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『稼ぐ農』シリーズ1~稼ぐ力の基盤は何か?

30年後には就業者が現在の1/3、1/4まで落ち込むとも言われる国内農業。
担い手不足の問題は深刻です。

本来、次代の農業者を育てる期待が掛かっていたはずの農政・農協も、

”小農、零細農を保護したため、農協は太り、金融機関に変化、一方で本気で農業をやろうとする人材のやる気を削ぎ、高齢化農に進んでいった。” [1]

にある通り、いまだ根本的な解決策を打ち出せずにいます。

そこで今回、新たにスタートする『稼ぐ農』シリーズ。

「農業で稼ぐ力の基盤は何か?」
「次代の農業家を育てるために何が必要か?」

ここに焦点をあてて追求していきます。

シリーズ初回となる今回は、厳しい就農環境にあって国内だけでなく海外でも雇用を生み出している農業法人の事例を紹介しながら、今後の追求ポイントを発掘してきます。

[2]

●国内外に600人以上の雇用を創出:サラダボウル
新たな担い手をいかに確保・育成するか。これが農業における喫緊の課題となる中、大手企業出身者や有名大学卒の若者が続々と集まる希有な農業法人がある。「農業の新しいカタチを創る」をビジョンに掲げるサラダボウルだ。

同社は、代表取締役の田中進氏が2004年に設立。山梨県中央市に立ち上げた農園を皮切りに、国内7カ所と海外(ベトナム)に生産拠点を拡大し、各地でトマトをはじめとする野菜や花卉の栽培を行っている。

1圃場3ha(ヘクタール)を超える国内最大級のトマト栽培のほか、キュウリ、ナス、葉菜類などの施設園芸を中心とした農園から生み出された雇用は、グループ全体で600名以上(パート社員含む)。今後は静岡県や福島県、宮城県などに複数の農園の開業を予定しており、数年内に社員数は現在の2倍近くまで増えると見込む。農業の担い手育成の成功事例として、さらには地域に雇用を生み出す希望の星として、同社には多方面から注目が集まっている。

 

●経営者として当たり前のことをする
代表の田中氏は、元々は銀行員、その後は外資系生命保険会社に勤務。
異業種で培ってきた経営感覚が、農業の現場でも活きている。

「新しいカタチを創ると言っても、何か特別なことをしたということではありません。他の業界で当たり前に行われていることを、ただ農業にも取り入れてきただけです。

例えば、製造業で行われている生産工程管理や業務改善、品質改善のプロセス、小売業やサービス業で行われているホスピタリティの高いサービスや販売方法など、それまで出会った経営者から学んだ手法を取り入れました。派手なことをするわけではなく、当たり前のことを当たり前に積み重ねる。それが、結果として関わる人全てが「この農園があってよかったな」と思える、農業の新しいカタチにつながると考えていました。」

 

●「サラダボウル」というブランドを育てる
なぜつくるのか、こだわりはなにかといったコンセプト、また、どのように伝え、届けるのかという生産者自らの創意工夫が「価値」として消費者に支持される。だからサラダボウルは「笑顔が広がり、会話がはずむ」ほどのおいしい野菜づくりに専心し、そこでの創意工夫を消費者に提供する。それがサラダボウルの野菜であり、それをもってしてブランド野菜に育て上げることを目指している。

ブランドづくりの途上に野菜レストラン「サラダボウルキッチン」も開業した(2009年)。スーパーで売られるサラダボウルの野菜をレストランで食べてもらう。それを介して消費者に向けてブランド構築を図っている。最大の顧客はこれから農業をしたい人、または意識してなくとも将来農業をやるかもしれない人であり、そうした農業への思いを共有する人たちにレストランを介してサラダボウルのメッセージを送り続けている。

 

 

・業界の常識に囚われない柔軟な発想力
・シビアな経営感覚
・ブランド構築力

サラダボウル社の取り組みから、農業を魅力ある産業へしていくための要素が見えてきます。

今後も、こうした活力ある農業家たちの事例を交えながら、
『稼ぐ農』の追求を進めていきたいと思います。

 

<引用・参考>
サステナブル農業 [3]
農業の新しいカタチをつくる [4]
頑張るよりも夢中になる 経営者として感じる農業のおもしろさ [5]

[6] [7] [8]