2021年08月11日

受け継がれていく「耕さない田んぼ」

生態系の持つ力を存分に生かした農法、「不耕起栽培」。

受け継いでいく人々の想いについて。

以下、【耕さない田んぼで豊かな生態系とシンプルな暮らし】より引用

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2021年08月06日

【細胞農業連載】②代替タンパク質市場の現状と細胞農業が注目される理由

今回は前回に引き続き、細胞農業が注目される理由についてです。代替タンパク質とは何か?東大理学部生物情報科学科3年の山口尚人君の二年前の寄稿文になります。

では・・・・リンク 

転載開始

さて、前回は最近ニュースなどにも取り上げられ注目を浴びる培養肉、そして新しい食料生産を可能にする細胞農業について簡単な説明をしました。今回は、その細胞農業がなぜ注目されるのか、代替タンパク質市場という1つ上のレイヤーで考えてみることにしましょう。

◆タンパク質、どこから取る?大豆?肉?昆虫? 

皆さんはタンパク質をどのようにして摂取していますか?自分の普段のタンパク質源を意識している人はどれくらいいるでしょうか?

ご存知の通り、タンパク質とは、栄養の観点から言うと、炭水化物、脂質と並ぶ三大栄養素の1つであり、生きるために非常に重要な栄養源です。我々はタンパク質をほぼ毎日何らかの形で摂取しています。現在の主なタンパク質源としては、大豆、卵、乳製品、食肉があげられます。しかし、これらの供給源だけでは、2050年には90億人を超えると言われている人口増加と経済発展に伴う肉食の増加をはじめとしたタンパク質需要の増大には到底追い付かないことが予想されています。

その原因の1つが乳製品や食肉生産の主要な手段である畜産業の持続可能性の低さです。畜産業には広大な土地が必要ですが、そのための土地のさらなる確保は困難です。家畜を育てるために穀物を飼料として大量に消費しており、飼料として用いられる穀物のエネルギーに比べ家畜から取れるタンパク質などのエネルギーは多くなく、エネルギー変換効率の低さが指摘されています。また、牛のゲップに含まれるメタンガスをはじめとした温室効果ガスや土地拡大のための森林伐採の気候変動への影響も問題視されています。これらを分かりやすく説明した有名なドキュメンタリーとして、Cowspiracyがあげられます。興味がある人は是非見てみて下さい!

このように将来増加するタンパク質需要を満たすため、さらには現在の主要なタンパク質供給源の問題点を解決するためにも、新たなタンパク質供給方法の開発が進められています。これは代替タンパク質源とも呼ばれ、その例として以下の画像 にあるように、植物性のタンパク質を用いたもの、藻類や昆虫のタンパク質を用いたものなどがあります。細胞農業もその中に含まれます。細胞農業は、「微生物系」と「細胞培養」に該当し、細胞を培養することで食肉や乳卵を生産したり、微生物を培養することでタンパク質を生産します。つまり細胞農業は代替タンパク質供給法の1つと言えるでしょう。

これらの代替タンパク質源は近年注目を集めており、特に植物性のタンパク質は、技術的な障壁の低さもあって、急速に市場を拡大し、Impossible FoodsBeyond Meatをはじめとした新興企業が植物性の肉(plant-based meat)をどんどん市場に投入しています。実際、アメリカでは、大手ハンバーガーチェーンのバーガーキングやケンタッキーフライドチキンが一部の州で100%植物性原料のハンバーガーやフライドチキンを販売し始めています。またカナダではマクドナルドが一部の店舗で試験販売を開始しました。最近「人工肉」としてニュースに取り上げられる植物性の肉の例が増えてきていますので、ニュースにも注目してみると面白いでしょう。

一方で、藻類系や昆虫系はまだ発展途上と言えます。代替タンパク質生産に取り組む企業は世界に数多く存在し、具体的な会社などは、こちらのサイトで配布されている画像から見ることができます。

◆ではなぜ細胞農業? 

