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2022年08月01日
『有機農業をまるっと見る!!』シリーズ5:持続可能な農業とは?~植物の共生ネットワークを破壊する近代農法と有機農業の可能性
前回の記事では、無機物だらけであった地上に、バクテリアと植物が有機物を作り出し、すなわち「土(鉱物の粒である砂に、有機物が混ざったもの)」を作り出していった過程を見てきました。植物は、バクテリアたちがわずかに作り上げた有機物の循環ネットワークを家族度的に拡大し、自らの生きる場を自分たちで拡大していったのでした。
一方で、近代農法が普及して以降、もともと肥沃な土壌で覆われていた広大な大地がどんどん砂漠化していっています(豪州やアメリカなど各地で報告されています)。
元々、植物は自ら肥沃な土を増やしていく循環を作るわけですが、なぜ、砂漠化が進んでいるのでしょうか?
そして、持続可能な農業というのは可能なのでしょうか?
今回の記事は、そのメカニズムを掘り下げます。
(画像はこちらからおかりしました。)
■化学肥料とはどういったものか
近代農法で多用されている「化学肥料」とはどういったものなのか、簡単に説明します。
植物の生育に必要とされている3代栄養素(N,P,K)の中でも代表格の「窒素(N)」についてみてみます。
天然の窒素はアミノ酸やタンパク質などの有機物に組み込まれており、植物は吸収できません。有機物が微生物に分解されると「アンモニア態窒素」という無機物になります。アンモニア態窒素が硝化菌というバクテリアに分解され「硝酸態窒素」になることで、ようやくスムーズに吸収されます。(化学肥料とは?成分や特徴・メリットをご紹介!有機肥料との違いは? | BOTANICA (botanica-media.jp))
「化学肥料」として販売されている肥料に含まれる窒素は、「アンモニア態窒素」の形をしているので、散布後、速やかに硝酸態窒素となり、水に溶け、植物の根から吸収されていくのです。
■植物は本来、「浸出液」によって土中微生物を増やし、土中微生物から栄養を得る
一方で自然界の窒素は、上述のようにアミノ酸やたんぱく質の形をしています。また空気中にも存在します。そうした形状をした窒素を土壌微生物が分解または空気中から固定し、アンモニア態窒素→硝酸態窒素に分解していきます。
その土中微生物は、前回の記事で書いたように、植物の根から出される「浸出液」によって育てられます。
また、昨今の研究では、土壌微生物の働きによって、アミノ酸が(アンモニア態窒素に分解されずとも)そのまま、微生物を介して植物に吸収されることもわかっています。
(画像はこちらからおかりしました。)
■化学肥料は、植物と微生物の強制ネットワークを壊す
化学肥料を散布すると、植物は微生物の力を借りずとも、すぐさま栄養分を吸い上げることができます。すると、植物は浸出液の放出量を減らしてしまうのです。
すると、そもそも浸出液として放出される有機物が無くなり、土中の微生物も減ることでさらに有機物が減ります。
そんな農法を長年続けていると、土中の有機物がどんどん減っていき、しまいには砂漠になってしまうのです。
そして、そのような土は、団粒構造もなくなっており、水分も保つことができません。干ばつの際には、カラカラに乾いてしまいます。また、大雨の際にも、水を保つことができないので、水と一緒に土が流れ、被害が大きくなってしまいます。これが昨今、気象による被害が大きくなっている理由の一つです。
そして、微生物がいない土からは、植物は本来栄養を吸い上げることができません。なので、さらに化学肥料を施用しないと育たなくなってしまい、悪循環となるのです。
■有機肥料はどうなのか?
では、有機肥料を施用した場合はどうでしょうか?
代表的な有機肥料は、植物や動物のフン(←フンも結局、動物が食べた植物が腸内で腐食したもの)を発酵させたものです。ですので、自然界で行われているような、微生物の活動を再現して、ある程度分解が進んだところで土中に散布しているわけです。その意味で、化学肥料とは異なり、自然の摂理に則った農法ということができます。
しかし、有機肥料の中にも、化学肥料と同じように「アンモニア態窒素」を多く含んでいるものもあります。代表的なものは鶏糞です。鶏糞は即効性があるということで、重宝されますが、実は化学肥料と同じ状態の窒素分が多く含まれているということでもあります。(とはいえ、他の有機物や微生物も含みますから、化学肥料よりはマシでしょう)。
ですので、有機肥料であっても、鶏糞のようなものばかり使っているような方法では、健全な共生ネットワークが壊されていくということも考えられるでしょう。
ここまで見てきたように、化学肥料や農薬利用は、植物と土の関係を壊してしまう。また、有機農業であっても、植物と土の理解して投入する資材(肥料)を選択することが、植物本来の力を引き出すために大事であるということがわかってきました。
■動物にとって本当の意味で健康的な食物とは?
ここまでで、植物本来のの生育の在り方と、近代農業がなぜ土壌を破壊するのかを見てきました。
さて、有機農産物を語るにあたって、避けて通れないのが「健康」「安全」という視点です。
私たち人間にとって、有機農産物は本当に安全で、健康に資するものなのでしょうか?
次回からの記事ではここを掘り下げていきます。
≪参考≫
発酵鶏糞の使い方 ~成分や施肥量の目安は?~ | GarDeco Japan
化学肥料とは?成分や特徴・メリットをご紹介!有機肥料との違いは? | BOTANICA (botanica-media.jp)
土が変わるとお腹もかわる~土壌微生物と有機農業(著:吉田太郎)
投稿者 o-yasu : 2022年08月01日 TweetList
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