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2009年08月25日

農薬を徹底追求②!!(5)除草剤編その2

こんばんわ 😮
類農園研修生のさとうです
前回(http://blog.new-agriculture.com/blog/2009/07/000917.html)は主に作用メカニズムに関して追求してまいりましたが、今回は前回で追及課題として残ったもののうち、「抵抗性」と「残効性」について追求してまいりたいと思います。
抵抗性
①薬剤抵抗性とは
薬剤抵抗性とは同じ農薬を使い続けると、やがてその農薬が効かなくなる現象のこと。これは農薬に限ったことではなく、たとえば医薬分野でも抵抗性を持った細菌(MRSA)が院内感染などで広まり患者の死亡など深刻な問題を引き起こしています。
②抵抗性の歴史
 20世紀初頭には北米で石灰硫黄合剤に抵抗性を持ったヤノネカイガラムシが出現していたと報告されています。しかし、大きな問題ととらえられたのはDDTに対する抵抗性を持った害虫が出始めた1950年頃以降です。殺菌剤では1970年ごろから抵抗性が報告されるようになりました。日本でもそのころからポリオキシンやカスガマイシンなどの抗生物質系の殺菌剤でまず抵抗性が報告されました。その後も現在に至るまで様々な剤に対する抵抗性が報告されています。
除草剤については1968年にアメリカでアトラジン耐性雑草が見いだされたのが最初です。ベンゾアジアゾール系のベンダゾン、二トリル系のアイオキシニル、フェニルピリダジン系のピリデートなどの化合物は、プラストキノンと競合し、抵抗性をもつ植物も多く出現している。その具体的抵抗メカニズムとしては、D1タンパク質における1個のアミノ酸が変異したことにより、除草剤分子が結合できなくなったためです。
雑草は世代サイクルが長く、病害虫と比べて抵抗性を獲得するのに時間がかかり、また移動性が乏しいことから抵抗性が他圃場へ伝搬するのが遅いという特徴があります。よって、問題になることがありませんでしたが、ごく最近になって日本の水田におけるSU剤抵抗性雑草の出現により、問題となるケースが出てきました。このSU剤抵抗性にかんしましては、現在類農園で使用している「アピロトップ」に関係する問題なので、⑥、⑦で取り上げたいと思います。
③抵抗性はなぜ出るのか?
 抵抗性を獲得した生物に農薬が効かなくなるのはなぜでしょうか。例えば虫を例にとって考えると、農薬がかかってから虫が死ぬまでのプロセスをひとつひとつ考えてみるのがわかりやすいです。
 散布された農薬は虫の皮膚を透過して、あるいはエサと一緒に口から虫の体内に入ります。そして虫体内の様々な生体内反応で解毒されたり、あるいは排泄されたりします。それらの作用をくぐり抜けて実際に薬が作用するところ(作用点)に到達したら、作用点と結合して虫の正常な活動を妨害し、結果的に殺虫性を示すことになります。作用点は神経やその他の細胞内にあると理解すれば良いです。
 以上の話から抵抗性獲得のためには主に3つの要因があることが浮かび上がってきます。
  1:虫の体内に入りにくくなること、
  2:虫の体内で解毒されやすくなってしまうこと
  3:作用点と結びつきにくくなってしまうこと
 特に2番目と3番目が重要であることがわかっています。これは菌や雑草についても同様です。
④抵抗性が出やすい農薬、出にくい農薬
a)出やすい農薬
 一般に低薬量で効く農薬は抵抗性がつきやすいと考えてよさそうです。低薬量で効くということは、わずかな量が作用点にくっついただけで十分な効果を示すということですから、作用点の農薬との結合部分が変異しただけで抵抗性が発現してしまうことになります。また、体内に入る農薬の量も少ないので、解毒されてしまう可能性も高まります。
 合成ピレスロイド系殺虫剤やEBI系殺菌剤やストロビルリン系殺菌剤あるいはSU系除草剤のような低薬量でも高活性な薬剤は抵抗性が早い段階から発現しています。
b)出にくい農薬
 逆に言うと特定の作用点を標的としないような剤は抵抗性がつきにくいといえます。一般的に古くからある農薬にはそのようなものが多く、例えばボルドー液は銅イオンが活性本体であり、特定の作用点を阻害するものではないので抵抗性がつきにくいと考えられ、実際に100年以上の使用実績がありますが抵抗性は発現していません。
 次に、世代交代が早い生物を対象とした農薬は抵抗性がつきやすいのも宿命であるといえます。ダニやコナガやアブラムシなどが該当します。
⑤抵抗性を回避する方法
 抵抗性を回避するためには2つの対策が考えられます。
 a)テーション散布
 毎回異なった作用性の薬剤をまくことです。同じ作用性の農薬をまき続けると、その農薬に抵抗性を持っている病害虫が残りつづけますから、抵抗性を育てているようなものです。
 また、散布する際には均一散布になるように心がけることも大事です。低レベルな抵抗性を持つものを完全に叩くことにより抵抗性遺伝子が蔓延することを防ぐことができるはずです。
 b)IPM(総合防除)の実践
 農薬一辺倒の防除にならないようにすればそれだけ農薬散布回数が減り、抵抗性の発達を遅らせることができるはずです。また、農薬散布する際にわざと無処理区を作ることにより、感受性を持った個体を温存することも有効です。
※ローテーション散布の注意
 ローテーション散布にはいくつか注意しなければならないことがあります。農薬は商品名が異なっても中身の有効成分は同じであったり、別の有効成分であっても同じ作用性を持つ薬剤であったり、あるいは交差抵抗性を持つ薬剤であったりすることがあるからです。
⑥SU抵抗性雑草とは 
現在、日本の水田では一発処理剤の使用が大きな割合を占めています。一発処理剤の多くはいくつかの有効成分があらかじめ組み合わされた混合剤となっています。その有効成分のなかでも水田の主要雑草に幅広く効果を示すスルホニルウレア系化合物(SU剤)が主成分として広く用いられています。
以下スルホニルウレア系除草剤の作用メカニズムになります。
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作用機構としてはバリン、イソロイシン等の分岐鎖アミノ酸の生合成過程に関与するアセト乳酸合成酵素の働きを阻害することで、タンパク質合成が阻害します。
 
