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2022年02月25日

【世界の食と農】第10回 中国~市場原理に飲まれる農業、その矛先は「日本」。~

前回の投稿では、中国の農業の実態について押さえていきました。

【世界の食と農】第9回 中国~「量から質へ」舵を切った、農業大国~

国民の20%以上(3億)もの農家が占めているにもかかわらず、その多くが零細な産業に陥ってしまっている中国。そして、これを何とか解決しようと、農家を組織化して、規模拡大によって「量から質へ」の転換を図っていこうとしている試行錯誤について見てきました。

画像は、こちらからお借りしました。

しかし現実的には、改善の見通しが立たない中国が、次の策として進めているのが『企業の農業参入』です。
今回は、この可能性について見ていきたいと思います。

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■農業再生を目指す『竜頭企業』。ただし、課題は山積み
中国政府は、農業の生産基盤を強化していくためには、農家だけでは無理だと判断。そこで次に可能性を見い出したのが、企業の農業参入です。国内企業の中から、率先して農業を牽引してくれる企業を募り、それらを『竜頭企業』と呼びました。(いかにも強そうな名前です)。

竜頭企業の役割は、自社の力で生産力を上げるための資金投入や技術・人の投入が主軸としながら、もう一つ重要な役割があります。それは、農家のネットワークをつくることです。見方によっては、中国政府が束ねようと挑戦したけれど、ダメだったので企業に頼るしかなかったのでしょう。

いずれにせよ、竜頭企業が持っている技術を、農業従事者に伝承したり、若者を育成したり、バラバラの農家を束ねる会合を行ったりと、汗をかいて統合に奮闘してきいています。

うまくいった部分もありますし、一方で、課題も沢山あります。企業が農家を支配して、こき使って働かせる。お金をまともに払わないなど。あるいは、農家も誠実に働こうとしないなどの軋轢が多発しているのです。「自分」を原点とした思想に成り立つ中国、さらには「個」で働く農家を束ねるというのには、限界があるのかもしれません。

おそらく、現在の中国において、既存の農業生産基盤に新しい風を取り入れるのは限界があるのでしょう。全く新しい生産基盤を、ゼロからつくっていく。それくらい大きな転換点に差し掛かっています。

 

■地に落ちている中国農業の生きる道は、価格と機械化
もう一点、竜頭企業を苦しませる要因として、「安全に対する信頼の低さ」があります。
具体的には、中国の河川の汚れから来る田畑の「土壌汚染」、大気汚染で葉物野菜の「表面汚染」、農薬の「大量散布」などなどがあります。かつて、洗濯機で大根を洗う様子や、野菜を薬液にどぶ漬けするなどショッキングな映像も流れました(中国に限りませんが…)。
その結果、海外の国はもとより、中国国民も自国の野菜に「不信感」を抱いており、不買行為が蔓延しているというのも大きな問題として潜んでいます。

だから、竜頭企業らも、これを受けて「品質」には非常にデリケートで進めており、彼らの突破口は「価格と機械化」へと可能性収束しています。

 

画像は、こちらこちらからお借りしました。

具体的には、『植物工場』です。国土とは切り離して、完全機械の中で栽培し、大量生産・衛生管理を徹底しているのです。大きな資金力・国土がある中国にとっては、大きなビジネスチャンスとして挑戦しがいのある課題なのでしょう。

中国農業が今後生き残っていく道は、より市場化(大量生産・機械化)の中で勝つ農業へと突き進んでいくことになるでしょう。

 

■輸出の主要国は、「日本」。市場の波に飲まれていく。
さて、中国の農業を取り巻く逆境と挑戦について見てきましたが、私たち日本人との大きな接点があります。それは、中国の野菜の最大輸出国は「日本」だということです。まさに、市場化の波に取り込まれた典型ともいます。

やや古い情報にはなりますが、2013年、中国から日本への輸出額はなんと25%を占め、圧倒的な輸出国No1でした。2位のアメリカは8.5%ですから、いかに中国と日本の共存関係が強固なものかは明らかです。

画像は、こちらからお借りしました。

みなさんもご存知の通り、ここ20年ほどで、日本の外食産業やコンビニ産業は急激に増加してきました。この価格競争の中で中国の野菜が大量に輸入されているという実態があります。

日本は、農薬規制値が低く、また、情報を記載する規制も低いので、一般国民である私たちは気づかない。食品チェーン店からすれば、ローコストで大量に生産する中国野菜は、市場原理の思惑と合致したと言えます。

輸出品目の構成でいくと、調理加工野菜が最も多く36.5%、次に冷凍野菜25.0%、生鮮野菜20.7%と続きます。生鮮野菜は、たまねぎ、にんにく、西洋ねぎとその他のねぎ類、にんじん及びかぶが主要な野菜として挙げられます。私たちの食卓に並ぶ結構な量の野菜が占められているのです。

 

以上、中国の農業について見てきましたが、今後の動向を予測します。

  • 今後、竜頭企業が核となって、機械化×低価格化を進め、市場競争に強い生産を強化。
  • その思惑にのってくる国(日本のような先進国か)を取り込み、食市場を占拠していく。
  • 世界の農・食の市場の中で、中国の存在感が増すとともに、アメリカとの寡占化がより一層進んでいく。

これは、戦後、アメリカが進めてきた食糧支配構造ととても似ています。アメリカの力がやや弱くなってきたところに、中国が攻め入ってきているいう構図になっています。いずれにせよ、食糧支配の恰好の標的となっている日本。私たちの健康な身体と心を守っていくためには、今のままで良いはずはありません。

そこで、今後の追求では、食糧支配に負けない、自国の力で強い農業を確立している国について見ていきたいと思います。

 

■参考

投稿者 hasi-hir : 2022年02月25日 List   

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