ここまで紹介したように代替タンパク質源候補には様々なものがあります。植物性の肉は既に市場に出回り始めていますし、藻類や昆虫による食料生産も大変興味深いです。

ではなぜ培養肉、細胞農業が注目されている(少なくとも筆者が注目している)のでしょうか?大きくわけて3つの理由があります。

1つは言うまでもなく、本物の肉を生産できることです。培養肉を本物と呼ぶことに少なからず抵抗もあるとは思いますが、基本的には動物の体内で作られる肉と同じものを作ることができます。動物性の肉は、完全栄養食と言われるほど非常に栄養価の高い食品であり、植物性の肉にはない栄養素を取ることができるでしょう。本物の肉に近い食感や風味、味を目指している企業や研究グループもあり、それが達成されれば植物性の肉よりも現在私たちが食べている肉に近い味を楽しむことができます。また、いわゆる「肉」にとどまらず「デザイナーミート」と呼ばれる、肉を超えた「何か」をつくることができるようになるかもしれません。良いかどうかは別にして、我々の食に対する価値観を変えるポテンシャルがあるのではないでしょうか。

上記の点に類似していますが、

2つ目の良い点は、肉の生産にとどまらないところです。理論上、細胞培養ができればあらゆる生き物を育てることができます。動物性の肉だけでなく、魚介類(エビ、マグロなど。ウナギも興味深いです)にもターゲットは広がっているほか、酵母や大腸菌を培養することで革製品や乳製品(アイスクリームや卵など)の生産も可能になってきています。この辺りは細胞農業に限らず、合成生物学とも関連のある領域だと言えるでしょう。

3つ目は細胞農業技術の発展は、再生医療の発展にも貢献し得ることです。お気付きの人もいるかもしれませんが、細胞農業に関わる技術は、再生医療と通じるところがあります。細胞農業は、目的は食料生産、技術は再生医療だと考えると少しはイメージがつきやすいかもしれません。細胞農業では動物細胞の細胞培養がメイントピックであるのに対し、再生医療ではヒトの組織の培養が研究テーマの1つです。現在は臓器などの複雑な組織の培養は困難を極めていますが、細胞農業で培われた組織培養の技術や、大規模で安価な動物細胞培養技術は、医学への応用に繋がることが期待できます。

以上転載終了

◆まとめ

今回の気づきは、あらためて現在、世界平均で食肉によるたんぱく質摂取の割合が、約5割を占めているという事。更には、畜産業(牛の飼育)が これまで、人が生きていく中で、重要な役割をしめているという事です。

そして、今後世界の人口が増加していく状況下で、これまでと同じように、食肉の生産が増え続けると、牛を飼育するための食物や水の供給は限界に達していき、また排出されるメタンガス(=牛のゲップ)によって、気温変動に影響が出ること。それ故、タンパク質摂取のための食肉の生産増は、ほぼ不可能であることが、明らかになっていくという点です。

増加していく人々に対して、食肉に頼ってきた「たんぱく質」の摂取を、環境に配慮しながら、どうやったら構築できるか?

細胞農業の生まれてきた経緯は、ここにあるわけです。

さて、こうして細胞農業の存在を紐解くと、実は、畜産業(=牛の飼育)の位置づけに焦点があたります。人が食べるための牛の飼育は自然界の中では、果たして自然の摂理に適応しているものなのか?日常、我々は、牛肉は美味しくいただいていますが、そもそも牛の飼育は、生物の進化という切り口では、人間本位の生態系を逸脱した行為ではないかということも浮かびあがってくるのです。

そう考えるとこの細胞農業によって、生みだされる食肉がこれまでの行き過ぎた畜産を改善(緩和)していく存在になっていくことも十分考えられるわけですが、人類の位置に立てば、この人工的に造られた肉(=たんぱく源)が、化学物資を含まない人体に影響がない、更には、製造過程で、環境に本当に負荷のかからない状態で生まれてくるものか?という事が課題になります。

まだまだ追求途上にある細胞農業ですが、次回は、世界から日本に視点を移し、日本国内での細胞農業における取り組みについて見ていきたいと思います。では、お楽しみに・・・

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2021年08月05日

農作業を通して子どもたちの生きる力を育む

幼少期をどのように過ごすか。
その場や環境づくりは、大人たちに課せられた大きな使命。

 

以下【農作業を通して子どもたちの生きる力を育む未来の保育園】より引用

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2021年07月29日

【細胞農業連載】①培養肉とは?〜細胞農業による食料生産〜

さて、今回は、二年前の「東大新聞」からの転載です。「新しい農のかたち」では、過去二回、細胞農業について取りあげてきましたが、今回は、そもそも細胞農業とは何か?

