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2021年11月16日

『農村学校をつくろう!』シリーズ-12~人をつなぐ力×理論をつくる力を育て、地域を活性化

前回までの投稿で、農村学校の成長の基盤となるのは、「いかに農の担い手である当事者度を高めるかが重要」だということを見てきました。農業技術も当然のことながら重要ですが、その根っこには、「みんなにおいしい野菜を届けたい」⇒「地域を活性化したい」⇒「日本の農業を救いたい」という志が不可欠であるということです。

学びの本質は、農業に挑戦したい若者たちが、自分から仲間、そして、地域・日本へと対象世界を広げ、その当事者として成長する場をつくること。今回の投稿では、そのように「人をつなぐ×理論をつくる」の場づくりを具体的に実践している2つの先進事例を紹介します。

画僧は、こちらからお借りしました。

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■卒業生の半分が、地元の担い手として根付く「農(みのり)の学校」
兵庫県丹波市に設置された「農(みのり)の学校」。ここは、農・地域の深刻な衰退になんとか歯止めをかけたいという想いから、市外・県外から農業を志す人材を育てていこう。そして、市内への定住や、全国の農業の担い手を育てていこうという想いから立ち上げられました。
丹波市が学校を設立し、マイファームという企業にて運営した、全国初の公設民営の農業の学び舎です。

画僧は、こちらからお借りしました。

ここでは、1年間、みんなで合宿を行いながら、農業とはなんたるかを学ぶとともに、地域に徹底的に根ざした農業を行っています。
丹波市は、「有機の里」と呼ばれており、安全な作物づくりを地域同士で研修を行い、農薬散布一つにしても非常に気を遣って行われています。このような地域のならわしは、地元に住まないと分かりません。このような、地域一体で作物の育て方を学んだり、時には、機械を貸していただいたり、手伝ってくださることもあるようです。

このような農業技術とともに、地域の絆づくりを通じて、2019年度の初年度には、13名が巣立ち、8名が市内に定住、半分以上の担い手が地元定住しています。そして、2020年度は12名が卒業し、今年度も20名が入学し、日々、研鑽しています。

そして、地域に根を張っている大きな基盤は、先に定住している先輩が、後輩たちの相談に乗り、育てていく役割を担い、さらには、地域とのつなぎ役となっていることで。このようにして、新しく入ってきた人も、地域に根付いていくための人と人のつながりが広がり、絆を広げる循環が生みだしたことが、農村再生の大きなエンジンになっています。

 

■自然の摂理を理論追求する「大地の学校」
もう一つの事例は、農業技術を学ぶことに加え、農にかかわる自然の摂理や生命原理から学びを伝承し、そして、新しい理論の創り手を育てていこうとしている組織「大地の学校」です。

画像は、こちらからお借りしました。

この学校を運営する村上夫婦は、ある出来事を通じて、地震の農のあり方を見つめ直しました。現在の農業は、工場のように大量生産・環境破壊に直結している。これを根本から見直し、自然栽培で全国一の生産量を生み出す、新しい理論を作り出しました。

この営みは、非常にシンプルなものです。「ありがとう農法」と名付けられ、万物を対象にして、感謝の想いを伝えていこう。つまり、自然(土や植物)に対して、人と同じように接し、自然との会話を試みようとすることです。事実、その感謝の想い(念)は伝わり、それによって、肥料を使わずして、野菜がいきいきと、おいしく育っていく。これを、新しい農法として確立したところが、本当に凄いところです。

ここに至る根本原理には、太陽と土の関係、地球の循環の構造、陰陽、活力や脳科学など、原理から追求する座学を通じて、その重要性に理解を深めています。農を取り巻く本来の思想を構築して、近代農業に代わる、自然の摂理に根ざした新しい農業体系を再生させていこうという取り組みには、大きな可能性を感じます。

 

■農の担い手は、「人をつなぐ力」×「理論をつくる力」を突き詰めること
これらから分かることは、農の担い手に求められる力は、決められた技術の枠を身に付けるだけでは、役に立てないということです。
先進事例から学ぶべきことは、次の3つです。
1.与えられた課題をこなすのではなく、自ら課題を創り出すこと。
2. 農は一人ではなしえない。必ず、仲間=チームで運営すること。
3. 目の前の外圧を直視し、常に追求し、摂理を見出していくこと。
「新しい地域の人たちとのつながりを増やしていこう」「新しい農法をつくっていこう」という、「新しい人と認識を創り出す人材を育てていく」ことが、これからの農の担い手として非常に重要な力だということが分かってきました。

今回の投稿では、農業の担い手に求められる本質的な力について見てきました。次回の投稿では、農の担い手になるためには、自然とどのように向き合っていくことが重要かについて詳しく見ていきたいと思います。

投稿者 hasi-hir : 2021年11月16日 List   

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