2023年05月13日

【「食べる」と「健康」その本質に迫る】その9~私たちは、細菌が取り持つ栄養・エネルギー循環の共同体に生きている~

本シリーズでは「食べる」という行為の本質を掴むことが真の「健康」にも繋がると考え、様々な角度から動植物の食の仕組みを追求してきました。

その2 「土壌動物」から見えてくること

その3 生物はいつから「食べる」ことを始めたのか?

その7 植物は微生物との共生によって成長する

その8 人の腸内細菌はどこから来るのか?~土と人は本来繋がっている

この追求の過程で、常に登場してきた生物がいます。それは、「細菌」。
これが意味するものとは・・・・

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2023年05月01日

【「食べる」と「健康」その本質に迫る】その8 人の腸内細菌はどこから来るのか?~土と人は本来繋がっている

 昨今、腸内細菌の研究はさかんに行われており、人の健康維持に非常に重要な役割を果たしていることが明らかになってきています。単に栄養吸収という観点や消化器系の疾患だけではなく、アレルギーやアトピーといった自己免疫系の疾患や、自閉症やパーキンソン病など中枢神経系の疾患、うつ病などの精神疾患にも影響しているという報告もあります。(脳の健康・病気との深い関わり 腸内細菌と「脳腸相関」とは 

 本シリーズではここまで、動物の腸の起源に立ち戻り、その役割を追求したり(シリーズ2~4)、植物と土中微生物の共生関係(シリーズ5~6)を追求してきました。

 今回は、人・土・微生物がどのように繋がっているのかを見ていきたいと思います。

 前提として、土中細菌にしても腸内細菌にしても、その種類は膨大で、現在人間が認識し、名前を付けているものはごく一部で全体の0.00001%程度とされています。ですので、腸内細菌や土中細菌の数を直接検査して増えた減ったという議論をしたり、一部の細菌を取り出して議論してもあまり意味を持たないと考えられます。そこでここでは、周辺事実から論理を組み立ててみたいと思います。

 

■人は微生物と共生している

改めてですが、人がどれくらい微生物と一緒に生活しているかということを認識させられる事実を抑えておきます。

人体には、 5000種類を超える細菌が存在し、その細胞の数は100兆個以上といわれています。

人体を構成する細胞の数は37兆個程度と言われているので、細菌数は約3倍! 体内に棲む細菌のうち、約9割が腸内に棲みついており、重さは約1キロ~2キロにもなります。 この腸内細菌が、免疫機能と深く関わっているというのが最近解明されつつあり、細菌が人間を構成する存在そのものであるという認識が拡がりつつあります。

腸内フローラ最前線|森下仁丹株式会社

(画像はこちらからお借りしました。)

■腸内細菌はどこから来るのか?

赤ちゃんが胎内にいるときは、無菌状態なんだそうです。その赤ちゃんが生まれてくる際、お母さんの産道で最初の細菌を受け取ると言われています。(生物史から、自然の摂理を読み解く

「赤ちゃん時代は、胃酸が弱いので口から入った細菌が腸まで届くが、生後3年までに胃酸が強くなると、その後、腸内細菌は一生変わらない」という説もあるようです。(おそらく、3歳までに成人に近い腸内細菌叢になることからこのように捉えられているが、実際には日々変化していると思われます)。

 しかしながら、進化の過程を見れば、3歳以降も食べ物であったりあるいは空気中から様々な細菌を腸内に取り込み、元来共生できていなかった細菌と共生を可能にし、消化できなかったものを消化できるようになったり、新たな免疫機能を獲得しながら進化してきたことは明らかです。(参考:沖縄科学技術院大学院大学「進化するために失うもの -哺乳類の進化を腸と細菌の関係から見る-

 現在では、母親や遺伝的要因より、食事要因のほうが、腸内細菌に与える影響が大きいとの見方が有力と考えられています。

 

(参考:書籍『免疫力を高める腸内細菌』佐々木淳 著)

 

 

■「土」は腸内細菌の重要な供給源ではないか?

