土の探求7~革命を阻む、根拠なき常識Ⅰ |
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2019年10月31日
土の探求8~革命を阻む、根拠なき常識Ⅱ
農業を取り巻く”神話”の正体を知れば知るほど、
近代科学、市場主義、西洋思想、これらに毒され、
事実追求の道が阻まれてきたという歴史的事実が浮き彫りになる。
以下、転載(土・牛・微生物 著:デイビット・モントゴメリー)
これまで述べた三つの神話以外にも、検討に値するものがいくつかある。有機農業は、日常的に耕起していれば、慣行農業と同様に持続可能でない場合もあることが明らかになっている。何しろ合成化学製品を投入しない農業こそが、古代社会を疲弊させたのだ。また、現代の農家が農地に施している化学肥料を、すべて置き換えられる十分な量の有機堆肥が、本当にあるだろうか?他に手立てはないのだろうか?これから見ていくように、有望な選択肢には被覆作物、特に窒素固定能力のあるものを緑肥として栽培するというやり方がある。
さらに、世界の作物生産量を劇的に増やす必要があるという予測は、世界中で所得が上昇するにつれて、穀物を飼料とした肉と加工食品が多い西洋式の食事が普及するという仮定に基づいてる。しかし科学的研究の結果と大衆メディアにより、現代の慢性疾患の増加が西洋式の食事と関連付けられるようになってきた。このため欧米では消費者の行動が変わり始めており、他の国の人々も、予想されたほどには西洋式の食事を受け入れたがらないということもあり得る。先進国も開発途上国も、適量の肉と、繊維質が豊富な植物性の自然食を含む健康な食事を受け入れるなら、全ての人に食糧を与え世界の健康を改善するという問題の解決に大いに役立つかもしれない。
予測される世界の食糧需要の増加を遅らせるもう一つの方法が、食品廃棄を減らすことだ。作物全体の30~40%は~農薬の大量使用にもかかわらず~害虫と病気によって失われる。そして全世界で生産された全ての食糧の約1/4は収穫後に失われるか、生産から消費のあいだに無駄になる。これらを全て合わせると、栽培される作物の半分は、誰かに食べられることがない。アメリカだけで毎年6000万トンの食品を廃棄している。これは日常的に飢餓に直面している5000万のアメリカ人に食事を提供してまだ余る量だ。
こうしたことが意味するのは、増大する人口を養うのに十分な食糧を生産するための方策を、単純に収穫量によって評価するのでは視野が狭すぎるということだ。では、明日の世界に食糧を与えるためには、他にどのような要素を考慮する必要があるのか?当然、健康的な食事の採用と廃棄物の削減はちょうどいい出発点だ。それでもやはり、最終的にはより多くの食糧をより少ない資源で栽培する方法を探し、実行することになる。
…じつは、知れば知るほど私は分からなくなった。農業政策の決定者たちが、農業の未来として農芸化学とバイオテクノロジーだけに注目しているかのようなのはなぜか?技術の進歩を利用すべきではないというのではない。だが、それを信奉するあまり、効果的な方法が見えなくなってはいけない。土壌に生命と肥沃さを取り戻すことは、土壌の健康改善に効果があることが既に分かっている、今ある技術と方法を使って、今すぐにできることなのだから。残念なことに、こうしたやり方は農業政策の世界を支配する因習的な立場と、角つき合わせることになるのだ。
投稿者 noublog : 2019年10月31日 TweetList
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