農薬を徹底追究!!!(6)除草剤(後半) |
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2009年07月29日
農薬を徹底追究!!!(7)殺菌剤編
こんにちは、こまつです。
今年は梅雨明けが遅くて、スッキリしませんね。ジメジメした天気が続くと、畑の野菜も病気や虫にやられてしまいます。ベト病、ウドンコ病、アブラムシ、ヨトウムシ、オオタバコガ、メイガ・・・。
さて、今回は、殺菌剤の作用メカニズムについて書きたいと思います。
●作物の病気ってなに?
まず、作物が病気になるというのは、いろんな病原菌に侵されるということです。病原菌とは、ウィルス、ファイトプラズマ、細菌および菌類(いわゆるカビ:糸状菌)で、わが国の植物には、これらによって約6000種もの病気が発生するそうです。このうち約70~80%が菌類によって発病し、残りの約20~30%の病害はウィルス、ファイトプラズマ、細菌によって発病すると言われています。
また、植物はヒトとは異なり、全ての植物が全ての病原菌に侵されるということはありません。1種類の植物は、数種類の病原菌に侵されるだけで、大部分の病原菌には侵されないのです。逆に一つの病原菌は1種類の植物か、数種類の植物にしか侵す能力が無い。すなわち、植物と病原菌の間には、侵す、侵される関係が遺伝的に決まっているのです。
●殺菌剤とは?
農作物を加害する病気を防除する薬剤で、細菌や糸状菌に効果のある化学物質が中心ですが、抗ウィルス剤も含まれます。また近年、微生物の競合作用、抗生作用、寄生作用、誘導抵抗などを利用した対抗菌剤も上市されており、これらも殺菌剤に含まれます。いわゆる「微生物農薬」ですね。これについては、「農薬を徹底追究!!!(11)」で詳しく扱う予定です。 😀
作物が病気になると、殺菌剤を散布しますが、でも病気が“治る”わけではありません。病斑はそのままだし、枯れ葉は元には戻らないし、言わば、病原菌が死ぬことで病気が止まる、という感じでしょうか。なので、また繰り返し同じ病気に罹ったりします。
ということで、殺菌剤を散布すると病気が止まるのはなんで?殺菌効果ってなに? 🙄 後半は本題の「殺菌剤の作用メカニズム」についてです。
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●何故殺菌効果があるのか
生物は生体に取り入れた栄養分を酵素などにより変化させ、生命活動に必要なエネルギーや生体を構成する様々な物質を作り出しています。これを代謝といいます。どの生物も基本的には似ており、取り込んだ炭水化物を分解してエネルギーを得る呼吸や、いろいろなアミノ酸からタンパク質を合成する過程などを一次代謝と呼び、また、それぞれの生物にとっては特有で不可欠な二次代謝も行っています。
現在の殺菌剤は、こうした生物としての病原菌の代謝を、部分的に阻害することにより効果を示す代謝阻害剤がほとんどです。一方、ウィルスは代謝にかかわる酵素を持たず、そうした薬剤では効果がありません。一般に、ウィルスに効く薬剤が無いといわれるのはこのためです。
殺菌剤の作用メカニズムは、中心的には、“生物”としての細菌の生命活動を阻害することにあります。そう考えると、先の除草剤の作用メカニズムや、この後の殺虫剤の作用メカニズムとも共通するものがありそうですね。
以下、殺菌剤の主な作用メカニズムを紹介します。
「病気・害虫の出方と農薬選び」(農文協)より、引用します。
●殺菌作用のメカニズム
1.呼吸(電子伝達)阻害
あらゆる生物は炭水化物などの栄養源から呼吸代謝により、生命活動に必要なエネルギーを得ている。病原菌の呼吸を阻害することで、作物の侵入や、胞子の発芽を抑制することが出来る。呼吸阻害作用を持つ薬剤の多くは、呼吸代謝の中でも電子の流れ(電子伝達系)を阻害する。こうした薬剤には二つの種類があり、作用する部位が異なる。
ベンズアニリド系は、おもにさび病や紋枯病などの担子菌に効果がある。
ストロビルリン系には、担子菌だけでなく、子のう菌、不完全菌さらには鞭毛菌類にも効果がある。
浸透移行性があるので、予防的な散布だけでなく治療的な散布にも効果がある。
2.SH阻害剤
呼吸やタンパク合成などの代謝は、さまざまな酵素の働きにより進行する。こうした代謝では、たとえば、呼吸やタンパク合成の基になる糖やアミノ酸と酵素との化学反応で、酵素のチオル基(SH基)という構造が大切な役割をする。このSH基の役割を阻害する薬剤を「SH阻害剤」という。浸透移行性が無いため、予防散布が効果的である。
3.タンパク合成阻害
生物の遺伝子にはタンパク質を合成するための情報が書き込まれ、その情報により細胞内でタンパク質がつくられる。細胞内で遺伝子からの情報に基づいてタンパク質を合成するための装置がリボソームという粒子であるが、この装置の機能が阻害されればタンパク質の合成は出来なくなる。浸透移行性があり、予防的にも治療的にも使用することが出来る。但し、抗生物質は連用すると耐性菌が出現しやすいので、注意が必要。