 このように、後天的に腸内細菌が変化していくことが明らかになってきているのですが、その中でも最も重要な役割を果たしていると考えられるのが「土(土中細菌)」です。『腸と森の「土」を育てる』の著者で医師でもある桐村里紗氏は著書の中で以下のように書いています。

 

まず、食べ物は歯の咀嚼によって粉々になり、唾液や胃液、膵液、腸液などの消化液に含まれる消化酵素で分解されますが、この働きは、大きな有機物である落ち葉や動物のフンや死骸を分解するミミズなどの土壌動物のような役割です。

人の栄養吸収は、主に小腸までに行われ、消化・吸収されなかった分を大腸の腸内細菌に回します。腸内細菌の主な生息場所は、小腸と通り越した大腸で、小腸の1万倍程の高密度で生息しています。

そうして分解されたものが腸内に運ばれると、今度は腸内細菌が発酵させ、その結果としてビタミンやミネラル、アミノ酸、有機酸などの栄養が豊富な腐植土が出来上がります。

そもそも、腸内に暮らす強制金の由来は、私たちの祖先が土壌から取り込んだ細菌なので土づくりが得意なのです。

 

まず注目したいのが、腸内で行われている分解作用を「発酵」と言っている点です。

発酵と腐敗は何が違うか?ということを調べると

発酵=人体にとって都合の良い分解作用

腐敗=人体にとって都合の悪い分解作用

という説明がなされます。(参考:発酵美人

要するに腸内で行われている微生物の働きと似たような分解作用をしているものを発酵とよんでいるのでしょう。

 

私自身は農業に携わっているのですが、腐敗している土では野菜はうまく育たないとよく言います。根が傷んだり、そもそも発芽しません。つまり、土は本来「発酵」しています。人間の腸と土は、同じような細菌が分解者として働いているのでしょう。

 

さらに、書籍「免疫力を高める腸内さ菌」のなかで著者の佐々木淳氏は「腸内細菌の祖先は土壌細菌である」と書いています。実際に「土と腸それぞれにどんな細菌がどれくらいいるのか?」というのは、天文学的な数の細菌がいますから、調べることはできません。ですが、これは上記の「発酵」ことから考えても整合する見方だと思います。

また、生命の歴史からみても、そもそも人類は細菌ネットワークの世界に細菌になってお邪魔している新参者です。

46億年前に地球が誕生し、10億年ほどたったころに海ができました。生命の誕生は、その海のそこで噴出する400度にも達する熱水噴出孔で産まれた「高熱性メタン菌」です。それからミネラルが溶け出した海は様々な微生物を生み出しました。

そんな微生物の世界に、海藻や、海綿のような生物が産まれ、その内に腸と口を持つ動物が産まれたのでした。

海で生命が繁殖しても、陸上は荒涼とした岩石が拡がっていました。そこに最初に進出したのも細菌類でした。彼らは岩石の表面に住みついて鉱物を分解したり、大気から吸収したものでエネルギーを得ました。そのあと、コケのような植物が進出し、細菌類との共生をはじめます。植物は根から滲出液をだしたり、枯れた身体を細菌のエサとして供給して分化させながら繁殖を促し、そこで「土(鉱物に有機物が混ざったもの)」ができ拡がっていきます。動物が陸上進出して反映できたのは、その細菌と植物のネットワークである「土」が出来上がっていたからです。そして動物が食べて排泄する行為も、そのネットワークの中での共生のために必要な行為なのでしょう。

 

こうしたことを踏まえれば、腸内細菌の祖先は土壌細菌であるということがわかるでしょう。

(画像はこちらからお借りしました。シアノバクテリアが層状に堆積しながら成長してできた、ストロマトライトという岩石)

ちなみに、人類には「土を食べる文化」というものが存在します。

インディアンは疲労回復のために土を食べたそうです。アイヌ民族や、フランスでも土を料理にする文化があります。漢方などの薬として土を食べる文化も、世界中にあるのです。(参考:ウィキペディア

 

さて、人間の腸と細菌と土がいかに繋がっているのかを見てきました。

繋がっているというよりも、人間は人体の中に自分の細胞よりも多い細菌と共生し、それは土中で細菌や植物が共生しているのと同じであること、そもそも腸内菌は土中細菌であることがわかってきました。このように考えると、自己とは何か?というアイデンティティが溶けてなくなり、広大な細菌、菌類、植物と動物のネットワークの一部として身体が拡張しながらも他社と一体となるような感覚をもててきませんか?

