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2007年11月03日

有機・無農薬農法による反収も、事実追求次第?!

「お米の勉強会」というグループの会報に、お米の反収に関する報告がありましたので、要約して紹介します。
【注記】本文中の数字は、1俵は 60 kg で換算しています。
            1反=300坪=991.7㎡ です。
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●「収量は慣行栽培と変わりありません」
 ――兵庫県三田市でアイガモ農法をする方
圃場には2年間農薬が残留するので(雑草が抑制されるが)、3年目からは爆発的に発生するし、害虫のイネゾウムシ、ニカメイチュウ、ウンカ等も大発生する。肥料は有機栽培対応の製品もあるので、経費は高くつくが収量は慣行栽培と大差はない。
米ぬかでの有機栽培:害虫に負けて約300kg/反
育苗土を加熱消毒したアイガモ農法:400~450kg/反(1997~2006年実績)

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●うまい人は慣行農法と変わらない
 ――兵庫県淡路五色町でアイガモ農法をする方
自分の有機JAS米の反収:300~360kg/反
米ぬかは水が抜ける田んぼでは効果がない。
うまい人は慣行農法と変わらない収量。

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●有機・無農薬のお米の反収
 ――滋賀県高島市農業振興課
コナギが繁茂すれば、土壌中の窒素成分を吸収してしまい、肝心の稲が吸収できないので、300kg/反 程度。
河口や琵琶湖周辺で雑草が生えていず、粘土土壌なら、肥料を投入しなくとも、420kg/反はできる。棚田や砂礫土壌などでは、240kg/反を採れれば上等。
除草しない田んぼに化学肥料を投入しても、240kg/反ぐらいしか採れない。
昭和30年代:手除草・無肥料で360kg/反どまり。
      相当の技術と天候に恵まれた時600kg/反
慣行型農業の高島市の平均:480kg/反

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★考察★
・有機・無農薬農法は、「除草が決め手」。
・アイガモ農法は、収量確保は比較的容易だが経費がかさむ。
・米ぬか農法は、安定度確保が難しく発展途上。
・詰まるところ、たゆまぬ追求次第で成果が大きく変動する。
と読めるのですが、生産現場に従事する方からの補足をしていただけると、ありがたいです。

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最後に、コナギ対処法を述べている方の内容を、箇条書きで紹介しておきます。
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●私の場合の、コナギ対処法
 ――能登の方
◆〔ポイント1:田植えの時期を遅くする〕
通常の収穫を確保するには、いつまでに出穂すれば良いかを押さえ、そのためには→いつ田植えするか→いつ種まきをするか、を逆算する。稲が無駄に体力を消耗せずに、しっかりと稔ってくれるように、できるだけ田植えの危機を遅らせる。
◆〔ポイント2:代掻きをしたら、すぐに植える〕
まず、春先から代掻きに取り掛かるまでは田を乾かしておく。
草の発生状態を見極め、
・草が大きくなっている場合は、水を少な目にして土中に埋め込む。
・草が発生初期なら、水を多めに張って草の根を土から分離させる。
そして、代掻きが終わったら、すぐに植えます(午前:代掻き、午後:田植え、くらいのスピード)
*不耕起の場合は、12月頃から湛水し、コナギ発生前に田植え。
◆〔ポイント3:水をやや深水に〕
漏水は致命傷。特にコナギの発生が確認されたら絶対に水を切らさないで、水の流れを発生させないように安定した状態に管理する。そうすることで、稲がコナギより優位になる。
光を好むコナギが水面上に本葉を出そうとするのを先回りして、稲の生長に合わせて少しづつ深水にしていく。
無肥料の場合、コナギ対策なら水深10センチ余りで田植え後30~40日以上コナギを水面下に閉じ込めておける。しかし、稲の生長に悪影響を与える場合があるので、しっかり観察しながら効果的な微調整で進めていく必要がある。
有肥の場合は、かなり積極的な深水でも大丈夫!
◆〔ポイント4:深水に負けない苗を作る〕
徒長した苗や老化した苗では、活着に時間が深水に耐えられません。ですから、午後に植えて翌日朝にはもう根が伸び出しているくらい元気一杯な苗を育てる必要があります。
—————————————-
◆標高150mの地における無肥料栽培の収量:180~240kg/反
 上記数量は、10数年来一定。
 参考)江戸時代:200kg/反 と同等。

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◆考察◆
皆さんの生々しい報告を見てくると、自然を対象にした生産活動は、本当に厳しいものがあると感じます。
田んぼの下層の土壌が砂礫の場合は、栄養分を保持し難いので収量が上がらない。粘土の場合は、栄養分を保持し易いので収量を期待できるが、田の雑草が勢いを増せば極端に低下する。等など・・・立地条件や草の管理、天候次第で収量は大きく変化するので予断を許さない。
まさしく、意のままにならない「自然」を対象とする生産活動といえます。それだけに、これらの事実関係に基づき、「なんで?」という追及思考を全開にすれば、様々な予測思考の宝庫でもあります。
にも拘らず、都市に生活基盤を置き、自然から距離をおいた私たちは、農業生産品がコンスタントに安価に確保できるのが「当然」のように錯覚した生活が常態化しています。
両者間の矛盾を穴埋めするシステムを介在させなければ、社会全体の統合が成立しない、と気付く必要があるようです。
by びん

投稿者 ayabin : 2007年11月03日 List   

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