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2022年02月11日

【世界の食と農】第8回 ロシア~新市場をこじあけたプーチンの農業革命~

前の2投稿では、ロシアにおける国内の自給戦略について見てきました。

①国民自ら農業を担い、自給率8割を実現する『ダーチャ』政策
②海外の安かろう・悪かろうの野菜を排除する『脱GMO』政策

いずれも、とても大胆な施策ですが、実現に導いた凄まじい力を感じます。

画像は、こちらからお借りしました。

 

今回は、このような政策を、どうやって実現してきたのか、そのプロセスに着目して見ていきたいと思います。

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■ロシアの外圧状況(欧米に蝕まれた農業)

実は、ロシアが農業政策に打って出たのは、30年ほど前のことです。

なぜ、農業が重要だと考えたのでしょうか?

1990年代、世界はバブル崩壊による経済低迷となり、その解決策として、貿易自由化によって経済を活性化していこうとしていました。その結果、ロシアの食糧は大きな被害を受けました。ロシアは非常に寒冷で、農作物を育てるにも温室が必要で、価格も上がりがち。

一方で、特に欧米の大規模農業は、大量生産で価格を下げまくる。その結果、価格の安い食糧が大量にロシア国内に流れこみました。特に、畜産系の生産量は1000万トンから400万トンへ6割減少、この自給率は87%から65%に低下しました。

この状況に、ロシア政府は強い危機感を持っていました。なぜなら、食糧支配は、経済低落に留まらず、一番の大敵であるアメリカが国家支配(弱体化)を狙ってきているのが明らかだったからです。

 

■世界中に、ロシアの意地を知らしめた『輸入禁止』と『大量助成金』

そこで、どうしたか?

なんと、ロシアを蝕む敵を排除するために、『輸入禁止』に打ってでたのです。当初は、欧米を中心に禁輸し、その後も、商品作物の得意な国が、ロシア市場に食い込もうとする度に、禁輸という制裁を下していきました。

画像は、こちらからお借りしました。

 

禁輸のままでは、国民の食糧が不足する事態に陥ってしまいます。

そこで、取った施策が、『企業への大量助成』です。特に、大規模資本を持つ企業には、積極的に助成金を支払い、施設・設備の2割を助成し、企業への課税ゼロにするなどまで優遇しています。さらには、大規模投資家も巻き込むことで、ロシアの農業生産技術はわずか数年のうちに飛躍的に上昇していきました。

ロシアは軍事技術で有名ですが、それに匹敵するほどの助成金を農業に投下しました。その結果、石油は『金のガチョウ』と評される以上に、農業生産者は高い収益性を得ていたと言われえいます。多くの大企業・投資家、ひいては海外の大企業や国家さえも投資・参入しようと、物凄い資金がロシアに集まることになりました。

・富豪の持ち株会社AFKシステマが、農業分野に90億ルーブル(約144億円)投資。
・富豪のが保有するロス・アグロは、最終利益率は33%に上昇。
・政府系のロシア直接投資基金(RDIF)は、中国と20億ドル規模のファンド設立に着手。
・タイの複合企業CPグループと合弁事業を立ち上げ、国内最大規模の酪農総合施設の建設。
・輸出拠点をスエズ運河に設立しようと、エジプトの銀行数行と協議。
(2016年当時)

そして、わずか3年ほどで食糧自給率は20%近く上昇し、一気に食糧輸出国まで成長していったのです。

 

■脱GMOで、欧米に対抗する新市場を作り上げるまでに成長

前回の投稿でも紹介したように、ロシアの農業は「脱GMO」を謳い、遺伝子組み換え作物にNO!を明確に突き付けてきました。そして、ロシアは「脱GMO作物」の大量生産国家となり、小麦の生産量も、米国を抜いて世界トップとなりました。

  • 脱GMO(遺伝子組み換えでない)で、安価で、たくさん届けてくれるロシア
  • GMO(遺伝子組み換え)で、安いアメリア

世界中の国は、どちらから輸入しようと思うでしょうか?明らかに、世界の国家はロシアの作物に惹かれるのは間違いないでしょう。

 

つまりロシアは、戦後以降、長らく続いてきた欧米式の近代農業をひっくり返しつつある。そして、自然本来の農業のあり方を発展した新しい農業で、世界の農業市場を作り直すとこにまで力をつけて来ているのです。

それを、10年もたたないうちに、一気に実現にまで導いてきたロシア・プーチンの恐るべき手腕です。

これからの農業どうする?を考える上で、これまでの近代農業を前提にした追求では不十分です。このような世界を取り巻く農業の情勢をつかみ、社会で求められる農業のかたちを考えていきましょう。
プーチンから学ぶべきは、先を見据える構想力・実現力であり、今、日本の農業に求められている力も同様でしょう。

 

■参考投稿
「ロシア、富豪の投資で農業振興」
「野菜輸出国に変わりそうなロシア」
「ロシアは世界最大の穀物輸出国になりつつある」

投稿者 hasi-hir : 2022年02月11日 List   

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