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2021年12月02日

農から考える自然の摂理~「土の仕組みを探る」:これからの農業を考える羅針盤として

普段当たり前のように、私たちの足下に広がる「土」。その「土」に危機が迫っているという認識から始まった【土の仕組みを探る】シリーズ。

★失われつつある肥沃な土壌

シリーズ最後となる今回は、五億年とも言われる大地の歴史を改めて振り返りながら、自然の摂理に即した農業の在り方、今後の課題を見出していきたい。

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●生き抜くためのせめぎ合い。結果としての共生
大地五億年の歴史を要約すれば、営まれてきた生き物たちの歴史は、決して「自然との共生」という生易しい言葉で収まるものではなく、土をめぐる競争と絶滅の繰り返しであったと言える。
決して楽園ではない土に、必死に居場所と栄養分を求めてきた植物・動物・人間の試行錯誤=適応の歴史だった。

既にそれは五億年前、地球に初めて「土」ができた頃から始まっている。
例えば地上最古の植物といわれる地衣類。彼らは当時岩だらけの荒涼とした大地から僅かな水や養分を吸収するために菌類との共生を選択し、地上進出を果たした。彼らの遺骸が、最初の土といわれる。

★大地の先駆者たち

 

●土の酸性化も適応の一環
土は生き物を育むだけではなく、時に厳しさも見せてきた。その象徴が「土壌の酸性化」である。実際、土壌の酸性化は多くの植物にとって歓迎できない事態であり、植物の生育に大きな支障をきたすものだ。
特に東南アジアの熱帯雨林や日本の温帯林の土壌に見られる「土壌の酸性化」。しかしここには生き物たち自身が土の酸性化に加担しているという驚きの事実があり、それは
・土壌条件を受け入れるだけでなく自ら積極的に土を変化させてきた生物たちの適応力
・自然の森林は土が徐々に酸性になる現象はあるが生態系としては養分が失われにくい仕組みを絶妙なバランスの下で築いてきた
という気づきにつながった。

★土壌の酸性化=生物たち究極の適応戦略

 

●土壌生態系を救った微生物たち
大地の歴史を紐解くにつれ、微生物たちが果たしてきた役割の大きさにも改めて気付かされる。
例えば3億年前、植物たちが生存競争に打ち勝つため果たした度重なる進化は、土壌の養分サイクルを停滞させる危機を招いた。生態系にとって大ピンチであったこの状況を一変させたのが、酵素を武器に土中有機物の分解を飛躍的に促進させた「キノコ」の存在である。
生態系を支える養分循環は当たり前のように存在するものではなく、土中に息づく様々な生物たちの適応戦略(せめぎあい)の結果として保たれていることに気付かされる。

★キノコが果たした「土壌の奇跡」
★常に瀕死の微生物たち

 

●土=生産基盤の歴史的構造を掴む
私たち人類も、初期はこうした自然の摂理への同化を前提に、生産活動たる農業を営んできた。縄文時代から続けられてきたといわれる「焼畑農業」などはその象徴である。
しかし人口増加の圧力を背景に、20世紀初頭に登場した世紀の大発明=窒素肥料の乱用が、五億年かけて連綿と塗り重ねられてきた土壌の生態系を、わずか100年足らずで破壊しようとしている。
他方で現在、提起され始めている新たな農法や農業の在り方を問う追求を深める上でも、前提となる土壌=生産基盤の歴史的構造を押え直すことで、これからの農業に答えを見出す羅針盤として認識を深めたい。

★古代から受け継がれる焼畑農業
★窒素肥料の功罪
★生態系を守るための「食」

投稿者 negi : 2021年12月02日 List   

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