2007年12月5日
2007年12月05日
「黒ボク土」って、何?(2)黒ボク土の克服と、新たな課題
黒ボク土の弱点が、リン酸欠乏を引き起こすことにある事が分かりました。
では、この黒ボク土を、どうすれば良いのか?黒ボク地帯は、その後どうなったのか?
このような性質を持つ黒ボクを畑として利用するには、まずもって酸性を直してやらねばならないし、それ以上にリン酸を多量に施用して、土壌のリン酸固定力に打ち勝たねばならないことになる。(中略)
高度成長期になって、リン酸などの肥料が農産物価格に対して相対的に安くなった上、黒ボクの開墾に際して大量のリン酸を土壌改良資材として(肥料としてではない!)投入する為の補助金が出るようになって、事態は一変した。開墾当初に苦土石灰で酸性を中和した上、10a当たり1t以上ものリン酸肥料が施用されることによって、その後の施肥管理はうんと容易になった。
こうして化学的な性質における大きい問題が解消されると、もともと黒ボクの持っていた安定かつ良好な透水性や保水性など、物理性の面での長所が生きてくることになる。現在長野県などの大規模な蔬菜栽培地帯の多くは黒ボク土地帯である。もはや黒ボクは問題土壌ではないというにとどまらず、見事にすぐれた畑土壌への変身を遂げたといえる。しかしそれは肥料などの資材を惜しみなく投入する資源多消費型の農業の中で始めて可能となったのである
(土とは何だろうか?/京都大学学術出版会刊より)
高度成長期以降、黒ボク地帯は農業地・主産地として定着した訳ですが、それは上記に見られるように、石灰とリン酸肥料の多投によって成立したものです。
しかし、日本にはリン酸肥料の原料がほとんどなく、全面的に外国からの輸入に頼っています。リン鉱石の生産は、現在、モロッコ、南アフリカ共和国、中国、アメリカ合衆国が80%以上の世界シェアを占めていますが、採掘量の限界が心配されています。
現在の日本の農業を支えてゆくためには、リン資源をどうするのか、という問題が、大きく見えてきました。
また、全く別のアプローチとして、黒ボク土壌に固着したリンを初めとする成分を、堆肥の機能(キレート作用)によって作物に利用出来るのではないか、とする説がありましたのでご紹介します。
十勝毎日新聞社「循環型農業を目指して」
リン資材の投入ではなく、土の持つ力を引き出せるならば、理にかなった事だと思います。
(つづく)
by 馬場
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投稿者 sbaba : 2007年12月05日 Tweet