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2015年10月02日

『微生物・乳酸菌関連の事業化に向けて』-10 ~既存事業1-8 水産~

インドネシアの海老養殖池
 
インドネシアのエビ養殖地(画像はこちらからおかりしました)→リンク

先回は、水産場面での微生物活用のなかでも、
1】魚貝類の健康増進、旨味向上
2】微生物の作用を調整して作る水産発酵食品の製造
の2つについて取り上げました。

今回は、魚貝の生存域である「水」を、微生物の力で浄化している事例をお伝えします。日本をはじめ海外でも、微生物は活躍しています。

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3】養殖場をはじめとした、水の浄化
日本では、海老や鯛、ハマチ、ヒラメなどの養殖が盛んに行われています。これまで養殖場では、与えられるエサや排泄物がヘドロとして堆積したり、水質を汚濁するなど、環境の悪化を引き起こす弊害が問題となってきました(ヘドロは、与えた餌の食べ残しが沈殿して腐敗したもので、メタンガスなどを発生します)。
このような状況の突破口として、微生物が活用されています。
そして、日本に限らず、中国や東南アジアなど海外の養殖地でも、乳酸菌をははじめとした微生物が活躍しています。

◆株式会社 松本微生物研究所 →リンク
水質汚染の原因となる糞、クルマエビのエサの食べ残し、プランクトンの死骸などの腐敗性有機物を水産用オーレスに含まれる微生物群が持続的に分解、水質を浄化、栽培環境を整え連作障害の発生予防に貢献します。粉体。

◆EM研究機構 →リンク
魚介類の乱獲や海や河川などの水環境汚染など、人為的な影響により世界中の天然の水産資源は減少し続けている。
水産養殖は先進国においては不足する魚介類を補い、また開発途上国においては外貨獲得の手段として国策で養殖の開発が推進されてきた。

水産養殖では限られた区域の中で特定の種の魚介類を養殖するため、衛生管理は非常に重要な条件である。
しかし成長を促進させるために過剰な給餌が行われ、その結果として余剰な餌や排泄物は汚泥となり、水質を悪化させる原因となった。
この水質の悪化による病気を抑えるため、抗生物質や化学薬品が投入され、自然界に存在する有用な細菌類を抑制し、自浄作用を抑制させることとなる。
最終的には使用できなくなった区域は放置され新たに養殖場を開拓するため、 環境の破壊は著しいものがある。

★主な事例
東南アジアを中心にエビ養殖におけるEMの使用が盛んになっており、エビ養殖事例が中心となっている。水産養殖においてはどのような魚介類の養殖でも水槽内の衛生環境の保全という意味においては共通している。

タイ エビ養殖池
 
画像はこちらからおかりしました→リンク

①タイ。チャンサオ県のエビ養殖場においてEMとEMXを用いて試験を行った。試験は1月から10月まで行われ病害の防除として餌にEMXやニンニクを混合したものを使用した。時期的に難しい面もあったが最終的な生存率は57%あった。

②タイ。4.8ha の養殖池に10万から20万匹のエビを年に2回養殖している。池を乾燥させる時期に汚泥へのEM散布、稚エビの餌へのEM混合などのEMの施用により、ナマズの死亡率が減少したり、経 費が削減されるという効果が得られた。

③タイ。クン・サマイ氏は4年間EMを用いたエビ養殖を行ってきた。EMは池を乾燥させた時の汚泥への処理・悪臭の発生・水質が悪化した時の処理に使用している。ここでは餌へのEMの混合は行っていないが、結果としては光沢があり、悪臭のないエビが飼育されている。

④タイ・プンピンで8ha の養殖池に8万から10万匹のエビを養殖している。収穫後の池のヘドロにEMボカシを施用する。EMを施用した後、稚エビを放流し、収穫までEMとEM5 を投入する。水質の管理は重要であり、pH、アンモニア濃度、塩分濃度、藻類、水の色などのチェックを行う。病気が発生した場合には餌にストチュウを混ぜ 4時間放置後に給仕している。臭気の問題、汚泥の減少、コスト、環境保全などの面で効果があった。

⑤淡水養殖では飼料の不足のため、それに代わる家畜糞尿などの有機質の利用が研究され、また水の有効利用のため農業用水と養殖の水の共用についての研究も進められている。それらを組合せた農法が南アフリカで研究されてきたが、悪臭などの問題が改善できないでいた。ここでEMを組み合わせることで、臭気も緩和された。その水を用いた作物栽培でEMボカシ、化学肥料、堆肥を使用した比較試験を行い、EMボカシは収量においてその他より相対的に良い成果が得られた。

⑥中南米のペルー及びエクアドルのエビ養殖では白点病が大きな問題である。ところがEMを用いた農家では病気が減少してきている。

⑦タイでの試験。塩分濃度の異なる地域での有機エビの養殖へのEMの有効性について確認した(成育までにはEM、EMボカシ、EM5号を使用)。
水質 (BOD、COD、アンモニア、リン) は塩分濃度の違う2箇所とも養殖前後とも低いレベルに抑えられていた。EM使用により経費削減を実現した。通常年に一回か二回養殖が行われるところが、水の交換無しに年三回の養殖が可能となった。EMによる有機エビ養殖は、塩分濃度に関係なく可能と考えられる。

★最後に、微生物だからといって、全てが良い訳ではないことを、付け加えておきます。

赤潮
 
上記画像は、こちらからおかりしました→リンク

典型例が「赤潮」です。赤潮はプランクトンの異常増殖が原因ですが、珪藻などの藻類も悪さをする様です。
また、以下のような病気の原因になる微生物も多いので御注意。(これはあくまで人に害を及ぼすという視点)

海水性細菌(一次的汚染菌):腸炎ビブリオ、ビブリオ・ブルニフイカス、ビブリオ・ファニシー等
淡水性細菌(一次的汚染菌):エロモナス・ハイドロフラス、エロモナス・ソブリア、プレジオモナス・シゲロイデス等
環境由来細菌       :リステリア・モノサイトゲネス
ヒト由来細菌・ウイルス  :コレラ菌、ノロウイルス、サポウイルス、A型肝炎ウイルス等
海水性寄生虫       :アニサキス、クドア・セプテンプンクタータ等
※詳しくは『水産食品の微生物学的安全性確保と微生物による食中毒』→リンクを参照してください。

by 佐藤有志

投稿者 noublog : 2015年10月02日 List   

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