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2009年07月28日

農薬を徹底追究!!!(6)除草剤(後半)

類農園研修生のさとうです
sugi70さんからバトンを受取り、①除草剤の作用メカニズムと、②今後の追求課題の2点をまとめてみました
 まず「①除草剤の作用メカニズム」ですが、除草剤の多くが光合成のどこか!で作用していることから、下記で説明してる内容は基本的にはsugi70さんが前回まとめた光合成のどこかで起きてる現象なんだな~とイメージしてくれやら良いです 😉
 余談になりますが、今回作用メカニズムを調べてわかったことは、植物はその生命を維持するために至るところでさまざまな現象が起こっていて、そのある一部分に作用することで、始めて除草剤としての効果があることがわかりました。
 
 次に「②今後の追及課題ですが、今回だけではなかなか追求し切れていないことが多いため現段階で何が課題として残っているかを整理してみました。もちろん私達だけではなくみなさんのコメントも参考にしていきながら徹底追求していきます!!
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5、現業で最もよく使用する除草剤の作用メカニズム
5-1:位置づけ
 除草剤には様々な種類があり、農薬取締法において登録されているもので何百とあり、その作用メカニズムも様々です。このことからすべての除草剤の作用メカニズムを一度に理解するのには限界があるため、まずは現業で最も良く使用する4つの除草剤についてその特徴、作用メカニズムを追求しました。
5-2:現業で最もよく使用する除草剤のメカニズムの解明
①バスタ
 有効成分:グリホシネート
 作用機構別分類:栄養代謝阻害剤のアミノ酸生合成阻害剤のグルタミン合成酵素阻害剤
 選択性or非選択性(注1):非選択性
 毒性(注2);普通物
有効成分グリホシネートが植物の茎葉部から吸収され、グルタミン合成酵素の活性を阻害することで、アンモニアが植物体内に異常蓄積し、生理代謝を阻害することで植物を枯らす。
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②ラウンドアップ
 有効成分: EPSP阻害剤
 作用機構別分類:栄養代謝阻害剤のアミノ酸生合成阻害剤の分岐アミノ酸生合成阻害剤
 選択性or非選択性:非選択性
 毒性(注1);普通物
 有効成分(EPSP阻害剤)はシキミ酸回路(芳香族アミノ酸であるチロシン、フェニルアラニン及びトリプトファンの生合成反応経路)においてシキミ酸-3リン酸とホスホエノールピルビン酸から5-エノールピルビルシキミ酸3リン酸(EPSP)を合成する酵素であるEPSP合成酵素と複合体を合成することで、EPSPの合成を阻害する。これによってアミノ酸(トリプトファン、フェニルアラニン、チロシン)が生合成されず、代謝は乱れ、植物は枯れてしまう。
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③トレファノサイド
 有効成分:トリフルラリン
 作用機構別分類:細胞分裂阻害剤
 選択性or非選択性:非選択性
 毒性(注1);普通物
 ジニトロアニリン系の除草剤で、有効成分であるトリフルラリンは「水に極めて溶けにくく、土壌に吸着しやすい」という特性を持っており、雑草の発芽時に幼芽、幼根から吸収され分裂組織の細胞分裂を阻害する。
 植物の成長において、有糸分裂による細胞分裂は必須の過程であり、その過程は、まず核内におけるDNAの複製により形成された一対の染色体が細胞の赤道面を横切って平面状に配列される。次に対を成したこれらの染色体のそれぞれは、微小管からなる紡錘糸により反対極に引き寄せられる。その後、細胞膜、細胞壁の生成を経て二つの独立した細胞となり、分裂は完了する。有効成分トリフルラリンは微小管を構成する球状たんぱく質であるチューブリンに直接作用し、その微小管中での重合を阻害する。