次回は、どんなものを食べると体に良いのか?を細菌との共生の切り口から考えてみたいと思います。

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2023年04月28日

【進化していく農法について考える】シリーズ4  アイガモ水稲同時作に学ぶ~自然と向き合い続けること

こんばんは☆

自然と向き合う農法として、今回は「アイガモ農法」を紹介します。
なぜこれをご紹介したいかというと、〇〇研究所といったお国(お上)先導ではなく、農家さん自身が志し、試行錯誤の実践をする中で創り上げてきた農法だからです!!

その農法を支える想いとは、一体どんなものでしょうか?

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2023年04月28日

自然を通じた成長シリーズ⑧~先住民族・縄文人・インディアンに学ぶ~

2回前のシリーズ「自然を通じた成長シリーズ⑥~子どもの成長の根源である「同期(同調)力」の発達過程をたどる。~」(リンク)では、
>社会で求められる力の根源には、「人との同期」、「自然との同期」が極めて重要であり、幼少期・少年期にこそ『同期力』を育む機会を増やしていくことが重要<
ということが見えてきました。

それをもとに、前回は宮大工などの「職人」が見ている自然観・世界観に同化してみました。(リンク

今回はさらに遡って、インディアンや縄文人の生き方・自然の捉え方から、私たちはどう生きるべきか、学んでいきたいと思います。

 

■グアテマラの先住民族

>「先進世界」が人間として多くの価値を失ってしまったことは明らかです。豊富な物資資源は、たくさんの若者に絶望をもたらしています。
共同体が必要としないものがありすぎ、そのために人類が破壊されてしまうのです。私たち先住民族は、科学者に知られていない技術も所有しています。これはたぶん良いことでしょう。
科学的な分析は、貧しい人びとの日常、とりわけ子どもに与える食料を求めて毎日闘い続ける人びとの経験とは、あまりにもかけ離れています。科学者の発明は、人類の大多数の基本的な必要に応えるものではありません。

>私たち先住民族は、生命、宇宙、男、女、そして自然について、「西洋」世界とは完全に異なるとらえかたをします。大地は、世界の野心的な人びとが望むような鉱物、石油その他の経済的な資源以上のものです。父なる太陽、母なる大地、祖母なる月は、生活と精神のすべてにかかわる存在です。大地は、文化のルーツであり母乳の源、あらゆる思想と精神の源なのです。

>大地は私たちの記憶を保持しており、へその緒が埋められているところです。私たちは何世代にもわたって大地を歩いてきました。そして子どもや孫が歩き続けられるために、母なる大地の世話をすべきなのです。

「先住民族女性リゴベルタ・メンチュウの挑戦」
https://www.rui.jp/ruinet.html?i=200&c=600&t=6&k=0&m=87954より、引用。

 

■縄文人

画像はこちらからお借りしました。

>第1回 縄文人にとって自然とは
過酷な天災という自然外圧は、突然現われる神の訪れであったと見られ、又四季の変化は、人々に食料の恩恵を与える一方で、周期的に移り変わる自然環境として、日常的に適応すべき、不可避の外圧であったと見られる。
自然への恐怖、畏怖の念、そして台風が去った後の穏やかさを与える自然への感謝の念。自然には決して抗えない、生かされている意識、それらが我々日本人(かつては縄文人)の心に刻み込まれてきた。
⇒自然とは外圧であり、生きる根源である

>第6回 縄文人(日本人)の信仰とは対象へのあくなき同化
縄文時代のアニミズム(自然崇拝)に表れるように、その本質は対象へのあくなき同化です。
日本人の宗教とは祈りも誓いも含めて見えない対象(自然やその奥にある精霊)への同化追求の姿なのです。・・・つまり日本人の信仰心とは同化力の事なのです。・・・この信仰は日本語となり言霊となり現在にも引き継がれています。
⇒信仰=対象同化

