 List   

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