2020年06月04日

農的社会9~農を介して、”働きたい”がつながる

コロナ禍を受けて、都市と農村の人材交流が急速に広がり始めている。

国内農業をみんなで守り育てていこう、そのためにどうする?という追求機運の、土壌となるか。

 

以下、【働きたいをつなぎたい 学生・飲食店従業員×農家をマッチング コロナ禍受け奮闘】より引用

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2020年06月02日

全くの農業ド素人が「星付きシェフに野菜を届ける農家」へたどり着いた勉強法!

今回は、農に全く興味がなく、農業の全くの素人だった人が、今や百貨店の高級野菜売り場にも野菜を出荷できるようになったお話です。

彼の農業へのアプローチの仕方は、従来の農業のアプローチの仕方と何が違うのか?

そこには、これまでの生産者にはない彼独特の洞察力と同化力があったのです。では・・・

マイナビ農業【リンク】からの転載です。

転載開始

農業を始めて一度の営業もせずに、現在は栽培した野菜の95%をレストランへ直接販売しているタケイファーム代表、武井敏信(たけい・としのぶ)です。このシリーズでは売り上げを伸ばすためのちょっとした工夫をお伝えします。

農業人生の最初から、私が常に考えていたのは「出口」。今回は売り先を意識した野菜づくりのための武井流勉強法をお伝えします。

 

◆最終的な出口を決める

私は野菜の作り方を習ったことはありません。農業人生最初の1年は両親の市場出荷の手伝い。その傍ら、空いている畑で、小松菜、大根、ニンジンなど複数の野菜の種まきをしてみると、ド素人が作った小松菜らしきもの、大根らしきもの、ニンジンらしきものが収獲できました。そしてそれらをインターネットで野菜セットとして直接個人に販売することに。この時から、売り先が直接見えない市場に出荷をしていた両親とは別の農業が始まることになりました。私が常に考えていたのは「出口」です。私は野菜の作り方を習ったことがないので、入り口、つまり「何を作るか」をそれほど重視していなかったのかもしれません。

研修先でニンジンを作っていたからとりあえずニンジンを作ってみる、トマトが好きでトマト農家で研修したからトマトを作るなど、栽培する品目を選ぶ理由は人それぞれ、農家の数だけあると思います。そこに「作ってからどこへ売るか」ではなく、「どこに売りたいからこんな野菜を作る」という発想をしてみると農業がシンプルになります。農業のこと、野菜のこと、一切の興味もなくネガティブな気持ちでスタートした私の農業人生ですが、今回はどのような勉強をしてきたかをお話しします。

 

◆3年間、週に3回のスーパーチェック!

私の自宅から車で15分ほど走ると10軒ほどのスーパーがあります。就農前は野菜に興味がない人生を過ごしてきましたので、まずは野菜がどのように販売されているかを知るために、週に3回、スーパーの野菜売り場を見に行くことにしました。「どのような野菜が販売されているのだろう?」「どのように梱包されているのだろう?」「いくらで販売されているのだろう?」私にとってスーパーチェックはワクワクしてまるでアミューズメントパーク。年に1度、都内の高級百貨店に出向き、そこの野菜売り場も見ていました。そこで販売されている野菜は、「今まで見たこともない変わった野菜」、「美しい野菜」、「高価な野菜」で、このクオリティーを目指さなければダメだと思いました。数年後、この百貨店の売り場にタケイファームの野菜が並ぶことになるのですが、当時は心に迷いが出た時に気持ちのリセットができる、お手本の野菜売り場でした。こうして、スーパーチェックでは、「野菜の種類」「相場」「梱包」「ポップやシールなどの見せ方」を勉強しました。

 

◆百貨店の店頭での気づき

就農して12年目、ネットでの野菜セットの販売を続けていたところ、バイヤーから声がかかり百貨店への販売を始めることになりました。その取引の中でも学ぶことは多くありました。あるとき、野菜を送った百貨店に、タケイファームの野菜がどのような状態で販売されているかを確認しに出かけました。そこで気付いたことが2つ。

