2022年8月10日
2022年08月10日
『食農ブームはどこに向かう』シリーズ7 生き抜く力も担い手育成も実現!子どもの頃から農に触れ合う可能性
本シリーズも残り2記事となりました。
前回は「農業に必要な能力とは?」というテーマで、
>人類が本来持っている人類の人類たる能力を再生し、さらにはどんな仕事にも通用する共認形成力を身につけるのに、農業は最適な職業だと言えます。<
というお話がありました。
この視点は、子どもたちの人材育成・教育においても、重要なポイントではないでしょうか。
これまで、農業従事者が減ってきている実態や、大学時代に農業を学んでも別の仕事に就く子が多いという事例を紹介してきました。
幼少期~中高生の間に、いかに農業の現場に触れる機会があるかは、農業の次世代の担い手育成という観点から見ても、カギを握りそうです。
■農業の担い手育成の実態・可能性は?
「農業を仕事にしよう!」となったときに一番最初に思い浮かぶのは、農業高校・専門学校などに進学するというイメージが一般的でしょうか。
そもそも、農業高校の始まりは、明治期に遡ります。当時は「地域のイノベーションリーダー的な存在」で、美味しい作物を安定的に供給することが当時の農業にとって一番重要な課題だったのでしょう。
※画像はこちらからお借りしました。
しかし、現代の農業高校生の進路状況を見ると、毎年、約26,000人の生徒が農業高校を卒業しており、その約半数が卒業と同時に就職するが、そのまま農業に従事する生徒は就職者の5%を切っていると言います。
大半の生徒は農業とは直接関係ない製造、販売などの企業に就職するか、まったく異なる分野の大学・専門学校などへ進学しているケースが多いのです。
農業を取り巻く状況・環境は刻一刻と変化しています。たくさん作れば、その分売れるという簡単なものではなく、これから生き残っていくためには、前回のブログでもご紹介したように、ブランディング戦略や地域・集団をまとめていく力が不可欠です。
だからこそ、「次世代の担い手育成」を実現するためには、農業教育のあり方も、時代に合わせて変えていく必要があると思います。
どんな仕事をしようかと?考え出してから農業に触れるのではなく、もっと小さい頃から身近な存在だったらどうでしょうか。みんなで協力して成果を上げる楽しさや自然の偉大さ、ありがたみという“実感”が、職業選択にもつながってくるかもしれません。
また、その経験の中で、周りを巻き込む人間性や、自然外圧(天気、季節など)に応じて判断する能力が磨かれるとしたら、農業は人材育成にもってこいとも言えるのではないでしょうか。
■農業×子どもたちの学びをデザインする「ジュニアビレッジ」
最後に、農業を通じた人材育成を実現する「ジュニアビレッジ」をご紹介したいと思います。
チーム作りから栽培、商品開発、販売、さらには事業報告会・コンテストまで、1年を通して取り組むそう。年間25~30回程度のワークショップや実践で構成されています。
小中学生が参加し、社長、デザイン、セールス、畑管理・アグリテックなど役割分担も自分たちで決定。
※画像はこちらからお借りしました。
そんなジュニアビレッジの理念は・・・
「これからの時代を生きる子ども達に必要な学びとはどのようなものでしょうか? これからの時代にあるべき地域の姿とはどのようなものでしょうか?わたしたちは、その1つの答えに「農」があると考えます。科学から文学。企画から経営。子ども達が「農」を通じて、それぞれの興味関心に応じた探究を進める学びの体験をつくります。
多くの人との関わり、試行錯誤が子ども達の根っこを育て、地域という大地にしっかり根をはる。 大きな木に育ち、地域にたくさんの実を還元する。子ども達の成長が地域の未来をつくる。
そんな地域社会全体でつくる学び場がジュニアビレッジです。」
参加者からは、人を救うような仕事がしたい、仕事に対するイメージが変わった、といった感想も寄せられています。
生き抜く力を身につけることも、農業の担い手育成にもつながる。子どもの頃から農に触れ合うことは、もっともっとたくさんの可能性を秘めている気がしてなりません☆
<参考>
農業人材の未来を拓く学びとは
https://news.mynavi.jp/techplus/article/agribusiness-9/
ジュニアビレッジ
https://drive.media/career/job/32888
投稿者 k-haruka : 2022年08月10日 Tweet
2022年08月10日
