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2013年05月07日

【シリーズ】日本の農業政策から、今後の農を考える 3.現在の農業政策から見る、断層・・・農業や地域の活力再生が鍵

【シリーズ】日本の農業政策から、今後の農を考える の3作目です。
 今までの記事で、政策決定の仕組みや日本の農政の推移を見てきました。
1.農業政策の仕組み

・政策決定は、民意に基づくものではなく、特権階級である官僚が行っている。
・現状の政策では、農業の問題は解決していかない。→みんなの期待と大きくずれてしまっている。

2.日本の農業政策を探る

・江戸時代の農業は幕府(支配者)も農民も含めたみんなの物だったので、当事者意識に基づいて各農村で自主管理をしていた時代だった。
・次に、明治から昭和戦前までは近代化によって、農業は政府(官僚)によって支配(搾取)される事となり、その為の政策がとられた時代。
・戦後~現代ではアメリカによる日本支配が鮮明になり、その為の政策がとられ、農業においては農村共同体の完全崩壊に繋がった。

★今回の記事では、現代の農業政策にはどのようなものがあるのか?その政策決定の意図はどこにあるのか?効果はあるのか?を追求したいと思います。
①現在の農業政策の概要
 農業政策の目的は、大きくは食糧供給の安定、食糧増産、食糧価格の維持(低価格・高価格)、農家の保護、食料自給率の向上などであり、これらの中で重視される目的は国や時代によって変化します。
日本において、戦前までは農業の生産性が低い一方で人口増加率が高く、食糧の安定供給、増産が最大の課題でした。その後、農業の生産性が向上し、高度経済成長を経て、食糧供給量が安定し、国民の生活が豊かになって生活費における食費(特に農産物それ自体)が占める割合も低くなりました。
しかし、前記事にもあるように洋食化が進み、輸入農産物が増えた事により、米価をはじめとする国産の農産物価格の低迷が続き、都市部と農村部の経済格差が発生し、農業者人工の減少、農地の遊休化が進んでいます。
 戦後の1961年に【農業基本法】が制定されましたが、上記のように米余りによる生産調整、外国からの輸入自由化圧力、高度経済成長による商工業との所得格差の増大による人口の都市流出、後継者不足などの多くの問題を抱える事になり、農政の転換が迫られ、1999年に新しく【食料・農業・農村基本法】が制定されました。
●参考 ウィキペディア「農業政策」
★食料・農業・農村基本法

【食料・農業・農村基本法】(しょくりょう・のうぎょう・のうそんきほんほう、平成11年7月16日法律第106号)。
国家社会における食料・農業・農村の位置付けを明確にするとともに、新たな基本理念の下に講ずべき施策の基本方向を明らかにする法律として、農業基本法に代わって、平成11年7月に制定された。基本理念として[1]食料の安定供給の確保、[2]多面的機能の発揮、[3]農業の持続的な発展、[4]農村の振興を定めるとともに、この実現を図るため、食料・農業・農村基本計画を策定することや、食料・農業・農村のそれぞれの分野について講ずべき施策を定めている。
国土や環境の保護など、生産以外で農業や農村の持つ役割を高めること、食料自給率を高めることなどを目的として、おおむね五年ごとに、基本計画を変更する。
★具体的な内容は農林水産省のHPをご覧下さい。

食料・農業・農村基本法のあらまし
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●その後平成17年と22年に基本計画が変更され、現在は、平成22年3月に制定された【新・食料・農業・農村計画】を基に農業政策が実行されている。
【基本政策】
【新・食料・農業・農村計画】

食料・農業・農村基本計画は、食料・農業・農村基本法に基づき、食料・農業・農村に関し、政府が中長期的に取り組むべき 方針を定めたものであり、情勢変化等を踏まえ、概ね5年ごとに変更することとされています。
平成21年1月27日から、食料・農業・ 農村政策審議会及びその下に設けられた企画部会において基本計画の見直しの検討を行い、平成22年3月29日の食料・農業・ 農村政策審議会で新たな食料・農業・農村基本計画が答申され、平成22年3月30日に閣議決定されました。

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●これらの法・方針・計画の中で具体的な目玉政策である「人・農地プラン」「六次産業化」そして「戸別補償」の概要を紹介します。
1)「人・農地プラン」