 

1. 野菜が陳列されている場所の状態

私の野菜が陳列されていた場所は、バイヤーが全国から選りすぐった生産者の野菜が販売されていたファーマーズコーナーでした。この売り場は、人が過ごしやすい温度に設定されていました。つまり、「発送時の状態ではなく、長く置かれる状態を意識して野菜を作らなければならない」ということです。それからは、百貨店に発送した時と同じ野菜をキッチンの常温に置いて、日持ちや野菜の状態や変化を見ることにしました。こちらの百貨店で年間を通してレギュラーとして販売している農家は当時7人ほど。野菜の状態が良ければ人気の野菜となり、お客さんからの注文も入るようになり、おかげさまでレギュラーに入ることもできました。これも常に出口を意識した結果だと思います。

2. シールを貼ることの意味

売り場ではシールを表側に向けて陳列されます。シールの役割は、タケイファームの野菜とわかること。でもそれだけがすべてではないと気づきました。シールを貼るという事は「野菜の表裏」ができるということ。袋やカップに野菜を入れる際、その野菜の一番カッコイイ部分が表に来るようにしました。

〇女性担当者から学び、売り上げアップにつながったシール!

百貨店で野菜を売るようになり必要に迫られたのがタケイファームとわかるシールでした。スーパーチェックでさまざまなシールは見てきましたが、自分で作るとなると迷うものです。カッコイイシール、目立つシールなどをいくつか考えてみましたが、黒字に金色の文字など、いかにも男性のイメージといったピンとこないデザインばかり。結局、シールを作成している会社にお願いしたのですが、私が一つだけこだわったことがあります。それは担当者を女性でお願いしたこと。担当者が変わっても、必ず女性です。野菜を購入するのは一般的に女性が多いので、女性が好むデザインやアドバイスをもらうためにとても有効でした。

 

◆最終的な出口、「野菜の使われ方」を知る

「出口」である売り先のリサーチは、スーパーチェックから現在はレストランチェックに変わっています。取引先のレストランはもちろんですが、他のお店でも外食することによって野菜がどのように使われているかを知ることができ、栽培する品種の選択や収穫するサイズ感の決定などにつながっています。シェフから考え方や野菜の話を直接聞けることで自分では発見できないことが見つかります。前回の記事「売上アップの近道! 品種選びで他の農家に圧倒的な差をつけるには」【リスク】にも書きましたが、シェフが読む専門誌に目を通すことも出口を知るにはおすすめです。

 

◆異業種との出会い

異業種交流会などにも積極的に出かけるようにしています。それも一人で出かけるように心がけています。友人と一緒ですと不安感はなくなりますが、どうしても友人と話す機会が多くなり、新たな出会いにつながりません。台風の後に農家に会うと「被害はどうだった」とか「うちもかなりやられた」とか現状報告や慰めあいになりやすいのですが、そんな時でも旅行会社の人に会うと、「バスを出すので畑ツアーを企画しませんか?」とポジティブな話になります。実際に、交流会で出会った動画制作会社の人から「農業となにかやりたい」という話があり、現在は「週末畑.com」という農家を応援するプロジェクトが立ち上がっています。週末畑.comでは専用アプリのほか、サイト上やYouTubeチャンネルでも動画を配信し、農業の知恵と工夫などを紹介しています。動画による発信は私自身が今まで知らなかった世界を知ることができましたし、現在は他の農家の方の学びにもつながっています。

また、直接生産者から野菜を仕入れているシェフに質問をする機会を得たこともあります。「なぜその生産者を選んだのか?」「どうして何年も取引を継続しているのか?」この答えは、私がレストランと取引をしていく上でとても大切な答えだったのです。シェフからの言葉も現在のタケイファームには欠かすことのできないアドバイスとなりました。リアルなつながりが、教科書では学ぶことのできない勉強なのです。

