2022年8月3日
2022年08月03日
『食農ブームはどこに向かう』シリーズ6 改めて”農業に必要な能力”とは
「食農ブームはどこに向かう?」シリーズでは、
を扱ってきましたが、今回は生産者側の視点から”農業に必要な能力”とは何か?を考えてみます。
誰にでもできるのが農業
農業をやるにあたって、なにか特殊能力が必要なわけではなく、誰にでもできるのが農業です。実際、江戸時代には人口の約85%が百姓でしたし、現代でもロシアでは国民の大半が週末に農業を営んでおり農産物流通量の8割がそうした兼業農家によって担われています。
特殊な能力は必要ありませんが、多種多様な生物の中で人類だけがいろんな作物を栽培していることからわかるように、人類が普遍的に持っている農業をするのに必要な能力があります。
農業に必要な能力
農業は、植物を観察しその生態を把握することなしにはできませんし、天候や病害虫に対しても、深い洞察力によって因果関係や構造を理解し先手を打って対策する能力が必要です。
このような「対象に対する同化力」や「構造認識力」は、すっかり衰弱している現代人からみると特殊な能力のように感じてしまうかもしれませんが人類誰もが持っている能力であり、体格的にも身体能力的にも劣る人類が生き延び繁栄できたのもその能力のお陰です。
それでも、自然を対象にしている農業は、干ばつなどの異常気象や害虫の大量発生など、個々人の力だけではどうにもならないことが多々発生します。農業は村落共同体の相互扶助が不可欠で、平時であっても水の管理や獣害対策など集団の力なしには成立しません。さまざまな外圧を集団の課題として共認し、役割を決めて集団で課題を突破する「集団統合力」これも人類が普遍的にもっている能力で、農業に不可欠なものです。
農業には絶対的な正解など存在せず、失敗が付きものです。それでもあきらめずに、状況の変化に応じて常に追求し続けることが求められます。逆に、失敗してもあきらめずに追求すれば必ず成果は出ます。「あきらめない、負けない心」強いて言えば、これが必要な能力の一番根底かもしれません。
農業は能力育成に最適な職業
「同化力」「構造認識力」「集団統合力」は、本来人類誰もが持っている能力なのですが、現代人は都会で生活することで自然外圧と対峙する機会が減り、村落共同体を失い、人類本来の能力を失ってきました。
長年農業をやっている人は、天気予報以上に正確に天候予測ができますし、「植物に異変がある時は、植物の声が聞こえる」と言う程、自然に対する同化力が磨かれています。
現在でも地域の共同作業が多くあり、日常的にも地域で助け合いが残っている農業は、集団統合力を育成する場としても適しています。
農業で身につく力はそれだけではありません。現代、農業で稼ぐには良い作物を作るだけでは不十分で、その価値を広めるためのブランディング力=共認形成力を身につけることで市場経済の中で勝っていくことができます。どうしたらその能力が身につくのか、それは失敗してもあきらめず、成果が出るまで仲間と追求し続けることです。
農業に必要な特別な能力はありませんが、人類が本来持っている人類の人類たる能力を再生し、さらにはどんな仕事にも通用する共認形成力を身につけるのに、農業は最適な職業だと言えます。
投稿者 matusige : 2022年08月03日 Tweet