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2009年02月08日
農林畜産複合経営は楽しくてリスクも分散
書籍からの紹介です
『田舎で起業!』田中淳夫 著
写真はおそらく植林された杉林を背景に棚田で寝転ぶ牛たち の構図です。
複合生産の可能性 という意味で、記事そのものも大変面白いのですが、
戦前から戦後にかけての生産様式が「複合から分業に転換したのは何故なのか?」が、読み取れる興味深い文章でした。
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(引用)
農林畜産複合経営は楽しくてリスクも分散 『田舎で起業!』田中淳夫 著
「今ぐらいの価格が適正だと思いますよ」
今から7年ほど前、BSEや産地表示疑惑に揺れた畜産業界にあって、他の畜産業者が目をむくようなことを言っている農家があった。
山口県にある『ふるさと牧場』の山本喜行さん。ふるさと牧場は親牛に種付けをして仔牛をとる繁殖農家だ。仔牛の価格は通常一頭40万円以上すると言われている中、10万円以下のコストで生産性を上げている ふるさと牧場ならではの言葉だ。
コスト三分の一を可能にした繁殖農家
なぜ、それほどにコスト削減ができているのか?山本さんは谷間の奥の急傾斜地で林業、水田、畜産をされている。それも1人である。奥さんは会社員として毎日として働きに行っている。つまり、牛と山と稲の世話を1人でやっている。しかし朝は8時頃起きと遅い。なぜか?
ふるさと牧場の牛舎は棚田の脇にあり裏が解放されている。そのため牛たちは好きに出入りすることができ、棚田をぶらついたり山に登ったりして過ごすそうだ。そして夕方には勝手に牛舎に戻ってくるという。日中は牛舎にいないので牛舎はそんなに汚れない。朝晩のえさと、出産前後の親仔牛の世話があるくらいである。
棚田では米の収穫がおわると牧草の種を蒔き、伸びてくると牛を入れる。牛たちは石垣の間の雑草までも手入れしてくれる。
裏山では強間伐を実施しているため木と木の間が広く空いており、牛たちが行き来できるようになっている。牛たちは林床の草を食べるが、唯一『シキミ』は食べない。シキミの実には毒があるため牛は食べないのだ。ところが、このシキミの枝葉は仏前に供えるため、そちらの方面の需要はバカにならない。結構儲かるのである。
廃用牛が発情した!
山本さんはもともと農業や林業をしていたわけではなく、もともとは農家の息子だが、外に出て警官だったりレストラン経営をしていたりしたのだが、40代半ばの時に田舎に戻り、跡を継ぐことにした。先代が植えた林業で収入を得ながら廃用牛を買った。仔牛を産まなくなった牛はもちろん捨て値で買えた。
林業で最も経費のかかる下草刈りを、捨て値で買った牛にやらせようという発想である。アイガモ農法にヒントを得たらしいのだが、これが的中した。牛を放したことは下草を食べるだけでなく、踏圧によりさらに下草が生えなくなるらしい。
さらにである。狭い牛舎で不妊になった親牛の毛艶が良くなり、ついには発情したというのだ。そして、種付けをすると妊娠したという。これを機に繁殖農家となった。
牛がつくった花咲く山
ふるさと牧場では、棚田、山、牛が相互に絡み合っており、そこに独特のサイクルがある。実にムダのないサイクルなのだ。
牛が手入れをしている山は季節の花々が見事なのだ。牛は黙々と下草を食べ、人の目を喜ばす花は食べない。この美しい山に市民が訪れ、学校などが環境教育の場として利用し始め、全国各地からの視察や大学の研究者もやってくるようになった。
林道をトレッキングコースとして整備し、山を市民に開放した。2000年には『こぶしの里牧場交遊会』か結成され、全国から学生が研修にはいるようになり、ついには宿泊施設までできてしまった。このグループは単にこぶしの里に遊びや研究に来るだけではなく、牛の世話や稲刈り、間伐、椎茸栽培などの作業を手伝っている。山本さんひとりで手の 足りない部分を補いながら、彼らはそこを研究フィールドとして楽しみながら活用している。
ふるさと牧場はたった3頭の廃用牛から、農業、林業、畜産業、さらに研修や教育の複合経営となったのである。
近代経営の負を見直す
林内放牧は、古くから行われてきた技術。草原の少ない日本では、森林に放すのはごく自然である。林業と畜産の複合は、戦前なら当たり前だったのだ。
ところが戦後の畜産は、畜舎できっちり管理する方式に改められた。運動させず、高カロリーの配合飼料を与えることが大量生産に有効とされたからだ。放牧する場合も、専用の放牧地を造成し、肥料を散布して牧草収穫量を増やした。もちろんこの方式が効果を上げた部分もある。しかし高コストなうえに飼料の運搬や配給、牛舎の掃除など労働量が増加した。過密飼育は病気などを多発させ、抗生物質など薬に頼る部分も増えた。
同じことは林業にもいえる。一度は、林業に放牧すると苗が傷むと、効率の面から嫌われて分離してしまった。
「経営的には、農業は一年ごとに収穫する短期所得であり、畜産は二~三年周期の中期所得、林業は三〇年以上の単位で長期所得を狙います。これらを絡ませると、危険を分散して持続的で安定した経営になります」と山本氏は言う。
(引用おわり)
複合生産=持続可能な循環型の生産様式が戦後一貫して変えられてきた。
「管理する方式に改められた」、
「大量生産に有効とされたからだ」、
「肥料を散布して収穫量を増やした」、
「過密飼育で抗生物質に頼る」、
「効率の面から嫌われて分離」・・・。
これらの言葉を見る限り、途上国で行われてきた『緑の革命』のやり口と符号する面が多い。
いまでこそ日本は先進国と認識されているが、敗戦後の日本は途上国であった。
「(畜舎でしっかり管理する方式に)改められた」というのは、誰かに改めさせられたのか?
かつての生産様式を「非効率なやり方」と共認させ、「分業による大量生産」の強要があったのではないだろうか?
最初の緑の革命は、1940年代にメキシコで行われたとされている。そして、日本の終戦も1945年。
あまり言われていない事ではあるが、日本版「緑の革命」があった疑いは拭えない。
画像「ふるさと牧場フォトライブラリー」より 是非ご覧あれ
投稿者 pochi : 2009年02月08日 TweetList
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コメント
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