異業種交流会を通して人脈を広げてきましたので、同じように参加者にもたくさんの人脈が広がればという思いから、2年前から私自身が企画して「千葉ファーマーズ親年会」を開催。農家、メディア、業者、シェフなどが集まり情報交換をしています。ここから学ぶことも非常に多く、また、参加した他の若手農家にとっても学びの場になっているのではないかと思います。

  

〇おまけの虎の巻

誰かが作ったレールに乗らない姿勢が学びにつながる私がどのようにしてこのような知識を身につけたかが気になる人もいるかもしれません。どこかのセミナーに参加したり、本を読んだりしているわけでもありません。特に何かしているわけでもありませんが、強いて言えば現状に満足することなく、常に今よりもレベルアップすることを考えています。1995年にウィンドウズ95が世の中に出たおかげで、インターネットを使った野菜の販売が可能となりました。私もその恩恵を受けた一人です。今までなかった販売方法が浮上してきたわけですが、まだ誰もやっていない野菜の販売方法があるのではないかと今でも考えています。誰かが作ったレールに乗るのもありだと思います。その方が、失敗も少なくなりますし、時間の短縮にもなります。私の場合、安定よりも冒険を選ぶ性格のせいか、常に何かを考えていることが今につながっているのかもしれません。 

以上転載終了

 

◆まとめ

このように、彼の農に対するアプローチの仕方は、まずは、最終的に購入する人たちが何を期待して、野菜を購入しているのかを自ら徹底的に調査し、その期待に真っすぐ応える野菜づくりをしてきた点です。(※彼は、これを「最終的な出口を決める。」と位置付けています。)

更に、その野菜のお披露目(店頭に並んでいる時)の状態を最大限に保つため、熟慮した出荷の仕方やパッケージのシールのデザインを女性にし続けるなど、自身の商品を最高の状態で購入してもらうことにこだわり続けました。

そして、自らの世界とは異なる異業種との交流によって、社会全体の有り様をつかみながら、何ができるかを展開し、今では、その交流会の主催者となって、若手の農家にその活力を繫げています。

需要の外圧(欠乏)を的確に掴み、自ら生産した媒体を最高のものとして出荷し、客先に充足してもらう。そしてそれを信頼に繋げ、次のステップに挑戦していく。

農業を通してここまで徹底的に実現する彼の志は、社会の期待に応える活動の仕方=「新しい農のかたち」の一つの事例とは言えないでしょうか?彼のこれからの活動が楽しみです。では次回もお楽しみに

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2020年05月28日

農的社会8~農の可能性を”体感”させる場

日本農業の、強みと課題。(【農的社会7】、より)

これら実現のために、消費者=私たちの理解が欠かせない。

ただし理解と言っても、観念的なものでは意味がない。
本能・体感発で、本質を掴んでいきたい。

その意味で、「都市農業」にかかる期待は大きい。

 

【新型コロナ禍 農と食~家族で考える「国産」 “風”起こす体験農園】より引用

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2020年05月21日

農的社会7~改めて、日本農業の強みと課題を整理する

かつてないほど、国内農業に注目・期待が集まり始めた現在。

改めて日本農業の強みと課題を整理しておきたい。

 

以下、転載(「未来を耕す農的社会」2018著:蔦谷栄一)

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2020年05月14日

農的社会6~産業政策に偏重する日本の農政

多様な「農」の可能性に着目することなく、

経済効率の追求に偏重する国内農政の劣化。

 

以下、転載(「未来を耕す農的社会」2018著:蔦谷栄一)

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2020年05月12日

キューバ:食料・エネルギー危機から生まれた、都市型有機農業と省エネな暮らし

今回は世界に、目を向けて、国を挙げて、農業とエネルギーの自給に取り組む 太陽と情熱の国キューバのお話です。

過去の歴史を紐解くと、キューバは、大国 米国とソ連の間に挟まれ、翻弄されてきた歴史があります。1991年、冷戦が終結し、ソ連が崩壊してから東欧諸国からの援助もなくなり、更に、米国の経済制裁が加わって、最悪の経済危機に突入することとなりました。

絶体絶命の状況下にあって、彼らはどう生き抜いていったのか?食べるもの(農業生産)をどうやって、獲得していったのか?

