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2010年05月11日

【共認社会の新しい農法とは?】(11)~人間の役割は、養分を「使える」状態にして陸地に戻すこと~

このシリーズの前回投稿(リンク)で、
“人類が、具体的にどのような形で、生命群の力を借りながら、必要最小限のエネルギー投入のみで、自然界の物質循環の中に存在させていただくのか、どんな風に生態系と関わっていけばいいのか、ということが今後問われてくる”
という重要な視点が提起されました。
「最小限のエネルギー投入」とは、単純に肥料を減らすことではありません。あくまで、近代農法の問題点は「化学的に合成された肥料をジャブジャブ投入していること」が結果的に農地の疲弊や汚染を引き起こしていることなのです。
その肥料作成と流出で失われるエネルギーこそが無駄であり、そこを「自然界の物質循環」の手助けを得ることで合理的にすることこそ、『持続可能な農業』への道だと言えます。
具体的には、現在ただの廃棄物として扱われている「糞尿」を、農作物が利用できる栄養素の状態にして農地に「戻す」ことになります。
その方法については、本文で追求していきます。
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■農業と物質循環を繋ぐ「ため池」
当ブログをご覧になっている皆様には、「ため池」をご存知の方が多いと思います。
Wikipediaによると、“水を貯えておき必要な時に耕作地へ送水することで季節ごとの水量の変化や旱魃などの気象変動による影響を抑え、農作物を安定して栽培することができるようにする。”とのことです。


ため池(画像はリンクより)

一般的には貯水池としての機能に焦点が当たりがちですが、「地球生態学で暮らそう」の著者である槌田敦氏は、『ため池を物質循環に活かす』ことを提案しています。
まず、2~3段階のため池の準備が必要です。
第一ため池にコイなどの動物を飼い、畜産発の糞尿を流すと、糞尿に含まれる固形物をコイが食べてくれます。さらに、動物の糞にはキレート鉄(参考)が含まれているので、水草を浮かせて植物に水溶性の養分を吸収させます。
ここで飼われるコイは、干鰯にすればアミノ酸肥料になり、水草は引き上げて腐植土にすることができるのです。
第一ため池である程度栄養分解された水を第二、第三ため池に流すにつれて、動植物にとって利用しやすい状態になります。例えば、液肥として家畜に飲ませたり、水田に引いて米を作ったりと、栄養と水分を同時に補給することが可能です。
最終ため池の水を第一ため池に戻せば循環するし、あふれた水を川に放流することで、適度な養分が川に供給されて水系生態系が豊かになります。
このように、ため池を有効活用することで、自然の物質循環を利用した養分補給が可能になるのです。糞尿を廃棄物として処理するのではなく、使える栄養素の状態にするという発想が根本にあります。
このシステムを応用すれば、かつてのように人糞を肥料として利用することもできるようになります。さすがにそのままため池に流すのは、法的にも心理的にも無理がありますが、BM技術(参考)のような手法を加えれば、ため池利用に繋ぐことは可能かと思われます。
人間社会と自然の物質循環を完成させるには、家畜や人の糞尿利用が必須だという視点で、技術追求を行っていくことが今後求められてくるでしょう。
■農業と漁業の連係で「栄養素を陸地に引き上げる」
ため池では水を利用した物質循環システムが形成されますが、それでも最終的に養分が流れていくのは河川、ひいては海です。重力に従って水が移動することを考えれば、当然のことと言えます。
一時期、畜産から出る糞尿や、農地で吸収されず流出する肥料分が海で「富栄養化」を引き起こし、漁業に多大な損害を与えるとして騒ぎになりました。特に沿岸部分で養分過多になることで、アオコが大量発生して漁獲量が減少する事態になったのです。
これを「汚染が原因」と判断した行政は、糞尿処理の規制を強化したり、水質浄化に努めたのですが、実際に水が綺麗になったらますます漁獲量が減少してしまいました。水生動物のエサの原点である植物プランクトンに養分が供給されなくなったため、結果的に魚介類の数そのものが減ってしまったのです。「水清ければ魚棲まず」の諺通りになってしまったというわけです。
この事実からはっきりと分かるのは、「養分を流さないことではなく、流れた養分を陸地に戻すことが重要」ということです。「富栄養」とは、言葉が示す通り「養分が豊富にある」状態です。そして、その状況下で生息している動植物を肥料化(干鰯、腐植土など)して陸地に戻すという行動こそが求められているのです。
例えば、上記のため池やBM技術を通じて適度な養分含有率になった水を、漁業者が農業者から受け取って使用し、漁業者が河川や海から獲った動植物を肥料化して農業者に渡すことが考えられます。これによって、人間の生産活動を介した物質循環が成立する上に、資金を介入させれば経済循環も実現できます。
これまで農業者が原因とされて生じていた漁業被害を、双方にとっての利益に変えられるのです。このような方法ならば、農業者と漁業者が手を繋ぐだけで、明日からでも実行できるはずです。
■人間には物質循環を促進する大きな役割がある
当記事で挙げたため池利用や農・漁業者の提携をイメージ化すると、下図のようになります↓

水を利用した養分循環サイクル

図を見ても明らかなように、持続可能な農業を実現するには「田畑で農作物を作る」よりもずっと大きな視点で自然や社会を捉える必要があります。
それと同時に、このシリーズで追求してきた壮大な「自然界の物質循環」の中で、人間が大きな役割を果たしていることにも気付きます。
それは、『重力に従って海に流れていく養分を陸地に戻すこと』です。この行動が、山地での森林再生や農地維持に大きく貢献することになります。人間の影響が少なかった頃は、海鳥などがその役割を担っていましたが、現代では人間が魚介類を収穫する量の方が圧倒的に多いという事実があります。
当然、海に流れる前に養分を再利用する(=廃棄物や糞尿の利用)ことも人間が担える役割です。今回はため池、漁業という切り口で可能性を模索しましたが、人間が主体的に物質循環を促進する方法はまだいくらでもあるはずです。このような視点で技術追求や社会制度を形成していくことが、これからの農業に必要なことだと思います。
このシリーズでは、物質循環の原理から次代の農法を追求してきました。一定の可能性提示には至ったと思われますが、それを実現するためには越えなければならない「現実の壁」がいくつか存在することも見過ごせません。
ということで、本シリーズのラスト2投稿となる次回、次々回は、「物質循環に則った農業を実現する上での壁は何か?」⇒「その壁を乗り越えるにはどうすればいい?」を追求していきます。
どうぞお楽しみに!!

投稿者 staff : 2010年05月11日 List   

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コメント

企業参入の経験者のものです
農地法の改正に伴い、めっちゃ簡単に参入できました。ニュースにはなりませんが、毎年のように少しずつ農地法は変わっていってますね
参入し、最初の草刈り後の慰労会の時に「どうせ会社はけつまくってにげんだろ」と言われたのが印象的です!
風土に根差した対処、超重要だと思います
そして、様々な状況変化の中打開していく能力と情熱がなければ絶対続かないでしょう☆
このシリーズ、興味深く拝見させて頂きました。ありがとうございます

投稿者 さとう : 2012年3月6日 23:09

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