2022年8月26日
2022年08月26日
『有機農業をまるっと見る!!』最終回:シリーズまとめ
『有機農業をまるっと見る!!』シリーズでは、「有機農業」について、ホントのところを話していこう!と銘打って、6回にわたって投稿してきました。
有機農業は最近特に注目を浴びてきており、農水省も昨年から『みどりの食料システム戦略』を打ち出するなど、国を挙げて推進しはじめました。その目標は、「有機農業の農地を2050年に全体の約25%にする」というものですが、現状は0.5%にすぎません。
そこで、良し悪しといった価値観は置いておいて、有機農業の実態はどうなのか?、そもそも有機農業って何なのか?、持続可能な農業はどうやればできるのか?など、農業の可能性を掘り下げました。
シリーズ最終回である今回は、追求した内容を簡単に紹介します。興味が湧いたところがあれば、タイトルをクリックしてください。その回のシリーズ全文に飛びます。
シリーズ1:みどりの食糧システム戦略って?日本と世界の有機農業の現状
世界の有機食品売り上げは増加し続けていて、10年で倍増以上。世界中で有機食品への需要が高まっています。日本でもスーパーのオーガニックコーナーが増えていたり、同じ傾向にありますが、有機食品市場は世界平均を下回っています。
また、みどりの食糧システム戦略の最終目標である、有機農業取り組み面積についても、世界平均の半分にも達していません。
『有機農業をまるっと見る!!』シリーズ2 :欧米で有機農業が盛んな3つの理由
有機農業取り組み面積は国によって差が大きく、日本の0.5%に対して、イタリアは15.2%、オーストリアに至っては25.3%もあります。
日本と欧米で、大きな差がある理由は主に3つありますが、なかでも日本の政策や法律が整備されていないこと、制度化するまでの世論が形成されていないことが大きいです。
欧米が良くて、日本が遅れているというような単純な問題ではなく、価値観で動きやすい欧米人に対して、日本人は「有機農産物は安全と言えるのか?危険は農薬だけなのか?そもそも健康的で安全な食べ物とは?」といった根本的な問題に対し、慎重に判断しているように感じます。
『有機農業をまるっと見る!!』シリーズ3:「有機農業」「オーガニック」ってそもそもなに?
そこで、改めて「有機農業」「オーガニック」ってなんなの?を整理してみました。
「有機農業」「有機農産物」「オーガニック」を謳ったり表示してOKなのは、国の認証を取得しているものだけです。
認証を得るには、農薬や化学肥料を使わないことに加え、非有機認証の圃場からの距離や、管理記録の保管など、細かい条件が定められており、国の認証機関が毎年監査に来て厳しいチェックを受けます。
国は、本当に有機農業を広めたいと思っているのか、疑問に感じてしまうのは私だけでしょうか?
『有機農業をまるっと見る!!』シリーズ4:持続可能な農業とは?~植物の誕生からその生命原理を探る
近代農業が悪くて、有機農業が良いというような単純な問題ではなく、持続可能な農業を実現するには、植物の生命原理を解明しそれに則って農業をすることが必要なので、植物の誕生からその生命原理を探りました。
本来植物は、肥料をやったり、耕したりしなくても、自らどんどん繁殖していける仕組みを持っていることがわかりました。
私たちは農業をする際、「畑から持ち出した収穫物分は、畑に補わなければならない」というような発想で、肥料やら堆肥やらを投入しますが、それが本当に必要なのか疑問が湧いてきます。
実際、近代以降は、土中に肥料と農薬を大量に投入してきましたが、それによって、元々肥沃で合った大地が、砂漠(=砂)になってしまっていることからも、逆に土のなかの有機物は減り続けているということになります。
『有機農業をまるっと見る!!』シリーズ5:持続可能な農業とは?~植物の共生ネットワークを破壊する近代農法と有機農業の可能性
植物は自ら肥沃な土を増やしていく循環を作っているわけですが、なぜ、近代農法によって砂漠化が進んでいるのでしょうか?
植物と微生物や菌の共生関係が植物が繁栄する基盤になっているのですが、近代農法はそのネットワークを破壊してしまいます。有機肥料を施用した場合は、比較的自然の摂理に近い農法ですが、それでも肥料の種類や量を間違うと植物と土との関係を壊してしまうことになります。
有機農業であっても、自然の摂理を理解することが植物本来の力を引き出すために大事なのです。
『有機農業をまるっと見る!!』シリーズ6:持続可能な農業とは?~持続可能な農業の主役は炭素。土中炭素をいかにして増やすか?
人間は、化学肥料と農薬を多用する近代農法によって、一過的な増収を実現したものの、植物本来の生存戦略を無視したために、植物が何千年もかけて作ってきた豊かな土壌をわずか50年で砂漠化してしまっているのです。地力を維持するのとは反対に、壊しているのです。
逆に言えば、植物の生態・摂理に即した農業ができれば、化学肥料や農薬に頼らず、収穫量も見込める農法が可能かもしれません。
そこで、これまでに追求してきた自然の摂理に則った「再生農業」の具体的な方法を、シリーズ6で整理しました。
シリーズ6回分をダイジェストで振り返りました。
一番の驚きは、シリーズ4で紹介したように、植物は光合成で自ら作り出した栄養分の大半を土中に放出し、微生物や菌類に与えているということです。逆に、微生物や菌類からは植物が必要とするミネラルをもらっているのです。共生関係のネットワークが重要で、この生物の生命原理に則ってこそ、持続可能な農業=再生農業が実現することがわかりました。
シリーズ6では具体的な再生農業の方法を紹介していますが、実用化のためにはまだまだ課題山積で、実地検証も含めて今後も更なる追求をしていきます。
また、日本だけでなく全世界が国を挙げて推進している有機農業ですが、その目的は何なのか?が疑問として残ります。この間のロシア・ウクライナ戦争によって化学肥料が値上がりし、農業現場では国内で調達できる堆肥が見直されるなど、食料生産の自給自足へと向かう大きな潮流を感じていますが、全く無関係ではなさそうでここも追求したい課題です。
残課題はあるものの、有機農業シリーズは一旦今回で終了とし、次回から新シリーズを立ち上げます。
植物は微生物や菌類と共生することで、お互いに繁栄してきました。人類はその共生関係を壊すことで自らを窮地に追い込んでしまったのです。
人類も生物の中のひとつである以上、生物の生命原理、自然の摂理を踏み外してはまともに存在できません。食品にしろ医療にしろ、現代人は自然の摂理からはみ出してしまっているのではないかと危惧されます。
そこで、次のシリーズは、『腸が作る健康の秘訣』と題して、健康、食事、医療について扱う予定です、楽しみにしていてください。
投稿者 matusige : 2022年08月26日 Tweet