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2022年07月28日
『食農ブームはどこに向かう』シリーズ6 「おてつたび」は、なぜ成功したか?
前回の記事で今の若い人の新しい就労意識として、仕事を「楽しく働きたい」と求めている人が増えているというくだりがありました。仕事は辛いもの、苦役、だから頑張る、だから報酬が得られるというのがこれまでの常識でしたが、それを根底から変える流れです。コロナ禍後の一過性の意識でしょうか?
あるいはこんな意識も見えてきています。
「自分のやりたいことができる会社」を選びたいというのは10年前をピークにどんどん減り続け、今ややりたい事が見つからない時代になってきています。一方で楽しく、一方で自分のやりたい事はない。彼らが向かった先はそれを見つける事だったのかもしれません。やりたい事の中身とは新しい人間関係の中の充足感や、都市から地方への自然志向へ向かっていっているようにも思います。
今回の記事は、以前るいネットでも少し紹介された「おてつたび」についてです。わずか4年で2万人という登録者数、かつてのボランティアに変わって、お金をいただきながら旅をして(役に立ち)楽しさを得ながら経験を積んでいく。彼らの求めているものはなんでしょうか?
記事から抜粋して紹介してみます。
東洋経済さんの記事の抜粋紹介です。
■「おてつたび」って何?
>コロナ禍の行動規制がゆるやかになり、旅行の機会が高まっている。そんな旅の新たな形として注目されているのが「おてつたび」だ。
旅行者は、旅先で助けを求める農家や漁業者、観光事業者などを手伝いながら、日本各地を回る。しかも手伝いをすることで、報酬を受け取れるというのだ。“自分で旅先を選ぶ”のではなく、“助けて欲しい人がいる土地を訪ね、お手伝いをする”という斬新さに、おてつたびの参加者(おてつびと)からは「日本の知らない土地を知ることができて楽しい」「第二の故郷ができた」との声が寄せられている。2018年7月にサービスを設立後、徐々にユーザー数は増え、現在は2万人。旅と手伝いを楽しんでいる。このおてつたび事業を立ち上げたのは、株式会社おてつたび代表取締役CEOの永岡里菜さん(31)だ。三重県の南東部にある、人口1万6000人ほどの尾鷲市(おわせし)で生まれた。
都市集中型の暮らしが進むなか、故郷である尾鷲市をはじめ地方地域では人口減少や産業衰退の課題が深刻化している。特に一次産業を営む事業者は、跡を継ぐ人や事業を手伝う人が途絶え、廃業するケースもある。
こうした“地域での人不足×地域の魅力を知って欲しい”を掛け合わせたのが、おてつたびだ。
全国の農家や漁業者など一次産業の従事者や、旅館やホテルなどのサービス業者に、おてつたびマッチングサイトに利用登録してもらい、人手が必要になったらサイト内で募集をかける。おてつだい募集日数は日帰りから1カ月程度まで設定でき、参加者の宿泊場所や報酬は、手伝いの募集者側が負担する。一方、参加者はおてつたびマッチングサイトで募集される手伝い情報から、自分が行きたい場所や手伝い内容などを見て、応募する。
■なぜ「おてつたび」が拡がったか
>転機となったのはコロナ禍だった。海外への渡航が制限された2020年。それまで目的の旅先を「海外」としていた人が「国内」に目を向けるようになり、おてつたび参加者も一気に増えたという。「“灯台下暗し“といいますけれど。コロナ禍は日本の良さを気づかせてくれるきっかけになりました」
おてつたびの参加者と手伝い受け入れ事業者は、サービスを利用してどのように感じているのだろうか。
大学2年生の北見紗葵さん(20)は、過去4回おてつたびに参加したリピートユーザーだ。2021年11月に初めて参加してから、大学の長期休暇期間を活用して各地を楽しんでいる。これまでに旅館での配膳、接客、清掃などを経験し、このゴールデンウィーク中には愛媛県愛南町のみかん農家で、河内晩柑の収穫や選果、出荷作業を手伝った。
高校生のときから地域活動やボランティアなどに積極的に参加し、大学でも地域に関して学んでいる北見さん。おてつたびに魅了される理由をこう話す。
「観光も楽しいのですが、私はそれだけじゃ物足りなくて。おてつたびに参加すれば、地域の方と仲良くなれて、旅行では経験できないおもしろさを感じられる。大学生でお金がない自分にとって報酬をもらえることもありがたい。得た報酬で、訪れた地域で新たに体験したり、飲食したり。そうやってお金が使えるのはうれしいです」
当然、手伝いをする旅なので、楽しいことばかりではないのだろう。それでも北見さんは、「“お客さん”ではなく“仲間“として迎えてくれたからこそ頑張れたし、仲良くなれました。帰る故郷が増えたなと思っています」と話す。北見さんは今、自分の将来を見つめ直しているそうだ。「おてつたびに参加するまでは、大人になることに不安を感じていました。けれど、大人になっても新しいことができるんだって感じたし、魅力的な行動をしている人たちに出会えて衝撃を受けました。就職する前に、こういう世界や想いを知ることができたのは良かったなと思っています」
■これらの読んでみて改めてなぜ「おてつたび」が受け入れられたのかを考えてみます。
そこには前回の記事の最後のくだりがヒントになります。
>農業コンサルをやりたいという学生も、よくよく話を聞いてみると、地域づくりがやりたい、人を繋ぐ仕事がしたい、が本音のよう。農業にのめり込む学生たちも、農業を通した人とのつながりや、みんなで成果を出す達成感を求めているのかもしれません。
自然収束、人収束、地域収束と課題(仕事)収束が重なって、なおかつ受け入れ側の人不足や人を育てたいや、地域の閉塞感を打破したい等お互いの求めるものが重なってこういった新しい事業が生まれたのではないかと思うのです。
起業者の永岡さんはそこに目を付けたのだろうが、31歳の彼女自身がかつての起業家やベンチャーとも一味違い、単純に必要なもの通しを繋げたという「楽しい」をベースにして起業を始めたところも注目すべき点だろう。
投稿者 tano : 2022年07月28日 TweetList
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