2022年10月13日

「腸が作る健康の秘訣」第5回 腸が外圧を捉え、脳がどうするを考える

腸と微生物の関係について色々と見てきました。

腸はその腸壁に様々な微生物を配備して栄養を取り込んだり、悪影響を与える病原菌を防御しているとも言えますが、もっと元から考えると腸は外界と繋がる皮膚機能でもあり外界を捉える外圧看取機能でもあるということです。よく腸は第2の脳とも言われますが、改めて腸内環境の視点から脳と腸の関係を見ていきたいと思います。

腸が健全だと脳も健全であるという考え方もありますし、腸が直接に外圧を捉えるので脳が素直にその信号を受けて対応するというのもあります。つまり、主従の関係で言えば外圧に対しては腸が主で脳が従になるのです。また、腸が感じた外圧を軽く考えたり、捨象したりすると脳は病気になり神経障害や悩みや鬱に繋がるのです。今回の記事で明らかにしたいのは腸が脳も身体も健全に保つという事です。

いつものように桐村里紗著の「腸と森の「土」を育てる」より紹介していきます。

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最近「腸脳相関」という言葉をよく聞きます。腸と脳は、自律神経やホルモン分泌、生理活性物質などを通じて、24時間365日、そして毎瞬時、私達が気が付かないうちに、互いにコミュニケーションをしていることが明らかになっています。腸内細菌業―腸―脳軸とも呼ばれます。これはもはや独立した2つの臓器ではなく1つのネットワークだと考えられます。さらに「ネイチャー」に発表された最近の研究では、腸内環境の情報を集積・統合して脳に伝えるには、肝臓が重要なインフォメーションセンターの役割を果たしていることも分かっています。つまり、腸内細菌業―腸―肝―脳相関というわけです。そもそも脳と全身の組織や臓器、細胞の1つ1つは、全体でネットワークを形成していましから、どの部分も全体性の中で重要な役割を果たしているのです。

脳から腸への影響から見ていきましょう。脳から腸へのルートの1つ目は自律神経です。
「自律神経」というのは生命維持にとって最重要なシステムの一つです。その環境において「自己」を最適化し、活かすためのシステムです。内蔵を含む全身を支配していて、胃腸の働きをコントロールするので極めて重要です。自律神経は覚醒時や活動時には「交感神経」が優位になり、リラックスしている時には「副交換神経」が優位になるというものです。胃腸はリラックスモードの時に機能して、ストレスがかかって交感神経モードになると動きが抑制されます。
交感神経の危機回避モードでは胃腸の動きは抑制されますから、食欲がなくなり便秘傾向になります。これが一般論としての自律神経による回避モードです。こじれていない人は少々このモードになっても寝たり気分転換をすれば、もとに戻ることができます。
しかし、人の危機回避モードはこれだけではないのです。ストレスが慢性化し、トラウマレベルまでにこじれた人の場合です。すれが「凍りつきモード」でフリーズしてしまう状態です。副交感神経による危機回避です。現在、意欲を失った若者や燃え尽き症候群が増加し、過敏性腸症候群や副腎疲労などの機能性身体症候群や発達障害、様々な心の病気が蔓延していますが、これらはまさに、ストレスを通り越し、自律神経のトラウマ的反応による現象と考えられています。怒るでもなく悲しむでもなく、防衛反応として解離が起きるので心を麻痺させて何も感じないようにすることで自分を守ります。

脳から腸への第2のルートは内分泌系です。
ストレスがかかると脳の視床下部から分泌されるホルモンが下垂体を刺激、下垂体から分泌されるホルモンが副腎を刺激、そして副腎からストレスホルモンであるコルチゾールや闘争ホルモンでアドレナリンが分泌され、身体は内分泌的にもストレスモードに切り替わります。実は腸内細菌は、これらのホルモンや自律神経の動きを過敏に感知します。そのため腸内細菌業のバランスにも変化が起きます。多くの場合、感染症や病気は、外からやってくる病原性微生物ではなく、普段共生している微生物がアンバランスになった環境の中で増え過ぎることによって起きるのです。しかし腸内細菌の健全な多様性が維持されていればこれを防ぐことができます。

腸のネットワーク↓(クリックすると拡大します)

最後に、腸から脳へのルートについて見ていきます。
このルートはこれまでと違って、感情や人格、意思決定、自己意識などに関連しています。日本は古来より腹に関連した表現があります。「腹が立つ」「腸が煮えくり返る」「腹の虫がおさまらない」などの感情表現、「腹に据える」「腹を決める」は意思決定の表現。これらは全て腸内細菌業―腸―脳軸に関連しています。
腸内環境が荒れると心も荒れて感情に波風が立つ。胃腸が弱い人は優柔不断で決断力がないとも言われます。「腹を決める」ことができないと仕事面でも成功しません。
英語では「直感」の事をgut Feelingといいますが、Gutは腸の事なので腸の感覚なのです。
腸を整え、内蔵感覚を研ぎ澄ますことは、健康だけでなく、直感や心、そして確かな自己の中心性を養うことにも繋がるのです。