という事を追求している東京大学の学生の寄稿文です。連載でお送りします。

では・・・・リンク

転載開始

この連載は、近年存在感を高めつつある「細胞農業」に関係した活動に携わる山口尚人さん(理・3年)に、細胞農業の特徴や魅力、可能性について寄稿してもらう連載企画です。(寄稿)

はじめまして。理学部生物情報科学科3年の山口尚人です。近年注目を集める「細胞農業」という分野に興味があり、それに関わる様々な活動をしています。今回の「細胞農業」という分野に関する連載で、今まで馴染みのなかった人に興味を持ってもらい、聞いたことあった人にもより深く知ってもらうことができたらと思います。

皆さんは「細胞農業」という言葉はご存知でしょうか?恐らくほとんどの人が耳にしたことがないでしょう。では、「培養肉」もしくは「人工肉」はどうでしょうか?これなら聞いたことがあるという人もいると思います。一方、聞いたことはあってもどういうものか詳しくは知らないという方が大半なのではないでしょうか。

そんな皆さんにあまり馴染みのない「培養肉」そして「細胞農業」についてお話したいと思います。

 

◆「本物」の肉、培養肉 

いきなり培養肉と言われてもピンとこない方もいるかもしれないので、具体的な例から見ていきましょう。

これは、(リンク)左からミンチ肉、フォアグラです。どちらも“本物”の肉です。本物の肉、なのですが、動物を屠殺場で殺して調理した肉ではありません。これは「細胞培養」という技術を用いて実験室で作られた肉なのです。

ざっくり言うと、

細胞 = 体を構成する基本単位

培養 = 細胞に栄養を与えて育てること

です。

牛や豚から採取した筋肉細胞を培養して上手に増やすと我々が普段食べているミンチ肉やステーキ肉のようになりますし、鶏の肝臓細胞をとってきて上手く培養するとフォアグラになります。今まで動物を育てて出来上がった肉を食べていましたが、培養肉では発想が異なり、動物からとってきた細胞を動物の体外で育ててそれを肉として食べるということです。このようにして作られたのが写真に写っている肉なのです。

1枚目の写真は、オランダのマーストリヒト大学のマークポスト教授らによって2013年に発表された世界初の培養ミンチ肉です(しかし、この200gのミンチ肉の価格は研究費込みで2800万円…)。2枚目の写真は日本発のスタートアップ、Integriculture, Inc.が2019年8月に発表した培養フォアグラです。とても美味しそうです。実際、これらの肉は一流のシェフによって調理され試食会が行われたそうですが、とても美味しかったらしいです。(食べてみたい…)

 

◆培養は身近なもの! 

やはり何か不気味に思う人もいるかもしれませんが、この技術は特段驚くほどのものではありません。

培養(=細胞を育てる)操作は、生物学や医学などの研究において日常的に使われているものです。何か魔法をかけている訳でもありません。これは、生物の力を利用したものなのです。

家庭菜園に馴染みのある人ならわかるかもしれませんが、豆苗やネギの根っこを水に浸すとまた育ってきて、再度収穫できることがありますよね。再生野菜(リボーンベジタブル)と呼ぶらしいのですが、培養肉でやっていることのイメージはこれに大変近いです。これらの野菜は水につけておくだけですが、肉の場合は、細胞が育つために必要な栄養が揃った環境で培養することで、同じように育て増やすことができます。

生物の力を利用したもう1つのわかりやすい例として「発酵」が挙げられます。発酵とは、目に見えない微生物が食べ物など有機物を分解し、人間にとって有益なものになることです。

人間にとってマイナスなものになる場合は腐敗と呼ばれることが多いです(実は発酵と腐敗の分類は人間の主観によるものなのです)。人間は長い歴史の中で、「人間に有益な微生物」を見つけ、その微生物たちが働ける環境をつくる技術を開発してきました。

ヨーグルトの乳酸菌、パンのイースト菌がその代表例でしょうか。ご存知の通り日本は発酵大国であり、醤油、納豆、お酒、パン、チーズ、ヨーグルトなど発酵によって作られた美味しい食べ物を日常的に食べています。

こう見てみると、生物の力を利用し食料を生産することははるか昔からやられてきたことであり、我々日本人も比較的馴染みの深いものであるはずです。

 

◆細胞農業とは?

