『農村学校をつくろう!』シリーズ-13~農の場は人材育成・能力形成の場として最適! |
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2021年11月26日
植物は「種としてどのように外圧に適応するか」を第一に考え、世代を超えてその記憶をDNAに刻印している
植物は皆さんもご存じのように脳を持ちません。しかし彼らは種にある胚が、外圧状況を把握しながら、発芽のタイミングを見計らっているというのは、前回のブログでお伝えしました。
では一方で、植物はこれまでの経験を「記憶」することはできるのでしょうか?実はこれにも種が大きな役割を担っているのです。
実は植物の種は外圧を敏感にキャッチし、その記憶を次の世代に伝えていく役割を担っているのです。
確かに植物は農業における「品種改良」のように割とスピーディーにDNAを組み替えることが可能です。これは植物自身が動けないが故に、外圧を受け止め、自身を変えていくことで適応する戦略をとっているからです。
植物の記憶に大きな役割を担っているのが「ヒストン修飾」という機能です。
では「ヒストン修飾」とはどのような機能なのでしょうか?
ヒストン(英: histone)は、真核生物のクロマチン(染色体)を構成する主要なタンパク質である。(WIKIPEDIA より)
◆植物の記憶とは「DNAの記憶」他ならない
ヒストンとはDNAと結合するタンパク質でDNAとの重量比はおよそ1:1だそうです。
ヒストンはDNA同士を結合させる接着剤のような働きをするたんぱく質で、植物はこのヒストンを組み替えてDNAの並びかたを組み替えることで、過去の外圧を次世代に伝えているのです。
つまり植物の記憶とは「DNAの記憶」他ならないのです。
しかしDNAを組み替えるとはなかなか危険な方法です。なぜ植物はこのような戦略をとったのでしょうか?
◆外圧を確実に次の世代に伝えるためにDNAに記憶させる
多くの植物の寿命は、動物に比べて非常に短いです。もちろん樹木のように何百年も生き続ける種もいますが、多くは一年草で、その一生を1年で終了します。
そして実を蓄え、種を落とし、また再び次の世代へとつないでくということを繰り返しています。
その一生がそれだけ短いサイクルで塗り重ねられると、もはや個体の一生などどうでもよく、種としていかに外圧に適応するかが重要になってきます。
その立ち位置に立った時、外圧をどこに記憶させるのがより効率的かを考えると、確実に次の世代に伝えるということにおいては種=DNAに記憶させることがより確実に、次の世代に引き継げるのです。
◆植物は「種としてどのように外圧に適応するか」を第一に考え、世代を超えてその記憶をDNAに刻印している
このように捉えると、植物は単独の世代、ましてや個体で適応することを考えていないように思います。
「種としてどのように外圧に適応するか」を第一に考え、世代を超えてその記憶をDNAに刻印しているのです。
そしてそのスピードも凄まじいです。1年で世代交代を終える植物は、簡単に言えば動物のおよそ20倍のスピードで進化します。
それは動物のように個体の寿命を長くし、動き回り、脳に記憶するという戦略とは全く違い、集団で、動き回らず、DNAに記憶させるという進化形態なのです。
このようにみると、すでに生物を個体で捉えることすら違和感を覚えます。彼らはそれぞれの「集団としての特徴を生かしながら、いかに外圧に適応するか」という視点で進化しており、適応戦略にこそ差はあれ、それが進化の本質なのではないかと思います。
土シリーズから派生した植物編はいったんこの辺りを結論に、幕を下ろしたいと思います。ありがとうございました。
投稿者 sue-dai : 2021年11月26日 TweetList
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