「縄文体質とは何か(総集編)~日本人の精神的骨格である」
https://magokun.hatenablog.com/entry/2019/11/04/183437より引用。

 

■インディアンの教え

①イロコイ族
宇宙は三次元のクモの巣のようなもので、二本の糸が交差するすべての点が、ほかのあらゆる点と繋がっている。<大いなる生命の織物>のどの部分を触っても、かならずほかのあらゆる部分に影響を及ぼすだろう。ようするに、ありとあらゆる存在がつながっていて、ほかのあらゆる存在と関係し合っているということだ。だとしたら、私たちは宇宙の中で兄弟姉妹だとは言えまいか。

 

②ナヴァホ族
俺は大地の果てまで出かけてみた。俺は水の涸れ果てるところまで出かけてみた。俺は空がおしまいになるところまで出かけてみた。俺は山のつきるところまで出かけてみた。
そして、俺は自分の友でないものなど、ひとつも見かけなかった。

画像はこちらからお借りしました。

>インディアンと縄文人に共通するのは、全てはエネルギーを持ち、生きて動いており、繋がり合って影響し合って循環しているということ。

>相手と一体化したい、物事を上手くいかせたいと言いながら、自分だけ、その場だけ、目の前の相手だけ、目先の課題だけ・・・となりがちな私たちですが、「全ては動いて循環しているのだ」と捉えると、気持ちや行動が変わっていきそうです。

「縄文人の世界観~動いて循環しているからこそ世界は調和する」
http://bbs.jinruisi.net/blog/2022/09/6995.html
「一万年の旅路(ポーラ・アンダーウッド著:星川淳=訳)」より引用。

―――――――――――――――――――――――――――

★インディアンや縄文人が見ている自然観や世界観。そこに一歩でも近づくために、私たちはどう行動していけばいいのでしょうか?

現在の私達は身の回りにあるものに頼り、自分で何かを作り出さずとも生活できています。

・しかし、現実の仕事や自然外圧の中では全てが思い通りにいくばかりではなく、その時々で現実を受け入れ「どうする?」を試行錯誤することで初めて万物との一体化に近づくことができる。

・目の前で起こっていることだけに絞って考えるのではなく、過去~現在~未来と、どういう過程で起こっているのか、その時間軸や背景に想いを馳せる。

⇒本シリーズの追求から、そういった繋がりを学ぶことができました。

 

自然体験や田舎に移住するなど体験・体感する機会が増えている今、物事のエネルギーに直接触れることで自分達も活力を持つことができる。

目に見えるものだけにすがるのではなく、★見えないものこそ原動力があり、本来同化すべき対象ではないでしょうか。

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2023年04月28日

自然を通じた成長シリーズ⑦~万物に溶け込み、そして継承する~

現代社会に生きる我々は生活自体どんどん便利になってきている。

その一方で少なくないものを失ってしまった。それは悠然な自然美であったり、それを感じ取る感性、また地域で生きる共同体的風土。

様々なものが高度経済成長以降、人間本来の能力を封鎖してしまったといっても過言ではないのではないでしょうか。

 

そんな中で現代に生きる職人たちは、モノを慈しみ、自然を愛し、人に向き合う人間本来の『姿勢』がそこにはまだ根付いているのではないでしょうか?

 

そこで今回、

宮大工の棟梁であった西岡常一さん

日本刀を作る刀工・藤安将平さん

のお二人から自然観・世界観・人生観をを学んでいきたいと思います。

 

引用元はこちらになります

「 日本最古の木造建築を守ってきた想い 」

https://www.btwwaterandtree.com/%E6%9C%A8%E3%81%AB%E3%81%A4%E3%81%84%E3%81%A6%E8%A5%BF%E5%B2%A1%E5%B8%B8%E4%B8%80%E6%A3%9F%E6%A2%81%E3%81%8B%E3%82%89%E5%AD%A6%E3%81%B6

「 刀鍛冶 藤安将平さんにインタビュー 」

https://suigenkyo.com/articles-masahira-fujiyasu-interview/

 