「人・農地プラン」(正式名称は「地域農業マスタープラン」)は、農地集積による規模拡大や若者の新規就農の促進に向け、2012年度に農林水産省が打ち出した新たな政策手法です。
集落・地域において徹底的な話し合いを行い、集落・地域が抱える人と農地の問題を解決するための「未来の設計図」となる「人・農地プラン(地域農業マスタープラン)」を作成し、これに則って、農地を地域の担い手に集約するのが第一の目的です。
このプランを作成し実行すれば、農地の出し手や担い手、そして、その地域の新規就農者に様々なかたちで助成金が支給されます。

「人・農地プラン」(地域農業マスタープラン)
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2)六次産業化

農林漁業生産と加工・販売の一体化や、地域資源を活用した新たな産業の創出を促進するなど、農山漁村の6次産業化を推進する事を目的としています。
農業者が自らの生産物を加工し、販売するために必要な費用の助成が有ります。

「農山漁村の6次産業化」
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3)戸別所得補償制度

食料自給率目標を前提に国、都道府県及び市町村が策定した「生産数量目標」に即して主要農産物(米、麦、大豆など)の生産を行った販売農業者(集落営農を含む)に対して、生産に要する費用(全国平均)と販売価格(全国平均)との差額を基本とする交付金を交付する。交付金の交付に当たっては、品質、流通(直売所等での販売)・加工(米粉等の形態での販売)への取り組み、経営規模の拡大、生物多様性など環境保全に資する度合い、主食用の米に代わる農産物(米粉用、飼料用等の米を含む)の生産の要素を加味して算定する。

「経営所得安定対策」
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②どのような状況認識・意図に基づいて政策が決定されたのか。
1)食料・農業・農村基本法も新・食料・農業・農村計画も基本的には現状の農業や農村の課題を取り上げ、これに対する対策を打ち出していると思います。上記の「人・農地プラン」「六次産業化」そして「戸別補償」の各制度もこれに則り、制定されています。
2)しかし、新農業基本法が制定されて十数年を経た現在、日本の農業や農村の現状は改善されるどころか全体としては悪化していると言わざるを得ないと思います。
 農業や地域が抱える、根本的な問題は活力衰弱であり、活力をいかに再生するか!?が最大の課題であると思いますが、この課題に対しては、これらの政策は全く答えや方向性を見出せていないのではないでしょうか?
3)何故なら、これらの政策、制度は市場社会、市場流通の中での農業を前提条件にしており、この前提条件の基では、結局その活力源は今や完全に衰弱してしまった「私権圧力→私権活力」でしかなく、このままでは、農家の活力が再生する事は無いと思います。
4)しかし、農への注目、期待、必要性の認識が高まっているのは一方の事実であり、これが何故なのか?を考える事が可能性を見出す事になると思います。
★この状況をまとめると以下のような図解になると思います。
【図解】農への注目、期待、必要性の認識が高まってきたのは何で?
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5)現代では、農業に限らず生産や闘争の場では、人々の活力をいかに引き出すか?が最大の課題です。
  もう既に私権を確保する事で活力が沸く時代は終焉し、共認原理の中でしか活力を得られない時代になっています。
  農業や地域も同じで、まず農業者自身が農業の必要に気づくこと、その為には自らが生産した農産物をこれに期待してくれている消費者に直接販売する事、あるいは消費者と直接繋がる事、そして、お互いが期待し応え合う関係を作ることが共認充足を得る第一歩だと思います。農家自らが立ち上げてきた直売所の隆盛がこの事実を示していると思います。
参考:【コラム】最近話題の直売所ってどんなところ?
    ★農における業態革命~ VOI.1 供給発への認識転換⇒技術開発、農家の組織化、販路の開拓の3点セットが基本構造 ~
 しかし、農家が自ら農産物を販売していくような制度を国はなかなか政策としては出してきません。
★現代の農業政策の根本的な欠陥は、政策を作っている官僚や政治家が、農家や地域が持つ欠乏が共認欠乏であることに全く気づいていない、相変わらず、旧態然とした私権社会を前提とした政策しか考えられない点にあるのではないかと思います。
 つまり、私たち一般市民と政策を作っている官僚や政治家との決定的な状況認識のズレ、意識のズレが有用な政策を打ち出せない、農業や地域が再生しない原因だと思います。
参考:実現論:序4(上) 統合階級の暴走で失われた40年
    実現論:序4(下) 大衆に逆行して、偽ニッチの罠に嵌った試験エリートたち
 では、どのような政策が本質的な可能性を見出す事が出来るのか?
以下のような記事が参考になるかと思います。
参考:農村共同体の可能性
    実現論:序7(下) 農(漁)村共同体の建設
次回以降の記事で更に追求し、紹介したいと思います。最後まで読んでいただきありがとうございます

投稿者 nara1958 : 2013年05月07日 List   

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