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2009年09月01日

利便性とリスクを秤にかけるには・・・

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  ▲バルセロナ:市場の肉屋さん
利便性とリスクを秤にかけるには・・・
~物事を総合的に判断可能な「理」を知ること~

今日は、切り取った部分からは全貌は見えない! という話しです。
◆腐敗
腐敗現象は、微生物にとっての栄養素になるものがあって、その場に雑多な菌がランダムに増殖を開始することによって起こるプロセスです。細胞の内部で進む科学反応には、酵素という触媒が関与しており、ひとつの反応にはひとつの酵素が割り当てられています。乳酸脱水酵素は乳酸をピルビン酸に、リンゴ酸脱水酵素はリンゴ酸をオキサロ酢酸に変換する、といった具合です。
微生物の栄養素として働く物質には、乳酸、酢酸、ピルビン酸、クエン酸、リンゴ酸・・・などがありますが、いずれの酸も「-COOH」という角(官能基)があります。
◆酵素
酵素はタンパク質であり、細胞が20種類のアミノ酸を特別な配列順に連結して作り出されたものが、折りたたまれて立体構造をしています。酵素は、その立体構造のくぼみに物質を捉え、変換する触媒として機能します。特定の××酸と反応して捉えるのが、「-COOH」という官能基です。
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 ▲図版は「こちら」からお借りしました。
◆囮としてのソルビン酸
加工食品のチーズ・食肉製品・漬物類・味噌・餡・クリーム・スープ・飲料などの食品添加物として使われているソルビン酸は、ナナカマドの未熟な果実に含まれる果汁から発見された天然に存在する酸です。細菌やカビなどの増殖を抑制する働きがあり、食品や化粧品の防腐剤として使用されています。
有効性の秘密は、「ソルビン酸も「-COOH」の角をもった単純な物質」ということにあります。単純なだけに、微生物の栄養物質に、大なり小なり似ているので、多面的に展開して各酵素に取りつき、代謝反応をブロックする囮物質となるのです。
だから、ソルビン酸を食材に混ぜ込んでおくと、腐敗の進行をとめることができるのです。

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◆利便性とリスクの秤
【急性毒性】
投与直後から数日以内に発現する毒性で、その急性毒性の強さの尺度として用いられるのは半数致死量(or濃度)(LD50)。単位としては普通mg/kg(体重1kg当りの投与mg)あるいは、mg/m3、またはppm(吸入毒性の場合)。
毒性試験には動物(マウス、ラット、ウサギ、イヌなど)を用いられますが、動物実験から求められた最大無毒性量Aを経験的な安全係数(100、あるいは催奇形性、発生神経毒性などには300~1000といった数値)で割ったものを上限値として、毒性のリスクは無いと考えるもの。
【慢性毒性】
半年から1年程度の長期間にわたり連続または反復投与されることにより発現する毒性。
それでも、目に見えないところで厄介なことになっているかも知れないという場合は、ヒトの細胞をシャーレの中で培養して観察することも出来るそうです。任意の試薬濃度の環境で、各種の酵素の働きを測定したり、細胞分裂に際してDNAがちゃんと複製されているか、DNAに以上が現れていないかなどを精査することも簡単だそうです。
ソルビン酸は、食品添加物に利用する程度の量では、いずれのパラメータについてもヒト細胞に害作用を及ぼすデータが示されていないそうです。
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部分から全体を予測する限界
ヒトは、約60兆個の細胞からなるといわれますが、腸内に巣食う細菌は、なんと120~180兆個にも達するそうです。それらの細菌群は、バイオフィルムを形成して生息しています(リンク)が、それが危険な外来微生物の侵入や増殖を防ぎ、整腸作用を行なってくれています。
インビトロ(試験管内)の実験においては、電子顕微鏡的な実験観察が可能ですが、そのことをもって全体を総合的に即断するには無理があります。それは、シャーレの中は所詮、他とは隔絶した空間なので相互的・総合的な関係性を遮断されているからです。ですから、要素還元的な思考には限界ある(リンク)といわざるを得ません。
細菌にとっては急性期に使う抗生物質も強力な代謝阻害剤ですが、加工食品に対する依存度の高い現代人においては、ソルビン酸は弱いながらも長期間継続的に摂取する化学物質です。これほど食品添加物を多用するようになってからの歴史わずかですので、今後如何なる事態をもたらすかは未明のことです。
食品アレルギーが増加していることと、食品添加物の多用との相関関係もあるかも知れません。そんなことを考えると、地産地消も新たな意味合いを持つことになるかも知れません。
◆おまけ・・・
スーパーなどで買い物をする時、手前に陳列されている品物を掻き分けて、奥の賞味期限の長い加工食品を取り出して買ってはいませんか? よくありがちな光景ですよねぇ! これ、間違い。ここまで読んでくれた皆さんは、その理由がお分かりだと思います。
そうです、添加されたソルビン酸の残量が少ないのは、賞味期限が間近かなものです。添加物のリスクを軽減したいなら、手前の加工食品に手を出すべきなのです。一昔前の、「自分以外は全てが敵」という時代を生きてきた方々は、良いものは後に隠してんだろう! って思い勝ちですが、今じゃ、お客さんのことを考えて陳列してくれているんだぁ! と思うべきだということでしょうか?
今後も、有用な生物の概念と『農』の世界を繋げていきたい、と想います。
 参考図書:「世界は分けてもわからない~科学者たちはなぜ見誤るのか?」
       福岡伸一著 講談社現代新書
 ソルビン酸のことををもっと知りたいヒトは、⇒リンク
bin.jpg  by びん

投稿者 staff : 2009年09月01日 List   

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コメント

改めて、BSEなど他の事例との違いを明らかにしてくださって、問題の違いを意識できました!
昔からの感染病ということなので、何か発生への防止策や拡大への迅速な対応が確立されているといいなぁと思います。
今後の追求を、楽しみにしています☆

投稿者 megu : 2010年10月3日 01:44

そういえば、口蹄疫もBSEも忘れかけてたなぁ、という印象です。特に解決したという話は聞かないのに、マスコミで扱われなくなるだけで終わった気になるのは怖いものですね。
食品問題の根底には農業の生産様式の変遷があることは、みんな薄々気付いているのではないでしょうか?ただ、それが何なのかを掘り下げるほどの時間も気力もない。
そんな現状だからこそ、問題や解決策が明確になることを望みます。

投稿者 肉好き : 2010年10月3日 02:08

会議中にちらっと
話しになりましたが
ここ近年で著しく
以下の状態になった
肉の消費量増
米の消費量減
肉を食べると必ず
御飯がほしくなるもんですけどね
肉の消費量増
米の消費量増
まずこうなって
ほしいです

投稿者 ローズ弟 : 2010年10月5日 22:03

日本家畜の現状は興味深いです。
家畜を流通にのせることによって、収益にばかり気をとられて、無理な飼育をしているような気がします。
原因は家畜方法だけでは無いのかもしれませんが、日本の食や家畜方法を見直す良いチャンスなのではないでしょうか。

投稿者 はん☆ : 2010年10月5日 22:05

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