『農業革命;未知なる乳酸菌』シリーズ-7 ~乳酸菌等による環境革命~ |
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2014年09月10日
『都市型直売所の可能性を探る』2~鮮度とは何か?追求潮流<生命力編>
農作物・青果物は収穫後も「生きて」います。前半の<流通技術編>では、生きている青果物を収穫後から、日本の先端技術によって徹底管理することで鮮度を維持していることが分りました。
後半の<生命力編>では、技術追求とは全く異なる「鮮度」の追求潮流を深めていきます
◆生命力そのものを高める必要性
農作物(青果物)の鮮度を保つため、デリケートかつ高度な管理技術を必用とする背景には「近代農法」と「市場原理」があります。
「見た目」「味」「色」「カタチ」がキレイで、「均質」で「品質」にバラツキがなく「大量生産が可能」で「早く育つ」コト。そのような経済効率重視の農作物が市場では価値を高めます。したがって戦後、高度経済成長と友に日本の農作物は度重なる品種改良と近代農法により、市場の可能性に応えうるカタチに作り変えられてきました。
それが現在、私たちがスーパーなどで当たり前に見る「見た目」「味」「色」「カタチ」がキレイで、「均質」で「品質」にバラツキがなく「大量生産が可能」な農作物たちです。けれども、このように人工的に改良され続けた農作物は決してパーフェクトではなく、同時に大きな弱点をもっています。
◆外圧不適応態としての農作物
まず、このような農作物は栄養価の高い肥料を十分に与えなければ育たない。その為、化学肥料が農業には不可欠となりました。この化学肥料には過剰に栄養分が含まれています。「より速く・より多くの作物を収穫する」ことを目的として使われている化学肥料は、「植物の成長促進剤」である「窒素」を大量に入れることで、その目的を実現します。
そして虫は、その化学肥料に含まれる「窒素をはじめとする栄養分」を目当てに、野菜に寄ってきます。つまり 「窒素過剰」なものを、虫や病原菌は好むということです。したがって、農薬も近代農法には不可欠となります。このように近代農業とは、市場向けに品種改良された「種」と「化学肥料」と「農薬」の3点セットで一つのシステムを構築しています。
結果、農作物自体が今や自然外圧に自力では適応できない生物に変化しつつあります。季節変化や乾燥、病害虫や栄養不足に極端に弱く、人工的に補完・補助しなければ育たない。しかも、改良品種は次世代に種も残せない。このように生命力・免疫力・適応力が脆弱な現在の農作物たち。だからこそ、高度な流通技術無くしては遠距離流通に耐えられないのです。
◆「生命力を育む環境」を追求する
このような農作物に対し、生命力の観点から脱近代農法(慣行栽培)⇒有機栽培⇒放置栽培の探求・追求を経て、ついに根源的な生命力に着目した自然栽培方法=「自然農法」が追求され、実現され広まりはじめています。映画化もされた「奇跡のリンゴ」で、近年話題になっている「自然栽培」の第一人者、木村 秋則氏の公演からご紹介します。
奇跡のリンゴ 木村秋則氏 講演レポート3~私は、自然に生かされている~よりhttp://www.rui.jp/ruinet.html?i=200&c=600&t=6&k=0&m=260797
私がリンゴの木から教わった事を、いくつか紹介します。
最初に、リンゴの木の写真をご覧下さい。何がおかしいか解りますか?
