アメリカのコメ市場戦略 ① |
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2007年10月04日
アメリカのコメ市場戦略 ②
契約書の問題点を、河田昌東氏(名古屋大学理学部)が指摘。
問題点1)権利の不平等性
この契約書に見る限り、モンサント社は愛知県農業総合試験場(以下、農総試)に対し、除草剤グリフォサート耐性遺伝子とそれに付随した遺伝子(カリフラワー・モザイク・ウイルスのプロモーターその他)とそれをイネに導入するパーテイクル・ガン装置を提供し、農総試は親のイネ(祭り晴)を提供してGMイネのクローン株を作るが、その後は農総試が苗を育成、選抜しその特性を調査する、という役割分担が行われている。しかし、その両者の権利関係は極めて不平等である。
例えば、第11条は「いかなる理由により本契約が終了しても、第7条、第8条、第9条および第10条の規定は失しない。これらの条項の義務は、本契約終了後も全面的に効力を持続する。」と規定しているが、この条項は、ほとんど半永久的にモンサントの権利を農総試側に押し付け、共同研究で得られたノウハウなどの以後の利用を不可能にする。にもかかわらず、第7条第2項では以下のように述べ、農総試側の権利をモンサントは一方的に利用できるのである。「甲(注:農総試)は、モンサントに対し、共同開発特許権及び共同開発技術情報に基づいて、GT稲(注:グリフォサート耐性イネ)を含む外来の遺伝子によって組み換えられた植物を作出、使用及び販売する目的で、実施料無料、非独占的かつ期間永久の、全世界を対象とする、サブライセンスを付与する権利を含むライセンスを与えることに同意し、ここにこれを与える。」これでは全くの不平等契約であり、一旦が開発がすめばモンサントは勝手気ままに共同開発したGMイネを販売し利用できることになる。
つぎを読む前にポッチ宜しくお願いします。
問題点2)見せかけだけの「商品化のための合意」
農総試でのGM祭り晴(仮にこう呼ぶ)の商品化は確かに三者(農総試、日本モンサント、モンサント(米))の合意によってのみ行われることになっているが、日本モンサント社は茨城県筑波の自社試験場において、同じ除草剤耐性GMイネの試験を行っており、農総試との共同研究の成果は、ここで生かされている。従って、GM祭り晴れが商品化できなくても、この共同研究の成果は一方的にモンサント社に利用されることになる。これに対して、農総試側は相当具体的な独自の栽培技術に関するノウハウでもない限り、祭り晴れ以外のGMイネに関しては権利を主張できない。
問題点3)交配は「特許遺伝子流出」が心配
野生種との交雑の危険性についての認識はあり、栽培に際して具体的な対策を取るよう約束しているが、この目的は野生種の遺伝子汚染にたいする懸念よりは、グリフォサート耐性遺伝子の流出、つまり特許遺伝子の外部への漏洩を防ぐのが目的である。
問題点4)あいまいな農総試側の権利
モンサントは、グリフォサート耐性遺伝子とその導入技術のみならず、その遺伝子を含む植物体とその利用方法にまで特許権を主張している。即ち、仮に商品化されれば、このGMイネはモンサントの特許対象になり、農総試側がどのような権利を主張できるのか明確にされていない。もし将来このGMイネを利用し農総試が交配などで新たな品種を作り出そうとしても、未来にわたるまでモンサントの特許権の対象として縛られることになる。
問題点5)モンサントの管理下で秘密裏に行われる研究・実験
モンサントが最も厳しく権利を主張するのは「モンサント・生物素材」である。これはモンサントから供給されるグリフォサート耐性遺伝子関連の全てのDNA、RNA及び蛋白質を含む全ての分子、ウイルス、細胞、プラスミド、ベクター、組織、細胞小器官または生物体を含む。即ち、グリフォサート耐性遺伝子を組み込んだGMイネ(に限らない)の本体は勿論、花粉や植物体の切れ端、断片にまで及ぶ。これらを一切外部の第三者に提供することは勿論、イネからDNAやRNA、タンパク質などを勝手に抽出したり塩基配列の分析もしてはならない、とされている。研究者は実験の細部に渡るまで全てにモンサントの許可を得なければならず、また結果を報告しなければならない。勿論研究結果を学会などで発表する自由もない。
問題点6)矛盾だらけの契約
グリフォサート耐性関連遺伝子を外部に流出させないように、という厳しい流出防止の義務を農総試に科しながら、既にこれらの遺伝子が大豆やトウモロコシ、ナタネなどに組み込まれ、世界中に流布している事実をどう考えたら良いだろうか。市販のラウンドアップ耐性大豆を買いその遺伝子を分析したらモンサントの特許権侵害に当たるのか。除草剤耐性大豆を食べ、体内に生じた除草剤耐性の腸内細菌はモンサントのものなのか。土壌にすき込まれたGM作物の残骸からグリフォサート耐性遺伝子が土壌細菌に水平伝達したら、モンサントはその土壌細菌に権利を主張できるのか。カナダのパーシー・シュマイザーさんの場合のように、周辺のGM農家の花粉による汚染が生じた場合にモンサントが特許権侵害を主張するなら、花粉を飛ばしたGM農家は契約違反にはならないのか。
この矛盾は農作物などの生き物自体に特許権を主張するという無理を反映している。そもそもモンサントが、自社の除草剤生産工場の排水溝から分離したグリフォサート耐性菌の遺伝子のみならず、それを含む全ての「生き物」に特許を主張する事からこの本質的な無理が派生しているのである。
転記以上
河田昌東氏の指摘に加えて、
第2条 共同研究の分担
1 甲、乙及びモンサントはそれぞれ次のように研究の分担を行うものとする。
ア 甲は、乙によるパーティクルガン法による遺伝子導入を含む組換え体の作出、選抜、環境安全性評価及びそれに付随する研究を担う。また、甲は、パーティクルガン法による遺伝子導入を行う施設を提供する。
これって名目は共同開発ですが、開発費は甲が負担することになるのではないしょうか。
つまり開発費は日本が提供し、成果はモンサントが自由に使えると言うこと。
そして、アメリカのコメ市場戦略 ③④で紹介する、アメリカ・カナダの事例のようなことが起こりうるしそれがモンサントの目的である。
アメリカのコメ市場戦略 ③へ続く
投稿者 hakosuka : 2007年10月04日 TweetList
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コメント
投稿者 匿名 : 2008年6月13日 10:09
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