農を身近に★あぐり通信vol.30:ゆずの可能性を徹底追求 馬路村の挑戦 |
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2014年08月29日
農を身近に★あぐり通信vol.31:多様性を増す直売所。消費者と共に食を創っていくには?
増加を続ける直売所ですが、近年では飲食、加工、体験施設、農園、文化施設など複合化が進み、約4割が「農家レストラン」や「加工ビジネス」などを取り入れています。
この動きはこれからもさらに進むと思われ、直売所は、消費者(組織化等)と共に支えられる存在となっていくでしょう。その先にあるのは、「地域創造(生活・文化)拠点」としての場です。
このように消費者を巻き込んでいくようになるには、実現基盤に沿った商品開発やイベント企画が必要になってきます。
そこで、今回は3つの成功事例を取り上げていきます。
■さいさいきて屋
JAおちいまばり(愛媛県今治市)の直売所さいさいきて屋では「市民農園」や「学童水田」「まちと連携した学校給食」などのイベントで地産地消のみならず食育の推進も行っています。
画像:http://www.saisaikiteya.com/xcpage/i,saisaikiteya/
学校現場の食育、地産地消を推進するうえで、大きな役割を担っているのが学校給食であるならば、一般家庭でその役割を担っているのが、日本農業賞を受賞したJAの地産地消型農産物直売拠点である「さいさいきて屋」といえよう。
さいさいきて屋は、生産者と消費者の顔の見える関係の中で産消提携を進め、地産地消の推進と農業担い手の育成、消費者理解の推進を進め、新しい農業振興の在り方に一石を投じている。
「さいさいきてや」は地元の方言で、「いつでも来てね」という言葉を店名にしているが、現在の売り場面積は562坪、駐車場270台、の「地元産農作物直売所」と、「地消レストラン77坪」、「加工施設(パン工房・フレッシュジュース・アイスクリーム工房)54坪」の店舗施設が中心だが、「地産地消研修施設」36坪、こども達への食農・食育の提案の場となっている「クッキングスタジオ24坪」も併設している。また、その外に、新技術・新品種実証農園519坪、体験型市民農園2,052坪、学童水田267坪も隣接し、一体となって地産地消・食育の複合拠点施設として、年間二十数億円の販売実績を誇る。
また、ポスシステムによって直接生産者と情報を共有することで、新鮮で安心できる農産物を提供することで生産者の所得の向上とやる気を引き出し、さらに加工施設があることで農産物の売れ残りが日本一少ない直売所を目指している。
「今治市の食と農のまちづくり~地産地消と食育のすすめ」
http://plaza.rakuten.co.jp/ganbaritai/57000/
■あさつゆ
長野県上田市にある農産物直売加工センターあさつゆでは、「市街地での出張販売」「販売スタッフの教育」「生産現場のモニター上映」「高齢者の知恵」「クッキングサービス」などを通じて中心市街地に“人と人とのコミュニケーションの場”を作り出しています。
画像:http://www.j-sanchoku.net/index.php?f=&ci=10016&i=10297
販路拡大のために、積極的に出張販売を位置づけ、上田市内の海野町商店街で週2回、近くの名湯・鹿教湯温泉で週1回、朝市を開催している。どちらの場所も生鮮品を扱う店が数年前に撤退。高齢者など地域の買い物弱者解消を目的に始まった。しかし、効果は想像以上で、空洞化した中心市街地に「人と人とのコミュニケーションの場」を作り出している。
一方、販売の前面に立つ販売スタッフには、「本来、売り場に立っているはず」の生産者の代わりに自分が販売しているという自覚を持ってもらうために、研修として農家に「援農」に出かけたり、農家の生産現場の様子を動画に収め・それを編集して、店内のモニターテレビで上映する試みなども行っている。「農家のこと、農業のことが分からない販売スタッフは失格」(伊藤さん)という考えに基づくものだ。生産者が販売スタッフと一緒の製作した新人スタッフ研修用ソフトなどもある。