背景に写っている山の木々は、紅葉していますが、このリンゴの木は青々としたまま。私の畑のリンゴでは無いのですが、季節の変化に対する準備を全然しない木になっているんです。紅葉は、木々が冬を向かえるための準備なんですが、この木は季節に合わせる能力を忘れてしまっています。
次に、この穴の開いた葉っぱの写真。これは、リンゴが自ら病気になった部分を枯れさせた結果です。研究者の方はそんなバカな、と言ってましたが、実際に病原菌を塗ってみたら、同じことが起こりました。これは私の畑のリンゴだからできる事ですが、山の木々と同じように自然な状態の土に戻してあげれば、植物は免疫力をきちんと発揮します。
雑草だらけの私の畑からは、ドンドン害虫が減って、農薬を散布している畑の周りには、ドンドン害虫が集まってくる。これが実態です。
ここでは前述の近代農法によって、一般のリンゴ園の木が「季節」=自然外圧への適応能力を失い、病害虫に対する免疫力も失っている様子が語られています。同時に木村氏のリンゴ園の木は、自然外圧に対する適応力が強く、病害虫に対する免疫力がとても高いことが示されています。
◆自然農法が生み出す生命力
木村氏が確立した無農薬・無施肥リンゴの栽培方法は、従来の農家からは不可能とされてきたことであり、恐らく世界で初めてではないかと評されています。この自然農法は、不耕起(耕さない)、不除草(除草しない)、不施肥(肥料を与えない)、無農薬(農薬を使用しない)を特徴とする農作物全般に応用可能な農法です。
主人公である農作物と土中微生物の良好な関係を中心とした、循環する生態系の構築。そこでは、虫や雑草もこれらの環境を形成・維持する重要な存在となります。それは近代農法の対極にある、生物間相互作用を前提とした「生態系で自然外圧に対応する」場作りです。
この環境から収穫される農作物は、当然生命力が強く、自然治癒力=免疫力も高いものになります。したがって自然農法の農作物は、近代農法の農作物のように「腐る」ことがありません。収穫後も高い生命力と免疫力を持つ為、虫や菌が繁殖しないからです。自然界の植物と同様、水分が蒸発しただ「枯れ」てゆくだけです。
◆自然の摂理としての種(タネ)
農作物本来の「生命力」を追求していくと、その方法論は「農法」だけに留まりません。認識転換・価値転換は「種(タネ)」や「流通・販売(運びかた・売りかた)」の在り方にも及びます。
例えば種は、本来植物が子孫を残す為に適応戦略上、最重要の機能ですが、現在の市場農作物のほぼ全体を占める品種改良種(=通称F1種=雑種一代)からは、次世代の種が取れません。F1種は一代限りです。したがって毎年タネを毎年購入するしかないのです。
一方、F1種とは別に在来種(固定種)と呼ばれる種(タネ)があります。この種は地域の伝統風土の中で時代を越えて地域農家に継承されてきたもので、種そのものに高い生命力と適応力があります。もちろん、種は自家採取できます。「種」を植え、作物を育て、「種」を取り、翌年にその「種」を植える。という循環する生命力からの追求も広まっています。
◆都市型直売所が目指す「鮮度」とは
売りかたの面でも大きく異なることになります。通常、農作物は収穫後洗浄され、包装され、キレイな状態で店頭に並びます。ところが、農作物は洗浄した時から死にはじめるのです。実は収穫後の農作物であっても、洗わずに根付き・葉付きで土や泥がついたままの状態にしておく事で、生命力は保たれます。
市場価値を高める為、衰弱してゆく農作物の生命力。農作物の本来の生命力を引き出す事によって、必要以上のエネルギーをかけずに、鮮度の高いありのままの農産物を育て、届けることができるようになります。もちろん、泥や土が付いていたり、見た目は不揃いですが、生命力が強く、味も香りも栄養も抜群で、安心・安全な農作物たちです。
「食」とは生命を頂くこと。「いただきます」の食文化に表れている、日本人に根ざす自然に対する感謝の心。その本来の「価値=在り方」を示す。これからの都市型直売所に求められている農作物は、そのような自然の摂理に根ざすものになってゆくのではないでしょうか
<参考記事リンク>
奇跡のリンゴはこうして生まれたhttp://www.rui.jp/ruinet.html?i=200&c=600&t=6&k=0&m=261755
奇跡のリンゴ 木村 秋則氏 講演レポート3http://www.rui.jp/ruinet.html?i=200&c=400&m=260797
自然農法と微生物農業http://www.geocities.jp/sizenyasai07/farm/microbiology.htm
自然の摂理を理念とする株式会社ナチュラルハーモニー~自然農法の可能性http://www.rui.jp/ruinet.html?i=200&c=600&t=6&k=0&m=262021
「目からウロコ」の野菜の見極め方1~野菜は腐るもの?それとも枯れるもの?http://www.rui.jp/ruinet.html?i=200&c=400&m=258672
「目からウロコ」の野菜の見極め方2~肥料を使えば、農薬を使わざるを得なくなるhttp://www.rui.jp/ruinet.html?i=200&c=600&t=6&k=0&m=258900
『タネが危ない』…危なすぎますhttp://www.rui.jp/ruinet.html?i=200&c=600&t=6&k=0&m=260135
交配種(一代雑種)と固定種の違い ~よい点・悪い点http://www.rui.jp/ruinet.html?i=200&c=600&t=6&k=0&m=294410
一寸のちょびにも五分のタマシイ/ 泥付き野菜はシナシナでも新鮮!http://ameblo.jp/chobilion/entry-11090651605.html
投稿者 noublog : 2014年09月10日 TweetList
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