農薬を徹底追究!!!(4)農薬の使用量・・・ちょっと休憩!? |
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2009年07月28日
農薬を徹底追究!!!(5)除草剤 前編 ~概要とメカニズム~
皆さんこんばんは、sugi70です
今回は『除草剤』について追求しました
しかし、この除草剤、調べれば調べるほど奥が深く、一回の投稿では書ききれないほどのボリュームです。なので、今回は導入編として、大まかに概要を説明したいと思います 😉
●はじめに
投稿内容は2本仕立てで次のような構成となっています。
1.そもそも何で除草するの?
2.除草剤の歴史と概要
3.光合成の仕組み
4.除草剤のメカニズム、作用機構
5.類農園でよく使っている除草剤の、より詳しい作用メカニズム
6.今後の追求課題
さて、除草剤を追求した上で気づいた点が4つあります。
☆除草剤は植物の何らかの組織や代謝経路、酵素に作用している。
☆植物も生物であって、細胞が集まって出来ているということ。
☆除草剤のほとんどは、光合成の回路に働くことで、植物を枯らしている。
単純なことですが、非常に重要なポイントだと思います。
除草剤の追求をする上では、植物のメカニズムも追求する必要がありそうです。
では、さっそく本題に入っていきましょう!
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1.そもそも何で除草するの?
まず、作物の栽培において、除草は重要な作業の一つですが、そもそも何故雑草を除去する必要があるのでしょうか?
作物栽培は、自然界のように、多種多様な生物が生育する環境ではなく、農地という人工的な環境(それも限定された範囲内)の中で、作物をできるだけ多く収穫することが目的です。収量をあげるためには、いかに作物に光や水、養分を供給するかが課題になります。
その結果、特定の作物へ十分に栄養を与えるためには、それ以外の植物、つまり雑草は全て、作物にとっての競争相手になってしまいました。さらに、作物の特徴は、栄養価や嗜好性に特化した結果、その他の繁殖力や、抵抗力などが低いものが多く、雑草との競争に負けてしまうことがほとんどであるということも重要なポイントです。
それ以外にも、害虫やウイルス、病原菌の温床になること、収穫・選別の際に雑草が混じることで手間になるといった弊害もあります。
このような理由から、農耕は人が手を加えて雑草を防除しなければ十分に作物が育たないという構造になっています。作物栽培は常に雑草との戦いでもあるのです。
参考として、雑草害というものもあり、大きく次のように分類されています。
環境生態学研究室さんより引用、抜粋→http://hp.brs.nihon-u.ac.jp/~asano/weed12.htm
1)作物の生育阻害:光,水分,栄養,スペース
2)収穫作業に対する障害:労働時間,収量・品質低下(狭雑物の混入)
3)病害虫,植物に対する影響:病原菌の寄主(スズメノテッポウ→ヒメトビウンカの越冬,メヒシバ→縞葉枯病ウイルスの宿主,ワルナスビ,ホオズキ(トマトモザイクウイルスの宿主,雑草とセンチュウの関係,寄生雑草(parasitic plant):ネナシカズラ類,ヤドリギ類,ナンバンギセル類
4)有毒物質の生成・集積:放牧地のワラビ(牛→汎骨髄労),スギナ(ビタミンB1分解酵素),エゾノギシギシ,ヒメスイバ(水溶性シュウ酸)
5)景観の悪化:公園(美観),道路・鉄道(火災),ブタクサ,イネ科雑草(花粉被害),水生雑草(用水路)
このような背景の中から、人力で草を一本ずつ抜くよりも簡単に植物を枯らしてくれる除草剤は開発されてから急速に広まり、近代農業では特に重宝されています。
安定した食糧生産をするという目的においては、除草は特に重要な課題となっているからこそ、現代においては除草剤は必要とされていると言えます。
2.除草剤の概要と歴史
除草剤とは、作物の栽培において、不要な植物(雑草)を枯らすために用いられる農薬です。また、そのメカニズムは、植物に特有な組織や代謝経路に作用することで、使用基準を守れば、他の生物や人間に与える影響が少ないことがあげられます(ただし、毒物および劇物取締法において普通物と認定されたものに限る)。
除草剤によってかなりの省力化が図れるため、現在ではほとんどの農家で使用されています。
除草技術と除草剤の歴史
画像は江戸時代の草取りの様子です。 農林水産省より引用。
除草剤が開発されるまでの、19世紀以前の除草は、人力や除草器、牛馬を用いていました。この他にも、特定の雑草に対して効果のある昆虫を放つ手法、水田に米ぬかや苦汁を撒く手法、塩を撒いて塩害により枯らす方法もありましたが、除草剤ほどに効率が良かったものはありませんでした。