その他、近所のお年寄りを講師役に招くなどして品数を増やし、現在では実に345種類もの加工品を作る加工部門を持っていたり、その加工部門を中心に出荷者全員で実現するクッキングサービス(地元食材を使用したレシピを紹介するビュッフェフェスティバル)や、消費者に感謝を伝え、あさつゆファンとして獲得するための各種イベントが充実していたり……とにかく「なるほど」という取組みが目白押しなのである。
「上田市丸子農産物 直売加工センター「あさつゆ」長野県上田市丸子 組合長 伊藤良夫さん(61歳)に聞く」
http://www.j-sanchoku.net/index.php?f=&ci=10016&i=10297
■恋する豚研究所
千葉県香取市にある恋する豚研究所では豚肉加工食品において、「障碍者が自立して働ける場の創出」「デザイン性」という新しい基軸をもってブランド化に成功しています。設立当初から建築家やアートディレクターなど、外部のクリエーターを起用し、赤い屋根とらせん階段が印象的な建物を設計。2階は物販店と「しゃぶしゃぶ定食」などが食べられる食堂になっています。
商品パッケージはもちろん、包装紙や紙袋などもオシャレなものにした他、「ブランドブック」をつくって丁寧にブランドの構築を図ってきました。ブランドブックとは、周辺の四季折々の風景や、豚を取り巻く様々なシーンの写真と短い文章で構成された小型の書籍で、「恋する豚研究所」のコンセプトなど、その“想い”を発信しています。
画像:http://www.koisurubuta.com/index.html
恋する豚研究所は障害のある人の就労を支援する施設です。で、最低賃金法障害のある人が働く福祉作業所の平均賃金は月に13,000円程度で、最低賃金は適用されません。そこに障害者年金が約8万円支給されたとしても、これでは自立した生活はできません。私たちは、障害のある人にも最低賃金を支払い、月10万円の給料を保障したい、その仕組みをこの施設でつくろうとしています。
昔は、段ボール、空き缶、家庭の廃油の回収が福祉作業所の三大作業でした。最近では、パンづくりやクッキーづくりをする作業所も増えています。これらの仕事で最低賃金を支払うのはとても困難です。
福祉は「福祉の領域」に閉じこもり、障害のある人がつくったものだから「買ってもらう」「買ってあげる」という関係で仕事をしているのが現状で、他の分野との連携も十分とは言えません。これでは、フェアではないし、最低賃金が払えるはずはありません。
恋する豚研究所の試みは、福祉が「市場」に少し接近していくようなイメージです。行き過ぎた市場原理はいけませんが、私たちの生活は市場を無視することもできません。だから恋する豚研究所のハムやソーセージには障害のある人がつくったということはどこにも書いてありません。
持続可能な就労支援のために、あくまで味や品質、ブランドを認めてもらって買ってもらいたいと考えています。
社会福祉法人福祉楽団理事長、飯田大輔(新建築2013年5月号より抜粋
3つの事例に共通するポイントを整理すると、
・社会課題(地産地消、教育、高齢者の役割、障碍者雇用、etc)を通じて
消費者を巻き込んでいく。
・販売員が主体性を持てる仕組みがある。
・ファンを獲得する魅力あるコンセプトがある。
などが挙げられます。今や直売所の数は全国で2万を超え、それぞれが地域性を活かして多様性を増しています。
また、現在の社会は、農の衰退、食の安全安心の問題、人の繋がりが希薄になっているという大きな問題を抱えており、生産者と消費者の接点にある直売所への期待はますます大きくなっています。
生産→販売→消費が分断され各々が自分のことだけ考えていればいいのではなく、三者一体となって「食」という人間にとって欠かせないことをしっかりと考えていく必要があり、それが直売所経営として勝っていける秘訣でもありそうです。
投稿者 noublog : 2014年08月29日 TweetList
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