都市生活と農~その繋がりづくりに向けて~2 |
メイン
2009年02月23日
兼業農家と「むら」と「農」
こんにちは 😛
今日は、農業への関わり方について考えてみたいと思います
農業ってなんだか、田舎に住んでる農家のおじいちゃん、 おばあちゃん、おじさん、おばさんがやってる仕事ってイメージありますよね
そんな専業農家さんだけでなく、農業以外の仕事をしながら農業もやってる兼業農家の人たちもいます。
最近読んだ本に、兼業農家の人たちの重要な役割について新しい気づきが得られました
それを紹介したいと思います
環境形成と農業 新しい農業政策の理念を求めて
柏 久 著 (昭和堂)
以下 本文抜粋・引用
さて、政府の自立経営育成方針にもかかわらず、1970年代以降、第2種兼業農家の割合が5割を超え、農家の兼業化が否定できないことが事実となると、農業経済学者の中に「兼業農家雑草論」というものを唱えるものが出た。
続きに行く前に、応援よろしくお願いします
(中略)
兼業農家雑草論に対しては、当然に、現実に根ざした論拠をもってさまざまな疑問が呈せられた。とりわけ、1980年代はじめに川本彰が農村社会学的な支店から展開した兼業農家に対する評価は、注目に値する。それは、農村は集落の領域から成り立っており、それぞれの領域は、集落の構成員全体で保全されているという事実から出発している。
これまでわれわれは、農家を経営耕地面積で規定し、その規定で漏れた一部を例外規定ですくい上げるという農水省の定義で農家を捉えてきた。しかし、ここにはまったく別の農家の捉え方が成立することに気づく。それは、「むら」を構成するものが農家だとする捉え方である。「むら」とは、近代以前から何百年もつづいてきた集落という形態の中で形成されてきた独特の閉鎖的社会といってよいであろう。この小社会を構成するのは個人ではない。農家という、「むら」とともに何百年もつづいてきた小集団なのである。もともと農家は、「むら」の一員としてその領域を保全してきたのであり、農業を営み、農業で生計を立ててきた。
(中略)
今日でもなお、「むら」が解体しない限り、「むら」の領域は「むら」自身によって保全されている。農家の70%以上が第2種兼業農家であることを鑑みれば、いかにこの種の農家の果たしている役割が大きいかが理解できる。川本の兼業農家に対する評価は、まさにここから出てきているのである。
川本によれば、「むら」は、土地、作物、文化の3つを保全してきたという。確かに社会が近代化してからは、作物や家畜の種の保存は国家的機関によってになわれる傾向があり、文化にしても多様な文化が都市から生まれるとともに、伝統的文化も国家的に保存の努力がされている。しかし、人間の行動パターンをも含めた地域的文化が「むら」の中で保全されてきたことは事実であり、作物や家畜などの種が「むら」で保全されてきたという令も枚挙にいとまがない。そしてとりわけ普遍的な重要性を持つのは、「むら」による土地(農地)の保全であろう。
耕作放棄地の目立つ今日、農業とりわけ稲作が継続して行われていることが、いかに農地を保全しているかは一目瞭然である。したがって、第2種兼業農家が「むら」の一員として農業をつづけていることは、それだけでも農地の保全に資していることになる。しかし、より重要なことは、「むら」の領域内の土地保全に必要なことは営農だけではないということである。道ぶしん(道路の修繕・開設)や溝さらえ(用水路の清掃)などのむら仕事が不可欠なのである。むら仕事は農業に専念する一部の農家だけでできることではなく、また地方自治体が担うにはコストがかかりすぎる。すなわち兼業農家がむら仕事を担うことによって、むらの土地が保全され、それがひいては国土の保全につながっているのである。このように見るなら、兼業農家は雑草どころか、農村においてきわめて重要な役割を果たしている存在であることがわかる。
しかも、自立経営農家による農業粗生産額のシェアは40%なかったのであるから、60%以上が兼業農家によって生産されているといってよいのである。第2種兼業農家もまた、日本農業の重要な担い手なのである。
(中略)
政府は、1999(平成11)年の食料・農業・農村基本法の制定とともに、中山間地域を農業の条件不利地域と規定し、そこでの直接支払いを開始した。それはこの地の農業がもつ環境保全機能の対価を財政で支払うものである。そしてこの財政支出は、基本的には、集落(「むら」)を単位として行われる。私は、中山間地域において崩壊しつつある集落を財政支出によって維持することが、日本農業の将来にとって良いとは考えていないが、直接支払制度が意味することは、政府もまた「むら」の重要性に気づきはじめたということなのかもしれない。
以上 引用終わり
兼業農家さんたちが「むら」で農業をやっていることは、農産物を生産して国内の供給量を上げているだけでなく国土の保全にもなっていることは、なるほどと思いました
「むら」のような集団が、農業という仕事・生き方を通して再生していく可能性もあると思います。
そういった意味でも、これからの農業の担い手として、兼業農家や異業種の企業の役割は大きくなってくるのではないかと思います。
そして、人々が農に関わるかたちには、兼業農家のようにとはいきませんが、「むら」のような集団内での半農半Xのようなかたちでの関わり方もあるのではないでしょうか。
投稿者 yasutan : 2009年02月23日 TweetList
トラックバック
このエントリーのトラックバックURL:
http://blog.new-agriculture.com/blog/2009/02/798.html/trackback