【ロシア発で世界の食糧が変わる】7~ロシア。中国をはじめとして新興勢力は世界の支配構造、脆弱なシステムを解体し、新たなシステムを構築しようとしている~
ロシアによるウクライナ侵攻を契機とした食糧危機により、食糧政策に力を入れてきた「新興勢力(ロシア、中国、をはじめとしたBRICs)」が世界の主導権を握っていこうとしています。
※画像はこちらからお借りしました
これまではロシアの農業政策について触れてきましたが、今回は新興勢力である中国やインドがどのような食糧政策を行ってきたのか、そして新興勢力がどのような世界を描こうとしているのかを見ていきたいと思います。
・参考:世界の勢力図の転換。ロシア・中国・BRICSが新たな経済圏を作り出しつつある
◯新興勢力が世界に食糧を供給している
世界の穀物生産量を見ると、ロシア、中国、インドが上位5位に入っています。
※グラフはこちらからお借りしました。
ウクライナ侵攻に伴って価格が高騰した小麦だけに限って見た場合、総務省が発表している「世界の統計(2022)」によると中国・インド・ロシアが上位3位を占めています。
※グラフはこちらからお借りしました。
今回の世界的な食糧危機により、食糧生産力が世界の主導権を握る上で重要だということが世界に示されました。
そして、強い影響力を持っている国のほとんどが新興勢力なのです。
◯世界最大の穀物輸出国である中国とロシアの繋がり
ロシアが2010年代に大きく農業政策を行い、農業輸出国にまで上り詰めてきました。
中国もまた2008年の食糧危機以降に、国家食糧備蓄政策として「3つの保護農家利益の保護、食糧市場安定の保護、国家食糧安全の保護)」を打ち出し、穀物生産量を10年の間に1.5倍にまで伸ばしてきています。
※グラフはこちらからお借りしました。
中国が食糧政策に力を入れた時期はプーチンが食糧政策に力を入れ始めた時期と重なっており、習近平は今年からロシアからの小麦輸入を拡大することを表明していることからも、両国の繋がりが強いことが想定されます。
中国はロシアだけでなくウクライナともつながっています。
ウクライナと中国は2012年より中国と農業開発プロジェクトを結んでおり、食糧分野において協力関係にあります。
今回の侵攻を食糧という軸で見るとは、背後に新興勢力の繋がりが見え隠れしています。
・参考:価格高騰だけではすまない、ロシアと中国が世界を食料危機に突き落とす
◯インドがITを基盤とした農業により新興勢力の覇権はより強まる
インドは1960年の食糧危機をきっかけに、農業の近代化(緑の改革)に舵を切りました。
1970年に食糧自給を実現しますが、種・農薬・肥料を買い続けなければならない苦行と、近代化による田んぼの荒廃に悩まされ続けました。
しかし、2014年に発足したモディ政権が緑の改革に続く新たな農業政策を推し進め、2016年に「電子国営農業市場(eNAM)」を設立したことにより、農業の様相が変化し始めています。
その他にも、2015年に土壌健康カード(SHC)を開始し、近代農業によって劣化した土壌の対策も行うなど、ITを通じた農業改革を進めていっています。
世界の名だたるIT企業が開発拠点に置くほどIT先進国であるインドにおいて、ITと農業がつながることによって、今後同国の農業は大きく転換していくことが予想され、新興勢力の食糧を基盤とした影響力はさらに強まっていくことになります。
※画像はこちらからお借りしました。
◯新興勢力はどのような世界を描こうとしているのか
今回の食糧危機は、欧州系の金融勢力や米国系の軍事・石油勢力によってつくられてきた「グローバリズム」と呼ばれる世界システムは脆弱であることが強く示されました。
ロシアや中国をはじめとした新興勢力は、 それらの世界の脆弱なシステムを解体し、新たなシステム(経済、農業、流通、貨幣システム)を構築しようとしているのかもしれません。
そのためにも、支配する勢力を解体するためにウクライナ侵攻により世界的な食糧危機を起こし、西欧諸国で首相などのトップ層が相次いで辞任している状況を生み出しています。
新興勢力はこれまでの支配構造、勢力の解体を行おうとしています。
次回は新興勢力が描こうとしている世界をもう少し具体的に見ていきます。
【参考】
・世界食糧危機の中、なぜ中国には潤沢な食糧があるのか?
・中国のしたたかな戦略 危機感薄い日本
・農民の困窮とモディ政権の農業政策
・インドの食料問題と食料政策
・インドの農業・貿易政策の概要
・小麦生産量世界有数のインド、輸出を一時停止「食糧安全保障に対処」
投稿者 tiba-t : 2022年08月10日 Tweet