ここまでの話を含めて整理してみます。

人類がこれまでの歴史で用いてきた食料供給方法は大きく分けて5つあります。

狩猟、栽培、飼育、合成、発酵(醸造) 

そして、これに加わる第6の食料生産方法が、今回紹介した「培養」なのです。この培養を利用して、食品(肉、牛乳、卵、魚など)や革製品、それに関わる風味、芳香などを作り出すことを目指す分野が細胞農業なのです。そのため、細胞農業の対象は牛や鶏の肉だけにとどまりません。エビなどの魚介類 だったり酵母を培養してタンパク質を作らせることで、普通の牛乳や卵と分子レベルで同じタンパク質を作ることができます。

このように、食料や生体物質に関わる製品の新しい生産方法が細胞農業であり、その中の1つである培養肉が最近注目を集めているのです。

以上転載終了

 

◆まとめ

これまで用いてきた  食糧供給方法=狩猟、栽培、飼育、合成、発酵(醸造)に加え、今回の培養という供給方式。果たして人間は受け入れることができるのか?

この寄稿文を読んでも、まだピンとこない方がいらっしゃるかと思います。では、この供給方式によって、何が可能になっていくのか?

次回は「代替タンパク質市場の現状と細胞農業が注目される理由」について紹介します。では次回もお楽しみに・・・・

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2021年07月29日

100年先も続く、農業を。

・新規就農者を中心とした提携生産者が栽培した農産物の販売
・環境負荷の小さい農業を広げるためのあれこれ

を事業内容に掲げる、「株式会社坂ノ途中」の志。

 

以下、【坂ノ途中のこと】より引用

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2021年07月22日

お米づくりが育む『結(ゆい)』の文化

お米づくり=コミュニティづくり。
みんなで力を合わせる『結(ゆい)』という優しく、強い、助け合いの文化が、田んぼを介して自然と生まれていく。

以下転載。【ウチとソトを繋ぐ。“結い(ゆい)” で生み出す農業のかたち】

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2021年07月21日

純肉(cleanmeat)が切り拓く、未来の細胞農業 ――shojinmeatプロジェクト

前回細胞農業について紹介しましたが、これから紹介する記事は、三年前のものである。

杉崎麻友さんの挑戦は、各自宅で、最終的には農業を行う事ができるというもの。

現在は、まだ発展途上ではあるが、近い将来、肉も魚も自宅で生産可能になり、それを食べることが可能になるのだ。今回は更にすすんでこの細胞農業をとりあげます。インタビュ-形式です。 では・・・・リンク

 

転載開始

牛の筋肉細胞から牛肉を作る、牧草地も飼料も不要。必要なのは「培養液」世界中で研究が進む細胞農業(Cellular Agriculture)の分野において、2014年に有志団体として始まったshojinmeatプロジェクトは2016年に産業化を目指す「インテグリカルチャー社」をスピンオフしながらいまも市民科学(Citizen Science)主導での技術の普及と社会コミュニケーション活動を行っている。

コンサルティング会社でOLとして働きつつ、shojinmeatプロジェクトで細胞培養の研究に取り組む杉崎さんにお話を聞きました。

 

■純肉の商用化に欠かせない「コスト」を下げる努力

――まず杉崎さん自身のshojinmeatで行っている活動を教えてください。

>自宅で鶏の赤ちゃんから採取した細胞の培養をしています。

最終的には、牛や鶏を殺さずに少量の細胞だけ採取してそこから純肉(clean meat)を作れる、という状態を目指しています。しかし、一般的に成体(大人の牛や鶏)の細胞は増えにくいので、 新しい培養方法の確立であれ、遺伝子導入であれ、何らかの方法でこの壁を越えることが純肉業界全体の課題の一つだと思っています。

