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2022年12月01日

【日本の漁業はどこに向かうのか】シリーズ1~世界と日本の漁業を数字で見ると

世界と日本の漁業を数字で見る日本の漁獲量が減少するなか、世界の漁獲量は50年で2倍にまで増加しています。
この50年もの間に、漁業のなにが変化してきたのかを、数字を元に見ていきたいと思います。

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◯世界は養殖漁業に大きく動いている

世界における漁業・養殖業生産をみていくと、50年もの間に漁業生産の総量は21000万トンに増加し、50年前に6000トンだったのに対して3倍以上に膨れ上がっています。

しかし、漁船漁業における生産量はほぼ横ばいを推移しています。
それに対して、この50年の間に世界における養殖業(内水面養殖業、海面養殖業、内水面漁船漁業)は約12000tと漁業生産の半分以上を占めるようになりました。


※画像はこちらからお借りしました

世界の漁業生産は、漁船による遠洋漁業や沿岸漁業ではなく、養殖業によって増加していることがわかります。
これまでの遠洋漁業を中心としていた世界の漁業は、養殖漁業へと転換しているのです。

 

◯日本の養殖は世界に対して遅れている?


※画像はこちら からお借りしました

世界に漁業が半分以上を養殖に転換しているのに対して、日本の漁業生産における養殖の割合は約2割にとどまっており、世界に対して養殖は遅れを取っているようにみえます。

日本のおける漁業は職人気質の漁師による漁業が中心であり、漁船による漁業が中心になっていることが要因と考えられます。

これは日本における漁業従事者の性質、組織化の面で世界との違いがあるのかもしれません。

 

◯進む漁業資源の枯渇、減らない漁獲量

世界の漁獲量が増える一方で、世界では漁業資源の不足に伴う、漁獲量の制が叫ばれています。

※画像はこちらからお借りしました

世界における漁業制限の始まりは、「国連海洋法条約」にて「200海里水域」が設定されたことからはじまります。
その他にも大西洋まぐろ類保存国際条約、みなみまぐろ保存条約、国連公海漁業協定などさまざまな資源不足を解決するための条約がつくられ、それらに日本は加盟しています。

条約の締結は世界中で漁業を行っていた日本には大きな影響を与えています遠洋漁業はピーク時の10分の1程度まで漁獲量が減っています。

しかし、資源枯渇により世界は漁獲量の制限の流れになっているものの、冒頭の数字でもみたように漁船漁業の数字は大きく変わっておらず、ほとんど漁獲量は減っていません。

 

◯増えつづける養殖漁業による弊害

養殖漁業は安定的な漁獲量の確保、品質の面で優れています。また、どの季節であっても旬の状態を保つことができ、出荷時に絞めることから鮮度も高い。また、管理された衛生的な環境で育てるため、寄生虫などの心配も少ないのが特徴です。
それゆえに、世界における養殖魚の需要は高まっていく傾向にあります。

一方で、漁業資源の視点から見たとき、養殖は万能のものではありません。養殖を行うためには、餌となる魚の漁獲量を確保しなければなららにからです。

養殖用の餌をつくる工場は世界各地にあり、餌をつくるために魚を獲ることでも利益を得られるため、漁獲量は増え続けるという構造にあると考えられます。

一方で、日本は養殖業が伸びておらず、養殖用餌の需要も伸びないため、漁獲量は減少の一途を辿っているのかもしれません。

 

◯養殖の発展が世界の漁業に影響を与えている?

今回は、世界の漁業の置かれている状況を、数字を見ることにより世界が養殖に転換していっていることがわかりました。
同時に養殖への転換は世界における漁業のあり方を変えている恐れもあります。

次回は、世界の漁業組織と日本の漁業組織の違いを見ていきたいと思います。

 

【参考サイト】
(1)世界の漁業・養殖業生産:水産庁
数字で理解する水産業:水産庁
(1)増加し続ける世界の水産物需要
養殖のエサになる魚も…乱獲の実態【SDGs】 – YouTube
25suisan1-1-3.pdf
http://www.jfta-or.jp/agreement.html日本の水産業と未来
(1)「国連海洋法条約」に基づく国際的な漁業管理の枠組み
世界の水産資源の動向

投稿者 muramoto : 2022年12月01日 List   

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