キューバは知恵と工夫でその危機を乗り越える独自路線を歩み続け、現在も社会主義体制を堅持しています。  では、転載開始します。【リンク

 

■食糧・エネルギー危機で苦境に陥ったキューバ

カリブ海に浮かぶ最大の島・キューバでは、11万平方km(日本の本州の約半分)の国土に、約1,100万人の国民が暮らしています。美しい海と緑に恵まれ、気候も温暖なキューバは、年間約200万人の観光客が訪れる人気の渡航先です。 1950年代の「キューバ革命」*1以降、ソビエト連邦(ソ連)や東欧に接近し、社会主義路線へ転換したキューバ。当時は、エネルギー資源や生活物資、そして食糧のほとんどをソ連や東ヨーロッパなど社会主義国からの輸入に頼っていました。しかし、1991年のソ連崩壊によって東側諸国の国力が軒並み衰退し、さまざまな資源や物資の輸入が困難になり、さらに米国の経済制裁が加わって、最悪の経済危機に突入することとなりました。2001年には、ローマ法王の提言により、食料や医薬品などの人道的物資に限り米国からキューバへの輸出が認められるようになりましたが、経済封鎖は続きました。そして、2015年には米国との国交正常化交渉が始まりましたが、この四半世紀の間、わずか140km先にある米国との間で、石油や車・食糧など、ありとあらゆる経済的な交流が断たれていました。そのような逆境の中、キューバは突然の食糧危機やエネルギー危機をどのように乗り越えていったのでしょうか。

*1 1959年にキューバで起こった、カストロやチェ・ゲバラなどによる当時のバティスタ独裁政権の打倒と、その後の社会主義革命。ラテンアメリカで最初に成功した社会主義革命であり、米国に大きな脅威を与えた。

 

■エネルギーを使わない都市型有機農業を推進

1991年のソ連崩壊後の経済危機により、キューバには、従来の石油輸入量の50%以上と輸入食糧のほとんどが届かなくなりました。特に、食糧はこれまでは約6割を輸入に頼っていたため、国民の平均カロリー摂取量は3分の1にまで落ち込んでしまいました。そこで、食糧を国内で生産するために政府が推奨したのは、有機農業による野菜の増産でした。 それまでのキューバの農業は、トラクターなどの農業機械を使う大規模農業が中心でした。しかし、石油不足の影響でこれらの機械を利用できなくなったため、農場ではトラクターを牛に替え、牛に農器具をつけて土を耕す畑作りが始まりました。また、従来使っていた化学肥料・農薬も石油由来のものが多く、ほぼ使用できなくなりました。そのため、キューバでは、より少ないエネルギーで賄うことができる持続的な農業スタイル「パーマカルチャー」*2にシフト。たとえば、化学肥料の代替品として、生ゴミや牛の糞などから作ったたい肥を活用したり、植物の抽出液などを使った害虫防除などに取り組みました。さらに、食糧消費の多い都市でも野菜栽培の普及に力を入れました。食糧不足だけでなく、作物を農場から都市へ輸送するための燃料も不足していたため、首都ハバナを中心に中庭や屋上、駐車場などを耕し、都市農園へと転換させていきました。その結果、首都ハバナだけでも3万ヘクタールを超える農地が生まれ、ハバナで消費される野菜の約半分を自分たちで生産することができるようになったのです。

*2 自然や生物の仕組みに沿ったサステイナブルな環境デザイン。オーストラリアのビル・モリソンらが構築し、パーマネント(永久な)とアグリカルチャ-(農業)あるいはカルチャー(文化)を組み合わせた造語。

 