ほかの課題として、「コストの高さ」が挙げられます。 2013年にロンドンで純肉の試食会がありましたが、その時点では「200グラムで数千万円」でした。

年々コストは下がっていますが、いまだ従来の食用肉ほどの価格にはなっていません。そこで「細胞を増やすためのコストをどう下げるか?」が重要です。

――コストを下げるための取り組みを教えてください。

>通常、細胞培養にはクリーンベンチや遠心機のような高価な機材が必要ですし、機器の維持費や細胞を育てるための培養液など様々なランニングコストが掛かります。これを、shojinmeatプロジェクトのように「家で細胞培養出来る」ようにする。

大学の研究者時代のわたしもそうでしたが、多くの人は「細胞培養にはこの機材と環境が必要」という思い込みがあります。この前提条件を全て覆そうとしているのが、shojinmeatプロジェクトの特色です。

 

■自宅で実験、slackで共有&議論。世界的にも珍しいshojinmeatスタイル

――shojinmeatプロジェクトはどのように研究のやりとりをしているのでしょうか?

>わたし含め、各自が自宅で細胞培養実験を進めていて、逐一その結果をslack等で共有しています。チャットで「家でこういう実験したらこんな細胞観察できましたー」と画像をアップすると、みんなが「お!いいね!」「そこの条件どうなってるの?」とコメントが飛び交います。

この反応がすぐ返ってくるのがshojinmeatプロジェクトの楽しいところだと思います。大学の研究室にいた頃は、こんなに1つ1つの実験に「これやったー」「これダメだったー」「何が違ったー?」というやり取りをスピーディに出来る感覚は無かったので。

――試行錯誤が進むスピードが速そうですね。

>そうですね、1人の研究者が5年掛かる研究でも、こうして10人で取り組めば同じ期間で出来るトライアンドエラーの量も増えると思います。

あと、反応が返ってくると純粋に「次の実験も頑張ろう!」と思えます。やりとりしているうちに次のアイデアも浮かびますし。慎重に研究を進めることも大事ですが「とりあえずやってみよう!」と思える人はshojinmeatに向いていると思います。

――自宅で実験してslackでやりとりする、ってかなり独特ですよね。

>はい、Shojinmeatプロジェクト自体「純肉を身近にする」ための活動を重視しています。研究者に限らず、例えば小学生の子がお家で細胞培養を体験したら、家族も交えてなんとなく「細胞培養ってこんな感じか」とわかりますし、実際に高校生のメンバーが細胞培養の体験記を書いたりもしています。

それを読んだ方が「私でも出来そうだな」って思ってくれたら、ぜひできる範囲で試してみてほしい。研究という側面では『誰がやっても再現できる』ことが重要ですからね。まだハードルが高い部分もありますが、それをどんどん下げていくことが我々の役目でもあると思っています。

ニコ動の動画にも多くのコメントがついていますし、ごく一部の研究者だけじゃなくて興味を持ってくれた多くの人にプロジェクトには参画してもらって、いろんな角度から研究を進めて純肉の実現に近づけたらいいな、と思います。

―ウェブサイトもかなり研究以外のジャンル、二次創作やアートなども含まれていますよね。

そうですね、コミックマーケットで純肉本を頒布したり、純肉を題材にした漫画を制作してもらったり、と「#文化/思想」の動きも活発ですね。

Shojinmeatプロジェクトは基本的に「その人なり」の関わり方が出来るならウェルカムだと思います。どうやって純肉を社会に受け入れてもらうか?の意見や情報発信をしたり。誰かが役割を決めるというより「私なら、これができます」で関わる感じです。

強いて共通点があるとしたら「これは世界に実現すべきものだよね」という想いです。その中身は「家畜を飼うことで起きる環境への影響を減らしたい」「火星移住に向けて効率的に肉を生産したい」とか色々だとは思うんですけど。

 

■「細胞、とってもかわいいんです。」

――「自宅で細胞培養」のイメージが湧かないのですが、杉崎さんの自宅に設備があるということですか?