田んぼで使われた除草機です。 仙台市民センターより引用。
除草剤の起源は諸説ありますが、作物に比較的影響を及ぼすことなく、雑草を防除できたのは、18C末の小麦栽培における硫酸銅の水溶液とされています。小麦の葉の表面がロウ成分によって水をはじくのに対し、雑草はそれが少ないという性質を利用したものでした。
ただし、硫酸銅によって土中の酸性度が増すことや、農機具が腐食するなどの弊害もあり、あまり普及はしなかったようです。
そして、1940年代に2.4-Dが開発されます。これは双子葉類の植物に効果があり、イネ科には作用しにくいという選択性を持っています。これによって、特定の作物を栽培しつつ、雑草を防除できるようになり、除草の手間がかなり省力化されました。
2.4-D以降、少ない手間で雑草を枯らしてくれる除草剤は、農民の間で急速に広まり、以後、様々な作用機構の除草剤が開発され、現在に至ります。
中でも、現在最も広く用いられている除草剤で、1980年代にアメリカのモンサント社が開発した、『ラウンドアップ』があります。これは、非選択的除草剤の一種で、接触した植物全てに作用し、有効成分グリホサートがトリプトファンなどのアミノ酸の合成酵素を阻害し、枯死させるというものです。現在では、遺伝子組み換え技術によって、ラウンドアップの耐性をもつ作物が開発され、これとセットで栽培することで、かなりの省力化が実現しました。
3.光合成の仕組み
画像は、海にいきる-くうか・食われるか-さんより引用。
除草剤を追求していくと、そのメカニズムは、植物の光合成の経路に作用するものが大半であるということがわかりました。
まずは、植物に特有の機能である、光合成について押さえておきましょう。
光合成は、『光と水、二酸化炭素を使って、でんぷんを作り出すこと』と小学校で習いましたが、追求していくとさらに複雑な構造になっています。
光 CO2
↓ ↓
H2O→→→(電子伝達鎖)⇒ATP,NADPH→→→(カルビン回路)⇒糖類
⇒O2 (その他の回路)⇒アミノ酸、脂肪酸
( 明反応 )( 暗反応 )
細かく説明すると、一般的な光合成とは、太陽エネルギーを利用してATPやNADPH等の高エネルギー中間体を生成し、それらを用いて、二酸化炭素と水から炭水化物、アミノ酸や脂肪酸を生合成する植物に特有の代謝経路のことを指します。これによって植物は、自らエネルギーを生成できるため、他の生物のように外部からエネルギーを取り込む必要がなくなりました。これが、独立栄養生物と呼ばれるゆえんです。
そして、光合成は大きく2つの段階に区別されます。1つは明反応と呼ばれ,光のエネルギーを利用して水が酸素に酸化されるとともに,二酸化炭素の還元に必要なNADPH2+とATPをつくりだすもの。もう1つの段階は暗反応と呼ばれ,NADPH2+とATPを利用して二酸化炭素から種々の糖がつくられます。
光合成はこれだけではなく、ものすごく複雑な構造になっているため、一旦ここまでとさせていただきます。
押さえてもらいたいポイントとしては、光合成の、光エネルギーからでんぷんを作り出すまでの過程には、様々な回路や酵素が関わっているという点です。
そして、除草剤のほとんどは、この光合成経路に着目し、経路の一部分を阻害することで、植物を枯らしています。
3.基本的なメカニズム
除草剤を撒くと、植物は枯れます。
その現象だけ捉えると、不思議に思ったり、中には不気味に思う人もいるかもしれません。
しかし、そのメカニズムは実は単純な仕組みで成り立っています。:P
メカニズムの内容に入る前に、まず、植物って何なの?っていうことを押さえておきましょう。
☆植物も生物
植物の定義は学説によって様々ですが、基本的には、光合成を行う生物と考えてもらえたらいいと思います。植物の体の組織は、他の生物と同様に、一つ一つの細胞で構成されています。
ですから、幹となる生命活動の原理は動物や単細胞生物と同じです。植物が枯れるとは、構成されていた細胞が死に、活動が停止した状態を指します。
大まかに、細胞の活動を停止させるためには、
①物理的、科学的に細胞を破壊する
②細胞に必要な要素(糖類、アミノ酸、脂肪酸)の供給をストップさせる
③必要な要素から、実際に必要な物質に合成させる機能を阻害させる
④細胞分裂を阻害させる
の4つが考えられます。
除草剤も、これらの部分に作用することで、植物を枯らしています。
そして、植物と動物では代謝の構造が異なることに着目し、植物に特有の代謝経路に作用する物質が除草剤と認定されていることが多いです。
☆メカニズム
主要な除草剤を作用機構別に分類すると次のようになります。
