【農の歴史】第3回 麦作文化と稲作文化 |
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2021年09月23日
農から考える自然の摂理~「土の仕組みを探る」:大地5億年の歴史を遡る
以前に「人類が農耕を始めて以降、土地の生産力はじわじわと下がっている」という事実をお伝えした。
これはこれで気になる話だが、そもそも地球を覆う広大な土壌は果たしてどのようにつくられてきたのか。
そして私たち人類の営みは、土にどんな影響を与えてきたのか。
大地の歴史は5億年と言われる。
途方もないこの歴史を遡りながら、私たちが「土」とこれからも付き合っていく上で何が重要なのかを解明したい。
地球にあって、月や火星にないもの。それが土である。月や火星では岩が風化して砂や粘土の堆積層(レゴリス)はつくられるが、土にはなれない。地球では、岩石からつくられた粘土や砂の上に、植物が死ぬとパタパタと堆積し混ざり合う。これが土である。つまり植物が存在する地球にのみ土がある。
他方、地球の歴史は46億年と言われるが、最初の41億年の間、土は存在しなかった。マグマが冷えて固まった岩だらけの大地には陸上植物がいなかったからだ。
それでは、最初の土とは、どのようなものだったのだろうか?
■大地の先駆者たち
オーロラが見られることで知られるカナダ北部の町、イエローナイフでは、地球最初の土を今でも見ることができる。
町を歩けば、あちこちで赤い岩石が露出している。この岩石はカナディアンシールドと呼ばれ、アメリカ大陸の核として5億年前から地表に露出し続けている。
赤い岩の表面には、白と緑のパッチ状の模様が見える。その上を歩いてみると、地面はふかふか、しかし落ち葉ではない。スコップを突き立ててみても、まったく歯が立たない。そこには土はなく、緑色と白色の模様の”じゅうたん”がモコモコ育ち、岩にへばりついているだけ。この生物の遺骸が最初の土になる。
この”じゅうたん”は、コケと地衣類の仲間である。
コケは、地上で見つかっているなかで最古の植物だ。田んぼや池でプカプカしているアオミドロの仲間(藻類)が先祖で、長い進化の末に陸に上がることに成功した。身近なところでも岩や道端のコンクリートにへばりついたコケを見ることができるが、太古から大きくは変わっていない。
もう一方の先駆者、地衣類はあまり馴染みがない。よくブナの木の樹皮に模様をつけている生き物たちだといえば分かるだろうか。
日本ではひっそりと生えているが、世界を見渡せば陸地の8%を覆っている。地味だが存在感のある生き物だ。
地衣類は、カビ(菌類)と藻類が合体(共生)したユニークな生き物だ。
藻類が光合成によって糖分を生産し、一部を同居するカビにプレゼントする。カビはそれをエネルギーにして岩や土に菌糸を伸ばし、水や栄養分を吸収する。その水や栄養分は藻類に受け渡され、光合成に使われる。
岩石の露出する荒涼とした大地において、進化の末にタフさを獲得したコケと地衣類が最初の開拓者だった…。
…さて今後の追求ポイントとしては、
★あんなに固い岩から、コケや地衣類はどうやって栄養分を得ている?
★4億年前に登場するシダ植物は、大地に深く根をおろした最初の植物。当時の土はどんなものだった?
★3億年前、樹木が急速に進化する中で土が果たした役割とは?
★3億年前の地層は石炭紀と呼ばれ、多くの石炭が蓄積されている。なぜこの時代に集中している?
★2.5億年前、急に種数を増やし始めたキノコが土の歴史に革命をもたらす。何をした?
★土には「アルカリ性」の土もあれば「酸性」の土もある。何が要因になっている?
★熱帯雨林の土は「酸性」らしい。酸性=生き物に悪いイメージがあるが、なぜあんなに樹木が育つのか?
★土づくりに微生物は欠かせないが、彼らにとっても「酸性」は天敵。どうやって適応してきた?
★黄、黒、白、青、赤。土だけで絵を描けることができるほど、その色は多様。何が違う?
★1.5万年前が起源とされる農業。ここでの生態系(畑や水田)と自然の生態系(森や草原)はどう違う?
★100年前に発明された窒素肥料は、劇的な人口増加を実現させた。一方で土にはどんな影響を与えたか?
等々。お楽しみに。
<参考>
・大地の五億年~せめぎあう土と生き物たち(ヤマケイ新書/著:藤井一至)
投稿者 negi : 2021年09月23日 TweetList
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