>住んでいるのは普通のお部屋ですけど、一応温度を一定にするためのインキュベーター装置があります。あと、基本作業はフローリングの上でやってますね。本来クリーンベンチ内でやる作業も含めて。

あとは、遠心機の代わりに扇風機を使ってみたりとか、身近なものを実験道具として使えないか色々試してみているところです。

実験結果はshojinmeatのslackに共有したり、観察用のブログにも詳細を載せています。

――ブログだと、かなり細胞そのものに愛着が湧いているなと思ったのですが。

>そうですね、かわいいんですよ細胞。

――かわいい?

>細胞を新しいシャーレに移してあげると、最初は培養液中でふわふわしてるだけなんですね。そこから、その環境で生きていける子たちは足を伸ばして張りつくようになるんですけど。

生体内なんかに比べたら圧倒的に居心地が悪いはずのシャーレの中でも、頑張って足を伸ばして生きようとしてる姿が健気でかわいいなぁ、って思います。

あと、分裂細胞って1日24時間のうち1時間くらいしか見られないのですが、偶然顕微鏡をのぞいたタイミングで分裂細胞がいると「あっ!分裂中だった?見ちゃった、ごめんね」って。

――同居人の着替えをのぞいちゃった。みたいなノリですね。

>結構ラッキーなことなんですよ。観察時間とか本当は短い方がいいんですけど、いろんな形の細胞観るのが楽しくてつい眺めちゃうんですよね・・・ちょっと細胞に愛情注ぎ過ぎかもしれないです。(笑)初めて食べる時に泣くかもしれない。

わたしはまだ試食していないのですが、試食したメンバーは「うま味の塊、アミノ酸の塊って感じの味」と言っていました。

恐らく牧場で鳥や牛を飼う方、農家で作物を育てる方も愛着を持たれると思うのですが、その感情に近いのかもしれないです。

――shojinmeatプロジェクトは海外の会議にも参加しているなという印象を受けたのですが。

はい。ただ世界的にみてもshojinmeatのように「自宅でDIY的に細胞培養」というアプローチは珍しいようですね。言い出しっぺの羽生さんが国際学会で「僕らのプロジェクトでは高校生が自宅で細胞培養している」と話すと毎回驚かれるそうです。

連絡用のslackにも海外からの方が参加していますが、自宅での培養に関する質問は多いですし、ドキュメントを英語化してほしい!という声もよく頂きます。

 

■動物の命を奪う現在の先にある、純肉当たり前の世界

――杉崎さんは農学部のご出身なので、食や畜産を通じて動植物の命を奪うことへのお考えがあるのかな、と思っていますが実際はどうですか?

>たしかに一般の方よりそこへの想いは強いかもしれません。

以前、鳥インフルエンザが流行した時何千羽もの鶏が殺処分になったニュースを見て「人間が食べるために育てられて、ウイルスに感染したら殺すのか。人間にそんな権利はあるのかな」と疑問を抱いたことがあります。植物も同様ですよね、人間が好きなように切って植え変えて。もちろん、その社会の上に私も生かされているのですが、何か考えてしまいます。

――もうちょっと別の形はないものかと。

>はい、ですから純肉について初めて知った時にも興味を持ったんだと思います。

いま私たちの実験でも、有精卵から鳥の細胞を採取することがあります。温め始めて10日過ぎの卵を開けると小さな雛の状態で、その時点では雛の心臓が動いている。

そして徐々に動きが遅くなるので「細胞を採るために、いまこの鳥が死ぬんだ」というのを感じます。同時に「これは普段私たちが食べている肉と何が違うのだろう」とも感じます。スーパーに陳列されている鶏肉や卵も、どこかの瞬間で食べるために殺されているんだなと。

――実験を通じて命が尽きることをリアルに感じている。

>はい、多分shojinmeatの名前の由来にたどり着く話だと思います。

精進料理は基本的に殺生しません、しかし何らかの形で生き物を殺生した場合は「無駄なくありがたくいただく」ことが重視されます。

いまは実験段階でわたしたちもやむなく殺している命がありますが、可能な限り研究速度を加速して、細胞をたくさん集めて冷凍しそこから再利用するなど、純肉の技術向上で最終的に殺される命が少なくなるようにしていきたいなと思います。

