『食農ブームはどこに向かう』シリーズ4 昔の農家と今の食農ブーム 何が違う? |
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2022年07月09日
『有機農業をまるっと見る!!』シリーズ3:「有機農業」「オーガニック」ってそもそもなに?
前回・前々回の記事では、世界と日本の有機農業の実態についてみてきました。
世界の中でも、日本は有機農業への取組みは後進的で、また生産側だけではなく、消費者側の意識も、有機農業の価値や意味への理解が乏しいことも見えてきました。
今回の記事では、改めて「有機農業」「オーガニック」ってなんなの?を整理していみます。
■「オーガニック」「有機農産物」とは?
「有機農業」「有機農産物」「オーガニック」を謳ったり表示してOKなのは、国の認証を取得しているものだけです。
これは、所謂「有機JAS法」や「特別栽培農産物に係る表示ガイドライン」で定められています。
認証を得るには、以下の条件を満たしている必要があります。
【有機JAS認証の主な条件】
★栽培期間中だけでなく種・苗を植える2年以上前から
原則として化学合成農薬、化学肥料不使用(残留農薬を減らすため)
★農地だけでなく、周辺からも禁止された農薬・化学肥料・土地改良剤が入ってはいけない⇒非有機認証の圃場から2m以上離れていること
★種・苗の入手から栽培、収穫、包装、輸送すべての行程で
汚染がないか管理・記録されている
★遺伝子組み換えの種子を使っていない
この条件を満たし、基準通りの栽培~出荷を行っているか、国の認証機関が毎年監査に来て厳しいチェックを受けます。そこでOKがでなければ認証をはく奪されてしまいます。
■「無農薬」「減農薬」「低農薬」との違いは?
「無農薬」「減農薬」「低農薬」は、国や法律で定めた明確な定義がありません。それどころか、表示してはいけませんよ~と、法律で定められている表現です。
なぜかというと、非常にあいまいな表現のため、生産者が思っている「無農薬」と、消費者の捉える「無農薬」が異なっていることが分かったからだそうです。
■国の認める表示「栽培期間中農薬・化学肥料不使用」「特別栽培」
農薬や化学肥料の使用状況について、国が定めている表示方法として、「栽培期間中農薬不使用」「栽培期間中化学農薬不使用」があります。
これは、「特別栽培農産物に係る表示ガイドライン」の中で明確に定義が定められています。
「特別栽培」とは、
栽培期間中、農水省の定める節減対象農薬(有機JASで認可されていない農薬全部)及び、化学肥料(チッソ成分のうち化学性のもの)を、各都道府県の定める慣行レベルの半分以下の成分使用回数に抑えて栽培しているものに対して表示することができます。
(栽培期間とは、その圃場で、前作の収穫後から当該農産物の収獲までの期間のほ場管理をいいます。)
慣行レベルとは、農産物の栽培地が属する地域の同作期において当該農産物について慣行的に行われている生産過程で、節減対象農薬と、化学肥料(窒素分)がどれくらい使われているかを、各都道府県が定めていおり、その基準を慣行レベルと呼びます。
■「慣行栽培」とは?
これも法律で定められており、「有機農産物」と「特別栽培」の基準に満たないものを慣行栽培と呼びます。
■有機農産物=無農薬ではない
有機JAS認証には、認可されている農薬があります。
これらの農薬は、化学合成されたものではなく、自然由来の物が使われているため、認可されています。例えば、菊(シロバナムシヨケギク=殺虫菊)から抽出した成分を使っていたり、バチルスチューリゲンス菌という納豆菌の仲間を使っているものなどです。→1410.pdf (s-boujo.jp)
そもそも「農薬」というのは「農薬取締法」で定められているもので、天然物であろうがなんだろうが、法律で定められていれば「農薬」なのです。なので「すべての農薬は悪」というの認識は改めたほうが良いでしょう。
■「自然栽培」「自然農法」とは?
これらの言葉は、法律や国の定めがあるわけではないので、厳格な定義はありません。ですので、使っている人によって意味合いが異なっています。
日本国内には、有名な自然農法家が何人かいて、それぞれが定義づけを行っています。
ざっくりとは、有機肥料も含む肥料を使わない、農薬も使わないというのが条件としてあります。そこに、除草をしない、耕起しない、種子は自家採取や固定種を使うことなど、様々な条件があります。
ただし、繰り返しますが統一された定義はないのです。
【代表的な自然農家や団体】
・自然栽培全国普及会(リンク)
・赤目自然農塾 川口由一(リンク)
・橋本自然農(リンク)
・福岡正信自然農園(リンク)
■「水耕栽培」「養液栽培」とは?
土を使わずに、養液(液肥をまぜた水)の中に根を生やして栽培する方法を「養液栽培」といいます。
養液栽培には、水の中に根を生やす「水耕栽培」、ロックウールと呼ばれる人口繊維のスポンジのようなものに、溶液を含ませて、そこに根を生やす「ロックウール栽培」、養液を霧状に噴霧し、そこに根を生やす「噴霧栽培」があります。
(水耕栽培のハウス↑ こちらよりお借りしました)
↑ロックウール栽培
日本では、これらの栽培では「有機JAS認証」を得られないことになっており、したがって「有機農産物」「オーガニック」は謡えません。(国の制度によってOKのところもあります。)
また、一般的な認識では「自然農法」「自然栽培」のカテゴリーにも当てはまりません。
これに対して畑の土で栽培する方法を「土耕栽培」と言います。土を使っていても、プランターの土で栽培する場合や、鉢の中で栽培する方法もありこれらは「根域制限栽培」と言います。
↑根域制限栽培(こちらからおかりしました)
■「ハウス栽培」「露地栽培」「施設栽培」「工場栽培」とは?
ビニールハウスや、ガラスハウスの中で栽培する方法を「ハウス栽培・施設栽培」といいます。
一方で、露地畑で栽培する方法を露地栽培といいます。
↑露地栽培
↑ハウス栽培(土耕)
補足すると、上記の「養液栽培」は基本的にはハウス内で栽培され、露地では不可能です。
ハウス栽培であっても、土耕栽培されることはあります。
ハウスであるか、露地であるかは、有機認証制度では特に制限されていません。
「工場栽培」というのは、空調と光と水を完全に人工的に制限した建物の中で栽培する方法。水耕栽培が基本です。さらに日光の代わりにLEDを使います。外気が入らないような施設で、空調で温度・湿度管理を行います。
「工場栽培」は有機JAS認証は得られません。
(↑工場栽培 こちらよりお借りしました)
■F1種子は関係あるの?
遺伝子組み換え種子は明確に禁止されていますが、F1種子を使っていても有機JAS認証は取得できます。
有機JAS認証では、種子も有機栽培されたものを使うことを推奨はしていますが、禁止はしていません。
なぜなら、実際、有機認証を受けた種子を入手することが非常に困難な状況にあるからです。
【参考】
自然栽培(自然農法・自然農)とは? – たべるとくらすと (taberutokurasuto.com)
養液栽培研究会 | 連載記事 | 養液栽培とは? (w-works.jp)
有機栽培に農薬が使われている!?「有機JASマーク」の盲点をしっかり知ろう | 農業とITの未来メディア「SMART AGRI(スマートアグリ)」 (smartagri-jp.com)
有機種子の現状 (shimizuya-tanenae.com)
投稿者 o-yasu : 2022年07月09日 TweetList
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