【 モノづくりにおける視点 】

・西岡さん

>「木」を建築に使うなら、「木」だけを見ていてもダメで、「山」から見極める。

木が育った場所や環境を見て癖を見抜き、その生育環境のままに堂塔建立に使え、そのために山で木を見よ。

>千年以上も耐える建造物を造っている

>人間はすぐに利益をあげようとする。今の人は自分で生きていると思うていますが、自分が生きているんやなしに天地の間に命をもらっている木や草やほかの動物と同じように生かされているということ、それを深く理解せなあきません。

 

・藤安さん

>「人によって作られた痕跡を残さないこと」かな。自然に近い存在にしたいと思っています。山、海、空、そういったものを見て人間は美しいと感じると思います。いかにそれらに近づけるかをこだわっています。花が咲いて枯れるように、自然の中に刀が存在するようにしたいんです。古い刀を見ると、人が作っていることは間違いないんですけど、不思議と自然にできたもののような美しさがあるんですよね。

 

>現代社会ではすべての品物が非常に高度なテクニックで作り上げられていて、作り手の作ろうという意識が強すぎて見ていて疲れてしまいます。正直に言うとつまらないと感じてしまいます。季節によって気温、湿度、炭の質、火の表情すべての条件が異なる中で日本刀を作ります。

 

【 自然への同化~そのままを活かす 】

どの職人の方も100年なんなら1000年後世に残すという気持ちで取り組まれています。

特に西岡さん曰く

 

>木は大自然が生み育てた命ですがな。木は物ではありません。生きものです。人間もまた生きものですな。木も人も自然の分身ですがな。この物言わぬ木とよう話し合って、命ある建物に変えてやるのが大工の仕事ですわ。』

 

というように自然への同化。

山の斜面南向きなら大きく太い枝が伸び、節が多い。北なら節が少ない。

風が強ければ、風下側に流されて育ち、ねじれている。

だからこそ、これらを見極めて育てるからこそ、何百年と耐えうる建物を育てることができる。植生を見る、風を読む、風土に根付く。それが古来からの伝わる教えであり、知識なのだ。

 

それは藤安さんの言葉にも表れている。人によって作られた痕跡を残さない自然への感謝や畏怖、いろいろな感情が見て取れます。そこにこそ、我々の忘れてしまった自然への向き合い方があるのではないだろうか。

 

【 職人における仕事の姿勢~学び続ける心 】

それぞれの職人としてモノづくりの視点は違うにしても、共通する思いは、生涯学び続ける姿勢があること、そしてモノへの同化度合いが現代に生きる我々とは全く深度が違うということではないでしょうか。

大量生産の時代で便利でよければいい、汚れたら捨てたらいいではなく、人間も自然の一部であるからこそ、いかに自然と溶け込むかこのあたりに我々現代に生きる私たちが学ぶべき部分があるのでしょう。

 

【人材育成~見て真似る】

古来より師匠に弟子入りとなれば、ともに寝食を共にし、普段から生活を送っています。

しかしその中には指導というものはなく、本当に見て学ぶことなんです。

同じ空気、同じ目的、同じ視線を共有することが本当の意味での人材育成なのではないでしょうか。

 

【 現代に継承する 】

田舎暮らし、自然回帰、アウトドアブーム、農学校といった原点回帰の動き。

さらには新卒一括採用からジョブ型雇用など働き方における新たな動き。

それに伴う教育指導要領の変更など。国際競争力もこの30年で1位から31位へ転落といった経済状況の変化。

今までの常識が通用しない。

そんな移り行く世の中だからこそ

「状況に合わせて変えていく」

「ゼロからイチを生み出していく」

「相手の役に立ちたいいう想い」

 

今まさに我々に必要なものは机の上で学ぶことだけではなく、実際に体感・体験する=実学がカギになってくるだろう。

生きる力を育てること。

今だからこそ、今回紹介した職人を通して、我々は学ぶべき部分が大いにあるに違いない。

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2023年04月25日

【「食べる」と「健康」その本質に迫る】その7 植物は微生物との共生によって成長する


(画像はコチラからお借りしました)