腸はじつは最大の面積を持つ感覚器官です。また腸は常に外界と接している場所なので外からの刺激をリアルタイムでインプットする必要があります。腸にはびっしりと神経が張り巡らされています。入力、出力端子をあわせて「腸管神経系」と呼ばれるこれらの神経系の細胞は、4億個から6億個と脊髄の神経細胞の総数に匹敵するとされています。そのため、内臓感覚としての胃腸の動きや腸内細菌業の状態は膨大な情報として常に脳の中枢コンピューターに入力されているのです。全く無視できません。

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よくストレスがかかると胃腸が痛むと言われていますが、逆もしかりです。腸内環境が健全であればストレスも外圧として認識し、脳にきちんとインプットできる。外圧が来れば気力(交感神経)が働き、活力が生まれる。こういう循環になっているのではないかと思います。

ストレス=悪と考えるのは現代社会の風潮で、外圧をしっかりと外識機能である腸で捉え、脳でどうするを考える。それが外の世界の捉え方の基本のようにも思います。

著者はこのようにも書いています。

個人の心身をいくら最適化してもまだ局所でしかなく、外的環境と再接続することでようやく、全体性へのアプローチが可能になる。最も身近な外的環境は腸内環境で、食を通じて地球環境と接続している。

腸を最適化する=(健康な状態)にはどうするか?それを次の記事で追求していきたいと思います。

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2022年10月13日

24節気シリーズ5~大自然の巡りの一部になることで健康になる!

前回までの記事で、日本人は、太陰暦を使って月の動きと同調し、また農業や節句などの行事では24節気を用いて、太陽の動きと同調しながら、その大きなエネルギーと一体で暮らしてきたことがわかりました。人間も大自然や宇宙の一部であり、同じ構造と捉えていたのだと思います。

そのような世界観に同化してうえで、改めて日本人は、24節気をどのように暮らしに取り入れてきたのかを見て行きたいと思います。

今回の記事から3回にわたって、

 

⚫︎大自然の巡りに身体を寄り添わせて体調を整える

⚫︎季節の巡りを楽しむ暮らしや行事

⚫︎自然の摂理に沿った農事

 

の3つの観点から掘り下げます。

1回目の今回は、「大自然の巡りに身体を寄り添わせて体調を整える」について見ていきます。

 

■「健康」の捉え方

 

東洋医学の古典医学書「黄帝内経」は、中国でつくられましたが、日本にも伝わり、現在国宝としても大切に保管されている、医学の指南書です。

その「黄帝内経」には、“人間は自然の気を受けて生きているので、季節の働きに合わせた生活を送ることが大切”と書かれており、各季節の養生法が説かれています。その内容を簡単に紹介してくれている書籍から引用しますと、以下のようになります。

春は発陳といい、冬の間隠れていたものすべてが、芽をだし活動的になり始める時です。心身ともにのびのびと活動的な気持ちで動くことが良く、この春の気に逆らって静かに沈んだ状態でいると病んでしまいます。

夏は蕃秀といい、草木が成長し、万物が茂り、花咲き乱れ、陽気が最高潮に達する時期です。暑くてお体を動かして発汗するようにしましょう。もし陽気を発散しないと体内に熱がこもって病気になってしまいます。

秋は容平といい、万物が実を結ぶ時です。すべてが引き締まり収納される時期で、陽気も体内深くに収納されます。あれもこれもと手を広げ過ぎると陽気を発散して体が弱り、冬に体調を崩します。

冬は平蔵といい、万物が静かに消極的になる時です。決して発散せず、心身ともに活動は控えましょう。発汗したり、酒を飲んで一時的に陽気を多くすると、反動で体を壊します。

村上百代「二十四節気に合わせ心と体を美しく整える」より引用

古来、中国や日本では、宇宙のサイクルから、気の流れや万物の流れを感じ取っていたのでしょう。

その流れに身体を委ね、逆らうことなく過ごすことが、健康法の基本的考え方として捉えられていたようです。

 

■旬のものを食べるということ

 

「上医は未だ病まざるものの病を治し、中医は病まんとするものの病を治し、下医は既に病みたる病を治す」という言葉があります。病は、未だ病まざるものの病=「未病」のうちに整えるというのが、基本的な考え方だったようです。そこで、重視されるのが、「食養生」の考え方。

「食養生」では、旬の食材を食べることで、それぞれの季節に体調を合わせていく意味があります。

いくつか例を紹介します。

・春の山菜

 春は、万物が芽吹き、活動的になります。陽気になり、胃腸も活発になり疲れやすくなります。

 また冬の間に溜まった老廃物を取り除く必要があります。

 山菜の苦みは、余分な熱・気を取り除き、肝の働きを助け、解毒する作用があるとされています。

・夏のうり類

 夏は、万物が活発に活動している時期で、人間も新陳代謝が活発になります。熱や湿気をきちんと八させずに、こもらせてしまうと体調を崩します。きゅうりやスイカなどのうり類は、余分な熱を取り除き、水分を巡らせ代謝させる働きがあります。

・秋の芋やかぼちゃ、果物

 秋は、陽気が減り、陰気が増えていきます。夏に発散した気

力を補い、冬に備えてエネルギーを蓄える時期。乾燥しやすいこの時期には、潤いを補うことも大切。

イモ類やかぼちゃ、果物には、湿を補う効果があります。気や湿を蓄えていく体に変化していきます。

「秋茄子は嫁に食わすな」。一般には、「秋にできるナスは味がよく、もったいないから嫁に食べさせるな」という意味で使われることが多いようです。しかし、本来は「ナスはからだを冷やすので大事な嫁に食べさせるな」という意味が込められていました。

