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2007年08月24日

日本の森林は、危機に瀕しているか?

●「消失」と「劣化」という森林の危機
「消失」とは、開発などにより文字通り森林自体が消失すること。
「劣化」とは、人工林などの手入れを怠ったが故に、森が不健康な状態になるケース。密植で林冠が覆われて林床に陽が注さなければ、草木も健全に育たず、生物多様性は低く、雨などで侵食されれば山崩れや森林崩壊もある。
伐採跡地に再造林がなされない場合、それが大面積だったり人工林の歴史が長いと、種子の供給がなされないので、森林は再生され難い、という。
ところで、地球規模の森林危機は、「消失」だが、日本に限っては(見てくれの)森林資源のストックはあるので、「劣化」の危機が上位課題といえる。

画像の確認 [世界の森林面積]


木を切って森林ができた(1)
木を切って森林ができた(2)
植物国家という視点に基づく、農業・林業そして社会統合
で浮き彫りになるのは、「江戸時代の里山は、中長期的視点に基づく森林資源の保全・育成を蔑ろにしなかったことと、手入れが行き届いたので林業として成立し得たが、戦後の人工林は深山にまで及んだので、手入れが思うに任せず先行かなくなった。」ということどろう。
それは、終戦による急激な木材需要に任せて成長量を上回る伐採・収穫を行ったことによる。大面積の皆伐や単一樹種の広範囲植林が、動植物の生態系バランスを崩し、生物多様性や防災機能の低下をもたらしたことは、過ちと認めざるを得まい。
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1961年に外材輸入が解禁され、除々に国内の木材需要が低下し、今や国産材のシェアは二割程度になったことの「本当の原因は、何か?」について、田中淳夫氏(森林ジャーナリスト)は、手厳しい指摘をしている。
・国内産の乾燥材は1割に満たない。
・量と種類が十分でない。
・付加価値の高い商品の開発と販売努力をしていない。
・品質管理がされず、サービスが劣悪。
・外材は、粗放な育林を加工技術でカバーしている。
・国内産の木材の利用度は、2割と低い。
・欧米では、製材廃材などを製紙原料としたり、
 パーティクルボード原料とするなどして幅広く商品化し、
 無駄なく利用し、コスト削減をしている。
⇒国内材が売れない理由は、質もサービスも悪いから。

採取生産時代の自給自足生活においては、森林は生活基盤そのものであった。「食・衣・住」の全てをその資源に依存するからこそ、誠心誠意、森林を対象化してきた。だからこそ、それらの中に今日の自然科学へと通ずる「摂理」を見出すことが可能となった。
縄文時代が「森の文化」と云われるのも頷かれるし、江戸時代を石川英輔氏が「植物国家」と命名することに繋がる精神的風土をなしてきたのだろう。
その核心は「感謝と期待」であるからこそ、古来の社寺仏閣は生命感の溢れる森に位置させた。そして、私たちは今でも精霊の宿る「ご神木」に違和感なく同化できる精神性をわずかに残存させている。
にも拘らず、「市場」という価値観にひとたび毒されれば、森林(やま)への「感謝と期待」という意識は遠のき、林業場面における創意工夫も発揮されないということなのか? 「国内材の質もサービスも悪い」というのは、そのことの反映なのか?
●アグロフォレストリー(農業と林業の合体)
林業関連の記事を7回と重ねてきたが、やっと農業との関連を言及する場面が出てきた。
宮崎県日向市の相互造林株式会社の中島寛人社長は、宮城県北部で9,000haの山を「日本の焼畑農業の伝統」を守りながら管理しているという。そして、その効用を以下のように述べている。
・燃やすと雑草の種を焼き、殺菌効果も見込める。
・土壌内の水分が蒸発する過程で、土がふかふかとなる。
・それが、散布種子の発芽の好条件となる。
・伐採直後の作物は、伐採跡地の表土流出防止になる。
・最初の伐採は、木材の収穫で、火入れは地拵えの役割。
・焼畑による作物での換金は、山林への投資時期の収入となる。
・その収穫作業は、下刈に相当するもの。
⇒山は、木材生産以外にも様々に利用する場だった。
*今でも島根県、福井県、山梨県、新潟県、山形県、四国4県などに小規模ながら残っている、生きた農法なのだそうだ。

これまでは漠然と、「焼畑農業は、環境破壊の原点」と捉えていたが、森林がリサイクルしていく範疇に『農』を盛り込んだのではないか? と思えてきた。森に摂理を学んで、農業生産へと舵取りしていくご先祖様の意識が「焼畑」の営みに見られるように思える。
●森林資源を「植物系分子素材工業」の成立基盤となす
末尾の参考図書を読んで、「目からウロコ」だったのは、森林資源をもって、石油資源に相当する「植物系分子素材工業」の可能性が開かれるかも知れない、という記事であった。
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関連参考サイト
日本人が森に学ぶこと「ミクロの視点が、森林の世界観を変える」
リグノフェノール技術
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ペットボトルや空き缶のリサイクルはまやかしなのに対して、記事で紹介していることが実現すれば、本物のリサイクルが実現するかも知れない。
市場の原理に任せるだけでは突破困難だった林業も、石油枯渇対策の一助となる社会統合課題として位置づけられていくなら、森林資源のストックを使いつつ人工林の「劣化」更新をしていく可能性が開かれるだろう。
環境問題・人口爆発問題・エネルギー問題などは、林業や農業の再生を促す外圧となりつつある、と予感できる。
森林資源は、「植物系分子素材工業」の成立基盤?!①
森林資源は、「植物系分子素材工業」の成立基盤?!②
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参考図書:●「日本の森はなぜ危機なのか」田中淳夫著/平凡社新書
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最後まで読んでくれて、ありがとう。  by/びん

投稿者 ayabin : 2007年08月24日 List   

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コメント

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