これまで見てきたように、有機肥料を使った栽培と、化学肥料を使った栽培では、植物を栽培する環境の作り方が全く逆だということがわかってきました。

有機肥料は「自然状態の生育環境を”促進”させる」ことが目的で、化学肥料はスピード重視で人工物を利用して「”人工的”な生育環境をつくる」ことが大きな違い。
【「食べる」と「健康」その本質に迫る】その5 ~有機野菜はなぜ体に良いと言われるのか?より引用

これまで、植物の育成には、無機態窒素が有効であるため、化学肥料は窒素を投入することを目的に作られてきました。しかし、植物の育成を見てみると、アミノ酸のように植物の吸収量は少ないが、成長に大きく関係する成分が沢山あるのです。

植物の成長には、アミノ酸だけでなく、窒素、リン、ミネラルなど、様々な要素が必要不可欠となります。植物の成長の仕組みは、まだ研究途上で分かっていないことばかりなのです。最新の研究成果を紹介しながら考察していきたいと思います。

 

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2023年04月20日

【進化していく農法について考える】シリーズ4~ぼかし肥料の基盤は自然への同化追求~

「進化していく農法について考える」シリーズで、前回は不耕起栽培について紹介しました。自然農法の先駆けです。
しかしその後、とにかく収量を増やすために、農薬や化学肥料を使った農業が始まり、健康被害等が課題となりました。
農薬”効率農業”から脱却するために、戦後は様々な農法が登場してきました。

今回は米ぬかと発酵技術を使ったぼかし肥料について、紹介していきます。

「愛知県の農業改良普及員として、農業技術を始動してきた水口文夫さんによると、ぼかし肥は大正末期のころにはすでに行われていたらしく、当時の目的は有機質肥料を施したときのタネバエの防止を目的としていた。鶏糞や油かすなどそのまま肥料として使うと、タネバエの被害が出てしまい、当時の人たちの頭を悩ませていた。
そこで、鶏糞や油かすなどを土と混ぜ合わせて堆積発酵させることが行われるようになった。畑に肥料を施す前に完熟発酵させ、未然に防ごうという考えである。一方、化学肥料は直接根に当たると根に障害をあたえ、作物を枯らしたりすることがあるが、ぼかし肥の場合は油かすなどの有機質肥料が充分に発酵していて、根を傷める心配がない。」(発酵の力を暮らしに 土に 米ぬか とことん活用読本より引用しました。)

☆ぼかし肥料の材料はこうでなければならないといったきまりはなく、人によってかなりちがうようです。
水口さんは山土、乾燥鶏糞、油かす、米ぬか、過石、炭を使っているそうです。

☆ぼかし肥料を使っている知人の農家さんにどのような材料を使っているかを聞いてみました。

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2023年04月04日

【「食べる」と「健康」その本質に迫る】その6 ~植物の生育原理の関係→無機態窒素の吸収とアミノ酸の吸収の違いが“うまみ”のちがいを生む~

前回の記事では、「有機野菜はなぜ体に良いのか?」について、有機肥料と化学肥料のちがいを分析するなかで「有機肥料の圃場は、化学肥料の圃場よりも土中のアミノ酸が多く存在する」ということが分かってきました。

今回はさらに「土中のアミノ酸と植物の生育原理の関係とは?化学肥料の関係とは?」について追求していきます。

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2023年03月30日

【進化していく農法について考える】シリーズ3  不耕起栽培に学ぶ~自然とはなにか?