・冬の根菜類

 万物が休眠し、春に備えてエネルギーを蓄えていく時期。にんじんなどの根菜類は、体を温め腎の働きを助け、エネルギーを蓄えます。また、ネギ類、しょうがも体を温めます。

 

 

季節の野菜には、単にミネラルやビタミンといった栄養素だけではなく、その季節の自然界の気や生命力のようなものも一緒に取り入れるという意味合いを捉えていたのではないでしょうか。

人間も大自然や宇宙の一部であり、その自然の巡りや、エネルギーの巡りによって身体も変化していく。自然と身体を調和させてこそ、体調が整っていき、楽しく暮らすことができる。食養生の考え方には、そんな意識を感じます。

 

 

次回のは、季節の巡りを感じながら暮らしを楽しんできた日本の文化に焦点を当ててみます。

 

【参考文献】

「二十四節気に合わせ心と体を美しく整える」 著:村上百代

「薬膳・漢方検定公式テキスト」 監修:薬日本堂

「創健社:健康にやさしい7つの提案」https://sokensha.co.jp/about/think/season/

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2022年10月13日

【これからの林業を考える】シリーズ5~明治・大正の「スピード林業」が、現在の産業衰退の大きな原因

■明治維新から戦前までの林業

明治維新になった途端に西洋の文化が流れ込み、高層建築物の足場や杭、電柱、鉄道の枕木、貨物の梱包などで木材の需要は急増し、幕府の締め付けもなくなった全国の森林で大量伐採が横行し、日本の森林は再び荒廃の危機にさらされました。

明治政府は明治30年(1897年)に「森林法」を制定して森林の伐採を規制しました。さらに、無立木状態の荒廃地に関しては、明治32年(1899年)から大正10年(1921年)までの「国有林野特別経営事業」にて国有林野を払い下げた費用で、植栽を積極的に行って森林整備に努めました。また公有林においては、大正9年(1920年)年からの「公有林野官行造林事業」において、政府が市町村と分収林契約を結ぶ事によって森林整備を実施しました。

森林法はドイツの森林整備を参考にし、林業の近代化が進展しました。その後、第一次世界大戦、日清戦争、日露戦争などの戦争などで木材の需要がさらに拡大しましたが、その近代的林業が土台となり、全盛期を迎えることになりました。

その一方で、当ブログでは、この明治・大正の近代的林業が、現在の林業の衰退を招いていることにもなっていると分析します。そこで今回の投稿では、現代の原因となっているポイントを整理し、今後の突破すべき課題を明らかにしたいと思います。

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2022年10月08日

「腸が作る健康の秘訣」第4回 「善玉菌」「悪玉菌」の善悪って何?

前回は、腸内細菌の中でも最も注目されている酪酸菌について、その働きを紹介しました。酪散菌は、いわゆる「善玉菌」と呼ばれているもののひとつで、腸内の環境を整えたり、肥満や糖代謝を改善したり、脳機能の維持まで行うなど、重要な役割を担っています。

ところで、腸内細菌を「善玉菌」「悪玉菌」などと分類されていますが、何が善で何が悪なのでしょうか?

今回は、腸内細菌全体について、その役割やバランスについて見ていきます。

 

善悪では割り切れない腸内細菌

人間の細胞の数は約60兆個と言われていますが、腸内にはそれより多い100兆~1000兆個の細菌が棲みついており、その重さは1㎏から2㎏くらいもあります。腸の表面上に1000種類以上の細菌が群れをなして生息しており、その状態をお花畑に例えて「腸内フローラ」や「腸内細菌叢」と呼ばれています。

腸内細菌は、「善玉菌」「悪玉菌」「日和見菌」に分類されており、善玉菌と悪玉菌の割合は2:1で、善玉菌は全体の20%、悪玉菌は10%、日和見菌は全体の70%を占めています。

善玉菌は腸の中で発酵活動を行いますが、一方の悪玉菌は腐敗活動を行います。日和見菌は、善玉菌が優勢になると発酵活動、悪玉菌が優勢になると腐敗活動を行うといわれています。

悪玉菌は、腐敗活動を行う時に毒素を出し病気の原因となるために「悪」とされていますが、悪玉菌の代表である大腸菌はビタミンB群やビタミンKを作り出し感染症から体を守ったり、自然免疫を高めるのに生命維持にとって必要不可欠な菌なのです。
また、同じく悪玉菌とされているウェルシュ菌は、もともと肉食動物の腸内にたくさん棲んでいる菌で、肉類などのたんぱく質を分解する役割を担っています。

生まれたばかりの赤ちゃんの腸には、悪玉菌は全くおらず善玉菌だけで、母親の産道を通ってくる時や母乳を飲んだり、抱っこされたりとお母さんと触れ合う中で悪玉菌を獲得します。赤ちゃんは、そうすることで生後直後に免疫力を身に付けていきます。*1

 