4.糖代謝阻害
病原菌の中にはトレハロースという糖の1種を分解して、エネルギー源であるグルコースを得ているものがある。従って、トレハロースの分解を阻害すれば、グルコースの供給が断たれ、こうした病原菌の増殖を選択的に抑えることが出来る。浸透移行性があり、予防的、治療的にも使用できる。
5.核酸生合成(DNA,RNA)阻害
核酸にはDNAとRNAの2種類がある。DNAは遺伝子の本体で、そこに書き込まれた情報をRNAが写し取ることによりタンパク合成が進められる。こうした核酸合成の過程に作用する薬剤が開発されている。浸透移行性があり、予防的、治療的にも使用できる。
6.細胞膜機能阻害
生物の構成単位である細胞は細胞膜で囲まれており、細胞内外へのいろいろな物質の透過を調整している。細胞膜の機能に障害を与えたり、破壊すると、細胞は膜を介した物質のやりとりがうまくいかず、死んでしまう。浸透移行性のあるものと無いものがある。
7.リン脂質合成阻害
リン脂質は脂肪酸とリンの化合物とが結合した物質で、細胞膜の主要な構成分である。リン脂質の合成を阻害して、胞子の発芽や形成あるいは菌糸の形成を抑制して、作物への侵入を阻止する。予防・治療。
8.エルゴステロール生合成阻害(EBI)
担子菌、子のう菌などの病原糸状菌では、エルゴステロールが生体膜の構造や機能に重要な役割を果たしており、エルゴステロールの生合成が阻害されると、胞子の発芽管や菌糸の伸長が阻害され、生命活動が維持できない。エルゴステロールを持たない疫病菌やベト病菌には効果が無い。予防・治療。
9.細胞壁合成阻害
細菌や糸状菌、植物の細胞には細胞膜の外側に細胞壁があり、細胞を物理的に保護する役割をしている。細胞壁を構成する成分は植物によってさまざまで、多くの糸状菌はキチンとグルカンがおもな構成成分である。このうち、キチンの合成を阻害する薬剤にポリオキシンがあり、ナシの黒斑病などに有効である。予防・治療。
10.有糸分裂阻害
病原菌のなかでも糸状菌は有糸分裂という方法で細胞分裂する。細胞の核には染色体が存在するが、二つの細胞(娘細胞)に分裂するときに染色体も均等に分裂しなければならない。その際、紡錘糸という糸が染色体を両側に引っ張っておのおのの娘細胞に分れていく。従って、この有糸分裂の過程を阻害すれば細胞は正常に分裂できず死んでしまう。予防・治療。
11.メラニン合成阻害(侵入阻害)
多くのカビ(糸状菌)は菌糸や胞子に色がつくが、これはメラニン色素が沈着するためである。植物の病原糸状菌にもメラニンを作るものがあるが、近年、メラニン合成が植物体への侵入に大きく関与していることがわかってきた。たとえば、いもち病菌はイネの表皮に付着器という器官を形成し、そこから菌糸を出してイネの表皮を貫き体内に侵入する。しかし、メラニンの合成が阻害されると、付着器が成熟せず、イネ体への侵入が阻害されてしまう。
こうした薬剤は、病原菌そのものを殺すのではなく、病原菌の感染過程を阻害するので、非殺菌性防除剤とも呼ばれる。予防・治療。
12.非殺菌性農薬(抵抗性増強)
植物はもともと病気に対する抵抗性をもっており、ほとんどの糸状菌や細菌などの微生物は生きた植物に侵入することができない。しかし、一部の微生物はこの抵抗性に関わる防御機構を進化の過程で無効にする能力(乗り越える性質)を遺伝的に獲得し、植物に侵入することができるようになった。それが植物病原菌である。
現在、植物が本来もっている抵抗反応を誘導して病害を防除しようとする研究が行われている。
13.微生物農薬
地球上にはさまざまな生物が生存しており、1種類の生物だけが突出しないようお互いに影響しあいながら絶妙なバランスが保たれている。近年、微生物の相互作用、すなわち、他の微生物の栄養分を奪う競合作用、ほかの微生物を抗生物質により排除する抗生作用、他の微生物に寄生する寄生作用などを利用した病害防除の研究が進み、商品化されている。
(この後の、「農薬を徹底追究!!!(11)」で詳しく扱う予定。)
殺菌剤について調べるうちに、やはり、そもそも病気なるのはなんで?病気にならないようにするには?という興味が湧いてきました。 🙄 病気になる原因や環境条件など、引き続き調べてみたいと思います。 😉
投稿者 komayu : 2009年07月29日 TweetList
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コメント
投稿者 犬 : 2010年4月20日 22:55
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日本も中世までは禿山だらけだったとは驚きです。
海が近い日本はラッキーでしたね。
それにしても、夜、明かりがほしいという、庶民のあさましい思いが、海のくず資源を循環のサイクルにのっけて、森林を復活させたというのは、神業ならぬ民業ですな。