土を全く耕さない栽培を不耕栽培といいます。

日本ではおそらくこの方(福岡正信)さんが最初にこの農法を発見したというか世に広めた第一人者でしょう。福岡さんは昭和22年からこの農法を始め約20年かけて不耕栽培を極めた方です。田圃を耕さずに藁をかけるだけで他の栽培方法とほぼ同等の生産を上げています。除草も害虫駆除も肥料も与えない、まさに何もしない農法が不耕起なのです。

しかし福岡さんいわく、「何もしない=手を加えない」で生産するという追求が最も難しいとの事なのです。

福岡さんの写真↓リンクからお借りしました

日本でなぜこの不耕起が始まったのか?これは面白い追求かもしれません。仮説ですが、日本の農業と欧米の農業は根本的に発想が違うのではないでしょうか?
欧米の農業は今でこそ有機農業が進められていますが、歴史的には大規模で大量生産高効率を求める農法です。また遡れば灌漑技術や品種改良が行われたのも西アジアがスタートです。

西洋の自然を客観視する思考方法
⇒人間中心の価値観、自然を利用する世界観

日本の自然に同化する思考方法(発酵や俳句)
     ⇒自然に生かされている世界観

この世界観がなぜ作られてきたか。それは集団の形成過程にあると思われます。西洋の世界観は天文学や数学、科学や宗教をつくってきました。大きく捉えれば自然を法則的に捉える思考方法です。西洋は早くから集団が多段階に形成され、大集団、やがて国家が形成されていきます。
一方で日本は1万年超えの縄文時代を通じて数十人せいぜい数百人までの単位集団で永らえ、共同体という形で生きてきました。それがそのまま自然への見方や接し方にも繋がっていったのです。西洋人の自然観は支配であり、コントロールです。日本人は自然は注視する対象であり、一体化する対象である、さらに怖れを抱く大きな世界でもあるのです。この違いがそのまま農業へ現在でも引き継がれているとすればそれは日本人の農法にも大きく影響しているのではないでしょうか。

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2023年03月30日

自然を通じた成長シリーズ⑥~子どもの成長の根源である「同期(同調)力」の発達過程をたどる。~

人(こども)の成長≒活力の源は、外部環境に対していかに内圧を高められるかです。つまり、外部環境(自然や人)と対峙するなかで『双方向に受発信』しあえる関係をつくることができるか否かが極めて重要だと考えることができます。

この外部環境と一体になろうとする⇒可能性・不整合を感受⇒一体になるための行動を起こすといった、外部と内部をつなぐ呼応関係。これを「同期(同調)力」を呼びたいと思います。

この同期(同調)力を育むことによって、
・自然と同期(同調)することによって、斜面や木の上でも柔軟に動くことができる身体能力を伸ばし、また、自然を素材とした道具をつくる工夫思考が育まれる。
・あるいは、人と同期(同調)することによって、相手の気持ちに寄り添った言語能力を伸ばし、また、より多くの人に伝えられる論理能力が育まれる。

つまり、同期(同調)力が培うことによって、身体能力や知能も向上していくといった関係があると考えます。さらには、周りと同期することによって、周りと一体になる心地よさから、活力を増幅させることができる。そのような力を持っているものと考えられます。
その考え方に沿って、子どもの乳幼児期から少年期にかけての発達段階がどのように進んでいくのか、同期(同調)力を主軸としながら分析していきたいと思います。

 

●補足:同期とは?
※細胞同士は同類識別のために交信している。通常は細胞同士は、その交信機能を利用して集合しながらも一定の距離を取っている(集団本能、群棲本能)。完全に密着してしまうと互いに代謝ができなくなるためである。ところが、(危機時等に)この交信(受発信)のタイミングが一致するように相互に働きあう。この受発信のタイミングが一致した状態が同期状態である。同期状態に入ると(単細胞同士の周波数は同じなので)、互いの交信波動は共振状態(増幅)となる。そして共振状態に入ると麻痺系の物質が分泌され、一定の距離を置く機能が封鎖される。その結果、細胞同士はあたかも一つの細胞になったかのように一体化(接合状態)する。これが同期→一体化の原型である。
その後、多細胞化し、それぞれの細胞は、異なる器官をを持ち多細胞化するが、細胞間の交信は行われており、同期機能は活用されている。典型例としては心臓を構成する筋肉細胞であるが、これは同期し、共振し、一体化しているからこそ鼓動が形成される(筋肉の動きがバラバラにならない)。また同じく多細胞化すると細胞間の交信だけでなく、個体間の交信が発生する。
「人類の同期機能」

同期と子どもの発達過程について、具体的に見ていきましょう。

 