細菌の多様性によって環境適応してきた

腸内細菌は様々な種類が共生し生態系を作っており、共存しつつ生存競争を繰り広げることで最も適した腸内細菌のパターンを作り出しています。
そのため、動物の種によって大きく違うし、同じ人類でも欧米人、中国人、日本人ではそれぞれ異なります。また、同じ日本人でも食生活の違いによって腸内フローラの構成が異なります。*2

 被験者8人の腸内フローラの構成(クリックすると大きく表示されます。)


 出典:善玉菌、悪玉菌の正体は? 腸内フローラの真実

特に人類の場合は、食事内容の影響を速やかに日単位で受けており、動物性の食事では胆汁耐性の細菌が増加し、植物性多糖類を代謝する細菌群が減少します。これは肉食性哺乳類と草食性哺乳類の違いを鋭敏に繁栄しており、短期間(日単位)での腸内細菌叢やその代謝活動が切り替わるという事実は、人類の進化と密接に関わっていると考えられます。

人類の長い進化の過程で、動物性食品は必ずしも安定的に手に入るものではないのに対して、植物性食品は比較的安定的に手に入れられます。したがって、このような食事の切り替えに適応すべく細菌叢の柔軟な変換の能力につながっている可能性があります。また、細菌、真菌、そしてウイルスをも含む食品由来の微生物がそのまま腸内の微生物として検出される事例が多く確認されており、腸の中の細菌叢は私たちが食べる食品とともにやってくる微生物によって、短期間で大きな影響を受けています。*3

 

発酵と腐敗の違い

悪玉菌が「悪」とされるのは腐敗時に毒素を算出し、病気の原因となるからですが、実は発酵と腐敗には、物理的・化学的な明確な違いは存在しません。いずれも、食品がおかれた環境や食品成分に適した微生物が増殖して食品成分を分解することで生じる現象なのです。

腐敗と発酵の区別は、人の価値観に基づいて、微生物作用のうち人間生活に有用な場合を発酵、有害な場合を腐敗と呼んでいるにすぎず、臭いの強いくさややふなずしなども、微生物の有用性が認められるのであれば発酵食品と呼ばれます。極端な話、納豆はそれが好きな人にとっては発酵食品に分類されますが、嫌いな外国人にとっては腐敗品に過ぎないのです。*4

腐敗が起こるような食べ物は、腐敗を起こすような菌が沢山いないと分解できないのであり、発酵するような食べ物は発酵を起こすような菌が沢山いないと分解できません。
菌は必要なところに存在し、生命現象を営んでいるに過ぎないのであり、そこには良いも悪いもありません。

「善」と「悪」に分けたのは、キリスト教に影響を受けた西洋科学の思考法に起因しており、善悪の価値判断で分類しようとするから、どちらにも当てはまらない7割が「日和見」に分類されています。事実は、すべての菌が何がしかの役割を担っており、それらのすべてが影響し共存することで生命が維持されているのです。

しいて言えば、肉食動物も含め、肉類をおなかいっぱい食べられる環境にある生物は現代人しかおらず、腐敗によって生じる毒素を処理しきれないほど食べるということは自然の摂理=生物原理に反しているのであり、そういうことが「悪」なのでしょう。

腸内細菌は、消化や免疫機能の働きを担っているだけではなく、心身の状態をもコントロールしています。次回は、腸と心身のネットワーク関係について見ていきます。

 

参考したサイト
*1.腸内環境・フローラについて http://www.daiko-dental.com/daiko-note/all/consideration/979.html
*2.日本人の腸内細菌、その特徴はなに? 米国や中国となぜ違う? https://www.asahi.com/relife/article/14339144
*3.腸内細菌や皮膚細菌の種類が多様なことは健康にいいことだ http://www.mac.or.jp/mail/170801/01.shtml
*4.腐敗と発酵、腐敗と食中毒はどう違うのか? http://www.mac.or.jp/mail/100701/02.shtml

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posted by matusige at : 2022年10月08日 | コメント (0件) | トラックバック (0) List   

2022年10月07日

【これからの林業を考える】シリーズ5~「自然の力を使いながら山を管理」していく、江戸時代の林業が最先端である理由~

※画像はこちらからお借りしました。

これまでの投稿で紹介してきたように、日本の林業は、奈良時代より「はげ山」と「植林」の歴史を繰り返してきました。
日本の林業の起こりは江戸時代にはじまり、それまでの大量伐採と禁止ではなく、「森林資源の保存」という認識が生まれたのもこの時代です。

江戸や大阪などの大都市で人口が急増し、木材の需要が増大し、大量の森林が伐採されることで、江戸幕府は持続可能な森林資源をつくっていく動きを強めていきます。

そして、幕府主導で森林資源の枯渇、災害等の課題が深刻化、幕府主導で「留山制度」、「諸国山川掟」を制定していきます。
また、伐採を禁じるだけでなく、区画ごと順々に伐採を行う「輪伐」、成熟していない樹木を伐採しない「択伐」などの制度も整備し、現代の林業の源流を築いていきます。

※画像はこちらからお借りしました。

今回は現代と江戸時代の林業の違いについて整理したいと思います。
江戸時代の林業には、大きく捉えると以下の2つの違いがあります。

 

