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2014年09月07日
『都市型直売所の可能性を探る』2~鮮度とは何か?追求潮流<流通技術編>
全国農産物直売所アンケートによると、消費者にとって直売所の魅力はやはり、鮮度の高い野菜と価格の安さです。今回は、これからの都市型直売所に求められる「鮮度」とは何か?について考えていきたいと思います。
◆鮮度って何?
鮮度とは新鮮さの度合いで、一般には収穫時に最高で時間の経過とともに低下します。「とれたて」や「活きのよさ」がおいしさをほぼ決定づける農産物では、鮮度が最高のときが品質も最高となります。したがって、完熟した旬の農産物をその場で頂く。これに勝る「鮮度」はもちろんありません。けれどもこれは、農家さんや家庭菜園などの自給自足に取り組んでいる(生産者=消費者)の人たちならではの特権とも言えます。
したがって農産物の消費者として都市で生活する私たちには、生産者さんが食べるような「鮮度」の高い農作物を手に入れることは、本来とても難しいはずなのです。ところが、流通革命をもたらしたしたスーパーマーケットの普及や技術革新、そして近年、産地直送の農産物直売所が全国的に広がる中で、以前にもまして私たちは、遠方や都会に居ながらにして鮮度の高い、新鮮な農産物を手に入れられるようになってきています。
では、そのような鮮度の高い青果物(農産物)は、いったいどのようにして鮮度を維持し、私たち消費者のもとに届けられているのでしょうか?
◆野菜は生きている
実は食材としての「青果物」には大きな特徴があります。それは、魚介類や肉類とは異なって収穫後も生き続けているという点です。もちろん生き続けているので、呼吸もすれば水分も蒸発します。畑で収穫された青果物が市場に出て食卓に並ぶまでの「鮮度」とは、つまり本質的には野菜や果物のもっている「生命力」なのです。
呼吸は、空気中の酸素を取り入れ内部の糖類や有機酸を燃焼してエネルギーを作り出し、二酸化炭素を放出する生命活動です。収穫後は、時間が経つほど蓄積していた養分を消耗し、その分甘みや酸味は低下します。栄養的にも減少します。そして、根からの水分補給がないのに水分が蒸発するのでしおれてしまいます。同様に収穫後も細胞は呼吸促進や葉緑素分解、成熟促進などを引き起こすエチレンガスなどの成熟ホルモンを作り続けています。
そして、生命力が低下することによって免疫力が下がり、微生物の繁殖を招き、カビたり腐ったりするのです。 したがって長距離流通の場合、この野菜の生命力=鮮度を、店頭・食卓までどのように維持するのか?が最も重要な課題となります。現在、農産物に於ける「鮮度」に対する追求のスタンスには、大きく二つの潮流があります。一つは「技術」によって成しえるもの。そしてもう一つは、生態環境を整え、野菜の「生命力」そのものを引き出すものです。
これらの二つの追求潮流を掘り下げていくことで、これからの都市型直売所、スーパーマーケットとの差別化。ひいては農業生産のこれから向かうべき方向性が見えてくるのではないか?と思います。
◆生命を維持する技術追求
生体内で起こる現象の多くは、酵素反応であり、その反応の引金になるのは温度です。だから、温度制御なくしては品質保持を効果的に行うことは難しいと言われています。野菜類の鮮度が劣化する率は、10℃の温度上昇に対して2~4倍も進みます。しかし、低温下では消化酵素の働きが抑えられ、野菜や果物の生命活動も低下し、微生物の活動も弱まります。青果物の場合は、生きていける最低の温度にすれば細胞を休眠させることもできます。したがって現在、農作物の遠距離流通に欠かせない技術となっているのが、この低温処理技術なのです。
低温処理は、青果物の鮮度(品質)保持に対する効果がたいへん高く、しかも安定している技術です。この技術の根幹は、あらゆる生命活動(青果物の呼吸や微生物の増殖など)の活性を低下させることにあります。ですから、低温処理することにより、有用成分の低下や蒸散による萎れ(しおれ)が少なくなるだけでなく、呼吸熱に起因する“ムレ”や腐敗も起こらなくなります。そのため収穫された農産物・青果類は、出荷前に適正温度まで冷却、予冷されているケースが多く、卸売市場を通りスーパーなどに納品される大部分の野菜は徹底的に低温管理されています。
また野菜の最適湿度は90~95%で、それより高いと結露してしまい、水の付着した部分から傷み始めます。このように高品質の食品を提供するための鮮度保持の技術は、低温管理の他、湿度管理、熱制御フィルムなどの包装、エチレンガス除去技術(EX:鮮度保持剤=エチレンを除去するものや、二酸化炭素などのガスを発生したり吸収したりする)など、生産現場での収穫後や流通の投階で青果物の特性に合わせてさまざまな形で取り入れられています。
◆世界最先端の日本の流通技術
日本の流通技術は、生産から計測、品質(鮮度)保持輸送と、世界最先端を誇っています。
この技術は基本的に、野菜の呼吸や水分の蒸発、ホルモンの発生などの「生命活動」を押さえることで「鮮度」を保つ技術です。言わば、野菜を仮死状態にすることで「鮮度」を保つ技術であるといえます。これらの技術は遠方の生産地と消費地の流通経路を結ぶべく追求され、発達してきました。私たちが気軽に新鮮な野菜を毎日手に入れられるのも、まさに日本の最先端流通技術の恩恵によるものなのです。
流通に於ける鮮度保持の技術追求は、農業生産地域から離れた都市生活者に、手軽にかつ、身近に「鮮度の高い青果物」をもたらしてくれます。新鮮な食材を手軽に入手できることは都市に住む消費者にとって、とてもありがたく便利なことです。しかし、それは同時に青果物の生命力を、人工的にエネルギー(電力や人工物質)を加え、補完することによって実現していることでもあります。
したがって一方で、本来ありのままで自然の恵みである農産物が、人工的エネルギーを加えることで維持されている今日の流通・鮮度保持の在り方そのものに、不整合感を抱いている人たちも居ます。それがもう一つの追求潮流。生態環境を整え、野菜の「生命力」そのものを引き出すという取り組みです。
農産物の「生命力」に向きあう追求潮流とは? 後編、「生命力編」につづきます。
投稿者 noublog : 2014年09月07日 TweetList
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