■バイオマス・風力・水力などの再生可能エネルギーへのシフト

ソ連崩壊後のキューバでは、食糧危機だけでなく、石油不足によるエネルギー危機も大変深刻でした。石油不足の影響で火力発電所が稼働できないため停電が日常茶飯事となり、1日最大16時間の停電が続くこともあったほどです。 そこで、キューバの人々は、再生可能エネルギーの活用に舵を切りました。石油の輸入停止を契機に、石油だけに頼るエネルギー政策から、バイオマス・風力・水力・太陽光・太陽熱など、地域がもつ自然資源を使ったエネルギーへの移行が進んでいったのです。中でもキューバらしいのが、同国の主要産業のひとつである砂糖の製造の際に大量に生じる「サトウキビの搾りかす(バガス)」を使ったバイオマス発電です。現在では、ほとんどの製糖工場がバガスを使った発電を行っており、国内全体の電力エネルギーの30%を賄っています。また、風力発電に適した場所が多いため、国内のほぼ全州に8,000以上の風力発電が導入されました。中には、いくつかの風車が集まるウインドパークを構成しているところもあります。その他、小河川が多い山間部では小規模水力発電システムが設置され、学校・診療所・コミュニティセンターなどの一部には、太陽光発電システムが備わり、コンパクトな太陽熱温水器・太陽熱乾燥機が導入されていきました。

 

■1人あたりの年間消費電力は米国等の1/10 持続可能な暮らしのヒント

キューバでは、再生可能エネルギーの導入とあわせて、エネルギー使用量の抑制にも力を入れています。たとえば、エネルギー効率の良い電球や家電の普及、送電ロスを減らすための送電線や変電所の屋外変圧器や旧式ブレーカーの取り換え整備などが挙げられます。 そして、市民への省エネに対する啓蒙・教育にも、国を挙げて取り組んでいます。特に、若い世代への教育を重視する同国では、省エネ教育にも力を入れ、小学校では多くの授業でエネルギー問題を扱うようになり、大学でも省エネに関する修士課程があるほどです。また、国道や高速道のロードサイドでは、市民の省エネ啓蒙のための立て看板も目に入ってきます。このような国を挙げての取り組みの結果、キューバでは、国民への省エネ意識の定着に成功。現在では、米国など先進国に比べて、1人あたりの年間消費電力は約10分の1*3と極めて小さく抑えられています。同国では、突然の経済危機をうけ、必要に迫られて都市型有機農業を導入することになりましたが、現在ではラテンアメリカなどを中心とした農業研究者が視察に訪れるほどの発展を遂げることができました。また、再生可能エネルギーの活用や省エネ推進のための各種施策も含めて、持続可能な新しい取り組みとして認められるほどになったのです。日本も、食糧自給率は4割程度*4と低く、エネルギー自給率はわずか6%。危機を乗り越え、自然と共生した農業やエネルギーへと移行したキューバの取り組みは、日本が抱える課題解決のためのヒントになるかもしれません。

*3 国際エネルギー機関(IEA)2011年度 *4 カロリーベース

以上転載終了

 

■まとめ

こうしてみますと、キューバは、既に自主自立、自給自足の道を進み、世界の先端の持続可能な都市型有機農法や、植物や自然を活用したエネルギーの自給など、知恵と工夫で経済危機を乗り越えてきた力強さがあります。

生産したものは、最後まで利用し、太陽や風や水をエネルギーに変え、全ては、地球からいただく恵みを循環のサイクル中で、人も自然も持続し共生していくといったダイナミックな適応のかたちで生きぬいている実現態とは言えないでしょうか?

これからの農業の新しい取り組み事例としてキューバの事例は、非常に可能性があると思います。では、次回もお楽しみに

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2020年05月07日

農的社会5~広義の農業と狭義の農業

産業としての農業を支える、”広義”の農業。

 

以下、転載(「未来を耕す農的社会」2018著:蔦谷栄一)

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2020年04月30日

農的社会4~横浜市に見る、緑農一体化政策

農業を、農家・農業者たちだけの課題にしない。

市民参画=みんな追求に重きを置いた、緑農一体化政策を推進する、横浜市の事例。

 

以下、転載(「未来を耕す農的社会」2018著:蔦谷栄一)

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2020年04月23日

農的社会3~都市農業が示唆するもの

市民の農業参画。「農」を体感し、醸成する場。

その受け皿となる、都市農地の可能性。

 