◯江戸時代の林業技術

江戸時代と現代の林業の大きな違いに苗生があります。

※画像はこちらからお借りしました。

現代の苗木は「樹木を早く成長させる」ことを目的としているために、根を切って細かい根を出させる『直根』の苗を利用しています。
直根の苗は成長が早いのが特徴ですが、根が細く、短いため地震や大雨の際に土砂災害を起こしやすいという欠点もあります。

それに対して、江戸時代の苗は天然の『実生苗(みしょうなえ)』を使っていました。
実生苗は根が長く太いので、成長に時間がかかりますが、地面に強く根付きます。
実生苗から育てる樹木は200~300年を掛けて樹木を成長させていく必要がありますが、時間を掛けている分、木の目が細かい良質な樹木を育てることができます。
(現代でも吉野杉は時間を掛けて成長させるため良質な樹木を育てることができています。)

※画像はこちらからお借りしました。

江戸時代の樹木は「木1本で家族が一年暮らせた」のに対して、現代の樹木は「1本数万円程度」でしか売れないという差はそこからも生まれています。

江戸時代の林業は商業を目的としていないため、人工的ではなく自然の力を使いながら山を管理』していく、そのような思想のもとで山を創っていっています。
だからこそ、江戸時代にはいい樹木が育ち、災害にも強い山を作ることができていました。

 

◯江戸時代の山守

現代と江戸時代の違いのもうひとつは、江戸時代には山を所有する「山主」だけでなく、山の樹木を管理する「山守」が存在していたことです。

※画像はこちらからお借りしました。

山守は藩から配置され、複数の山主の山の管理を行うだけでなく、山を見回って盗伐を防いだり、集落がどのように樹木を利用しているのかを監視したり、山だけでなく樹木がその後どのように使われていくのかまでも管理していました。

地域の山を守る役割を担い、人々の生活と密着した形でどのように山を維持し、使っていくのかを考える役割が存在したのです。

※画像はこちらからお借りしました。

現代でも奈良県の吉野地域でも、担っている役割は変化していますが、江戸時代から続く山々の管理を担う山守が仕組みとして残っています。
人々の生活と林業を繋ぐ役割がいることで、江戸時代は災害に強く、品質の高い森林をつくっており、現代でも良質な林業が続いている地域ではそのような役割が遺っています。

 

◯戦後の商業的な林業が日本の林業衰退を招いた

「自然の力を使いながら山を管理」するという思想のもとで、林業技術も、役割も存在していました。

商業的に山を利用するのではなく、地域の人々に求められる樹木、どのように伐採していくことで環境を守ることができるのか、山林資源を維持できるのか、そういったことを追求する人が山には存在していたのです。

しかし、明治に森林法が制定されて国有林が生まれ、戦後に全国的にはげ山になったことで国策として日本の山々は商業的な側面が強まっていく過程で日本の山の品質は下がり、林業が衰退していきます。

今回は江戸時代と現代の林業における大きな違いに絞って紹介しました。
次回は江戸時代以降の林業の変化について触れていきたいと思います。

 

【参考ページ】
林業の歴史を振り返ろう、日本の森林整備を巡る歴史紹介
江戸時代の林業が山を救う!? 300年続く「山守」に会ってきた
自伐化する山旦那──江戸時代の山守制度が残る奈良県吉野地域からの来訪者たち
江戸時代の森林と地域社会
名古屋城をつくった木のおはなし

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posted by tiba-t at : 2022年10月07日 | コメント (0件) | トラックバック (0) List   

2022年10月07日

24節気シリーズ4~日本人は「月」に何を見ていたか?

前回の記事では、暦について扱いました。月・地球・太陽の動きと一体となることそのものを「つきよみ」→「暦(こよみ)」とし、二十四節気も宇宙や大自然と同期、調和していくためのツールとして取り入れたのではないかと考えられます。

日本では、明治時代になって太陽暦が広く使われるようになるまで、新月から満月を経て新月まで(29.53日)を1ヶ月とする太陰暦が用いられていました。

古来の日本人は「月」に何を見ていたのか。今回は、そこから日本人が見ていた世界観・自然観に同化してみたいと思います。

 

■月の満ち欠けと人々の生活

沖縄や奄美大島など、漁業が盛んな地域では、潮の満ち引きに密接に関わる「月の満ち欠け」をもとにした旧暦が現代の生活にも根付いています。江戸時代まではどの地域でも、太陽太陰暦=旧暦が用いられていました。

 

そもそも「月」と「潮の満ち引き」にはどのような関係があるのでしょうか?

