2021年12月10日
2021年12月10日
『食糧問題』シリーズ:イントロ~世界で食糧問題が起こる構造に迫り、持続的な安定供給できる生産・流通の仕組みを探る
新しいシリーズ『食糧問題』シリーズを始めます。
国連等で組織する「食料危機対策グローバルネットワーク」の報告によると、2020年時点で、世界の食糧危機の状況はかなり深刻化していると報告されています。
2020年に55の国・地域において、少なくとも1億5,500万人が危機的またはそれ以上のレベル(IPC/CH Phase 3 or worse)、またはそれに相当するレベルの急性食料不安を経験していることが明らかになりました。これは前年から約2,000万人の増加であり、報告書の第1版が2017年に発表されて以降、急性食料不安が容赦ない上昇を続けているという憂慮すべき傾向について、厳しい警告を発しています。
2020年には、少なくとも2,800万人の人々が「緊急事態(IPC/CHフェーズ4)」レベルの深刻な食料不安に直面し、飢餓の一歩手前まで来ています。2016年から2020年にかけて、高レベルの急性食料不安(IPC/CHフェーズ3以上)の影響を受ける人口が9,400万人から1億4,700万人に増加しています。
WFPのHPより引用
世界の人口は増え続けており、2021年時点で78億人。早晩90億人に達するといわれています。また昨今では異常気象などによる農産物の不作の報告もよく目にするようになりました。
しかし実際には、世界の食料生産量は増え続けており、世界全体の食糧は”十分にある”状態にあります。
画像はこちらよりお借りしました。
世界の穀物生産量は、1970年代と比較すると2010年には、約2倍の22億トンとなっていますが、収穫面積はほぼ横ばいの状況です。これは農業生産技術の向上により単位面積当たりの収穫量が約2.2倍になっていることに起因しています。
毎年、約26億トンの穀物が生産されていて、もしこれが世界に住む77億人に平等に分配されていれば、1人当たり年間340キログラム以上食べられることになります。日本人が実際に食べている穀物は、年間154キログラム。世界では穀物に加えて野菜などが生産されていますし、在庫があることを考えれば、すべての人たちが十分に食べられるだけの食べ物は生産されています。
本シリーズでは、世界の食糧生産量は、世界人口が十分食べていける量を生産できているにもかかわらず、食糧危機や飢餓が発生するのはなぜなのか?その構造をつかみたいと思います。
食糧輸出国と輸入国を比較すると、先進国ほど輸出量が多くなっているのですが、なぜそのような構造になっているのか?
また世界の食糧生産を支えている、先進国の農業生産は、面積が増えているのではなく、技術面積当たりの収穫量がふえています。このような農業生産は、持続可能なのか?増え続ける人口を今後も支えていくことができるのか?
さらに、昨今話題となることが多くなった、代替肉(人口肉)に食糧問題解決の突破口になりうるのか?
最終的には、世界の食糧問題を解決し、持続的に安定供給できる、生産と流通のしくみとは?を提案してみたいと思っています。
それでは、来週からの本編も楽しみにしていただきたいと思います。
投稿者 o-yasu : 2021年12月10日 Tweet