④アピロトップ
 有効成分:ピリフタリド、プレチラクロール、ベンスルフロンメチル
 作用機構別分類:以下、各有効成分別に記載
 選択性or非選択性:選択性
 毒性(注1);普通物
・ピリフタリド
作用機構別分類:アミノ酸生合成阻害剤の分岐アミノ酸アミノ酸生合成阻害剤
 有効成分であるピリフタリドはイソベンゾフラン環を有し、作用機構としてはバリン、イソロイシン等の分岐鎖アミノ酸の生合成過程に関与するアセト乳酸合成酵素の働きを阻害することで、タンパク質合成が阻害される。根部、基部から吸収される。
・プレチラクロール
作用機構別分類:脂肪酸生合成阻害剤の炭素鎖伸長阻害剤
 有効成分であるプレチラクロールは植物の脂質生合成系の中でC20以上の超長鎖脂肪酸生合成系酵素阻害であり、雑草に対して主に幼芽部の伸長を抑制し増殖を抑え枯死させる。
幼芽部、根部から吸収される。
・ベンスルフロンメチル
作用機構別分類:アミノ酸生合成阻害剤の分岐アミノ酸アミノ酸生合成阻害剤
 葉茎基部および葉茎部から吸収され、雑草体内で分岐鎖アミノ酸(バリン、ロイシン、イソロイシン)の生合成に関与するアセト乳酸合成酵素(ALS)を抑制。植物の細胞分裂に不可欠な分岐鎖アミノ酸および生合成が阻害され、雑草は生育を停止し、枯死に至ります。根部、基部、茎葉部から吸収される。
注1)
①選択性
 選択性の除草剤は作物の栽培されている水田、畑に用いられ、作物には害がなく雑草だけを防除する薬剤です。例えば水田ではイネの生育には全く影響がないのに、ノビエや広葉の雑草は枯らしたり発生を抑えたりすることのできる選択性の高い除草剤が使われています。また、畑で用いられる除草剤のなかにはイネ科の雑草だけを枯らす除草剤もあります。こうした薬剤は豆類やいも類、野菜類などの広葉作物の中に混在して生えるメヒシバ等のイネ科雑草だけを枯らすことができます。
②非選択性(草の種類を選ばずほとんどの草に効果のあるもの)
 非選択性の除草剤は散布する場所に生育する雑草をすべて防除することを目的とした除草剤です。宅地、駐車場、道路、鉄道、公園、運動場などで有用植物を植えていない場所に使われる他、畑や水田では、作物にかからない周辺部分や畝と畝の間に用いたり、播種前や収穫後といった作物のない時期に散布したりします。
注2)
 「毒物」、「劇物」、「普通物」これらの用語は、急性毒性の強さの程度を示すものです。急性毒性とは、ある量の化学物質を体内に取り込んだときに、短時間で発現する毒性のことであり、その毒性の強弱を調べるのが「急性毒性試験」です。通常、マウスまたはラットに、投与量を変えて化学物質を食べさせ、半数の動物が死ぬ量を求めます。この数値を半数致死量(LD50:50% Lethal Dose)といい、体重1kg当たりの量(mg)で表されます(LD50○○mg/kg)。LD50の値が小さいほど、毒性が強いことになります。一般に化学物質は、このLD50の数値によって、「毒物」「劇物「普通物」に区分されます。毒物はLD50が体重1kg当たり30mg以下のもの、劇物は30~300mgの範囲のもの、普通物は300mg以上のものです。農薬も一般の化学物質と同様に、「毒物」または「劇物」に該当する場合は「毒物及び劇物取締法」によって、農薬の使用にあたる作業者の安全性を確保するために、その取り扱いが規制されています。
6、今後の追及課題
①作用機構別のメカニズムの解明
今回は現業で最もよく使用する除草剤の作用メカニズムのみを取り扱いましたが、今後は他の除草剤に関してもその作用メカニズムを解明していきたいと思います。
②抵抗性の追求
 除草剤に対して抵抗性を持ち、結果除草剤か効かなくなる場合があります。植物がその抵抗性を具体的にどのように獲得し、どのようなメカニズムで抵抗性を示しているかを解明します。
 
③残効性、残留性の追求
 除草剤に限らず農薬は散布されると日光や風雨にさらされ、また植物の体内で分解されていきます。もし、あまりに分解が早いと効果の持続する時間が短く、何回も散布する必要があります。このため、かつては効果が長く続くこと、つまり高い残効性のあることがメリットとして考えられていました。しかし、あまりに安定的で分解されにくいことは環境悪化の原因になると懸念もされています。つまり、残効性、残留性が高いことによる問題が出てきました。このため、現在では、効果が適当な期間持続し、その後は速やかに分解され残留の少ないことが条件になっています。作物への効果を示す期間は現業で使用する上で必ず理解しておかなければなりません。また環境への影響はみなさんの関心事項の一つであると思われますので、残効性、残留性についても追求してまいります。
 
④安全性
最後に人間に対する除草剤の安全性についてですが、これは農薬全体に問題視されているものですので、別立てで追及していきたいと考えております。みなんさん関心ありますよね!
引用、参考文献は以下の通りです
・シンジェンタHP(http://www.syngenta.co.jp/apiro/seihin/apirotop_51/index.html 閲覧日:2009年7月22日)
・バイエルンクロップサイエンスホームページ、(http://www.basta.jp/ 閲覧日:2009年7月22日)
・ラウンドアップマックスロードHP(http://www.roundupjp.com/ 閲覧日:2009年7月22日)
・農薬ネットHP( http://nouyaku.net/ 閲覧日:2009年7月22日)
・農薬工学会HP(http://www.jcpa.or.jp/index.html 閲覧日:2009年7月22日)
・生物IB・Ⅱ 著:水野丈夫 他 出版:文英道
・農薬の科学 著:桑野栄一 他 出版:朝倉栄一

投稿者 nori0527sato : 2009年07月28日 List   

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