満潮・干潮という言葉を耳にしたことがあると思いますが、「月の引力」と「地球の自転で生じる遠心力」によって起こる現象です。

月の満ち欠けのリズムは、私たち人間の体にも様々な影響を与えていますね。例えば、女性の月経周期や出産など。

人体は60~70%が水分でできており、これは海が地球の面積の約70%を占めているのと同じで、人体と水分の関係は、地球と海のような関係とも言えるのではないでしょうか。

 

 

■「月待ち」に見る日本人の自然観

中秋の名月にお月見をしたり、夜道の帰りに月を見上げたり、月は現在でも私たちにとって憧れや祈りの対象となっています。(海外ではわざわざ月を見る習慣はないんだとか。)

画像はこちらからお借りしました。

昔の日本人は月をどのように捉えていたのか、それがよく分かる「月待ち」について紹介したいと思います。引用元:https://www.fujingaho.jp/culture/traditional/a57661/moon-171004/

「『月待ち』とは、特定の日に特定の形の月が現れるのを待つ風習です。1872(明治5)年の改暦で西暦が採用されるまで、日本人は月の満ち欠けをベースにした太陰太陽暦に基づいて生活していました。『十五夜』や『十三夜』の月が尊ばれるのは現在でも同様ですが、そのほかにも『三日月』や『二十三夜』、『二十六夜』など、特定の日の月が信仰の対象にされていました。昔の人は現代人とは比べものにならないくらい、月の形に敏感だったんです。」

(中略)

月と日本人の関係を考えるとき、重要なポイントが3つあると志賀さんはいいます。「まずは光。照明のなかった昔は、夜間の活動を可能にしてくれる月光がとても重要でした。たとえば赤穂浪士の討ち入りは太陰太陽暦の『十二月十四日』ですが、十四日の月は満月も近く、朝方まで出ている明るい月。その光は夜討ちの助けになったはずです。次に、月を見ると誰かを思い出したり、何かを願う気持ちになるという意味で、月はメディアでした。『万葉集』の時代から、月を詠んだ歌がたくさんあることがそれを示しています。そして、満ちて欠ける月は、生と死の象徴であり、再生のシンボルでした。現代の日本でも重要な祭祀の儀式は、夜を徹して行われるでしょう? 月は特別な存在であり、本来夜は神聖な時間なのです」

 

 

冒頭に書いた通り、月の満ち欠けと人の体はリンクしています。

「月待ち」という行事からも分かるように、古来から日本人は「月」を見て自然界の大きな流れ・動きを感じ、そのエネルギーと一体になることで、調和しながら生きてきたのではないでしょうか。

そう考えると、「人間は自然の一部であり、人間の体の中にも自然界と同じ構造がある」と捉えていたようにも思います。

 

今回の記事では、日本人が「月」に何を見ていたかに同化してきましたが、日本人と暦にはもっと深い関係がありそうです。次回は月と密接に関わる太陰暦について、追求していきたいと思います。

 

 

<参考>

二十四節気に合わせ心と体を美しく整える・村上百代

旧暦に見る2014始まりの新月
https://juttoku.jp/blog/2014/incense-life/0331_1149

 

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2022年10月01日

【これからの林業を考える】シリーズ4~江戸時代の「循環型林業」・「全員林業」から学ぶ。~

前回の投稿では、日本の林業の歴史について見てきました。特に大きな転換期は、第二次世界大戦で荒廃した林野を再生するために、戦後、成長しやすいスギの単一的林業へと転換したことです。戦後以降の林業は、工業化が大きく進展する中で、斜陽産業として衰退していくこととなりました。また、スギという材料を選択したことで、成長しやすいものの、材料強度が低いという弱点がありました。その結果、建物の構造部材として使いにくく、外国産の輸入に劣勢を強いられるかたちにもなりました。

 

江戸時代は、都市周辺は禿山(はげやま)から、緑の街へと変貌した。画像はこちらこちらからお借りしました。

さて今回は、上記のような近代的な林業の前に、江戸時代の林業について振り替えってみたいと思います。ここでは、木材供給としての役割だけでなく、村を守る、そして、国土や自然環境を守る重要な役割も果たしていました。

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2022年09月29日

24節気シリーズ~日本人が捉えた自然観と暦:日本人にとって暦とは、世界と一体化するためのツールだった?

前回の記事までで、24節気が日本に導入されるまでの流れを見てきました。

中国の春秋戦国時代に、富国強兵の一環として、農業生産力増強のためにつくられた24節気が、日本に入ってきてから、自然と一体となり、季節や暮らしを楽しむための知恵として取り入れられてきたのでした。

 

今回からは、そんな24節気を、現代の私たちがどのように活用し、暮らしを楽しむ知恵として取り入れていったらよいか?を考えていきます。

 

その前にまずは、古来の日本人の思考に同化してみたいと思います。

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posted by o-yasu at : 2022年09月29日 | コメント (0件) | トラックバック (0) List   

2022年09月24日

【これからの林業を考える】シリーズ3~国策的林業により衰退した日本の林業、生産と切り離されることで供給先を失った日本の山林~

前回は世界における木材流通の状況を見てきました。

今回は日本における林業の歴史、現在置かれている状況を見ていきたいと思います。

◯日本ははげ山と植林を何度も繰り返してきた

日本では縄文時代頃より、住居、道具、燃料など様々なものに木材が使われてきました。


※画像はこちらからお借りしました。

樹木が大量に使われるようになったのは、大規模な木造建築が建てられた飛鳥時代頃からです。
飛鳥時代より、大型木造建築物と大仏の建立に必要となる木炭を確保するために大量の木材が使用され、天武天皇から森林の伐採を禁じられるほど平城京周辺の山々における樹木の伐採と荒廃が進みました。