以下、転載(「未来を耕す農的社会」2018著:蔦谷栄一)

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2020年04月21日

気候危機時代におけるアグロフォレストリーの可能性

日本では、現在も緊急事態宣言が発動され、毎日不安なニュースが流れていますが、今回は、このコロナウイルス禍が終了した後、人々が生きていくために必要な新しい農業についてのお話です。
「農」は人が生きていくための食に直結しますが、これまで、紹介したように新しい農は、農業技術、自然環境、流通、消費者との繋がり、異業種参入・・・といった切り口で更に、進化していくものと思います。
その中で、今回は、農業(agriculture)と林業(forestry)を合わせた。樹木を栽培し、その樹間で家畜や農作物を飼育・栽培する農林業=アグロフォレストリーについて紹介します。

note【リンク 】からの転載です。

転載開始

 
皆さんこんにちは!アジアを中心に猛威を奮うコロナウイルス、東南アジアの畑を襲うバッタの大群発生など、毎日不安なニュースが多く気持ちまで曇り空になる最近ですが、いかがお過ごしでしょうか?
さて、僕はオランダ第二の都市ロッテルダムでのタイニーハウス作りのお手伝いを終え、次の目的地であるオス(Oss)という場所に来ています。ここはオランダの田舎。酪農やコーン栽培を中心とした農業が盛んな地域で、空が広くのんびりとした空気が流れています。のどかなだけではなく、カパラッ、カパラッと家の近所を乗馬をする人達がいたり、至る所に牛や馬、羊、鶏、ダチョウなど家畜が小屋や芝生で牧畜されていて、お散歩していて見飽きない風景が広がっています。動物園みたい。(永田健一朗
2020/02/20 )

■「食べ物の森」をつくる農家さん
ここで僕は、WWOOFというオーガニックファームに特化したボランティアマッチングサイトを使い、ある農家さんの元でお世話になることになりました。その方は、アグロフォレストリーという手法を用いて、なんと25haもの土地を、「食べ物の森」にしようとしています。
アグロフォレストリーとは、農業(agriculture)と林業(forestry)を合わせた単語。樹木を栽培し、その樹間で家畜や農作物を飼育・栽培する農林業のことです。主にアフリカや南米と言った場所で普及しています。
その土地の自然な森林更新に沿した農業であるという意味では、「生態学的な資源の管理システム」であるとも言え、経済・社会・環境の持続可能性を推進する可能性を秘めているらしいのです。【リンク
この農家さんは、3年前から、「BOER-IN-NATURE」という名称で、25haの土地を4つのランドスケープにゾーニングし、樹木と農作物、牧畜を組み合わせたやり方を実践しています。
僕はここで、木々の補植や杭の差し替えなどのお手伝いをさせて頂きました。

■アグロフォレストリーをオランダで実践することへの違和感
僕自身、このアグロフォストリーという手法を初めて知った時の衝撃は今も忘れられません。食べるための農業と、住むための林業という全く異なる領域の生業を融合させることにより、作物の生産性と生物多様性という一般的にはトレードオフの関係にあるものを「両立」できる第3の道がある とは思いもよらなかったからです。
しかしこの手法は、大規模な農地開発やよって土地が荒廃してしまった熱帯地域で、森林を再生させながら農作物栽培も行おうという経緯で始まったもの。南アメリカやアフリカなど熱帯で多様な植物が育ちやすい気候があるからこそ出来るものかなと僕は理解していました。土地も違えば、農業の形も変わるもの。熱帯地域ではフィットしたとしても、気候環境が大きく異なるヨーロッパでこれが有効な方法なのかは分からなかったのです。正直なところ、上手くいかない可能性も大きいんじゃないかって、半信半疑でした。