■同期1(乳児~):母子間の皮膚感覚を通じた同調で『安心感・意欲』を醸成
・赤ちゃんの頃の同期の一番は、スキンシップです。肌と肌を通じた「心音≒鼓動」がお互いにシンクロすることが心地よく、繋がっている感覚が安心感・意欲を醸成してくれます。
・また、自然の中にも同じような鼓動があります。例えば、木に耳を寄せてきこせる水脈、川のせせらぎ、波の音など、地球と皮膚感覚で繋がる感覚を心地よいと思えるのも、この同期回路によるものでしょう。また、ホタルが同じリズムで光るなど昆虫などにも見られ、生物に共通する深い構造が根付いています。
⇒このように、「同じ」が気持ちいい・安心できるという快(充足)の感覚が、もっとやりたいという意欲を高めてくれる。つまり、身体力・追求力を育んでいく土壌を成しているとも言えます。

 

■同期2(幼児~):仲間間との集団行動によって『力を安定⇒増幅』させる
・さらに年齢が幼児(3~5歳)ほどに進むと、周りと同期することによって、力を増幅させていくことを覚えていきます。例えば、みんなで声を合わせて読む「音読や歌」、あるいは、同じ動きをする「ダンスや踊り」などです。一人でやるよりも、みんなでやる方が楽しい・勢いが増す、大きな力を生み出すことによって、思いもよらない実現力を生み出しした経験は、皆さんもあるのではないでしょうか。

・あるいは、回転するリズムを活かして自転車を漕ぐ、バットやラケットで物を遠くに飛ばす、揺れる木の反力を活かして木から木に飛び回れる、他人の動きを自らの力に代える武道(柔道・剣道が上手)などです。物事が揺れ動くリズムを肉体化・増幅し、そこから新しい力を生み出す身体能力・工夫思考を高めています。
⇒「運動神経がよい子ども」は、単に力が強いのでなく、自分の身体と、周り(地面や道具)の動き方とをシンクロさせることが上手だということ。

・また闘争場面でも、気持ちを鼓舞するために用いられており、部族やラグビーでの「ハカ」にも共通する考えが見て取れ、自分たちの力以上を発揮する儀式です。
意欲上昇の充足を土台にして、仲間(集団)による力の増幅による高揚感→未知課題をも実現しうる活力を生み出すことができるようになります。

 

■同期3(小3年頃~):自然との間で、五感全体で広い対象と同期する『予知力・創造力』
・さらに成長すると、さらに視覚・聴覚といった多くの感覚器を駆使して、より広い対象との同期ができるようになります。例えば、木から森林へ、月や太陽との同期、あるいは、光・影や四季を通じた時間との同期なども捉えられるようになります。
・これまで捉えていた身近な世界から、自分の皮膚感覚を超えた、より広い対象との同期ができるようになり、「自然感・地球の世界感」といった「万物と繋がった深い充足感」を得られるようになったのではないでしょうか。
・経営者の中には、森の中で3日以上過ごすと新たな発想の創造につながるという方もいます。これも、自分の感覚・知能を「超越した感覚」がそうさせるのかもしれません。
⇒そういった、五感を超える第六感的な感覚や、自然の摂理≒構造をつかむ感覚が、予知能力や新たな科学技術を生み出す源泉にもなったのではないかと考えられます。子どもたちの創造力も、このような超越感を得ることも重要な経験だと言えます。

 

いかがでしょうか。『同期力』という切り口で見ていくと、私たちが身に着けるべき能力との関連性がとても高いことが分かります。

つまり、社会で求められる力の根源には、「人との同期」、「自然との同期」が極めて重要であり、幼少期・少年期にこそ『同期力』を育む機会を増やしていくことが重要です。

そのためには、近代的社会(建物)の中ではなく、常に変化し続け、同期し続ける機会にあふれている「自然」は最高の学びの場です。子どもたちに、自然の中でぜひとも上記のような同期力を身に着け、将来にも活かし続けられる力を育んでもらいたいと願います。

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posted by hasi-hir at : 2023年03月30日 | コメント (0件) | トラックバック (0) List