江戸時代になるまでも日本は何度もはげ山と植林を繰り返し、江戸時代に「尽山(つきやま)」と呼ばれる、すべての全山が伐採された山が現れたことで一般にも森林を保護する意識が高まり、「留木制度」と呼ばれる、森林の利用と保全のバランスを取る、林業の考え方が生まれていきます。

 

◯文明開化と国有林事業の国策化

※画像はこちらからお借りしました。

森林における樹木は、建築材料などに利用される役割だけでなく、山林における土砂災害を防ぐ役割を担っています。
明治の文明開化に伴う工業化により全国規模で森林の伐採と荒廃が進んだため、各地で土砂災害が発生しました。
そこで、日本政府は「森林法」を整備し、「国有林経営事業」を行うようになりました。
このころから日本における林業は、「木材供給」としての側面だけでなく、「土砂災害の防止」という国防対策としての側面も強まっていきます。

 

◯戦後の国策によって作られた現代の森林

※画像はこちらからお借りしました。

第二次世界大戦の戦後復興に伴い、日本の全国の森林は再び荒廃します。
そこで、日本政府は昭和31年から10年間掛けて「植林事業」を進め、成長が早く経済的な価値が高いと考えられていた「針葉樹(スギ、ヒノキ、カラマツ)」などを全国的に植林し、山林の整備を行いました。


※画像はこちらからお借りしました。

本来は使う目的(地域の特産品 等)や用途(建築用、足場用、加工品用)、山のどこに植えるのかに応じて植える樹種、育て方は異なるのですが、現代における一つの山に同一種の樹木しかない山の風景は、この頃に作られていきます。
生産と切り離さえた山林は現代になって消費先を求めており、「木づかい運動」を国が推し進めている理由はそこにあります。

 

◯誰が所有しているのかわからない山林、林業技術を持たない山主

現代の日本の森林における70%を占める民有林は、かつては山主が自ら山の手入れを行ってきました。
しかし、現在の山林は、山主が遠方に住んでおり林業知識がない、最悪の場合は所収者が不明なため、誰も手を付けることができない山林が多数存在します。

ほとんどの山主が山の状況、どの樹木を間伐することで山が豊かになるのかを判断できません。
その結果、林野庁は「定量間伐」という、高度な判断を必要としない、一定量を間伐する苦肉の策を打ち出します。

そして、日本の林業技術はますます衰退していってしまったのです。

 

◯世界から遅れている日本の林業

※画像はこちらからお借り

世界で林業先進国のドイツの林業従事者が日本の林業を見た際に、「日本の林業は40年遅れている」と言われるそうです。
手法、使用している機材、安全対策などもありますが、仕組み自体が大きく遅れています。

林業先進国であるドイツやスイスでは補助金は一切ありませんが、日本は大量の補助金が投入されています。
しかし、それは伐採に関する補助金がほとんどであり、山の維持、林業技術の高度化には当てられておらず、補助金によって生産圧力がかからない構造にあるため、林業技術は衰退の一途をたどっています。

一方で、木材価格が下がり、林業に対するやる気が削がれている現状の日本においては、補助金がなくし生産圧力を高めようとしても林業を行う山主のほとんどが林業をやめてしまうおそれがあります。

◯世界の構造から日本の林業の未来を考える

前回の記事では世界構造を押さえ、今回は日本の林業が置かれている状況をみてきました。
日本の林業の衰退の原因は生産と切り離された国策による林業、そして補助金に原因があることが見えてきました。

次回は、中国など世界的に木材を輸入し、山林面積を大きく伸ばしている国々の林業戦略を見ていきたいと思います。
そこから、日本の林業が世界のなかでどのような状況にあるのか、日本の林業を再生する糸口をつかんでいきたいと思います。

 

【参考文献】
・絶望の林業(田中淳夫/新泉社)
日本における木材利用の歴史
知っておきたい日本の植林史
我が国の森林整備を巡る歴史
太田猛彦「日本の森の変遷-荒廃から復活へ」
森づくりは100年の計

 

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2022年09月23日

「腸が作る健康の秘訣」第3回 腸内細菌の中で最も重要な菌って何?

シリーズ3回目はいよいよ腸内細菌そのものについて扱っていきます。

腸内細菌って何?有名なのはビフィズス菌や乳酸菌のような善玉菌、またブドウ球菌や大腸菌などの悪玉菌。しかし名前も覚えられないような数の筋が私たちの腸内にはたくさん住み着いています。その数はなんと100兆個、重量にして1.5㎏、すべてを広げるとテニスコート1面分の広さに相当します。その表面上に1000種類以上の細菌が群れをなして生息しており、その状態をお花畑に例えて「腸内フローラ」や「腸内細菌業」と呼んでいます。

まさに土の中に生息する無数の微生物と同様に腸という土壌の中に無数の細菌が共存しているのです。善玉菌、悪玉菌と便宜的に分けられていますがどの菌も互いに何らかの役割を果たしており、そのバランスをもって腸内環境は維持されているのです。善悪の件はまた別の記事で扱わせていただきますが、決して善悪で切れるようなものではないという事だけ覚えておいてください。