――最後に、純肉を僕らが普通に食べるのがいつ頃になりそうか?を聞いてみたいのですが。

>プロジェクト内では「10年以内には市場に出したい」という話がでてますね。今小学生の子たちが社会に出るころには「今日お肉食べたいな。何にしようかな」という時の選択肢に普通に純肉があるような。

――牛にするか豚にするか、の感覚でひき肉か純肉かを選ぶような。

>そういう感じです。そのためには購買価格、コストがもっと下がる必要がありますが、その頃には普通のご家庭に純肉を作る器具があり、ガーデニングで野菜を育てる感覚でお肉を手軽に作れたらいいなと思います。

――自宅に純肉用の調理器具があるのが当たり前。

>はい、もう普通の家庭ならあるような。炊飯器、電子レンジ、冷蔵庫、食器洗い機、純肉用細胞培養機。という感じで。

そうなれば世の中のレシピサービスにも純肉のレシピが沢山掲載されているでしょうし、各家電メーカーから純肉培養器が発売されていて、自社製品のアピールのために「わが社の細胞培養機は、独自の製法で肉のうまみが違います」とアピールしたり。

そういう世界を実現するために活動していけたらいいですね。

インタビュー:波多野智也(アスタミューゼ株式会社)

杉崎麻友(すぎさきまゆ)shojinmeatプロジェクトメンバー 研究者北海道大学農学部卒業後、東京大学新領域創成科学研究科修士課程修了。コンサルティング会社にアナリストとして勤務しつつ、2017年8月よりshojinmeatプロジェクトに参画。より安価で安定的な細胞培養方法の確立を目指し、自宅で実験・検証活動を行う。 

以上転載終了

 

◆まとめ

栽培農業:彼女が挑戦しているのは、将来、肉や魚を自宅でつくることができるという極めて画期的な農法である。植物を自宅で育てるというのと同じ感じらしい。

そして更に驚いたのは、この農法がある特定の研究室内で生み出されるものではなく、素人の研究者が自発的に研究を行いながら、その研究結果をお互いにシェアしながら、更に目標に近づけていくというもの。

この食品の完成形が予想ができませんが、非常に面白い試みであることは間違いありませんし、従来の農業の枠を完全に超えています。次回は更に、この細胞農業に迫ってゆきたいと思います。

では、次回もお楽しみに・・・

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2021年07月15日

農のあるまちづくり22~農の力で命がまわる

「農のあるまちづくり」シリーズ、エピローグ。

 

以下、転載(「東京農業クリエイターズ」2018著:小野淳)

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2021年07月08日

細胞農業とは何か?

細胞農業という農業形態を御存じだろうか?これまでの農業の概念を根本的に変えてしまうほどの農業のかたちであること言っても良いだろう 。

遺伝子組み換え作物という商品は、この間、ようやく知られるようになってはきたが、この細胞農業、更に先に進んでいる。

まだ、生まれて間もない農業であるが、日本では、現在、複数の企業が開発に参画している。今回は、この農業の可能性について追求していきたいと思う。

先ず、細胞農業とは?    ウイキペディアより

急激に世界中の人口が増加するにつれてそれに伴う食料の供給が望まれてきた。しかし70億人の中の10億人は飢餓に苦しんでいるのが現状である。2050年に人口は90億人に達し、食料は今の1.5倍は必要になると予測されている。その中で従来の畜産物の生産方法では限界がある。従来の方法では牛肉1kgを得るために10kgの飼料(主に穀物)と2000Lの水が必要となる。 世界中で利用可能な水資源の28%、土地の26%が畜産のために利用されており、これからの食料不足を解決する方法として従来の畜産業を用いることは効率的ではない。

また地球温暖化の原因とされる温室効果ガスは、家畜が放出するものが全体の18%を占めているため環境問題の面からも望ましい方法ではない。 さらに衛生面としても、従来の畜産方法は鳥インフルエンザBSE問題人畜共通感染症、抗生物質の問題を抱えている。

