農を身近に★あぐり通信vol.2:新規就農の成功事例に新しい農村をみる~「あいよ農場」の可能性~ |
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2013年03月27日
【シリーズ】日本の農業政策から、今後の農を考える 1.農業政策の仕組み
当ブログ、新しい農のかたちでも、日本の農のあり方については様々な議論をしてきました。新しい切り口として、今回は「日本の農業政策」を追求していきます。
なぜ、「日本の農業政策」を追求するのかといえば、農業政策によって、農業のあり方が大きく規定されてしまっているからです。
例を挙げれば、減反政策によって、米の生産量を調整されました。これは、米価の維持を目的としたものですが、何をどれだけつくるかということも政策に規定されています。 また現在では、特にTPPの参加を巡っては大きな議論になっているところです。
しかし、これらの農業政策は、どのような背景で、何を目的として施行されたのでしょうか?そして、政策を実行する上で必要な予算や、決定された予算が実際にどのように流れているのかは、なかなか見えづらいように思います。
そこで、農業政策の仕組みや歴史的背景を抑えた上で、現在の農業政策は、人々の期待と合致しているのかどうかを検証し、今後の農業政策の可能性を追求していくことが、今シリーズの目的です。
今シリーズは以下に沿って進めていく予定です 🙂
1.農業政策の仕組み
①誰が政策を決めているのか?
②予算はどのように決まるのか?
③政策と人々の期待とのズレ
2.農業政策の歴史から見る、統合階級と現実とのズレ
①戦後の農業政策
②戦後~現代までの農業政策の変遷
③社会外圧と、農業政策の関係は?
3.現在の農業政策から見る、断層
①現在の農業政策の概要
②どのような状況認識・意図に基づいて政策が決定されたのか。
③政策の効果は?
4.現在から将来への政策提言
①現代の意識潮流に沿う農業政策とは?
②どのようなかたちが望ましいのか?
では、早速本題に入っていきます。
1.農業政策の仕組み
①政策とは?
政策とは、政府が政治を行っていくうえでの方針であり、国民の声(期待)を実現するため、もしくは社会問題に対しての方針を打ち出しているものです。
例えば、自民党の掲げる政策の一つとして、下記が挙げられます。
【米価を下げる戸別所得補償制度を廃止し、農業農村の多面的機能を評価した、「日本型直接支払い」の地域政策と、人や経営に着目した「担い手総合支援」の産業政策を推進します。】
この大きな政策をもとに、行政は施策(政策を実現するための取り組みをまとめたもの)→事業(具体的な取り組み)という流れで実行していきます。
まずは、この政策がどのように決定されているのか、その過程を見てきます。
②政策決定の流れ
イ.国民主権に基づいて、政策が決定される。
主権者である国民は、選挙によって、議員を選出し、その結果与党が決まります。(与党とは、内閣総理大臣が属する政党が与党(主に選挙で一番多い人数を取った政党)
この与党が、主権者である国民の声を反映された政党である。ということが第一のポイントです。各政党(与党)には、マニュフェスト(選挙公約)があり、政策方針を打ち出しています。
次に与党の中から、内閣総理大臣、そして、内閣総理大臣によって、国務大臣(農林水産省大臣など)が任命されます。ちなみに、国務大臣は政治家である必要はなく、一般の人に対しても任命できます。
国務大臣は、各省庁の長として、国民の声を反映させるために、各省庁を統合していく立場といえます。
この国務大臣の下で、各省庁は、与党の政策に基づき、施策を練り、事業を計画していると考えられます。
そして、国民主権を支える制度が、次の三権分立制度です。
ロ.三権分立制度
日本国憲法は、国会、内閣、裁判所の三つの独立した機関が相互に抑制し合い、バランスを保つことにより、権力の濫用を防ぎ、国民の権利と自由を保障する「三権分立」の原則を定めています。
画像はこちらよりお借りしました。
http://www.shugiin.go.jp/itdb_annai.nsf/html/statics/kokkai/kokkai_sankenbunritsu.htm
ハ.実態はどうなのか?