■Wilcoの自信
僕は思い切ってオーナーのWilcoに聞いてみました。
“アグロフォレストリーと言えばアフリカや中南米が一般的だけど、どうしてヨーロッパでもやろうと思ったの?”
すると彼はこう言いました。
“この農場があるエリアは、オランダの中では自然が多く存在している場所で、政府は更にここにある自然を豊かにするために、生物多様性を高めていく計画を作ったんだ。僕は生物多様性を高めながらでも、地域の食料供給に貢献できる様な形として、アグロフォストリーの森をつくることを提案した。確かにヨーロッパでアグロフォストリーを大規模に実践する農家はほとんどない。ほとんど手探り状態でね。でもね、こんなニュースがあるんだ。去年イタリアの農業地で5ヶ月間雨が降らず、干ばつに襲われた地域があったんだ。すると、平地の肥沃な土壌に栽培していた単一作物は全てダメになってしまった。しかし一方で、痩せた土壌の丘に植えていた木々と草地の混植植栽は一面緑だったらしいんだ。僕はこの話に大きな可能性を感じたんだ。”

■気候危機時代におけるアグロフォレストリーの可能性
Wilcoの指摘はとても鋭い、と思いました。今、世界のどこにおいても、気候変動は間違いなく進行しています。もはや気候変動ではなく、気候危機だと言われているとても深刻な状況。僕がいるOssの天気も平均気温より約10度高い日も少なくありません。Wilcoも予想より早く芝が伸びてきていると言っていました。南極でも、最高気温が20度を超えたというニュースも。
そんな中、天気にその成長の多くを依存する農作物に対する影響は計り知れません。実際に、温暖化や干ばつのみならず、オーストラリアやアマゾンの森林火災や東南アジアにおけるバッタの異常発生など、少しずつその現象や農業被害は重症化かつ多様化している様に感じます。
そのような気候危機時代を生きていくためには、今までの様な大規模・単一栽培が中心のモデルから、よりレジリエンスの高い農業の形へのシフトが必要になってくるのでは?と考えました。
ちなみに、レジリエンスとは「回復力」のことを指します。この記事では、生態学における「安定性」との比較から、分かりやすくレジリエンスについて紹介がされています。
“レジリエンスとは、変化や外乱を緩和し、個体数や状況を維持する粘り強さ”【リンク
つまり、イタリアの例で言うと、平地の単一栽培エリアはレジリエンスが低く、丘にある混植エリアはレジリエンスが高かったと言えます。

■時代に沿した農業のカタチ
日本でもヨーロッパでも、現在の農業のスタンダードは単一栽培(モノカルチャー)です。国や地域によって規模や種類に差異はあるものの、米は米だけを田んぼで作り、小麦は小麦、野菜は野菜、茶は茶…など、一つの農地では、一つの作物を育てています。(二毛作三毛作のように時期をずらす手法はありますが。)
しかし、今もこれからも環境が刻一刻と変化していく中、果たしてそれが本当に「効率的」なのかは、立ち止まって考えてみる必要があると思います。
人間が生きていくためには、食べ物が必要です。2050年には世界人口が100億人近くにのぼると推定されており、それだけを考えると、今まで以上に食糧生産が必要となります。
確かに、一つの農地からどれだけの食糧が生産できるのか?という目線も大事ですが、アグロフォレストリーの様に、その農作物を育ててくれる生態系も同時に「育てて」いくという長期的な目線も必要なのではないだろうかと、感じています。

以上転載終了

■まとめ
このように、アグロフォレストリーは、一つの可能性を提示しています。作物も樹木も植物です。元来、自然は、多種多様な種が同一環境に存在することによって、成立していました。
本文にもあるように、単一植物が、なんhaの耕地に存在するのは、まさに不自然。

一方で、地球環境という大きな視点で見ても、これまでの農のかたちである 植えて育てて収穫するといったサイクルは、植物が存在したり、消滅したりと、この有り様もかなり極端な自然の状態であるように思います。

その中で、アグロフォレストリーは、変化する自然外圧状況に対して、柔軟に適応していく可能性がありますし、本来の自然のままで、存続できていく環境は、まさに本源的可能性を秘めています。
農作物を育ててくれる生態系も同時に「育てて」いくという未来の農のかたちになっていくのではないでしょうか?アグロフォレストリーに注目です。

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