 
SU抵抗性雑草とは、本来SU剤で防除可能であった草種の中から出現した、SU剤に抵抗性を有する群のことです。
 日本国内では1995年に北海道で抵抗性のミズアオイが確認されて以来、現在までに数種類のSU抵抗性雑草が確認されています。水田の主要雑草とされている草種の中でもアゼナ類、ミゾハコベ、キカシグサ、イヌホタルイ、コナギ等で抵抗性の出現が報告されています。発生地域は当初、北海道や東北など寒地、寒冷地で多く報告されてきましたが、年々拡大する傾向で、現在では全国的に発生がみられる様になってきました。
⑦SU抵抗性雑草の対策および防除上の注意点
 SU系除草剤を連年施用している水田で、適正な使用をして入るにもかかわらず特定の雑草が増加し大量に残存した場合、抵抗性である可能性が高いです。
 SU抵抗性雑草の防除には、SU剤を含んでいない一発処理剤、初期剤と中期剤または後期剤による体系処理が有効です。
 また、SU系除草剤に抵抗性雑草に効果のある成分を付加した一発処理剤も開発されています。
残効性
残効性は、農薬取締法の中で適用病害虫に対する薬効に関する試験成績(農作物等の生理機能の増進又は抑制に用いられる薬剤にあっては、適用農作物等に対する薬効に関する試験成績)を提出することが義務づけられています。生産者にとってはできるだけ効果がはやく、かつ長くしかり出てほしいものです。しかし、その試験が具体的にどのような内容なのか、どのような条件下のもとで結果を出しているかまでは現在追求中です。追って報告したいと思います。
余談になりますが、生産者にとってはできるだけ効果がはやく、かつ長くしかり出てほしいものです。またどのような条件下であればどのような効果をもたらすのかがおおよそでもわかればいいですね。
以上、今回は抵抗性、残効性について追求してまいりました。まだまだ課題がたくさん!
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投稿者 nori0527sato : 2009年08月25日 List   

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コメント

なるほど!自然薯ってこういう風に育っていくんですね♪
僕たちが食べるまでに、これだけの手間がかかり、また、それを作る人たちの想いが詰まっているなんて、凄いと思います。
夏場は暑くて大変ですが、頑張ってください。美味しい芋を楽しみにしています。

投稿者 ぷーさん : 2010年8月21日 00:08

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