このような背景から代替的な食料資源や新しい生産方法の確立が求められており、細胞農業は上記のような様々な問題を解決できる方法として期待されている。

では、JAのHPから更に詳しく、とりあげてみたい。

転載開始

■「おいしさ」に期待、気になるのは「安全性」細胞農業・培養肉に関する意識調査

日本細胞農業協会は、全国男女1000人の消費者を対象に「細胞農業・培養肉に関する意識調査」を実施。次世代の食の選択肢のひとつとして研究開発が進められる、「細胞農業(Cellular Agriculture, セルアグリ)」に対する認知度や受容度について調査した。同調査はフードテック官民協議会「細胞農業CC(コミュニティサークル)」の活動の一環として行われた。(2021年2月) 

細胞農業(セルアグリ)は、従来家畜や水産資源など動物個体から得ていた生産物を、特定の細胞を培養することで収穫する生産方法。よりサスティナブルで効率的な食料生産方法を確立するため、世界中で23か国、100社以上の企業が、細胞培養による食料生産のための技術開発に取り組んでおり、牛肉、豚肉、鶏肉などの「肉」をはじめ、サーモン、マグロ、エビなどの「魚介類」、高級食材のフォアグラ、チョウザメなど、さまざまな食材で開発が進められている。日本国内ではまだ市場に出ていないが、シンガポールでは2020年12月、Eat Just社の培養鶏肉の販売認可が下り、今後世界的にも規制の確立と共に製品化や上市が進むことが予想される。

◆「培養肉」を知っている日本人は約4割

調査によると、全年齢のアンケート結果からは、「細胞農業」について知っている人は19.1%、「培養肉」について知っている人は39.1%。また、細胞農業については、「知っている」と回答した人の割合が最も高い年齢層は20代(32.5%)で、他の年代間では差はなかった。

◆期待するのは「おいしさ」、気になるのは「安全性」

細胞農業・培養肉について期待することを聞くと、「味がおいしいこと」(38.9%)、「食料危機を回避できること」(27.9%)、「価格が安いこと」(27.2%)が上位。一方、気になること・心配なことは、「食の安全性が担保されているか不安」(37.9%)、「おいしいかどうか」(34.8%)、「何が入っているかわからない」(29.3%)が上位で、いずれも味について強い関心があることがわかった。

培養肉のイメージについては、「知らないのでわからない」という回答が5割と最も多く、「未知のものに対する不安がある」回答が3割。「環境や動物にやさしくて良さそう」など好意的な回答が2割という結果だった。また、「『培養肉』という名前がよくない」という意見が複数挙がった。

◆「ふつうの肉より高い金額を出してでも培養肉を試したい」が約3割

「もし試しに食べてみようと思ったときに、培養肉100gあたり何円であれば買いますか」という質問に対し、1/4以上(27.9%)の人が、市販で売られている肉よりも、高い金額で購入する意思があることがわかった。全国各地にある珍味に代表されるような、日本の多様で豊富な食文化が、新しい食への寛容につながっていることも考えられる。

今回の調査結果から、細胞農業の生産物に関する情報の透明性を保ち、その製造方法や安全評価について、消費者に対して提示することの重要性が浮き彫りになった。この結果を受け、CAICと細胞農業CCは、細胞農業で用いられる技術やその安全性など、消費者が知りたい細胞農業に関する情報を積極的に発信していく。

以上転載終了

■まとめ

自然の摂理、生命原理の中で我々は生きている。

この記事を読むと、人の手によって生まれる細胞レベルの培養によって、食用肉等が生み出され、これまでの自然の摂理や生態系を逸脱し人工物質?が混入された食べ物など人体に言い訳が無い。と思う人もいるだろう、(※実際私もそのように考えている・・・)

しかし、農業の歴史を紐解くと、現在、存在する作物は、人間の都合で品種改良が繰り返されたものであり、それを疑う事もしないで、現代人は、美味しいと何の不安もなく体に取り入れているし、今でも品種改良は行われ続けている。

そう考えると、細胞農業は、その姿と何が異なるのか?細胞農業は、「新しい「農」のかたち」になるのか? 次回は、もう少し切り込んでいきたいと思います。では、次回もお楽しみに・・・・

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2021年07月08日

農のあるまちづくり21~都市のすき間が「新しい里山」となるⅥ

快適を追求し続けた都市(住民)が失った”つながり”。

取り戻すために、新しい里山はどんな役割を果たせるか。

 

以下、転載(「東京農業クリエイターズ」2018著:小野淳)

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