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2008年06月28日
世銀が推進する「グリーン・ネオリベラリズム」という途上国破壊
どうも雅無乱です。今日はこの書籍を紹介したいと思います。
『緑の帝国』-世界銀行とグリーン・ネオリベラリズム
マイケル・ゴールドマン著 京都大学出版会
<著者からの内容紹介>
開発の知と、拡大する世界銀行のヘゲモニー。環境保護主義と市場主義の「思いがけない結びつき」、グリーン・ネオリベラリズム。その権力性を明らかにし、「静かな支配」の実像に迫る。
<原著への推薦(一部)>
“独創的で,洞察に満ちた『緑の帝国』は,「開発」の名のもと,途上国がどのようにして発展ではなく衰退へと追いやられてゆくのかを暴き出している.”
ナオミ・クライン(『ブランドなんか,いらない』著者)
“……ゴールドマンは緻密な研究を経て,世界銀行の秘密主義的な活動がどのようにして世銀の利益に結びつくのか,またそこにかかわる多国籍企業がどのように途上国の環境,経済を圧殺し,貧しい者から資源と権利を剥奪しているのかを明らかにしている.”
ヴァンダナ・シヴァ(『アース・デモクラシー』著者)
<目次>
第1章 世界銀行を理解する
第2章 世界銀行の台頭
第3章 知識の生産―世界銀行のグリーン・サイエンス
第4章 あたらしい学問の誕生―環境知識の生産
第5章 エコ統治性と環境国家の生成
第6章 水の民営化、市民社会のネオリベラル化
―越境する政策ネットワークの権力
第7章 それは閉鎖できるか?
書籍の内容については、書評を二つ紹介するのでご参照を。
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書籍の内容については、書評を二つ紹介するのでご参照を。
2008年6月22日 読売新聞の書評(評:米本昌平氏)より一部
世界銀行という巨大権力が抱える矛盾とその攻撃的性格を、観察者という立場に徹して冷静に分析し、あぶり出してみせた快作(中略)
もともと潤沢な調査費の上に集められた世銀の情報は、途上国の政府や大学には圧倒的な権威がある。その中で世銀は、途上国の若手研究者に世銀流の開発手法を植えつけ、世銀コンサルタントとして雇いあげる。
だがその結末の一つが、現在のアフリカの光景である。
安全な水をすべての人に、というキャンペーンにおされて、世銀プロジェクトを受け容れた国々は、融資と同時にアメリカ流の法律改正と公共事業の自由化を強いられる。
こうして水道が外国資本によって民営化されたのだが、料金が払えない住民が多く、当初の目標は新たな債務を積み上げただけに終わった。
著者は、世銀の行動原理に、新植民地主義的な意図が秘められていることを見逃さない。
それはまた、世銀の行動原理に無知な人たちが「持続ある発展」の旗をふる、その振り方の問題点の指摘でもある。
さらに、思いをめぐらせれば、このことは今後、地球温暖化対策を国際金融エリートに委ねることの危険性をも示唆している。(後略)
※上の英文の日本語訳:
はいこの通り、あなたがたの発展のためのインフラ整備は完了しましたよ。
そのために私たちがあなたがたに投資してできた借金は、ちゃんと返してくださいね。当然でしょ?
つづいて、北海道大学経済学部准教授の橋本努さんの「週刊東洋経済」書評より。
「環境」を口実にした世界銀行の新たな途上国支配
「市場第一主義」の投資家と「環境保護主義」の運動家。この二人を実務的に組み合わせるとどうなるのか。「グリーン(環境)」と「ネオリベラル(民営化)」を混ぜ合わせた「グリーン・ネオリベラリズム」。そんな新しい開発レジームが、現代の世界銀行を動かしている。本書はそのパラドキシカルな実態にメスを入れた力作だ。
1990年代の世界銀行は、「ワシントン・コンセンサス」と呼ばれるネオリベラリズム政策を採用し、多くの途上国で統治の危機を招いた。その後の世銀は「ポスト・ワシントン・コンセンサス」と呼ばれる温和な方針へと転換するものの、「ネオリベ政策」をやめたわけではない。「ネオリベ政策」は今や、環境政策とパッケージになって遂行されている。
たとえば、先進諸国に本部を置く自然保護団体が、ある国で「生物の多様性が危機に瀕している」と叫んだとしよう。すると世銀は同団体と手を結び、当該国政府の資源濫用を防ぐために、公有の自然資源を基盤とした産業を、多国籍企業に競売すべきだと主張する。途上国の自然環境を管理するためには、当該国政府よりも、多国籍企業の支配に委ねたほうがよい、という理屈からである。
これは大きな逆説だ。世銀を支持するエリート学者たちは、低開発で無駄の多い状態よりも、高開発で無駄のない状態のほうが、環境に優しいと考える。ところがこの発想は、先進国が途上国の開発を推進するための糸口を与えてしまうのだ。
「すべての人に水を」という世銀のキャンペーンも同様である。きれいで安全な水を、みんなが飲める社会。そんな社会を実現しようと思ったら、私たちは途上国の公共サービスを民営化(つまり多国籍企業化)して、低コストで開発しなければならないだろう。そうでないと途上国政府は、過度の負担にあえいでしまう。
実際に途上国は、水や医療や電気などの公共財を、ベクテルやビベンディといった欧米の大企業に売却してきた。売却することによって初めて、海外の銀行や国際機関から融資を受けることができた。
エコロジカルな開発のために、先進国のネオリベ統治術を受け入れる。著者はこの権力作用を「エコ統治性」と呼び、途上国の国家運営が、ますますハイブリッド化していく様子をえぐり出している。では途上国は、世銀のネオリベ支配から逃れることができるのか。「南」の国政選挙では、世銀権力の存在が政治問題化している。世銀は今や、途上国の独自の国家統治を揺るがす巨大権力となっている。その働きに注視が必要だ。
私(雅無乱)のブログでも常々主張してきた、キレイゴトのキャッチフレーズの影でグローバル金融資本が「世銀」という組織を介して世界中で行ってきた破壊行為を、正面から告発している書籍のようである。マスコミが書かないこういう欺瞞を暴いていく書籍が、日本でもちゃんと出版されるというのは喜ばしい。3800円…となかなかいい値段がするが、購入したらまた内容について報告したい。
投稿者 nanbanandeya : 2008年06月28日 TweetList
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コメント
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