(1)光合成阻害剤: 明反応の回路である、光合成電子伝達系を阻害させ、細胞内で活性酸素を増加→細胞膜を破壊させる
(2)光色素生合成阻害剤: カロテノイドなどの光色素の合成を阻害させ、白化→枯死させる
(3)栄養代謝系の阻害剤: 暗反応に働きアミノ酸、脂肪酸などの生成を阻害させる
(4)ホルモン作用かく乱型阻害剤: 合成ホルモンによって細胞内のホルモンバランスをかく乱させる
(5)その他(細胞分裂阻害、セルロース合成阻害、SH基の阻害など)
光合成阻害剤
明反応は、光エネルギーを用いて水を酸化させ、水素イオン、酸素分子、電子を取り出し、それを用いてATP、NADPHを生成させる電子伝達系という経路によって成り立っています。
そして、ATPの合成に関与する、電子の移動を阻害することで、活性酸素を発生させ、細胞膜を破壊し、枯死させます。
光色素生成阻害剤
植物が光を吸収するためには、カロテノイド、クロロフィルなどの色素が必要です。光色素生成阻害剤はこれらの色素の生成に関与する酵素に働くことで、色素の生成を阻害させます。これによって光合成をストップさせるほか、紫外線によって細胞が破壊されます(色素には、生物にとって有害な紫外線の吸収を抑える効果もある)
栄養代謝系阻害剤
糖類やアミノ酸を生成する暗反応にも、様々な酵素や経路が関わっています。栄養代謝系の阻害剤はこれらに作用することで、暗反応をストップさせ、細胞に必要な要素の供給を阻害させたり、代謝機能を混乱させます。
ホルモン作用かく乱型阻害剤
植物ホルモンとは、生長や発芽、花芽分化などの、植物の生理機能を調節する物質で、この除草剤は、合成ホルモンという、植物ホルモンに類似した物質を投与することで、ホルモンバランスを崩す作用があります。
その他にも様々な作用機構が存在しますが、除草剤の基本的な構造としては、細胞の代謝を何らかの形で阻害し、枯死させるという仕組みになっています。そして、(1)(2)(3)については全て光合成の回路に関わっていることも特徴として挙げられます。
以上です。引き続いて、第2部ではこれらの作用機構について、類農園でよく使っている除草剤を具体的な事例として挙げていきます!それを踏まえた上で、今後の追及課題なども述べていきます。
それではサトウさんよろしくお願いします
■参考文献
・wikipedia 『除草剤、光合成』 http://wikipedia.org/
・光合成の森 http://sunlight.k.u-tokyo.ac.jp/
・農業工業会 農業コラム 防除の文明史 http://www.jcpa.or.jp/column/control/17/index.html
・農薬の科学 -生物制御と植物保護- (2004年) 桑野、首籐、田村
・光合成とはなにか 生命システムを支える力(2008年) 園池
投稿者 sugi70 : 2009年07月28日 TweetList
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コメント
投稿者 K.W : 2010年4月10日 01:43
大学では、環境科学や環境保全学について勉強していましたので、仮に自分が農業をするとしたら有機肥料中心の環境保全型農業をしたいと思います。岐阜大学では、水田などの水場があることで森林が豊かになるという事を学んだので、林業や水稲をイメージしていましたが、研修は非常に短期間ですが受けてみて、弟子入りするにしても自分がやるなら、やはり畑だろうと思いました。
高校までは茨城県東海村に住んでいたので、田舎暮らしは好きですが、実際に農業をやるかどうかはまだわかりません。ただ、もともと生物学が好きで勉強していたので、農協などへの就職を考えた時期もあるのですが…。
就職活動はまだしばらく続きそうですが、かみなか農学舎も面白く、視野に入れたいと思います。
投稿者 K.U : 2010年4月10日 01:59
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★こんばんわ~お疲れ様です。◎越後から来た おやじです!
皆様の温かいご指導を頂き なんとか研修も終わろうとしています。「農業」という仕事の大変さ大切さを身をもって改めて学ばせて頂きました。(遥々、来た甲斐”大”)今後も まだまだ 学ぶ事が沢山あり不安も「大」ですが、私が目指す物も 夢から目標に変わり 更に、類農園の皆さんからの活力で力強く背中を押して頂けた様な気がいたします。今後は心配や後悔はせず前向きに”今に 集中”して生きて行こうと考えます。
農園長様 ちょっと疲れ気味のこんな中高年を快くむかえて下さり 最後になりましたが 本当に本当に有難うございました。そしてこの皆様方とのご縁を生涯の宝物にして行こうと思います。