しかし、実際はそうではなく、バランスとしては、行政の力が強くなっている「行政権の肥大化」が、日本における三権分立制度の特徴と言えます。
例えば、国会は唯一の立法機関ではありますが、第1回国会から、第173回国会までの成立法案を見てみると、政府提出法案(閣法)の成立率は85%に対して、国会提出法案の成立率は28.5%と、大きな差があります。
第1回国会(1947年5月20日)から
第173回国会(2009年10月26日)までの比較
政府提出法案件数9190件 成立件数7856件 成立率85.5%
国会(参議院・衆議院)提出法案件数4794件 成立件数1364件 成立率28.5%
(国立国会図書館調査及び立法考査局 2010年11月調べ)
引用先、http://ncode.syosetu.com/n1172x/28/
行政(内閣)が、法案を提出することは、憲法72条によって了承されていますが、さらに、法案作成に関しては、専門的な知識を有する官僚に依存せざるを得ず、ほとんどが官僚が作っているとのことです。
内閣が提出する法律案の原案の作成は、それを所管する各省庁において行われます。
http://www.clb.go.jp/law/process.html
つまり、内閣の法案作成においては、官僚が作成していると言えますが、それは、一方で、官僚の権力が肥大化しやすいといえるのではないでしょうか。
http://www.rui.jp/ruinet.html?i=200&c=400&m=233887
日本の政治を動かしているのは政治家ではなく官僚だ!~中村敦夫氏が「霞ヶ関」の実態を暴露
『この国の八百長を見つけたり』(中村敦夫/著)より部分転載します。
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(略)
●国会議員は八千人の官僚たちに囲まれた人質だ
(略)国会議員は衆議院500人、参議院252人、約750人しかいない。そして政策や法案をつくるという本来政治家がやるべき仕事を代行している霞ヶ関の高級官僚が約8000人いる。750人に対して十倍強もいるわけです。屡するに、8000人の官僚たちに囲まれた750人の人質が国会議員なのです。そして、8000人の総意でもって決められたプログラムを、民主主義の儀式として、いちおう国会が決定するような、そういう段取りに追い込まれている。これが「この国のかたち」です。
政治は何によって権力を示すかというと、立法によって権力を示す。法律をつくることによって世の中を動かすわけです。これが法治国家の基本です。国家の立法機関、本来ならば政党や政治家たちが立法しなくてはいけない。ところが、そんなことは例外的にしか行なわれたことがないのです。ほとんどその権利を放棄しているというのがこの国のかたちです。立法府が立法をしていない。
法案には議員提案もないことはないが、内閣提案と言われている法案がほとんどです。しかしこれは内閣にいる大臣がつくったわけではなく、実際は官僚作成のものばかりなのです。法案が内閣決定される時には、政策でもそうですが、総理大臣には権限がなく、閣議決定ということになります。(略)
●日本のすべてを決定するのは各省庁の事務次官たちだ
(略)各省庁の事務次官は、各分野の日本の代表なのです。国民の選挙で選ばれていない官僚が、実質的には代表になっているという摩訶不思議な官僚国家が日本というわけです。(略)
では、与党政治家などが何をしているのかというと、各委員会で始めから終わりまで坐っているだけです。(略)
このことから、現状は民意で政策が決められるのではなく、官僚という一部の特権階級によって、都合の良い政策や法案が決定されているということが見て取れます。
③予算決定の流れ
イ.予算とは?
決められた政策を実現するためには、各省庁で、施策をつくり、それを実行するための事業を計画・実行する必要があります。この事業を達成するために必要な資金をまとめたものが、予算となります。この中に、助成金や補助金などの事業も含まれています。
ただ、そうは言っても予算には限りがあるので、各省庁は前年度の予算の実績や、財務省から提示される、予算基準をもとに、予算計画を行っています。
財政の仕組みが分かる本から、引用。
まず、前年度の予算と、実績を考慮した上で、各省庁は、財務省へ、概算要求書を提出する。何段階かの閣議決定の後、最終的に国会提出され、予算が決定されます。
これの図をみれば、予算が決定するまでには、多くの段階を経て、検討に検討を重ねられているようです。
ロ.農林水産省の予算について
H24年度の国の一般会計予算約92兆円のうち、農林水産省の予算は、約2.2兆円。(この他、特別会計予算などがありますが、今回は割愛します。)
この2.2兆円の内訳は、国土強靭化、経営所得安定対策等、担い手・農地総合対策など、大きく9つの項目に分かれて予算が組まれています。農家さんへの直接支払い制度や、新規就農支援事業なども、この中に含まれています。
http://www.maff.go.jp/j/budget/2012/kettei.html
ハ.事業評価について
政策を決定し、予算を組み事業を行った以上、どのような効果があったのかを評価する必要があります。これは、各省庁のもとで、事業評価というものを公開しています。
http://www.maff.go.jp/j/assess/index.html
確かに一つ一つの事業評価を見れば、経済的な効果や、人口の増加などは評価できます。
③.翻って農業の現状を見ると
しかし、農業の現状を見れば、以下の問題は一向に解決していないことがわかります。
a.農業就業人口の減少 2000年の389万に比べ、2011年は260万人
b.新規就農者の減少 2006年の8.1万人に比べ、2010年は5.4万人
c.耕地面積の減少 2000年の483万haに比べ、2011年は456万ha
食料・農業・農村白書 平成24年版から抜粋
などなど、芳しくない状況が見て取れます。
このことから、現状の農業政策では、問題を解決できるに至っていないということが見て取れます。
さらに言及すれば、予算決定された2.2兆円という金額も、どれだけ必要で、何に使うのが望ましいのかは、疑問に残るところです。
④.まとめ
・政策決定は、民意に基づくものではなく、特権階級である官僚が行っている。
・現状の政策では、農業の問題は解決していかない。
→みんなの期待と大きくずれてしまっている。
この、みんなの期待とのズレは、いつから始まっているのか。
そのあたりを、次回、歴史を遡りながら農政を見ていこうと思います!
以上です。ご精読ありがとうございました。
投稿者 sugi70 : 2013年03月27日 TweetList
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