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2022年12月08日

【日本の漁業はどこに向かうのか】シリーズ2~「自然と共生する漁業」により成長する世界の漁業、世界と日本の漁業の違い

※画像はこちらからお借りしました。

日本は島国であり「排他的経済水域の面積が6番目」に多く、周辺海域は「世界有数の好漁場」と言われるほど豊かな漁場を有しています。
しかし、世界の漁獲量の増加しているのに対して、日本における漁獲量は年々減少の一途を辿っている状況です。

世界も1970年代には大きく漁獲量の減少を経験しています。
しかし、ノルウェーやニュージーランドでは、「水産資源を守る漁業=自然と共生する漁業」に舵を切ったことで、世界でも有数の漁業大国になっています。

今回は、世界各国における漁業の状況、世界と日本の漁業における違いを見ていきたいと思います。

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◆世界で発生した乱獲による水産資源の枯渇

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世界で「持続可能な漁業」が叫ばれるようになったのは、乱獲が行われるようになった近代からです。

トロール(底引網)漁業など、近代における漁業技術が確立されるまでは「乱獲」と呼ばれるような状況はありませんでした。
麻糸を紡いだ魚網を用い、原動機を持たない船舶では、乱獲するほどの漁獲量を確保できなかったからです。

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しかし、明治以降に世界の漁船に原動機を用いられるようになっていくと、漁獲量の状況は劇的に変化します。
人力ではなく、機械によって漁業を行えるようになったことで、1回の漁業で獲れる魚の量は大幅に増加していきました。

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またコールドチェーンと呼ばれる物流技術の発展により、新鮮な状態で水産物を移送できる技術が高まることで水産物を輸出できるようになり、世界における水産物の流通の高まりも相まって、漁獲量はさらに増加していきます。

そのため、世界において「穫れるだけ魚を穫る漁業」が世界で横行し、「魚の量=水産資源」は急激に減少していきます。
現在、漁業大国と呼ばれる国々は、水産資源が枯渇した状況に対して、国が主導して「水産資源を守る漁業=自然と共生する漁業」に舵を切りました。

日本と世界の漁業の違いは、水産資源の減少に対しての取組み、管理にあります。

 

◆持続可能な水産資源の管理が水産業を成長産業へ押し上げる

※画像はこちらからお借りしました。

世界で成長している漁業国にはノルウェーやニュージーランド、米国、中国があります。

中国は養殖業の発展により大きく漁獲量を伸ばしていますが、ノルウェー、ニュージーランド、米国の3国は水産資源の管理によって、安定的な漁獲量を確保し、世界でも有数の漁業国となっています。

 

◆量より質を高めるノルウェーの漁業

※画像はこちらからお借りしました。

ノルウェーは人口が少ないため、ほとんどの水産物が海外に輸出されており、同国は1970年代まで乱獲により、漁獲量が大きく減少していました。

日本でも漁の時期や漁獲量は決められていますが、漁師が自主規制として漁獲量を決めています。それに対して、ノルウェーは「漁船当たりの漁獲枠」が国によって定められています。

漁獲量が厳しく定められているため、ノルウェーでは水揚げ金額を上げることに力を入れており、年間で計画的に水揚げが行われ、年間で平準的に漁が行われています。
そのため、水産加工工場も作業のピークがなくなるため、計画的に品質の高い加工を行うことができます。

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また、魚を捕りすぎることがないため、ノルウェーの漁獲量は安定的に推移し、品質の高い加工により高い価格で水産物を取引することができています。

同時に養殖においても品質管理により付加価値を付けて輸出しています。
ノルウェーの生食も可能なアトランティックサーモンは世界の流通の半分以上を占めています。

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漁獲量は横ばいながらも安定した漁獲量を確保しつつ加工の品質を高めることで単価を引き上げ、さらに養殖業を伸ばすことで水産業としては1980年から2倍規模にまで伸ばすことで世界有数の漁業大国に上り詰めています。

 

◆国が厳格な水産資源の維持を進める米国の漁業

※画像はこちらからお借りしました。

アメリカは人件費が高く、養殖用地が少ないため養殖業は盛んではありません。
しかし、世界一広大な排他的経済水域を保有しており、漁業により世界で4位の漁獲量を確保しています。

アメリカもまた1980~1990年代まで乱獲により、漁獲量が減少していました。
そこで、「アメリカ海洋大気局」が厳格な漁獲規制を行うことで水産資源を維持し、2000年と比較すると半分の魚種における乱獲状態を解消しています。

また、キャッチシェアと呼ばれる漁業管理プログラムを導入し、漁船あたりの漁獲量を細かく規定・管理することで、安定的な漁獲量の確保を図っています。

 

◆資源を守る制度のない日本の漁業

※画像はこちらからお借りしました。

日本の漁業法には水産資源を維持するための法制度はなく、水産資源の維持は漁業者による自主規制が中心です。
しかし、広域的な資源管理が必要な漁業においては、国として資源管理を取組まなければ水産資源の再生は実現できません。

実際に秋田県でハタハタの資源を守るために厳しい自主規制を行うことで一時は漁獲量が再生しましたが、他県は異なる自主規制を行っていたため、残念ながら再び減少の一途を辿っています。

水産資源を維持するためには国単位での管理が不可欠になりますが、地域ごと、集落ごとに自主管理を行っている日本においては持続可能な漁業は根付いていません。

次回は日本の漁業における変遷を見ながら、現在における日本の漁業がどのように形成されていったのかを見ていきたいと思います。

 

【参考サイト】
主要漁業先進国の漁業政策の分析
ノルウェーと比較すれば日本漁業の問題は浮き彫りに
海と共に生きるノルウェーが目指す高収益なサステナブル・シーフード(前編)
ジム付き漁船、ノルウェーの贅沢な漁師たち
ノルウェーの水産業とそれを支援する機関
割当保有における寡占と新規参入の実態

投稿者 tiba-t : 2022年12月08日 List   

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