腸内細菌の中でも最も最近注目されているのが酪酸菌です。この菌は乳酸菌やビフィズス菌のように食べ物からはとることが殆どできず、体内で生み出されていく菌です。1)腸内を弱酸性に保つ環境を整える、2)便秘の改善、3)アレルギーからの防御、4)免疫機能のバランスを整える、5)肥満にならない、6)脳機能の向上、7)発がん性物質の抑制など多くの役割を果たしています。この酪酸菌や短鎖脂肪酸などの有用菌は、いわゆる健康に関わる全ての機能を担っているのです。酪酸菌とは様々な腸内細菌が役割を果たす上でのベースとなる環境を整えているのです。逆にこの菌が少なければテニスコート1面分の腸内細菌も十分に役割を果たせずバラバラな動きをしてしまうことで超重要な菌とも言えるでしょう。

桐村里沙氏の著書では、まずこれら有用菌について以下のように整理されています。

>腸内細菌に主に任せたいのは、人に分解できない植物の中の多糖類(食物繊維など)の分解です。ですから食物繊維を含む食品をせっせと食べることが土壌改良の基本になります。多糖類をエサにする腸内細菌は、ビフィドバクテリアや酪農菌など、人に有用な短鎖脂肪酸などの有機酸を分泌する発酵菌です。これらの有機酸が、成熟した土と同じように腸を弱酸性に保ち、有用菌が暮らしやすく、腐敗菌が暮らしにくい環境を作ります。
腸内細菌が生み出す有機酸の働きを整理してみます。

1) 腸内環境を整える
有用菌が乳酸や短鎖脂肪酸などの有機酸をしっかり分泌して、腸内と弱酸性に維持できれば、有用菌が暮らしやすく、病原菌、腐敗菌が増えにくい腸内環境に整えることができます。日和見菌が優勢な方の味方につくため、全体が良い環境になります。

2) 便秘の改善
ビフィズス菌や酪酸菌が短鎖脂肪酸をつくると、大腸の粘膜が刺激されて蠕動運動が活溌になり、スムーズな排便が可能になります。また、短鎖脂肪酸によって、腸管の中に水分が放出され、便の水分量がアップします。便の水分量が増えると、腸の中を移動しやすくなるので、便通の改善につながります。

3) 腸のバリア機能を改善する。
短鎖脂肪酸は、腸の上皮細胞のエネルギー源になり、成長を促します。腸の上皮細胞は身体を外敵やアレルゲンから守るために重要なバリアの役割を果たします。

4) 免疫機能のバランスを整える
免疫細胞の約7割は、腸管の周りに集まっています。酪酸菌が分泌する酪酸には、免疫細胞の一種である制御性T細胞(Tレグ)の成長を促す働きがあります。
免疫にとって、ウィルスなどの外敵の攻撃だけが重要なのではありません。免疫反応とは体内の暴走をなだめるのが、Tレグの役割。アレルギーや自己免疫疾患、また新型コロナウィルス感染症の重症化の抑制に、Tレグは不可欠です。腸内細菌によって酪酸が分泌されることで、正常な免疫機能を保つことができるのです。

5) 肥満や糖代謝の改善
短鎖脂肪酸は、腸管で吸収された後に全身で利用されます。エネルギー代謝を高めるだけではなく、脂肪細胞の肥大化を防いで、脂肪の蓄積を抑えて、痩せやすい体質に近づけてくれます。短鎖脂肪酸は、脳にも作用して満腹感をもたらし、食べすぎを抑えるのでダイエットにも役立ちます。他にも糖の代謝に関わるインスリンと消化管ホルモンに関与することで、糖尿病の予防をサポートします。

6) 脳機能の維持
短鎖脂肪酸のうち、酪酸には脳の炎症を抑えたり、脳の成長や機能の維持に不可欠な脳由来神経栄養因子(BDNF)を増やす働きがあります。これにより抗うつ効果や脳機能の改善につながっていると考えられています。

7) 発がん物質の抑制
短鎖脂肪酸には発がん性の原因物質といわれる、二次胆汁酸の産出を抑制する働きもあります。

 

酪酸菌を増やすには・・・という事でリンクでは食物繊維をしっかりとる事とアドバイスされています。海藻、果物、穀物、豆類がよいようです。

>直接、酪酸菌を食事から摂取するとなると難しいですが、酪酸菌を腸内で育てることは食事内容を工夫することで充分可能です。酪酸菌のエサとなる食物繊維を多く含む食品を積極的に摂取することで酪酸菌の働きを活発にし、酪酸を増やすことが出来ます。食物繊維には水溶性と不溶性があります。水溶性は海藻類、果物類に多く、また不溶性は穀類や豆類に多く、腸内細菌のエサになりやすいのは水溶性の食物繊維です。腸活を意識するなら水溶性の食物繊維を意識して摂取しましょう。食物繊維は成人男性で1日あたりおよそ20g以上、成人女性で1日あたり18g以上摂取することが目安とされています。

さて、今回はここまでにしますが、次回はいよいよ腸内細菌全体のバランスや動き=腸内フローラーに焦点を当たていきたいと思います。

参考)

腸活の新常識!?話題の「酪酸菌」で、あなたの腸を育てよう!|新陳代謝にこだわりを-株式会社メタボリック (mdc.co.jp)

著書:桐村里沙「腸と森の「土」を育てる」

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posted by tano at : 2022年09月23日 | コメント (0件) | トラックバック (0) List